2020年4月 3日
#682 梶村 祐介 『オーストラリア代表2人からポジションを絶対に奪う』
1年目に期待に応える活躍をし、2年目への期待がさらに高まっている梶村祐介選手。今シーズンの目標を聞きました。(取材日:2020年3月上旬)
◆あとは精度
――トップリーグ第6節までを振り返って今の調子は?
第6節までで先発が2試合、リザーブが2試合でしたが、状態としては悪くはありません。サントリーの一員として試合に出るのは1年目のシーズン以来で、久しぶりにトップリーグで戦っています。1年目の時とは少し違う心境で試合に臨んでいるというか、あの時はただ言われていることをやらなければいけないという感覚でしたが、今は自分の中で出来ることも増えてきて、自信を持って臨めていると思います。
――例えば、言われていることだけじゃないとは、どういうことですか?
例えば、キックのオプションだったり、パスだったり、フォワードのコントロールだったり、徐々に出来ることが増えてるので、その感触は試合でも良いですし、練習でも自信を積み重ねられているので、心も身体も良い状態です。
――では、やっていて面白いんじゃないですか?
そうですね。だからもっと試合に出たいですし、スタートから試合を経験したいと思っています。センターの選手も多いですし、ずっとスタートから出場することは難しいとは思っています。今のファースト・オプションとして、ギッツ(マット・ギタウ)とサム(ケレビ)がいるということで、僕としてもチームを見てそう思いますし、シーズン終盤にその12番、13番を入れ替えられたら良いなと思っています。
――どこが良くなってきていて、どこが強みになってきていますか?
1年目のこのインタビューで引き出しを増やしたいという話をしたんですが、実際に1年目ではそれが出来ずに、ボールキャリーという自分の一番の強みだけを見せようという状態でした。今はボールをもらった時に、パスもあるしキックもあるしキャリーもあって、自分でその時の状況で一番良い選択をしようということが出来ています。この感覚は昨シーズンの自分にはなかったことですし、そういう意志を持ってプレーが出来ています。
――日本代表として活動したり、ワールドカップがあった影響もあるんでしょうか?
ワールドカップの最終選考で日本代表から漏れてしまったので、正直、ワールドカップを素直な気持ちで見られなかったということはありました。でも、それまでの日本代表の合宿であったり、その中いちばん近くで亮土さん(中村)やラファエレ(ティモシー/神戸製鋼)を見てきたので、彼らがチームから求められていることをワールドカップという舞台でしっかりと表現していましたし、その表現していた部分が僕の足りない部分でもありました。
それがキックやパスのスキルの部分、ディフェンスの部分、あらゆる局面でいちばん良いオプションを選択するまでの準備などです。今はそれをやろうとする意志が自分にあるので、あとは精度が伴ってくれば、彼らとも勝負が出来るんじゃないかなと思っています。
◆12番としての理想形
――チームに外国人の素晴らしいトップ選手がいる中で、どうすればポジション争いに勝てると思いますか?
例えば、サム・ケレビだと、圧倒的なボールキャリー、オフロードパスのスキルを持っていて、僕としてはそこは勝負をするポイントではないと思っています。僕としてもボールキャリーは強みなんですが、あれだけ色々な局面を打開できることが彼の強みですし、あのような選手はあまりいないと思います。それよりは、僕はまだプレッシャーがかかった場面で選択を間違えてしまうような選手なので、ギッツみたいにどのような局面でも選択を間違えない選手、12番として落ち着きがある選手になりたいと思っています。
ギッツは元々12番の選手ですが、10番を経験したことで、サントリーの12番として何をすべきかを理解しています。尚且つ、特にキャリーが強いという選手ではないですが、全てをコントロール出来る、そのことはラグビーを知らない人が見ても分かるくらいのレベルの選手だと思っています。それに自分で行きながらも周りを活かすプレーが出来るので、あの形が12番としての理想形だと思っています。他にも12番にはタロウさん(竹本竜太郎)や亮土さんなど、色々な強みを持った選手がいますが、ギッツのプレーを見ていると、あれが12番としての一番の理想なのかなと思います。
――普段からギタウ選手には色々と聞いたりしているんですか?
もちろん色々と聞きますが、ギッツが12番でプレーするようになり、強力なライバルがまだ1人増えたので、変に気を遣わずに勝負しに行っています。
◆任されたポジションでやり切りたい
――梶村選手は見た目や雰囲気がまさに"ラグビー"という感じですね
元々、僕はフォワードを経験していますし、色々なポジションもやってきて、1年目はボールキャリーが強みと言われ、それに特化してやってきましたが、そこの面白さはありませんでした。ラグビーはボールキャリーだけじゃなく、パスもキックも出来るスポーツで、今はある程度、自由な選択を任せられていて、色々なスキルを披露できているので、やっぱり楽しいですね。
昨シーズンまではラグビーをしているというよりも、ボールキャリーをしているような感じで(笑)、キャリーが良ければ自分の中でも良かったですし、キャリーが悪ければ良くなかったと思っていたんですが、今はトータルで自分を評価できるようになったので、キャリーがあまり良くなくても他にカバー出来ることもあり、"ラグビーやっている"と感じますね。
――目指している姿のどの辺まで来ていると思いますか?
自分がなりたい形は見えてきていて、そこがゴールだとすれば、60~70%は来ているんじゃないかなと思っています。ただ、この残り30~40%の部分が、より精度を高めていかなければいけない部分なので時間はかかると思っています。これから色々なことを経験して、試合の中で学んでいくしかないと思います。
いま日本代表で活躍している選手も、最初から上手くいっている選手はいなかったと思います。亮土さんも山中さん(神戸製鋼)も色々な苦労をしたから、ワールドカップでの活躍があったと思います。そういうことも知っているんですが、ただ僕はすぐに結果を求めるタイプで、いずれ良くなるだろうとは思いたくないんです。今が良くなるために、一番近くに良いお手本がいるので、学ぶだけじゃなくて彼らからしっかりとレギュラーポジションを勝ち取りたいです。今は12番にこだわっているわけではないので、12番でも13番でも任せられたポジションで、しっかりとやり切りたいと思っています。
◆感覚だけでは難しい
――スキル面だけじゃなく、器用なタイプだと思いますか?
言われたことは出来るんですが、それを深く理解するまでに時間がかかりますね。出来たとしても理解をしていないと深みは出ないと思うので、そこが足りていないところかなと思っています。
――なぜ深みが大切だと思うんですか?
僕の勝手な想いかもしれませんが、僕は感覚でやっているタイプなんですよ。サントリーには考えて行動する選手が多いので、ベテランや中堅の選手と比べると、僕はまだまだだと思いますね。これまで中学、高校、大学と、最初からチームの核になれるようなところでやってきたので、僕に意見を言ってくれる選手が、あまり周りにおらず、僕が思っていることを周りに伝えることが多かったんです。
サントリーは核になってきた選手が多いですし、日本代表に選ばれている選手が多いので、色々な知識を持っている選手が多くいます。ですから、色々な選手の考え方や取り組み方など、そういうところを学んでいくことが近道なのかなと思っています。このまま感覚だけでもやっていけないことはないんでしょうが、このチームでしっかりとポジションを取るためには、感覚だけでは難しいと思います。
――それが日本代表にも通じるということですね
そう思っています。実際に僕がなぜ日本代表に選ばれなかったかと言うと、ミーティングで指摘をされても上手く答えられませんでしたし、落ちるべくして落ちたと思います。いまサントリーでもレギュラーを取れていないというのも、そういうところが影響していると思います。自分では分かっているんですが、なかなかすぐには改善できない部分でもあるので、試行錯誤しながらやっています。
――改めて、今シーズンの目標は?
チームとしてはもちろん日本一ですし、ディフェンスで日本一になるというチームのターゲットもあります。個人としては今チームにいるオーストラリア代表2人から、ポジションを絶対に奪うことをターゲットにしています。他にも日本人選手がいますし、試合に出られる確証は誰にもないと思いますが、あの2人からポジションを絶対に奪うと決めています。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]