SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2020年4月17日

#684 小林 航 『世界が変わった』

世界が変わったから自分が変わったのか?自分が変わったから世界が変わったのか?今年を「飛躍の年」と宣言する小林航選手に、その心境を聞きました。(取材日:2020年3月中旬)

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◆今シーズンはチャンスがある

――トップリーグ2020で6試合中3試合出場、状態はどうですか?

状態は良いんですが、開幕の東芝戦で負けてしまい残念な結果でした。相手にボールを持たれている時間が長かったということもありますが、個人としての強みをあまり出せませんでした。開幕戦の先発に選ばれて良い形で入れたと思いますが、その試合で自分の強みを出せず、第2節、第3節とメンバーに入れなかったので、そういうところでチャンスをしっかりと掴まなければいけないと感じました。

――開幕戦のメンバーに入る自信はありましたか?

練習をしていて、今シーズンはチャンスがあると思っていたので、まずは開幕戦のメンバーに選ばれることをターゲットに取り組んでいました。正直、ラインアウトのスキルの面で自信があったので、今シーズンはいけるという想いがありました。

――開幕戦で満足できなかったところはどこでしたか?

ラインアウトでは相手にプレッシャーを掛けることが出来たので良かったと思いますが、フィールドプレーのところで、ボールキャリーが全然出来ませんでした。試合が終わって、タイ(マクアイザックFWコーチ)やアオさん(青木佑輔スクラムコーチ)と映像を見ながらレビューをした時に、ボールキャリーでの貢献度、ブレイクダウンの精度のところであまり良いパフォーマンスを出せていませんでした。

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――開幕戦後、その課題に取り組んだんですか?

ボールキャリーに関しては自信があるんですが、開幕戦では自分でも消極的だったと思ったので、練習から積極的にボールをもらうように意識しました。ブレイクダウンについても意識の問題なので、日々の練習の中で、しっかりと試合をイメージしながら取り組んでいます。

――具体的にはどう意識したんですか?

ラックに入った時に前を見ていないことがあったり、絡んできた相手をしっかりと倒すとか、そういった基本的なことを改めて意識するようにしました。ブレイクダウンで絡んできた相手を倒したら、しっかりと前を向いて強い城を作って、相手がカウンターラックでプレッシャーを掛けてきてもボールをしっかりと守るようなイメージです。

――第4節ではまたメンバーに入りましたね

NEC戦でまたチャンスをいただけたので、積極的なプレーを心がけて臨み、個人的には良い感触を得られました。そこからまた少しずつ信頼を勝ち取っていったという感じだと思います。

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◆克服するしかない

――現時点での課題は何ですか?

先発を争っているのが、サベジ(トム・サベッジ)とスラッツ(ジョー・ラタ)で、何度もタイと話をしているんですが、タイプ的にスラッツと比較されていると感じています。お互いにラインアウトのコーラーをやっていますし、ラインアウトを引っ張っているのですが、タイからはスラッツとの差はほとんどないと言われています。ただ、実際に神戸製鋼やトヨタ自動車など上位チームとの試合に出ているのはスラッツなので、ファースト・チョイスではまだスラッツに負けていると思っています。まずはファースト・チョイスになれるように信頼を築き上げることだと思います。

――自分自身としてはラタ選手と比較して、どう感じていますか?

スラッツはタックルとか、フィールドプレーでハードワークしているので、そういう面では劣っていると思います。ボールキャリーやラインアウトディフェンスの部分では負けていないと思っているので、僕の強みのところをしっかりと出して、ディフェンスでもスラッツを超えられるようにしていきたいと思っています。

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――もともとディフェンスは得意な方ですか?

正直、あまり得意ではないですね。大学の時もボールキャリーは得意だけど、ディフェンスはあまり得意な方ではなくて、剛さん(有賀BKコーチ)からも「もっとディフェンスの精度を上げないと継続して試合に出られないよ」と言われていて、全体練習後に剛さんからディフェンスの仕方を指導してもらい、まだまだ完ぺきではないですが、ちょっとずつ良くなってきていると思います。

――ディフェンスについて指導された中で、面白いと思ったところなどはありましたか?

やっぱりディフェンスって難しくて(笑)、タックルでは相手の近くに踏み込んで肩を当てることを意識しているんですが、ステップを切られると足が止まってしまって、手で止めようとして抜かれることがあるんです。

――それを改善するために、どういうトレーニングをしているんですか?

シンプルに1対1をやって、相手がステップを切った方向に足を反応させることをやっています。まだ上達している実感はありませんが(笑)、繰り返しやることで意識できるようにはなっていると思います。どうしても抜かれるのが怖くて詰め切れないところがあるので、「怖がらずに詰めろ」と指摘されています。まだまだ基本的な部分で成長の余地があると思います。

――克服はできそうですか?

克服するしかないですね。

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◆引っ張る立場になった

――プライベートでは何か変化はありましたか?

僕はもともと引っ張るというよりは引っ張られるタイプだったんですが、4年目になって後輩が増えてきた中で、3年目の終わりくらいから、「いつまでも引っ張られていてはいけないな」と思うようになりました。ロックも真壁さん、ジャンボさん(仲村慎祐)、テラさん(寺田大樹)と、先輩が一気に3人も引退されて、僕が今、4年目にしてロックの中で日本人最年長なんです。なので、自ずと僕が引っ張らないといけないんです。辻とかが入ってきてラインアウトのことを教える立場になって、飯野にも広人(加藤)にも教える立場になって、引っ張る立場になったことで個人としても成長できたと思います。

――周りを引っ張ることは面白いですか?

そうですね。ラインアウトの技術に関しては、正直、自信があるので、後輩たちを引っ張っていくと、自ずとフォワードの中での信頼度も上がってきて、「ラインアウトに関してはコバ(小林)に聞け」という雰囲気になっていますし、グラウンドでのハドルでも僕の話に耳を傾けようというふうになってきました。今まで引っ張ることが苦手でしたが、世界が変わったような感じがします。大学の時も、キャプテンが駿太(中村)で、フォワードリーダーに同期の東和樹がいて、その2人の言うことを聞いてやっていましたが、引っ張る側の立場になって成長を感じています。

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――引っ張る立場になって大変なことは?

大変さは特にないんですが、伝え方は難しいですね。伝え方を考えるようになって、よりラインアウトのことを考えるようになったので、ラインアウトの技術も上がっていると思います。今までは自分が動いている映像やジャンプしている映像を見て、「ここを直さなければいけない」という見方をしていたんですが、今は全体像を見て「この動きがダメだよね」って考えられるようになりました。トップリーグカップ2019の前あたりから、この1年でラインアウトの技術の面でも知識の面でも、すごく成長した気がします。

――そういう経験も自信を深めている要因ですね

1年目の時に比べると自信がつきました。1年目の時から敬介さん(沢木/前監督・現サンウルブズコーチングコーディネーター)にミーティングで「もっと自信を持て」と言われて、僕の中では自信を持っているつもりだったんですが、なぜかみんなからもそう言われていました。自信がない感じも出していなかったので、何が違うんだろうとずっと思っていました。抽象的な話なので上手く説明できないんですが、ラインアウトに関して引っ張っていくことによって、「ラインアウトは俺だ」と勝手に自信を持つようになっていった感じがします。僕以外の選手やコーチを含めた全体がそこまでなっているかは分からないですけど、本当に自信はつきました。

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◆飛躍の年

――インタビューをしていても、今までよりも自信を感じます

チームから求められていることを日々のミーティングで言われるので、求められていることに対して、やらなければいけないことが明確になっています。自分自身の足りない部分を指摘されることもありますし、良かった部分もしっかりとフィードバックしてくれるので、そういうところが自信に繋がっているんだと思います。

――先行きが見えにくい状況ではありますが、今シーズンの目標は?

チームとしての目標は神戸製鋼に勝って優勝することです。今後、試合がどうなるか分かりませんが、個人としては残りの試合にもしっかりとスタメンで出て、先に進めるようにしたいと思います。

――その先にはどんなことがありますか?

サンゴリアスで先発で出場し優勝して、次のステップとして日本代表があると思うので、そこを目指したいです。

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――そうなるためのキーワードなどありますか?

今シーズンは飛躍の年にしたいと思っていました。飛躍の年と思って臨んだんですが、開幕戦でこけてしまったので(笑)、チャンスがあれば東芝にもリベンジしたいですね。新型コロナウイルスの影響もあり試合が出来ませんが、三菱重工戦やヤマハ戦などでチャンスがあったので、そこでしっかりとアピールしてやろうと思っていました。試合をしたくでも出来なくて、先も見えない状況なので、なんだかムズムズした感じです。

――試合が出来るようになったら爆発させたいですね

個人としてもチームとしても、再開した時の1戦目ってとても重要だと思います。開幕戦から第6節日野戦まで、負けた試合もありましたがちょっとずつ良くなってきていて、この中断期間にその流れを崩してしまうと、そのままシーズン終了まで引きずってしまうと思うので、ここでしっかりと上げ直して、残りの試合に挑みたいと思います。

年齢的にも飛躍の年にしないといけないと思っています。今年26歳になりましたが、チーム全体として若い選手が増えてきていて、チーム内での存在価値を高めなければいけない時期だと思いますし、チームに良い影響を与えられる選手が必要とされていると思うので、そういう選手になっていきたいと思います。まだまだラグビーを続けていきたいですし、僕としてもまだまだ日本代表になるチャンスがあると思っています。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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