SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2020年9月25日

#714 堀越 康介 『注目される中で成功して自信を深めていくことの繰り返しが大事』

食事を変え、身体が変わり、プレーにも自信も深めてきた堀越康介選手。もともと持っているリーダーシップの発揮どころを含めて、3シーズン目に向けての抱負や想いを語ってもらいました。(取材日:2020年9月上旬)

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◆食生活を変えた

――トップリーグ2020が中止になってから今までどう過ごしていましたか?

昨シーズンは怪我で不完全燃焼の部分があったので、自粛期間中は家でその箇所のケアやトレーニングをしていました。YouTubeなどでトレーニング動画などを見て、良いと思うものを取り入れてやっていました。

――その期間の気持ちは?

落ち込んだり目標がなくなりモチベーションが下がったりしたことは、ありませんでした。トレーニングの他に体質を変えようと思い、食生活をかなり変えました。これまでは体重の増減が激しかったので、それを一定にするために、脂肪を減らして筋力を増やすことを目指しました。代謝を良くして、食事をしたらちゃんと体重が戻る身体を作ろうと思って、取り組みました。それによって体重が一気に増えることはありませんでしたが、急激に減ってしまう時があったので、食事で何を食べるかに気をつけました。例えば夜に炭水化物を抜いたら自分の身体がどうなるか、野菜を多く摂るとどうなるか、そういうことは今までの人生では試してこなかったので、時間がある中でやってみました。

――体重が落ちる時は、試合後や練習後ですか?

そういう時もそうですし、自粛期間中も一気に体重が減ってしまったので、まずいと思って取り組みました。その原因を探している途中ではありますが、食事をしっかりと摂って、しっかりと運動をしていれば、少しずつ体重が戻ってきたので、今は安定しています。感覚的にも変わってきて、動きやすくなりましたし、昨シーズンと同じ体重まで戻りましたが、筋力は上がっています。身体に力が入るというか、元気な身体になったような感覚です。

――身体の見た目も変わりましたか?

自分では変わったと思っています。自粛期間が明けてから、クラブハウスでハードにトレーニングしたということも要因だと思いますが、動きやすい身体になりました。

――グループごとのトレーニングが始まっていますね

やっぱり、ラグビーが出来るのは楽しいですね。まだチーム全体での活動ではありませんが、これまでボールを使ったトレーニングは一切できなかったので、そういうトレーニングが外で出来ることが楽しいですし、やっとスタートラインに立ったような気がします。自粛期間中はパスも出来ませんでしたし、そういう面で、今は楽しいですね。

――これだけパスをしなかった期間は、これまでありませんでしたか?

無いですね。3~4ヶ月はパスもしていなかったと思います。最初は手につかないような感覚はありましたが、今は感覚的にも戻っています。

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◆リーダーシップ

――自信を持つということがずっとテーマだったと思いますが、それについて昨シーズンはどうでしたか?

昨シーズンは自分がラグビーをやっていることに自信をつけるとか、自分の強みに対して自信をつけるということを考えていて、自分の中で「ここは自信を持って出来る」というところがありましたが、トップリーグが中止となり、それを見せる場がなくなってしまいました。その自信は持ち続けていますが、それを周りに見てもらうためにはアクションが大事だと思うので、色々な面に対してのアクションは起こしていきたいと思っています。

――例えば、どういったアクションですか?

例えば、リーダーシップかなと思っています。自分が発言することで責任が生まれますし、周りからは「出来るのか?」と思われると思いますし、注目される中で成功して自信を深めていくことの繰り返しが大事だと思っています。若手がどんどんリーダーシップを発揮していかないといけないと思いますし、ギッツ(マット・ギタウ)やコスさん(小野晃征)などベテランでチームの中心になっていた人がいなくなった分、若手が自分から危機感を持ってやっていなかければいけないと思っています。

僕は元々、自分から発言して取り組んでいくタイプの人間ですが、やっぱり遠慮してしまう部分がこれまではあったと思います。でも遠慮してしまうと、「相手はこう思ってくれているだろうな」などのすれ違いがあったり、「自分はこう思っているけど、周りはこう思っている」という状況になってしまうこともあると思います。やっぱり若手が遠慮しがちだと思うので、若手の代表じゃないですけれど、若手全員でリーダーシップを出し合って、チームを引っ張っていけるようなリーダーになっていければ良いなと思っています。

――外から見ていると、若手がどんどんリーダーシップを発揮しても、それを受け入れてくれる環境がサンゴリアスにはあるように感じます

そうだと思います。亮土さん(中村)など、ベテランになってきている選手たちが受け入れてくれる環境を作ってくれていると思いますし、その環境のおかげで僕らも発言しやすいと思います。そこで間違えていたらちゃんと正してくれると思いますし、年上の選手たちが一度受け止めてくれるので、若手が発言しやすい環境だと思います。

――そういったことを積み重ねていくと自信にもなっていくと思いますが、それがプレーにも影響すると考えていますか?

そう考えています。やっぱり発言すると責任が出てくるので、「やらなきゃ」とか「こんなんじゃダメ」とか、自分の責任に対してもっと頑張ると思いますし、周りもそういう目で見てくれて、一緒にやっていこうという想いになってくれると思うので、そういう選手になりたいですし、今シーズンはそういうことをやっていきたいと思っています。

――チームの中でのリーダーになっていこうと考えていますか?

自分から立候補することは無いと思いますが、そういう立場になろうとなるまいと、やるべきことは変わらないと思います。リーダーの人の話だから聞かなければいけないということは無いと思いますし、思うことがあれば自ら発信していくことが大事だと思っています。日本代表選手とか外国人選手の言うことに押されてそれが正しいと思ってしまって、自分は違う考えがあるのに遠慮からそれで行こうと考えてしまう選手がいると思います。そこは間違えても良いと思うので、リーダーの役職についていようがいまいが、発言することが大事だと思います。

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◆避けられない道

――プレーについては、現時点での課題は?

これまではスローイングに苦手意識がありましたが、自信を持って投げられるようになってきましたし、あとはボールキャリアだったり、フィールドプレーで、一歩でも二歩でも前に飛び抜けていかないとダメだと思うので、周りが思っているよりも力を入れて取り組まなければいけないと思っています。

――スローイングの練習はかなり力を入れて取り組んでいるんですか?

やっています。以前にも言ったかもしれませんが、試合をイメージして、本当に疲れている時に10球投げたり、ゴール前やファーストラインアウトをイメージして投げたり、そういうことを意識して取り組んでいますし、それはこれからも続けていこうと思っています。あとは、投げる前のルーティーンじゃないですけど、こういうメンタルで、こういう動きだったら思い切り投げられるという形が分かってきたので、そこは良かったと思っています。

――それは積み重ねたことで分かってきたものですか?

2年くらい試行錯誤をしていたと思いますが、やはり積み重ねだと思います。その形が分かったら簡単なんだと思います。感覚でやっている選手と、感覚じゃ出来ない選手がいると思います。だから、形が分かるまで時間がかかるとは言えないですけど、僕の場合は後者で、結構悩んで、苦手意識を克服するためにやっていました。僕はこれまでかなりの時間を使って積み重ねてきたので、簡単に崩れることは無いと思いますし、例えどこか痛い箇所があっても、その気持ちとフォームで投げれば良いボールが投げられますね。

――そこで得たものは、他の人にも伝えられるものですか?

今は伝えられないと思います。投げ方は人それぞれですし、僕も先輩から色々なアドバイスをもらってきましたし、「フッカーは投げたらいい。ジャンパーが取れというメンタルで投げたらいい」と言われてきて、そういうメンタルで投げられたら良いなと思ってきましたが、そう簡単にはいきませんし、まだ教えられる状態ではないですね。

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――その課題は、社会人になってから取り組んだ課題なんですか?

大学3年からの課題でしたね。克服するまでに結構長かったですね。その中でフォームを3~4回は変えましたし、克服するまで大変でした。

――挫けずに続けられた理由は?

ポジションを変えるんじゃなく、フッカーでやりたかったですね。日本代表のフッカーとして、スタメンで活躍したいという想いがあったので、そのためには避けられない道ですし、まずセットプレーを強みにしていかないとダメだと思っていました。

――フッカーにこだわる魅力は何ですか?

僕が思っているフッカーは、フォワードの心臓というか、やっぱり中心になるポジションだと思っています。周りとコミュニケーションを取ってプレーしていくことが好きですし、フッカーとしてスクラムを押した時の方が嬉しさがあります。あとは、身長的な問題もあると思います。感覚的になりますが、フッカーが好きというか、楽しいですね。

あとは、昔から好きだった選手がフッカーだったということもあるかもしれないですね。僕はフィールドプレーを見ちゃうんですけど、ケビン・メアラム(元ニュージーランド代表)とか、デイン・コールズ(ニュージーランド代表)とかは、身長はそこまで大きくないのにスルスル抜けるし、強いし、見ていて「おっ!」ってなる感じです。バックスより足が速いじゃないかって思いますし、見ていてワクワクする選手がフッカーでしたね。
フォワードのコンタクトプレーが好きということもありますし、強いのに速くてパスも出来るんです。前提としてフォワードが好きということがあって、フォワードの中でも概念を覆すようなプレーというか、日本人で言えば堀江さん(翔太/パナソニック)のようなプレーですね。堀江さんのことを尊敬していますし、フッカーなのにキックを使ったりして、概念から覆っている印象がありますよね。そういう惹かれる選手がフッカーでしたし、自分の体型的にも近くて親近感があって、ずっとフッカーで勝負したいと思っていました。

――フォワードが好きな理由はありますか?

コンタクトプレーが好きなので、ガツガツしたところが良いですね。身体をぶつけるのも好きですし、勝つこともあれば負けることもあって、性格上、負けると勝ちたくなりますし、勝つと気持ちが良くて、コンタクトプレーはラグビーの醍醐味だと思います。

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◆若手からチームを作っていく

――抜けた選手もいれば新たに加わった選手もいますが、チーム全体を見てどうですか?

やっぱり若手がもっとやっていかなければいけないと思います。色々なところで中心にならなければいけないと思いますし、若手のレベルアップがチームの底上げになって、チームのレベルアップに繋がると思いますし、チーム内のコンペティションのレベルもどんどん上がっていくと思います。それが大事だと思っています。そのために他の若手も引っ張っていきたいと思っています。同期は同期で思っていることがあると思いますし、みんなしっかりしているので、それぞれがリーダーシップを発揮していくと思いますが、遠慮してしまう後輩がいると思うので、そういう後輩たちには若手間のコミュニケーションを増やして、若手からチームを作っていくような気持ちを持ってやっていきたいですね。

――今シーズンの目標は?

まずは、開幕戦で2番で出場することです。そして、活躍して日本代表に呼ばれるという目標もあるので、それに向けて取り組むことです。あまりコントロール出来ないかもしれませんが、怪我をしなければ思い描く通りに進めると思っているので、怪我には細心の注意を払ってやっていきたいですね。怪我についてはコントロール出来ない部分もあって、意識し過ぎるとプレーに支障をきたすこともあり、今年からプロになったのでやれることをやるしかないと思っています。プロになった一番の理由は、残りの人生で思いっきりラグビーをやりたいと思いました。会社員としてラグビーを続けることは出来ると思いますし、今までもそうやって来たんですが、後ろ盾を無くすじゃないですけど、自分の身体ひとつでお金を稼いで、ラグビーをやって自分のなりたい姿に向かっていく方が、自分の性格的にも合っていると思ったので、思いっきり勝負してみようと思いました。

――プロになることは悩みましたか?

僕は元々、社員としてラグビーをやることに魅力を感じてサントリーを選んだので、そこで悩みましたが、自分の中で決めたら、そこからはすぐに行動しました。

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――自分の中で変わったことはありましたか?

変わりましたね。やはり時間がある分、自分の身体との向き合い方とか、最初に話した栄養やトレーニングの仕方、オンとオフの使い方など、考え方が変わったと思います。まだ下手ですけどね。最初はプロだから何々をしなければいけないと思って生活していたんですが、それって窮屈ですし、オフの時にもずっと自分にプレッシャーを掛けてしまっていました。プロだからこそ、やらなければいけないことはたくさんありますが、それは100%やった上で、あとは休む時にはとことん休んだり、この日はこれを食べても良いとか、その辺は上手く自分と向き合ってやっていきたいと思います。

――そこに気がついたきっかけは何かありますか?

誰かに教えてもらったわけではありませんが、色々な先輩と話をしていく中で気づきました。やるべきことはしっかりとやるということは変わらないので、トレーニングだけじゃなく身体のケアや栄養、睡眠などはしっかりとやっていこうと思います。あと、今はフッカーの争いが激しくて楽しいですね。気が抜けないですし、このくらいで良いという気持ちが一切ないので、常に自分にプレッシャーを掛けながら出来ています。元々、そういう環境だと思ってサントリーを選んでいて、社員ということもそうですし、ラグビーのスタイルもそうですし、チームのポジション争いも年齢が近くて絶対に良い争いが出来ると思っていて、求めたものが目の前にあるので、すごく楽しいですね。

――そういう環境の方が成長できるということですか?

そういう環境で成長できた経験があるので、争いがあった方が絶対に良いですね。僕が大学2年の時に坂手さん(淳史/パナソニック)がキャプテンでしたが、その時にすごく成長したと実感しました。その環境がずっと続いていたら、成長スピードも速いと思いますし、考えることも多くなって、土台がしっかりしているプレーヤーになれると思います。

――トップリーグ開幕戦で、2番のジャージを着てグラウンドに立っている姿を想像すると、どんな気持ちですか?

ワクワク感がありますね。早く試合をしたいと思っていると思いますし、もちろん活躍していると思います。セットプレーは完全に安定していますね。えげつないラインブレイクをして、チームから与えられた役割を完璧にこなし、流れを変えるビッグタックルを何回もしている姿が見えますね。マン・オブ・ザ・マッチを狙っています(笑)。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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