SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2020年3月13日

#679 尾﨑 晟也 『シーズンMVPを狙いたい』

1年目から期待に応えて活躍した尾﨑晟也選手。2年目の今シーズン、より一層活躍するために、何をテーマにどこを目指しているのでしょうか。リーグ戦が延期される中、ゆっくりと話を聞きました。(取材日:2020年2月下旬)

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◆冷静なプレーの中に気持ちを乗せる

――第6節日野戦のパフォーマンスについてはどうでしたか?

開幕戦で怪我をしてしまい4試合欠場することになったんですが、その間のチームの状態はすごく良くて、焦りというか「早くラグビーがやりたい」という想いを強く持っていました。その想いを復帰戦で出そうと臨んだ試合でした。復帰戦の出来としてはまあまあ良かったんじゃないかなと思っています。

――想いが強すぎると空回りする場合もありますが、どうコントロールしたんですか?

気持ちの部分はすごく燃えていたんですけど、プレーに関しては冷静に出来たと思いますし、冷静なプレーの中にしっかりと気持ちを乗せるというコントロールの部分が上手くいったと思います。自分自身、プレー中に感情を出したりするスタイルではないんですが、やってやろうという気持ちは常に持ってプレーしています。周りからは淡々とプレーしているように見られるんですが、そういう時は気合が入っていると思って見てもらえればと思います。

――淡々とプレーしているように見せているんですか?

ゲーム中はあまり一喜一憂しないようにしていて、もちろん大舞台でトライをしたり嬉しい時には感情が出たりしますが、ひとつひとつのプレーで浮き沈みがあったりすると、試合中のプレーに影響が出たりするので、冷静にということを心掛けてプレーしています。

――そういうことを心掛けるようになったきっかけはあるんですか?

帝京大学に入ってからの教えが、自分の中で大きかったと思います。自分の経験上、高校2年生の時の全国大会で大きな失敗をして、それ以降ずっと落ち込んだままプレーして上手くいかなかったことがありました。それを踏まえて大学に入って、上手くいかないこともたくさんありましたが、練習中に失敗した時はとことん自分を追及しますが、試合中は一喜一憂しない、試合中は気にせずに試合が終わってからレビューするということを教えられました。そういったところを4年間を通して学びました。

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◆忘れられない試合

――高校2年生の時のミスは、どんなミスだったんですか?

僕が2年生でパナソニックの松田力也さんが主将で、その大会で優勝した常翔学園とのベスト4を賭けた試合だったんですが、ラストパスを僕がキャッチ出来ず、そこでトライが出来ていれば勝ちに繋がるような状況でした。そこからずっと試合中も沈んでしまって、プレーも上手くいかなくなってしまいました。自分の中ですごく気にしていましたし、今でも忘れられない試合のひとつです。大学に入ってからは、大きなミスをした記憶はないんですが、そういう教えを学ぶことが出来て、自然と身についていったんだと思います。

――今シーズンの開幕戦に出場したことについては、どうですか?

開幕戦に出場することは毎年毎年の目標でもありますし、チームとしてそこにベストメンバーを持ってきているという意味では開幕戦に出るということは大きな意味を持つので、そこに出られたということは自信にもなりました。良かったこととは思うんですが、自分の中では試合の内容はあまり良くなかったと思います。

――開幕戦ではノックオンもありましたね

プレーをしていて手の感覚がありませんでした。ノックオンは自分のミスであり、あまり言い訳はしたくありませんが、交替して初めて怪我をしていることに気づきました。

――その怪我からの復帰が早かったですね

もちろんメディカルチームにサポートをしてもらったということもありますし、徹底したリハビリと安静、あと意識して食事を摂るようにしました。開幕戦以降、なかなか試合に出ていなかったので、知り合いからは心配する連絡とかもあったんですが、怪我をしているって言うのがなんかかっこ悪いなって思って、モヤモヤする思いと葛藤していました(笑)。

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◆コミュニケーションが一番大事

――日野戦でプレーしてみての課題は?

アタック面は自分の中でも良かったと思いますし、ディフェンス面であまりタックルに行くシチュエーションもなかったので、試合中での課題はあまりありませんでした。今後の課題としては、これまでもずっと課題にしてきたことではありますが、ディフェンスで目立つ選手にならないといけないと思っていますし、ウイングやフルバックでプレーをしていると1対1の場面や、自分が抜かれるとトライまで行かれるというような場面になるので、そこでしっかりと止められる選手になりたいと思っています。

バックスリーのディフェンスって、タックルだけじゃなくて、ディフェンスラインの統率であったり、タックルに行くまでのコントロールがすごく難しくて、特にいまチームでやっているラグビーでのディフェンスではバックスリーが重要になっています。いま相手に詰めるかどうかの判断のところを課題にしています。

それから色々な選手がいるので、選手によってコミュニケーションの取り方やタイミングが違ったりするので、そこをコントロールする力をもっと身につけたいと思っています。思いっきり詰めるところは詰める、我慢するところは我慢するという判断力を上げて、完璧なディフェンスを作り上げていきたいと思っています。

――どうすれば出来るイメージですか?

バックスリーって、ディフェンスラインが見えますし、相手のアタックラインも見えるので、外から見えている分、他のポジションの選手よりも自分が持っているイメージが一番強いと思うんです。そこで如何に内側の選手と共有できるかが大事になってくるので、その鍵としては、基本的なことなんですが、コミュニケーションが一番大事になります。

あとは自分と横の選手、そしてウイングとフルバックの繋がりがすごく大事で、相手が数的有利の状況で自分が一番最後であっても、勝手に詰めてしまうと相手が1枚余ってしまいますし、内側の選手が前に詰められる状況であれば内側に寄ってあげるコミュニケーションを取ること、そういうところが難しいですね。

これらについては練習中から徐々にコミュニケーションが取れるようになってきて、自分のイメージを内側の選手に伝えて上手くいくディフェンスが出来ているので、自分の中でもレベルが上がっていると実感しています。コミュニケーションの質と速さをもっと徹底して追及してくこと、あとそれを行うためには、自分自身が如何に今の状況を早く理解するかが大事だと思うので、前を見る力であったり、味方の人数の把握力、視野の広さが大事だと思っています。

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◆合わせることが大事

――例えば、どんなコミュニケーションを取っているんですか?

チームで決めたディフェンスのコールがあるので、僕らはそれを瞬時に判断して発しています。今の状況、周りの味方の特徴、相手選手の特徴などを把握した上で判断しなければいけませんが、練習中から同じ選手とやっているので、味方の特徴はお互いに理解していますし、練習中から「今はどうだった、ここはこうして欲しい」というコミュニケーションは取れています。そういう微調整をしながら、ディフェンスは整っていくと思っています。

ディフェンスはやっぱりコミュニケーションの質と練習量だと思うので、一気に上手くなることは難しいと思います。いま何回も繰り返しやっているところで、徐々に良くなってきているので、逆に言えば、ディフェンスが上手くいっている時は楽しいですし、自分がコントロール出来ていると感じるので、そこにやりがいや達成感があります。

――練習で話したことや選手の特徴などを、何かに記録しているんですか?

いや、頭の中に記憶しています。選手によって特徴が違いますし癖があって、例えば、大志さん(村田)であればディフェンスで見ることの出来るエリアが広いですし、周りの選手によって自分の立ち位置などが変わってきます。またバックスやフォワードが入り乱れる時もあるので、周りの味方選手を把握することが必要になります。

例えば、隣が大志さんだったら、相手のどの選手までカバー出来るかなど細かいコミュニケーションを取ったりしていて、「この選手まで見て」とか、隣の選手と瞬時にコミュニケーションを取っています。ディフェンスの人数が揃っていれば、「上がれ、上がれ」って声を掛けますし、内側の選手が安心するような声掛けをすることが大事です。

コミュニケーションが少ないと内側の選手から「もっとコール欲しい。分かれへん」って要求されますし、そういうところは一番外側にいるウイングやフルバックの責任だと思います。内側の選手は前を見なければいけませんし、ボールも見なければいけないので、如何に安心してディフェンスをさせられるかが自分たちの役割です。そこを徹底してやりたいです。

もちろん相手のサインプレーもあって、そういうプレーで内側の選手が止まったら、それに対応するのが外側の選手なので、そこが一番難しいところでもあります。自分が思っている通りに行かなかった時には、内側の選手に合わせることが最優先になります。

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◆相手の目線を見ています

――アタックで面白いところはどこですか?

今は12番にギッツ(マット・ギタウ)が入ったり、他の選手でもタイプが違って色々な組み合わせがありますし、ボールが回ってきた時には自分の強みであるランニングを出すことが楽しみです。あと、サム(ケレビ)やウィル(チャンバー)はオフロードパスも上手いので、最近はそこを狙って走ったりしています。自分でボールを持って動くことはもちろん楽しいんですが、ボールを持っていない時にどう動くかというところも、最近は楽しいですね。

――具体的に、走りのどこが強みなんですか?

走りに行くまでの判断力、空いているスペースを瞬時に判断してそこに走ることが強みだと思っています。ヅルさん(中靏隆彰)のような足の速さはないので、判断力でスピードの差を埋めているという感じです。周りから見ている人には伝わりにくい部分だと思いますし、「なんで抜けるの?」って結構言われたりします。もちろんステップとかで相手を抜きますけど(笑)、判断力とかパッと見ての状況を把握する能力とかは長所だと思っています。

――その能力はどうやって鍛えるんですか?

そう言われると難しいですね。どう言えばいいのか分からないですが、練習や試合の積み重ねの中で、パッと見て「ここ行ける」って判断している感じです。

――それは昔からですか?

中学の時の練習で、よくタッチフットをしていたんですよ。あと1対1での抜き合いとかをよくやっていたので、そういうところから来ているのかなとは思います。よく分からないですけどね(笑)。

――例えば、ディフェンスに来た相手を見て、瞬時に相手の重心とかを見ていたりするんですか?

そうですね。あと、抜く前に相手の目線などを見ています。僕はタイミングで抜いたりするタイプなので、例えば静態していて、横の選手がちょっと動いたら、一瞬そっちに視線が行ったりするじゃないですか。その瞬間にズレたりして抜いていきます。あと、カウンターの時で言えば、瞬時に誰とまでは判断できないですが、パッと見た時にプロップの選手やフォワードの選手がどこにいるという把握はしますし、そこを狙って走ったりしています。

一度、自分にカメラをつけて試合中の映像を撮ってみたいですし、他の選手の目線の映像も見てみたいですよね。昔、テレビで海外のサッカー選手にカメラをつけて、どこを見てプレーしているかという空間認知能力についての放送をしていて、一瞬で誰がどこにいるかを把握していて面白いなって思いました。

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◆格闘技の要素を受けずに抜いた瞬間

――きっとバスケットボールとか得意そうですね

小学校の時に、京都で一番になるくらいのチームでミニバスをやっていました。バスケットをやっていたことがラグビーに活きていると思いますね。堀江さん(翔太/パナソニック)もバスケットをやっていて、自分自身でも視野が広いとおっしゃっていたので、バスケットとラグビーって共通するところがあって、バスケットをやっていて良かったと思います。

――バスケットボールの素質はどうでしたか?

自分で言うのも変ですが、小学生の時はまあまあ上手かったと思います。

――バスケットではなくラグビーを選んだ理由は?

もともと姉2人がバスケットをしていて、姉は全国に出るような強豪で高校までバスケットをやっていたんですが、小学校の時って週に1回、日曜日しかラグビースクールの練習がなくて、それ以外の日は、僕自身、暇していたんです。姉がやっていたミニバスは週3回練習をしていて、それを見に行ったりしていました。そのミニバスチームの監督とかに「やりなよ」って言われていて、小学4年生の終わりくらいからバスケットをやり始めました。

ただ、その時から既に、これからもラグビーをやっていくと思い描いていたので、バスケットは小学6年生までの期間だけと決めてやっていました。バスケットもすごく楽しくて、上手くなっていきましたけど、中学はラグビー部のある学校に行くと決めていました。

――他の競技と比べて、ラグビーの面白さは何ですか?

純粋に、格闘技と球技が混ざっているというところですかね。やっぱり痛いので、身体をぶつけるのが好きというわけではないんですけど(笑)。格闘技の要素がある中で、それを受けずに抜いた瞬間とか、自分自身、小さい頃から体が大きい方ではなかったので、そういうところに達成感があって、ずっと続けているんじゃないかなと思います。

あと、ラグビーを通して人間性であったり、2019年のラグビーワールドカップを見た方は感じたと思いますが、そういったラグビーの良さという部分に、自分もどんどん引き込まれていったんじゃないかなと思います。

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――ラグビー選手には身体をぶつけるのが好きという選手もいますよね

僕は全然違います(笑)。もちろんぶつけなければいけない状況では行きますし、ぶつけるのが嫌とか逃げるつもりもなく、「当たったら絶対に行ってやろう」という気持ちもあるんですが、極力当たりたくはないですね。アタックでは当たらずに抜けることが理想ですが、ディフェンスではぶつかりに行くという気持ちはあるので、その辺は矛盾していますけどね。

――今シーズン目指す姿はありますか?

普通のプレーなんですけど、普通じゃないなというところを見せたいですね。相手に抜かれないとかディフェンスラインが統率されているとか、そういう裏には、もちろん色々な選手の動きの役割はありますが、ウイングの選手のコールなどもあるので、そういうところにも注目してもらえたら、またラグビーの見方も変わるんじゃないかなと思っています。

――今シーズンの目標は?

チーム内の競争も激しいですし、例年以上にレギュラーポジションの確保は難しいと思うので、まずは1試合1試合レギュラーで出るということ、あとは何試合か欠場はしましたが、シーズンのMVPを狙いたいと思います。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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