SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2020年10月23日

#718 『 ラインアウトでは自分がいちばんだという気持ち 』

恵まれた体躯に、しっかりとした自信が加わり、さらに足りないスキルを磨こうとしている小林航選手。リーダーシップに対する自覚も芽生え、心技体ともさらなる充実が期待できる楽しみな新シーズンとなりそうです。(取材日:2020年9月下旬)

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◆コンディション維持

――昨シーズンに大きな自信を掴んだと思いますが、これまでにない長いオフシーズンを経験しての現在の心境は?

人生で初めてと言っていいくらい長期的なオフで、しかも活動が制限されていたので、通常のオフであれば仕事の後にクラブハウスでトレーニングをしたり、思い立った時にすぐにトレーニングが出来ていましたが、コロナの影響でクラブハウス内の立ち入りが禁止となり、家の周りを走ったり、近くの公園で筋トレすることくらいしか出来ませんでした。オフの過ごし方は難しかったですね。通常のオフでは少し身体を休めたりしていましたが、今回は少しでも身体が鈍らないようにしていて、コンディションを維持することが大変でした。

僕の場合は、オフになると運動量よりも食事量が多くなってしまい太ってしまっていましたが、コロナの影響で外食も出来ませんし、自分の食事を見直して、出来る限り自炊をするようにして食事を管理していたら、逆に痩せちゃいましたね。引退後はこうすれば痩せるんだなということが分かりました(笑)。もちろんまだまだ引退する気は無いですよ。

――コンディション的にはどうでしたか?

クラブハウスでトレーニングが出来ない代わりに、チームが器具などを貸してくれたので、それを使ってトレーニングをしていました。ただ、どうしても100kg単位の重りを使ったトレーニングが出来なかったので、クラブハウスが使えない期間では数値は落ちてしまっていましたね。

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――精神的には?

これほど長期的にラグビーが出来ないことを経験したことがなかったので、早くラグビーがしたいなと思うのと同時に、仕事でも営業に出られない時期もあり、僕は何をしている人なんだろうと思うことがありましたね。ラグビーも出来ないし、仕事でも業務用と言って居酒屋さんなどを担当する仕事なのにお店に行くことも出来ないし、電話でお店の状況を聞くくらいしか出来ません。正直、僕は何をしているんだろうと思う時期がありました。

あとは、プライベートな話になりますが、母親が亡くなりました。母はコロナではなかったのですが、病院での面会が禁止で、最期は会うことが出来ましたが会えない期間が長かったですし、近くで声を掛けて励ましてあげることが出来なかったので、それがいちばん個人的には辛かったですね。

――長い間、闘病されていたんですか?

トップリーグ2020の第6節日野戦の時には入院をしていて、一時期安定して家から病院に通う期間もあったんですが、クラブハウスの使用が解禁されたり、仕事でもガイドラインを設け営業に行けるようになった時期でもあったので、もし僕が知らぬ間にコロナに感染していて無症状というだけだったらと考えた時に、うつしてしまったらいけないと思い、なかなか会えませんでした。

――昨シーズンの活躍を見せることは出来ましたか?

いつも練習試合にも応援に来てくれていて、試合に出ることを本当に喜んでくれていました。昨シーズンはシーズンが少しだけでしたが、開幕戦の東芝戦にも出場することが出来たので、「今年は活躍する姿をたくさん見られそう」と喜んでくれていました。日野戦の時がちょうど誕生日で、その日に試合に出られて、自分の強みを活かしたプレーが出来たので、直接ではなくテレビ越しではありましたが、その姿を見せられたのは良かったと思います。

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◆パスを改善

――現在の状況は、これから更に身体を鍛えていくという段階ですか?

コロナが終息したわけではありませんが、しっかりと感染予防をした上でクラブハウスが使えるようになって、チームトレーニングも始まったので、これから失ってしまった分を取り返していきたいと思います。

――身体を戻した先のターゲットは?

オフの期間中にフォーカスしていたことはスキルの部分で、サンゴリアスと言えばアグレッシブ・アタッキング・ラグビーで、そのラグビーにコミットする上で、昨シーズンはパスのスキルがぎこちなかったと思います。そこを改善したかったので、オフ中は耕太郎さん(田原/コーチングコーディネーター)とアオさん(青木佑輔/アシスタントコーチ)にお願いをして見てもらっていました。ただ、クラブハウスが使えるようになっても、使える時間を選手をグループごとに分けて制限していたので、その限られた時間の中でパスの基礎からしっかりと練習をしていました。

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――改善はされましたか?

「継続は力なり」という言葉がありますが、やっぱり継続すると身につくんだなと改めて感じました。まだバックス並みに速くパスが放れるわけではありませんが、初心に戻りパスにフォーカスしてトレーニングしたら上手くなったので、継続することは大事だと思います。

――昨シーズンのプレーを見ていて、自信が生まれ、一段階レベルが上がっていたように感じましたが、自分自身ではどうですか?

まだ今シーズンが始まったばかりですけど、自分が強みにしているところは自信を持ってやらなければいけないと、オフ期間中にトレーニングをしている中で思いましたね。あと、柔道の野村忠宏さんの話を聞く機会があって、その中でこの分野は誰にも負けないという強みを持って、自信を持って取り組まなければいけないと感じました。

前回のこのインタビューでだんだん自信がついてきたと言いましたが、性格的に発言など遠慮してしまうところがあるので、そういうことは止めて、ラインアウトでは自分がいちばんだという気持ちで、自分の発言に自信を持っていかなければいけないと思っています。

――いちばん自信があるところはラインアウトですか?

そうですね。ボールキャリーも僕の強みだと思っていますが、チームにはボールキャリーが素晴らしい選手はたくさんいますし、その中で僕が飛び抜けているかと考えると、そうではないと思っています。じゃあ何が飛び抜けているのかと考えた時に、ラインアウトディフェンスやラインアウトのスキルだと思いましたね。ラインアウトに関しては、困っている人にアドバイスすることも出来ますし、教えたりサポートすることも出来るので、自分のいちばん自信があるところはラインアウトだと思っています。

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――サンゴリアスの日本人ロックの中では年長者になり、チーム内でのリーダーシップの発揮を意識しますか?

ベテランに片足を突っ込んでいるような年齢になってきていますし、ロックでは日本人選手最年長になるので、ロックメンバーを引っ張っていかなければいけないと思っていますし、チームからもそういう役目を求められていると思います。2シーズン前くらいからラインアウトリーダーをやらせてもらっていますし、そういう役目を与えられているということは、ラインアウトを引っ張って欲しいというチームの考えがあると思うので、そういうチームからの期待に応えたいと思っています。

――どうロックメンバーを引っ張っていこうと思っていますか?

僕が意識していることは、チーム内でのラインアウトの決まり事は、練習前、練習中に周りに意識させるように言うようにしていますし、疲れてきたりすると、例えば3つ決まり事があるうちの1つは忘れてしまうということがあったりすると思うんですが、そういうことが無いように練習前に意識させるようにしています。あとコーチたちから言われたことを、練習前に選手たちに「こういう練習をするから、ここに意識してしっかりやりましょう」と話して落とし込みをしてしています。僕がまだまだ未熟なので、飯野と一緒にやったり、ラインアウトも2~3グループに分かれてやるので、飯野に他のグループをまとめてくれるようお願いをしたりしています。

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◆開幕戦から出場

――今シーズンの目標をお願いします

メンバーも変わり、新たに2m超えの外国人選手が入ってくることになり、ポジション争いが激しくなる中で、自分の強みを練習から出していってコーチと仲間から信頼を獲得し、また開幕戦から出場し、サンゴリアスの優勝に貢献したいと思います。

――他のポジションへの挑戦は考えていますか?

複数のポジションが出来た方が使われやすいと思うので、フランカーにも挑戦したいんですが、その判断はコーチ陣がするもので、僕としてはフランカーも出来るように準備していきたいと思います。

――日本代表についてはどうですか?

もちろんラグビーをしている上での目標ではありますが、その目標に行くためには目の前の目標を達成していかなければいけないと思っているので、まずは、例えばサンゴリアスでレギュラーとして試合に出るとか、トップリーグで活躍するとか、フランカーが出来るようになるとか、そういう目の前の目標を達成していくことが大事だと思っています。

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――目の前の目標を達成する自信は?

ロックに良い選手がたくさんいるので、まずはそこの戦いに勝たなければいけないんですが、戦う前からポジション争いに勝てないと思っていたのでは勝負の土俵には立てないと思うので、練習から同じポジションの選手には負けない気持ちでやっています。練習が終われば仲が良いので、しっかりとオンとオフを切り替えてやっています。

――言い残したことはありませんか?

いつもインタビューが終わると、大丈夫かなって思っちゃいます(笑)。良いことを言ったり、上手く言葉を操りたいんですけど、考えて言葉がこんがらがっちゃうタイプなんですよね。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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