SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2020年12月 4日

#724 ジョーダン スマイラー 『フィジカルでもメンタルでも常に自分とバトルしている』

いろいろなことが出来る大きくて万能な選手、そんな人となりを今回のインタビューから感じさせてくれたジョーダン・スマイラー選手。将来のための勉強も進めている様子で、とても楽しみです。(取材日:2020年11月上旬)

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◆新しいチャレンジは成長する機会

――人々が初めて経験するコロナウイルス禍において、どのように過ごしていましたか?

(日本語で)つまらなかったね。ジムで毎日、自分の練習をしました。(以下、英語で)自分だけじゃなく他の選手も含め初めての経験で、これまではチームでトレーニングをする環境にいましたが、初めて個人で5ヶ月の間、モチベーションを持ってトレーニングをしていくということが、特に難しかったです。

――家族とコミュニケーションを取る時間はありましたか?

ポジティブなサイドとしては、家で過ごす時間、家族と過ごす時間があって良かったんですが、ロックダウンの状態の中ではやれることが限られていました。いくら家族でもずっと家で一緒に過ごすとなると、子どもたちもいてお互いにストレスが溜まる部分があるので、自分の時間もしっかりと設け、バランスを取ろうと心掛けて生活しました。

――ニュージーランドではどのくらい過ごしたんですか?

9月末くらいに日本に戻ってきました。

――これまでサンゴリアスで3シーズンを過ごして、自分自身の出来はどうでしたか?

新しいチャレンジは成長する機会だと思っていましたし、日本でのラグビーにフィットしていくという意味では、1シーズンは必要だったと思います。スーパーラグビーでプレーしていた時は、フィジカルが強い選手が多い中で、胸を中心にタックルが来るんですが、日本ではロータックルですしアジリティーがもっと必要になります。自分のランニングスタイルもそれに合わせていかなければいけなかったので、そこのバランスの調整に少し時間がかかりました。

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トップリーグもスーパーラグビーと同じくらい、厳しいコンペティションだと思っています。その中で戦っていく上で、フィジカル的にも強くなければいけませんし、コンディショニングが重要になるので、日々成長して強くなっていくことを常に考えて取り組んでいます。

――以前ポジションとして4番から9番まで出来ると話してくれましたが、これだけ背の高い選手が9番をやるところを見てみたいですね

(日本語で)子どもの頃ね。10番も出来る(笑)。(以下、英語で)遺伝なのか、家系的に背は高いけれど細いという家族が多いんです。身体を大きくしていくことの難しさはあったんですが、小さい頃から16~17歳頃まではずっとバックスをやっていて、それ以降からバックローでプレーするようになって、身体を大きくしていくことにチャレンジしてきました。

――フォワードとバックスではどちらが好きですか?

いまバックローでプレーしていて、バックローはフォワードとバックスの良い面を両方プレー出来ると思っています。フォワードのフィジカル的なプレーも経験できますし、アタックではフィールドの端でプレーする機会もあります。そこでボールをもらってオフロードしたりそのまま抜けたり、そういう形で自分の強みを活かせると思っているので、今のバックローというポジションが自分の良い面を出せると思っています。これからパスキャッチとかラインアウトのスキルなど、磨いていなかければいけないスキルはありますけどね。

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◆ラグビーは自然と始めるもの

――ラグビーの魅力とは、改めて何だと思いますか?

ニュージーランドで暮らしていると、ラグビーは自然と始めるものです。そのうち段々とラグビーに向いている、ラグビーが得意ということが分かってくると、そこからラグビーで生活が出来るようになるかという考えが出てきたんですが、それが19~20歳くらいの頃でした。それはすごくエキサイティングなことですし、自分の好きなことでキャリアを築いていくということは素晴らしいことで、ラグビーでお金をもらって生活が出来ているということはとても恵まれていて素晴らしいことだと思っています。

みんなで協力して作り上げる、目標を達成するということが魅力ですし、自分が楽しんでいる部分でもあります。フィジカルでもメンタルでも常に自分とバトルしているので、そこがラグビーの魅力だと思っています。そういう自分がいて、同じようなマインドを持った選手たちと一緒に目標に向かって取り組めるところが、魅力であり楽しい部分だと思います。やっぱりみんなと一緒にチームとしての目標を達成するということが好きなので、ラグビーじゃなくてもそう感じることはあると思いますが、チームの雰囲気が好きですし、自分とは異なる強みを持った選手たちと一緒に、ひとつの目標に対して向かっていって達成するということが好きですね。

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――サントリーに来る外国人選手は考え方や取り組む姿勢が素晴らしい選手が多いですね

会社でもそうだと思いますが、採用をする時はその人の人間性を見ると思います。サンゴリアスでもオンフィールド、オフフィールドでの人間性を重要視していると思います。そこにあるカルチャーをより良いものにしていける人間かどうかは、リクルートをする上では重要な部分だと思います。いまある文化を壊すような人間は、どのチームも取りたくはないと思うので、そこが上手くいっているからサントリーには素晴らしい選手が集まってきているんだと思います。

――今シーズンの目標は?

自分自身が持っているものを全て出すために、努力を怠らないことが重要です。目標を達成するためには、それが必要だと思います。シーズン毎に変わるのではなく、今までも目標は勝つことであり、競争心を持って戦って結果を出すことです。ただ、ラグビーはそれだけじゃなく、常に成長したいと思って日々努力をしていますし、常に自分のベストのパフォーマンスを出して向上できるように、日々努力を続けています。そこは変わっていません。

――将来の夢はありますか?

いまプロとしてラグビーキャリアを続けていて、それが夢の中を歩き続けているような状態です。そこから同じような熱量で、同じようなパッションを持ってやれることを、ラグビーキャリアを終えてからも探していくことは難しいことだと思います。それが何なのかを探し続けなければいけないとは思っていますが、現時点ではそれが見つかるかも分かりません。

先ほども言いましたが、チームの中にいてみんなと一緒に何かを達成するということが好きなので、人の周りで、良い人たちに囲まれて仕事をしていきたいという想いがあります。そこに通ずるような仕事をしたいですね。僕がセミプロでプレーしていた時に、コーチではないんですが、色々な学校を回って体育の先生のようなことをしていました。ウインタースポーツや色々なスポーツを教えるという経験をして、それも楽しめましたし、そういうプログラムに関わってやっていけるような仕事が出来れば良いかもしれないという考えはあります。

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◆ボディランゲージの勉強

――来日当初から日本のカルチャーにフィットしていて、日本が好きと言っていましたが、3年が経ち更に好きになったところはありますか?

日本の文化はマオリの文化に通ずるところがあって、年配の人を敬ったり、礼儀の部分でも共通するところがあります。マオリの文化と日本の文化は似ていて、日本の文化の中にアットホームに感じる部分が多くあります。そこが大きくて日本の文化にフィットしていると思いますし、日本での生活を楽しめていると思います。新たに好きになった部分というものはありませんが、日本の文化との繋がりは更に強くなったと思います。

――日本独自の文化で面白いと感じたことはありますか?

マオリの話からすると、マオリもイギリスに植民地にされて、しっかりと教育を受けられない時期もありました。そこから変わり、しっかりと教育を受けた上で、自分たちが学んで成長していかなければいけないという考えがあります。そういうバックグラウンドや自分が今いる環境を考えると、サントリーには仕事もしっかりとやった上でラグビーもしっかりとやっている選手が多くて、常に自分たちが何かを代表していたり、自分たちが背負っているものがすごく大きいような気がしています。常に目標を達成するための姿勢とか、0か100じゃないですけど、中途半端にやるのであればやらない、やるのであれば100%やるというような姿勢を見ています。そこが自分が育った環境とは違って、自分たちで目標設定をして、そこに向かって突き進むということが出来ているのが日本人だと思います。そこがマオリとは大きな違いかなと思います。

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全員がそういう状況ではないので言うかどうか迷ったんですが、まだまだマオリの人でも、財政的な理由や環境で、十分に教育を受けられていない、チャンスを得られていないという人がいます。私は両親のおかげでしっかりと教育を受けられましたし、兄弟や親戚たちも教育を受けられてきたので、それに感謝をしながら、そういった環境を変えたいと思っています。自分の子どもたちに対してしっかりと教育を受けさせたいと思っていますし、自分で学んで成長していって欲しいと思っています。

――最後は日本語で答えてください。昨日は何をしましたか?

昨日は練習がありました。それだけ(笑)。夜は奥さんと2人で一緒に映画を見ました。あとはちょっと自分の勉強をしました。(以下、英語で)言葉を使わずに、相手の表情や動作などを見て相手の感情を読みとる、ボディランゲージの勉強です。自分の身体の中で、いちばん正直な部分ってどこだと思いますか?それは足です。

例えば、小さい頃に両親からご飯を与えられて、それが嫌いなものだったとして、それを表情に出してしまうと相手に伝わってしまいます。子どもってだんだんと顔に出さないようにしていく訓練を自分の中でしてしまうんです。足は、自分の感情を出さないようにする訓練をしませんし、足を見るとその人の感情が分かったりすることがあります。例えば、何か話をしていても足が出口の方を向いていたら、早く出たかったり、退屈だなと思い始めていることが結構あると思います。ただそれが自分の姿勢で、心地よくてやっている人もいるので、そこは細かく見なければいけません。オンラインコースでもボディランゲージを学ぼうとしているので、それが今後、自分がパッションを持ってやっていけることに繋がるかもしれません。

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――ボディランゲージがラグビーにも活かせそうですか?

小さいことでも身体の動きで、相手が不快に思っているかもしれないと感じられたら、質問をしたり話しかけたりして、いつ何を言うかということも相手のボディランゲージを見て考えています。ボディランゲージは大体は世界共通のものが多いんですが、人種によって違いがある部分もあるそうです。そのチャプターはこれから学びます。

――新たな「ボディランゲージコーチ」はどうですか?

いまフィジカルトレーニングはどのチームも同じようなことをやっていて、これからはメンタルの部分のコントロールを如何に行うか、上手く出来るかによって結果が変わってくると思います。プレッシャーがかかった時に良い判断が出来るかという部分が相手との差になると思います。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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