2020年4月 1日
#681 北出 卓也 『優勝する時には絶対に試合に出たい』
ワールドカップ日本代表の活動を終えて、いざトップリーグ開幕というところでなかなか登場しなかった北出卓也選手。どんなことがあって、いまどんな状態なのか、その状況を聞いてみました。(取材日:2020年3月上旬)
◆焦りました
――トップリーグが始まって第3節からメンバーに入りましたね
シーズンが始まる前に力が入らなくなって、診察してもらっても原因がよく分からなかったんですが、ちょっとずつ力が入るようになって、そういうのがあって少しスタートが遅れてしまいました。復帰戦が第3節の神戸製鋼戦で、そこからちょっとずつコンディションも上がってきてはいますが、まだ自分のイメージにプレーが追いついていない感じはあります。
――回復するまでの心境はどうでしたか?
最初はめちゃくちゃ焦りました。本当に急で、ワールドカップが終わって1週間休んで、トレーニングを始めようと思ったら力が入らなかったんですから。大学に挨拶に行った時に、「ラインアウトを教えてくれ」と言われてスローを投げたら5mも投げられなかったんです。本当に焦りましたね。しばらくして徐々に力が戻ってきている感覚が出始めてからは、治りそうな気配がありましたし、そこからは吹っ切れました。
――どの辺りでイメージ通りのパフォーマンスが出せそうですか?
もうすぐ行けると思うので、あとは感覚的な部分と、自分がやるだけという感じだと思います。
◆理論的に考える時間
――今のモチベーションは?
ワールドカップで試合に出られなかった悔しさがあります。そして、その悔しさを晴らせるのは4年後だと思っています。でも、4年間その悔しさを持ち続けるということではなく、サントリーの体制も変わって、まずはこのチームで信頼を勝ち取ることだと思います。
サントリーには素晴らしいフッカーがたくさんいて、サントリーにいても日本代表にいるようなポジション争いが出来ると思うので、そういうところでレベルアップ出来ると思います。試合のメンバーを選ぶのは監督の仕事でコントロール出来ることではありませんが、そこにどれだけプレッシャーを掛けられるかだと思うので、選手としてはまずは自分のパフォーマンスをしっかりと出すことが大事だと思います。
――ポジション争いをしている中で、改めて感じる自分の強みは?
ラインアウトを武器だと思っていたんですが、力が入らなくなってからは少し感覚が違ってしまっています。自分の武器だと思っていたところで上手くいっていないので、今は試行錯誤しながらやっている感じです。
ラインアウトについては、これまで技術的な練習はしたことがなくて、ずっと感覚でやっていました。だから、力が入らなくなった時に、どうやって投げていたのか分からなくなったんです。今はタイ(マクアイザックFWコーチ)にアドバイスをしてもらいながら、少しずつ感覚を戻しています。
――今はまったく新しいラインアウトをしているという感覚でしょうか?
そうですね。ボールの持ち方とか考えたことがなかったので、不思議な感じです。ただ、そこで悩んでも仕方ないので、理論的に出来るように考える時間と捉えてやっています。上手くいった時といかなかった時で何が違うのかを考えたり、持ち方ひとつから始まって、いま色々と楽しんでいます。
――今まではほぼ上手くいっていたんですね
僕の中でラインアウトは全て感覚でしたね。アドバイスを求められた時に、「こうやった方が良いよ」ってものがあったんですが、そういうこともいちから試行錯誤している感じですね。
――新しいラインアウトはいつ頃完成しそうですか?
もう少しかかりそうですね。正直、自分でもこんな状態になったことに驚いています。
◆あとは技術
――ラインアウトが強みでもあり、今の最大の課題でもあるんですね
そうですね。あとはディフェンスの部分でもっとアピールしたいですし、僕の中では全部が出来る選手になりたいと思っているので、アタックはもっとレベルアップしなければいけないと思っています。まあ、全てレベルアップしなければいけませんが、スキル、パスの部分など特にもっとレベルアップしたいです。
――ラグビーにおいて、心・技・体それぞれが大事だと思いますが、今はどれが重要だと思いますか?
技術ですかね。最初は体が思うように動かなくて不安などもあり、そこがブレてしまっていたんですが、そこは良くなってきたので、あとは技術の部分かなと思っています。
――心はあまりブレるイメージがありませんね
あまりないですね。今回は予想だにしていなくて、「ワールドカップ出れへんかったから頑張ろう」ってトレーニングをしようと思ったら力が入らなかったので、めちゃくちゃ落ち込みました。
――何かが生まれ変わるタイミングなんですかね
今がいちばんラグビーの細かなところまで考えられていますし、ポジティブなメンタルで取り組めています。
◆どうやって自分の強みを上乗せするか
――外国人選手が増え、チームとしても選手の数が増えていて、どのポジションも争いが激しくなっていますよね
どのポジションも楽して試合に出られるポジションはないですし、選手層の厚さはトップリーグのチームの中でもトップの方なんじゃないかなと思います。トップリーグの最初の頃は少し空回りしている試合もありましたが、自分たちのラグビーに自信を持って出来た時は良いラグビーが出来ていますし、自分たちのラグビーが出来れば良い結果が出るという自信もついてきていると思います。
――今までと比べて、自分たちのラグビーがより明快になっているんですか?
今までもしっかりとしたプランがあって、いちばん大事なアグレッシブ・アタッキング・ラグビーという部分は変わっていませんが、それをどうするかという部分が変わったので、そこがチームとしてやっとまとまってきたと思います。やっている側としても分かりやすくて、1人がサボればシステムが成り立たなくなるので、明確になった分、ひとりひとりの責任がはっきりしたと思います。
――具体的に言うと、どういうやり方なんですか?
そのポジションに立っていなければいけない人が決まっているので、そこにその人がいなければサボったということです。
――やらなければいけないことが明確で、それをやらなければ激しいポジション争いにも勝てないということですか?
まず大前提として自分の役割を分かっていなければいけませんし、そこでどういうスキルを発揮するのかということが求められていると思います。そこが最低限のベースで、そこにどうやって自分の強みを上乗せするかになります。
――そこに面白さがありそうですね
そうですね。今は選手とスタッフが一緒になって話し合って、どういうラグビーをやるかを考えているので、選手にも責任が伴いますし、一緒になって作り上げている感じですね。
スペースを攻めるラグビーをしていて、自分たちの形が出来ていれば、絶対にどこかにスペースが生まれていて、そこをしっかりと攻められた時は面白いですね。あとは、タックルとか自分の細かなスキルを出せた時は楽しいですね。
――改めて、今シーズンの目標は?
個人としては、このチームでしっかりと信頼される選手になることです。チームとしては優勝が目標なので、優勝する時には絶対に試合に出ていたいです。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]