SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2020年6月12日

#697 塚本 健太 『小さいことでも負けない』

入部7年目、今年30歳となる塚本健太選手。何かを変えようとしている日々の活動を中心に、現状の取り組みについて聞きました。(取材日:2020年5月上旬)

①200201_09166.jpg

◆コンディションは良かった

――2020シーズンはどんなシーズンでしたか?

1試合しか出られなかったので、満足のいく結果ではありませんでした。

――監督が変わり、新しいスタッフや選手が入り、チームが大きく変わった中で、どうたったんですか?

身体の面でもコンディションは良かったんですが、監督が変わり、監督が何を求めているのか、どういうところを見ているのか、そういうところを理解するまでに少し時間がかかったかもしれません。

――監督が変わった時には、いつもそうですか?

どうですかね。監督が変わっても試合に出続ける選手が良い選手と言われていました。監督が変わったから何を変えるということではないですけど、何を求められているのかというところは変わってくるのかなと思います。

――ミルトン・ヘイグ監督からはどんなことを求められているんですか?

フィジカルが強い選手や足が速い選手はたくさんいるので、そこで勝負をするというのもあると思いますし、あとはコミュニケーションで、どれだけ僕がチームに良い影響を与えられるかという部分を求められていると思います。

――コミュニケーションでチームに良い影響を与えるとは、具体的には?

実際にそういう部分を求めていると言われたわけではありませんが、例えば、フォワードのオーガナイズの部分で、「どこに立って」「こういうことをして欲しい」という細かい指示であったり、「どこにスペースが空いているか」についてコミュニケーションしたり、そういうことをもっとやっていかなければいけないと思っています。もちろん、フィジカルやスピードを強化することは大前提ですけどね。

②200320_8650.jpg

◆ディフェンス改善

――コンディションは良かったということですが、良いパフォーマンスが出せていましたか?

トップリーグが開幕する前の練習試合などではすごく良かったんですが、開幕戦のメンバーに入れなかったのはショックでした。監督とも話しましたが、先ほど言った指示の部分であったり、フルバックとしてのポジショニングがまだまだということを言われました。

――ウイングで出場することも多いと思いますが、ポジションについてはどう考えていますか?

ウイングでもフルバックでも、どちらでも対応できると思っていますし、どちらかにこだわりはありません。

――フィジカルとスピードについては、このまま継続して強化していきますか?

そうですね。このまま継続してやっていきます。あと、出場したNEC戦でディフェンスが全然ダメだったので、そこを今いちばん改善しなければいけないところだと思っています。

――ディフェンスについては、これまでも課題になっていましたか?

ずっと指摘されてきました。飛び込んでしまうとか、バインドがしっかりと出来ていないから相手を倒しきれないとか、頭が下がってしまっているとか、それをずっと言われてきて、自分でも理解しているんですが、まだ改善できていないですね。コーチからタックルの練習メニューを与えてもらい取り組んでいるんですが、これまでと同じでは変わらないと思うので、何かを変えなければいけないと思っています。

新たにZUUというトレーニングをやって、低い体勢でも頭が下がらないとか、そういう体勢で力が出せるとか、どこかにヒントがあるんじゃないかなと思って取り組んでいました。2020シーズンは、その成果を出せずに終わってしまったという感じですね。

③200201_10167.jpg

◆何かが変われば良い

――ZUUというトレーニングは、どんなところに新しさがあるんですか?

ZUUは動物の動きをベースにしたトレーニングで、例えばベアという熊の動きを真似るメニューがあって、手と足を使って前に進んだり後ろに下がったり、ゴリラの動きを真似て手をついた状態で跳んで足を前に進めたりして、常に低い体勢で動くトレーニングをしています。

――ZUUをやっていて、改めて発見したことは?

僕らは2本脚で走るんですけど、最終的にタックルやブレイクダウンに行く姿勢って、ベアとかの姿勢に似ていると思います。

――ZUUには低い姿勢以外の欠点を改善する効果もあるんですか?

欠点を改善するかどうかは分かりませんが、例えば、クロコダイルというメニューがあって、それはほふく前進のような動きになるので、筋トレの要素もあり、身体を作る動きになります。あとは、どのメニューもキツいので、それに耐えるというメンタルも鍛えられるのかなと思います。

④200320_s5558.jpg

――実際に動物になった気持ちになってやるんですか?

そこまで意識できているかは分からないですけどね(笑)。ただ、これが直接ラグビーに繋がるのかは分からないです。どこかに繋がる部分があるだろうと思ってやっていて、ZUUをやっていればラグビーが上手くなるとは思っていないです。

――いままで通りではなく、何かを変えるという部分についてはどうですか?

何かを変えるという部分で、これまでと同じことをやるよりかは良いかなと思っています。タックル練習以外で、その課題を克服できる方法を見つけられればと思っています。

――ZUUのトレーニングは、2020シーズンが始まる前から取り組んでいたんですか?

そうですね。オフ期間中からやり始めて、シーズン中はやっていなかったんですが、課題に対して何かを変えなければという想いであったり、若井さん(正樹/ヘッドS&Cコーチ)から声を掛けてもらったということもあり、再度取り組み始めました。

――これからも続けようと思っていますか?

そうですね。これからも続けていこうと思っています。それによって何かが変われば良いかなと思います。プレーやメンタルが野性的になっていくかなと(笑)。

⑤200103_5953.jpg

◆落ち込んでいても仕方ない

――メンタルについては、いまどう感じていますか?

ムラなく出来ているとは思います。

――ムラがないというのは良い状態ですよね

そうですね。浮き沈みが激しかったシーズンもありましたが、一喜一憂しない状態で出来ていると思います。

――どういう経験によって、そうなったんですか?

落ち込んでいても仕方ないと思い始めましたね。落ち込んでいても何かが良くなることはないので、そういう考えになってからですかね。僕も8年目になりましたし、もうラグビーを出来る年月も限られてきていると思うので、落ち込んでいたんじゃ時間を無駄にしてしまいますからね。

――いつ頃からそういう気持ちになったんですか?

ここ1、2年ですかね。

――これからのラグビー人生で、ぜひやりたいこととはどんなことですか?

やっぱり試合に出ることですね。試合に出られている時と出られていない時で、毎日の楽しさが全然変わってきますし、試合に出られている時は練習も楽しいですね。やっぱり試合に出ないと面白くないなって思います。

――試合に出るために気を付けていることは何ですか?

試合で見つかった課題、僕で言えばタックルがちゃんと出来るというところを見せていかなければ、信頼は得られないと思います。そこは絶対にクリアにしなければ、試合に出られないと思います。

⑥200201_08913.jpg

◆試合に向けて取り組むことが楽しい

――長所を伸ばすことと短所をなくすことのバランスはどう考えていますか?

今は弱点を改善することに重きを置いて、やっていかないといけないと思っています。

――いつまでにディフェンスを改善したいと思っていますか?

練習でダミーにばかりタックルしていても絶対に感覚とかは分からないですし、試合のシチュエーションに慣れていかなければいけないと思うので、練習試合でどんどんやっていって、次の開幕までには完璧な状態にしたいですね。

⑦200122_0487.jpg

――では、今の時期はやりたくても我慢という感じですか?

そうですね。いまはあまりトレーニングも出来ていないので、チームの活動が再開したら、本格的にやっていこうと思います。

――大きな課題がある中で、改めていま感じるラグビーの面白さは何ですか?

難しい質問ですね(笑)。やっぱり試合に出て、試合中であったり普段の生活から試合に向けて「ああでもない、こうでもない」と取り組むことが楽しいですかね。だから、2019年のカップ戦の時は楽しかったですよね。試合に出ていたということもありますし、それが面白さなんじゃないですかね。ラグビーだけの面白さじゃないかもしれないですけど(笑)。

――次のシーズンに向けての目標とポイントは?

これからもまた新たなメンバーなども入ってくると思うので、そこの競争にひとつひとつ勝っていけるよう頑張りたいと思います。そのためには、小さいことでも負けないことです。ウエイトの数値でもスピードでもフィットネスでも、ひとつひとつ勝負していって、それを積み重ねていくことが大事だと思います。

⑧190618_7181.jpg

(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

一覧へ