2020年2月27日
#677 小澤 直輝 『チームがさらに大きなものになっていく楽しみ』
久しぶりのインタビューで相対した小澤直輝選手が、ワールドカップ前にインタビューした中村亮土選手の雰囲気に似ていることに気がつきました。落ち着きと自信。それがどこから生まれてきているのかを探るインタビューとなりました。(取材日:2020年2月中旬)
◆目の前のことをひとつずつ
――第5節トヨタ自動車戦ではマン・オブ・ザ・マッチに選ばれました。初受賞ですか?
いや、何度かあります。前回はいつのシーズンか忘れましたが近鉄戦で、その時はフッカーをやっていました。
――今回の出来は自分ではどうでしたか?
チームにボールキャリアーはたくさんいますし、相手はジャッカルプレーヤーが多いチームだったので、しっかりとブレイクダウンにフォーカスしようと考えプレーしていました。相手にターンオーバーを何度かされましたが、チームとしてもブレイクダウンの精度は高かったですし、相手よりも多くのターンオーバーが出来たと思います。
――久しぶりにサントリーらしいラグビーが出来たように感じますが、どこが良かったと思いますか?
何よりも試合までの準備が良かったと思います。チーム内で強度の高い練習が出来ましたし、ノンメンバーも強度高くトレーニングが出来ました。ノンメンバーが仮想で相手チームのアタックをした時に、ラインブレイクされることも多々あったくらいで、お互いにチャレンジし合った練習が出来たことが試合に繋がったと思います。
リーグ戦に入って初めて噛み合ったというわけではありませんが、試合前の確認でフワッとした状態になってしまった時もありました。トヨタ自動車戦の前の確認では、みんなが集中して試合に入っていけたので、そういうことも試合に影響したのかなと思います。
――トヨタ自動車戦のような内容で勝てたということは、今後の試合でも上手くいきそうですか?
それはもちろん自分たち次第だと思いますが、油断せずに目の前のことをひとつずつ皆でやっていけば、大丈夫だと思います。
――今シーズン積み上げてきたものが形になってきたということでしょうか?
みんなが自分の役割をしっかりと理解していますし、スタッフが提示してくれたプランを選手が納得してやり切っています。この時期になりましたが、毎試合良くなっていっているので、それがひとつの力になったのかなと思います。
――やりたかったラグビーが出来たんですね
そうですね。今までの試合の中ではトヨタ自動車戦は、やりたかったことが出来たと思います。
◆コンタクトやボールキャリーとターンオーバー
――自分自身の調子やコンディションはどうですか?
比較的、良いと思います。ピークを合わせたわけではありませんが、開幕からみんなが試合に出るために、個人としてもチームとしても準備をしていますし、選手を押し上げてくれるスタッフもいるので、そういうひとつひとつの積み重ねだと思います。
――第3節まで出ていなくて、第4節、第5節とメンバーに入りましたが、それについてはどうですか?
メンバーに入れなかった理由をコーチたちに聞きに行きましたし、それに対して、自分の何を押し出していけばいいのかをイメージ出来ていたので、求められている姿と自分のパフォーマンスが一致すれば良いだけと思っていました。
――具体的にどういうことをチームから求められていたんですか?
僕の強みであるコンタクトやボールキャリーのところと、ボールをターンオーバーしてくることを求められていたと思います。ボールキャリーを強みにしていましたが、外国人選手含めチームの中にボールキャリーが出来る選手はたくさんいるので、自分のターゲットを少しだけずらして、ボールをターンオーバーすることに意識を持っていきました。
――ずっとブレイクダウンをテーマにしてきたと思いますが、今はどういう感覚でブレイクダウンを捉えていますか?
狙えるところはしっかりと狙って取りに行けていると思います。相手が目の前に倒れてきて取りに行けることもありますが、その状況とは違い、「この状況なら取りに行ける」と自分から仕掛けていって、取りに行くことも出来るようになってきたと思います。
――次に起きるプレーのイメージ力が上がったんですか?
どちらかと言うと、いつがチャンスかが分かるようになってきたと思います。一瞬のことなので無意識で動いているところもあると思いますが、例えばボールが見えていたり、どこにボールがあるか、次のサポートの選手がどこにいるかとか、そういう状況でチャンスかどうかが分かります。
――その一瞬の判断力が上がったんですね
そうですね。4節と5節に出場でき、ひとつひとつ自信になっています。
◆ワークレートの高さ
――今の課題は何ですか?
4節の時よりも5節の方が、ボールキャリーになることが少なかったんです。5節はブレイクダウンにフォーカスしていたということもありますが、ボールキャリーも僕の良さだと思っているので、その良さを消さずにやっていきたいと思っています。
――ワークレートが高くなりますね
そうですね。ワークレートの高さも売りになります。ブレイクダウンもボールキャリーもどちらも自分らしさを出していきたいですが、まだまだ満足できるレベルではないかなと思います。外国人選手、日本人選手含めて、チーム内での競争が激しいので、誰がメンバーに入ってもおかしくはないと思います。みんな良いパフォーマンスを発揮しているので、全く油断できないですね。
――やっていて楽しいと思いますが、どこが楽しいですか?
監督も選手も変わって、ようやくチームとしてやりたいことがひとつの方向を向いてきているという時期だと思います。ここから試合を重ねてチームは絶対に良くなっていきますし、チームがさらに大きいものになっていくことが楽しみですね。その中で、自分の持ち味を出していきたいと思っています。
――これまでのチームと比べると、外国人選手が増えたと思いますが、それについてはスムーズにまとまりましたか?
自分からコミュニケーションを取ってくれる選手が多いので、コミュニケーションでの弊害はないと思います。あとはプロフェッショナルですし、そういう相手とのポジション争いをしていかなければいけないので、日本人バックローじゃなければ出来ないことを見つけなければいけないと思っています。僕が試合に出た時に、「日本人バックローじゃダメだな」と思われたくないので、そういった意味でも日本人のチャンスを潰したくないですし、これからもメンバーに入れるように自分の強みを出していきたいと思います。
◆無駄が削がれて落ち着いてきた
――今シーズンの目標は?
チームとしては、もちろんチャンピオンを目指していますが、いま2敗していて自力では厳しい状況なので、ここからは1試合も落とさないことが必要になります。全ての試合をしっかりと勝ち、チャンピオンになるチャンスを潰さないことが大事だと思います。個人としては、いまチャンスをもらえているので、しっかりと良いパフォーマンスを出し続けて試合に出続けることです。
――自分が選手として完成されていく楽しみもありますか?
自分が完成されていくというか、自分探しじゃないですけど、「この選手だったらこれが出来るよね」というような、そういうことを磨き上げていくことが楽しいんだと思います。その中で、ボールキャリーも楽しいんですが、今はブレイクダウンに楽しさが傾いてきていますね。
――これからの可能性も広がったんじゃないですか?
そうですね。楽しいですよ。派手じゃなくても、細かいところをしっかりと磨いていければ自分の良さが出るのかなと思っています。
――自信を得た落ち着きのようなものを感じます
確かに、落ち着いたかもしれないです(笑)。無駄なものが削がれて、良い意味で落ち着いてきたかもしれません。これまでの経験もあると思いますし、落ち着いたとしてもチャレンジすることは止めないので、選手としてはギラギラしていきたいと思います(笑)。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]