2020年8月28日
#710 飯野 晃司 『誰ひとりとしてレギュラーが確定している人はいない』
全試合に出場した2020シーズンを経て、4シーズン目を迎える飯野晃司選手。前シーズンを振り返っての課題、目標そして垣間見せるリーダーシップについても聞きました。(取材日:2020年8月上旬)
◆やるべきことは変わらない
――最近はどんな練習をしていますか?
今のコロナの状況を考えるとまだチームとしての活動は出来ず、個人でやっていくしかないので、コーチたちと相談をしながらウエイトトレーニングばかりやっています。もちろん走ったりもしています。暑くなってきたので「しんどいなー」って思いながらも(笑)、やらなければいけないことなので、しっかりとやっています。
――通常のシーズン前と変わらずにトレーニングが出来ていますか?
通常のオフシーズンと同じような感じですね。ただ時間の制約があるので、そこは意識しながらやっています。グループごとにクラブハウスを使える時間が決められているので、他のグループと重ならないように気をつけています。
――状態はどうですか?
いつもよりもオフ期間が長いので、一気にやり過ぎず、徐々に、怪我をしないように、意識してやっています。僕はこれまで怪我が多かったので、その点はしっかりと意識してやっていかなければと思っています。
――精神的なことも含め、今の状況だからこそ気をつけていることなどはありますか?
2020シーズンは途中で終わってしまったものの、いつものオフと変わらないというか、意識することは次のシーズンに向けてということになるので、それについてはこれまでと変わりありません。いつも通りのオフではありませんが、やるべきことはいつも通りのオフと変わらないかなと。
――では、あまり精神的な葛藤のようなものはありませんでしたか?
2020シーズンが中止となってすぐの頃は「終わっちゃった」という想いがありましたが、今は次のことが見え始めているので、2020シーズンに出来たことと出来なかったことをしっかりと考え、今はしっかりと身体作りをやっていこうと考えています。それは毎シーズン思っていることなので、ブレないかなと思います。
◆何でも出来る人
――2020シーズンについては、出来たことが多かったシーズンでしたか?
試合には出させてもらっていて、チャレンジしなければいけないことはたくさんありましたが、これまでの3シーズンの中ではいちばん充実したシーズンだったかなと思っています。
――なぜ充実したと思いますか?
やっぱり試合に出られましたし、スタッフとも密に話し合って連携できていたと思っています。新しい外国人選手が増えていく中で、後輩もたくさん入ってきたので、自分がしっかりとリーダーシップを取ることだったり、色々なことを伝えることが出来ていたと思います。これまで話してこなかったわけではないんですが、より一層できていたかなと思います。
――兄弟で例えると、今の立場は真ん中という感じでしょうか?
先輩も後輩もいて真ん中かなと思うところはあるので、上も下もいるというポジションでバランスを取りながらやることが大事になるのかなと思います。性格でいえば、僕は長男タイプかなと思いますけど、長男が必ずしも上に立ってやるというわけではありませんからね。
――それをラグビーではどう表現しているんですか?
リーダーシップとか先頭に立ってやるというのはもちろんなんですが、周りとのバランスやコミュニケーションを取っていく必要があるので、2020シーズンはそこがしっかりと出来ていたかなと思います。
――これまでキャプテンの経験はありますか?
大学ではバイスキャプテンで、高校ではそういう立場はやっていなくて、中学の時に入っていたサッカークラブでキャプテンをやっていました。
――話を聞いているとキャプテンタイプだと感じますが
ラグビーに関わらず、先頭に立って何かをやるということが嫌いではないですね。けれど、サンゴリアスにはそういう選手がたくさんいますよね。あとは泥臭くやることも嫌ではないですし、どちらかと言うとそっちの方が多いと思っています。けど、カリスマ性のようなものはないのかなと(笑)。学生だとチームの中で3年とかの差しかありませんが、社会人では先輩と10年違ったり、そういう人たちの中でチームをまとめ上げていかなければいけないとなると、カリスマ性が大事になってくるんじゃないかなと思います。
今のサンゴリアスの中では、状況によっては先頭に立ってやることもありますが、そういう人だけじゃなく裏で支える人も必要ですし、何でも出来る人がいちばん良いのかなと思いますし、そういう人がラグビーでも大事になってくると思います。
――色々なことが出来るようになったり、バランスを取ったりすることは大変だと思いますが、それが好きなんですね
別に嫌いではないですね。意識してバランスを取っているというよりは、みんなとコミュニケーションを取ることは、常日頃からやっていることという感じですね。
――泥臭くやることも好きな方ですか?
プレースタイルが泥臭くやるタイプなので(笑)。トライは取れなくても、という感じですね。
――トップリーグ2020の日野戦でトライを取りましたね
映像でそのシーンを見ましたけど、「トライの仕方がダサいな」と思いました(笑)。
◆大事なセットプレー
――2020シーズンを振り返って、良かった点と見えてきた課題は何ですか?
良かった点は、コンスタントに自分のパフォーマンスを出せたことだと思います。ただ、何かひとつ飛び抜けたものがあるわけではないので、安定してパフォーマンスを出すということを極めていくことが、一桁の番号をもらえることに繋がるのかなと思います。
2020シーズンはコンディション自体が良くて、頭もしっかりとクリアになっていたので、パフォーマンスに繋がったと思っています。もちろん戦術を理解するナレッジの部分が上がっていたと思いますし、2020シーズンは怪我なく過ごせてずっとプレー出来ていたので、常にコンディションがキープ出来たと思います。
――なぜ怪我無く過ごせたと思いますか?
オフシーズンの時に上手く身体を作れましたし、休む時はしっかりと休めていたと思います。3年目で社会人のスケジュールにも慣れたのかなと思います。オンとオフのメリハリがつけられるようになったかなと。
――次のシーズンに向けて、どんなことをターゲットにしていますか?
まず大事なことは、ポジション柄大事なセットプレーです。ラインアウトにしろスクラムにしろ、僕は体のサイズが大きいわけではないので、そこをどうカバーするかが大事だと思います。そこをより意識して取り組まなければいけないと思っています。
――次のシーズンの目標は?
もちろんフォワードとして一桁の背番号をもらうことがひとつと、チーム全体としては2シーズン優勝から遠ざかっていますが、サンゴリアスである以上は、そこは絶対に狙っていこうと思っています。
――他のチームも含め、海外からトップ選手たちが入ってきていますが、そこは楽しみですか?
ワールドカップで見ていた選手たちがたくさん来るので、学べる部分はしっかりと学びたいですし、簡単にレギュラーになれるわけではないので、自分の糧にしていければと思っています。
――ファンにはどういう姿を見てもらいたいですか?
とりあえず、僕がグラウンドを走り回っていたら"元気"ということなので、そういう姿を見てもらいたいですね。まあ、グラウンドで元気が無くなることはないですけどね(笑)。
――次のシーズンに向けて、気持ちが盛り上がっていることなどはありますか?
もちろん楽しみです。ただ、誰ひとりとしてレギュラーが確定している人はいないので、チーム内でしっかりと争っていきますし、そこで自分のパフォーマンスをしっかりと出せれば、自ずとレギュラーに近づいていくと思うので楽しみですね。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]