SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2020年11月13日

#721 中野 将伍 『レギュラーを取って試合に出続ける』

大学日本一、そしてサンウルブスでの経験を経てサンゴリアスにやってきた新人・中野将伍選手。期待のルーキーがいま目指しているものは何でしょうか。(取材日:2020年10月中旬)

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◆意識の持ち方は変わった

――サンゴリアスでの初めての菅平合宿、どうでしたか?

ラグビーのトレーニングはあまり行わず、自分自身の限界を超えるためのマインドセットや、体力的にキツい中でどれだけ自分を追い込めるか、チームの仲間と一緒にどれだけキツいことをやれるかという合宿でした。

その合宿の最初のミーティングで、キツい状態になった時に自分の居心地が良い場所に行くんじゃなくて、居心地の悪いところに行って更に追い込むことで、自分を更に成長させられるという話がありました。それをどれだけやれるかという合宿でした。

この菅平合宿の前にも同じようなテーマでトレーニングをする機会があったので、その時よりも更に意識して、キツい時にもう一歩前に出たり、キツい時に更に耐えるというところは出来たかなと思います。

――キツいことについては得意分野ですか?

僕としては得意な方ではなかったので、チャレンジでしたね。菅平合宿では4つのチームに分かれ、合宿以前のトレーニングでは2つのチームに分かれて行なったんですが、以前はキツくなった時には自分だけにフォーカスしてしまうことが多かったと思います。今回の菅平合宿では、キツくなった状況でも自分のことだけじゃなくて、周りの仲間に声を掛けたりしましたし、みんながキツいことをやっているので周りに目を配るというところには意識して取り組めたと思います。

――それを積み重ねてきて成長したんですね

そうですね、キツくなった時に、すぐにキツいと思うのではなくて、「何のためにこんなにキツいことをやっているのか」ということを考えながらやっていたので、意識の持ち方は変わったと思います。

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――もともとメンタルは強そうですが、自分ではどう思っていますか?

強くはないと思います。大事な試合でミスなどをしてしまうと、すぐに切り替えられない時もあったりしました。そういう意味では、ミスしてしまっても気にせずにすぐに切り替えられるくらい強いかと言われたら、そうではないと思います。

――今シーズンのルーキー3人ともマイペースという話があり、マイペースであればあまり緊張しないようなイメージがありますが、中野選手の緊張とはどんな緊張ですか?

大学でも試合の時には練習の時の感じとは違って、緊張はしていました。試合では自分が納得するパフォーマンスが出来るかと考えますし、もちろんそのための準備をして試合に臨んでいるんですが、その中で自分たちよりも強い相手と戦う時にも、しっかりと自分のパフォーマンスを出せるようにやらなければいけないという緊張感だと思います。

――その部分とマイペースという部分は別物ですか?

マイペースという部分は日常生活で、すべて周りに合わせて行動するのではなくて、自分のやりたいことは自分のペースでやることが多いかなと思います。なので、ラグビーとは切り離していると思います。

チームメイトやスタッフ、応援に来てくれている人たちに対して、自分がしなければいけないプレー、求められているプレーが出来ないことがダメだと思っています。そこをしっかりとやらなければいけないという緊張ですね。

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◆小林航さんにはびっくり

――メンタルについては、これからも強くしていこうと思っていますか?

サントリーや日本代表で試合に出ることを目標にしていて、日本代表になれば大きなテストマッチなどもあるので、そういった試合でも緊張して自分らしいプレーが出来なかったということがないように、どういう状況でもいつも通りの気持ちと身体でパフォーマンスが出せるようにならなければいけないと考えています。

――そのために取り組んでいることはありますか?

自分の中で、精神的にも身体的にも試合に対してしっかりと100%の準備が出来て万全という状態になれば、緊張よりも自分がどれだけ出来るかというワクワク感の方が大きくなるので、自分が出る試合すべてで自分のベストのコンディションに持っていけるように、これまで以上にコンディショニングの調整を行っていきたいと思っています。大学時代も考えて取り組んではいましたが、色々と試していって自分に本当に合うものを探していきたいと思います。

――身体についての自信はどうですか?

大学時代には細かな怪我があり、100%の状態で試合に出られないという状況があったので、今も継続していますが、怪我をしていない時も練習前にしっかりと準備して、予防できるところはしっかりと予防して、怪我をしない身体を作っていこうと思っています。

大学時代は怪我をしていない時には普通のウォーミングアップをしていたんですが、社会人になってからは怪我をしていない時でも怪我をしやすい箇所の予防をしていますし、トップリーグになればより激しくなるので、怪我をしないためにも予防のための準備をしっかりと意識して取り組むようにしています。まだ手術をするような大怪我をしたことはないので、食事面、トレーニング面での身体づくりは、自分の中で順調かなと思います。

――食事量がチームNo.1と聞きましたが、そんなにたくさん食べるんですか?

そうですね。普段は食べる量を調整していますが、みんなから食べる量が凄いと言われます。ただ、小林航さんが食べる量を実際に見て、その量にはびっくりしました。航さんは僕よりも食べていると思います(笑)。

――中野選手は実際にどのくらい食べるんですか?

例えば外食する時などは、普通の状態で2人前くらいは食べると思います。お腹が空いていたら更に食べるという感じですかね。普段は体重を管理しているので、食べる量も調整しています。僕はどちらかと言うと体重が増えやすい体というか、食べたら食べた分だけ体重が増えてしまうので、食べる量を抑えて体重をキープしています。体重を増やすことはコンタクトでは有利になりますが、体重を増やした時にスピード面や体力的な面でベストではないと感じたので、今は98kgをキープしてやっています。これから身体がついていけば、徐々に筋肉量を増やしつつ、スピードやフィットネスを落とさず大きくしていければと思っています。

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◆オフロードでもチャンスを作れる選手になりたい

――オフロードパスが得意だと思いますが、かなり練習しましたか?

バックフリップパスなどは練習時間以外の軽い遊びでよくやっていましたが、特別にオフロードパスの練習をするというよりは、自分がお手本にしていたのがソニー・ビル・ウィリアムズ(元ニュージーランド代表)です。ソニー・ビルのオフロードパスの動画を見て、「こういう状況の時にはこういうオフロードが出来る、この場面ではこんなオフロードが出来る」と、イメージを持って試合で試したりしていました。なので、特別にオフロードパスの練習時間を設けたというよりは、イメージを持って実戦で試してみるということをやっていました。

――イメージを持ってやることはとても大事なことだと思いますが、それは他のスキルに関してもイメージを持って取り組むことが多いんですか?

パスやキックでもイメージは大事ですが、キックで言えばボールを動かないように落とすとか、基礎を反復練習しなければ身につかないと思うので、そういうスキルに関しては、全体練習の前後で数多く練習をするようにしています。

――ソニー・ビル・ウィリアムズ選手は目標の選手ですか?

ずっと目標にしています。フィジカルが強くて突破できて、オフロードでもチャンスを作れる選手になりたいと思いながらずっとプレーを見てきました。

――今どのくらいまで近づいていると思いますか?

大学時代はオフロードパスには多少の自信を持っていたんですが、その後のスーパーラグビーを経験して、学生相手と同じような感じではオフロードが出来なかったので、そういった意味で、あのレベルでも裏に出てオフロードが出来るようになるまでは、まだまだ力が足りないと思いました。

――どの辺が足りないと思いましたか?

オフロードをするためには、まずボールキャリーで相手のタックルを受けて裏に出ないといけないんですが、スーパーラグビーではタックルを受けて裏に出られることが少なかったですし、オフロードをするかしないかの判断のところでも、例え相手をずらして裏に出られたとしても、違う選手がオフロードをしようとする手を叩きに来たりしてきます。

オフロードをするかしないかの判断だったり、フィジカルで外国人選手相手に裏に出られるかというところが、更にオフロードを上達させるためには必要なことかなと感じました。もちろん相手をずらすためのフットワークも必要です。

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◆強みとしていたプレーが発揮できなかった

――サンウルブズのメンバーに選ばれた時はどう思いましたか?

大学選手権の決勝が終わって何日か経った時に、大学の監督から「練習生としてサンウルブズに行って、パフォーマンスが良ければスーパーラグビーに挑戦できる」という話をいただいて、その時は素直に嬉しかったですね。ただ、その時はまだ練習生という立場だったので、まずは練習から自分のパフォーマンスを出して、スーパーラグビーにチャレンジしたいという想いでやっていました。

――実際に試合のメンバーに入った時には、チャンスが来たという感じでしたか?

そうですね。せっかくのチャンスをしっかりと掴み取ろうと思いました。スコッドに入れた時は素直に嬉しかったんですが、そこからが試合のメンバーに入るための競争でもあったので、スコッドに入っただけで満足しないようにしていました。

――目指している日本代表へのひとつのステップでもあったと思いますが、イメージとしては日本代表が少し近づいてきたという感じでしょうか?

スーパーラグビーの試合を経験して、それまで自分の強みとしていたプレーが強みとして発揮できなかったので、そういった意味では、もっと成長しないと日本代表には入れないと感じました。

――イヤーブックのインタビューで、小学生から日本代表になりたいと思っていたと言っていましたが、その時からラグビーが大好きだったんですか?

そうですね。小さい頃からラグビーが好きというか、ラグビーと並行して違うスポーツもやっていたんですが、土日にラグビーをやって、平日はラグビーがないから柔道と水泳をしていたという感じでした。

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――柔道と水泳は個人スポーツだと思いますが、チームスポーツのラグビーとは大きく違いましたか?

兄姉3人いるんですが、兄も姉も水泳をやっていて、その流れで自分も水泳をやっていたのかなと思います。柔道は小学1年の時に始めたんですが、柔道は受け身をとるので、そういうところでラグビーに活かせるんじゃないかということで始めましたね。

――3歳からラグビーをやっていたわけですが、その当時はラグビーの何が面白かったと思いますか?

小さい頃からラグビーは好きだったんですが、やっぱりボールをもって走ってトライをすることが面白かったんだと思います。小さい頃は何が面白いかまで考えていなくて、とりあえず好きだからやっていたという感じだったと思います。

――その気持ちは変わりませんか?

そこは変わらず、ずっと好きで続けてきたという感じですね。ボールを持ってトライをすることがずっと楽しいと感じていましたし、自分がトライをするだけじゃなくて、自分がチャンスを作って味方がトライをする、味方を活かすということを覚えてからは、そういうことも楽しいと感じるようになりました。

――いま現在、ラグビーの魅力は何だと思いますか?

他の競技にはない激しさがあって、仲間のために身体を張ったり、身体をぶつけたりして、逆に身体を張らない選手は信用されなかったりします。仲間のために身体を張って出来た信頼関係は大きいものだと感じます。

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◆センターで出たい

――今シーズンの目標をお願いします

レギュラーを取って試合に出続けることです。それが今後の目標でもある日本代表に繋がると思います。日本代表になるためには、まずサントリーで試合に出続けて活躍しなければいけないと思っています。

――その自信はありますか?

自分の強みであるフィジカルで勝負していけるという自信を持っていますが、フィジカルだけの選手ではなく、パスやキック、相手をずらすことなどをもっと磨いていけば、プレー選択の幅が増えて、「自分がレギュラーだ」と自信を持てるようになると思います。フィジカルだけじゃなく、今後はそういったところでも自信を持てるように、トップリーグの開幕までには準備していきたいと思っています。

――ポジションにこだわりはありますか?

センターで出たいですね。これまではインサイドセンターで出ることが多かったんですが、アウトサイドでもやっていきたいので、どっちも出来るセンターになっていきたいと思っています。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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