2020年2月14日
#675 飯野 晃司 『先発で出場したい』
未完の大器がようやくその存在をアピールし始めた感のある飯野晃司選手。リザーブから先発へさらに一歩成長するための課題は何でしょうか?現在から未来まで聞きました。(取材日:2020年2月上旬)
◆潤滑油的な役割
――ようやくトップリーグに出続けているという感じですね
カップ戦も含めて細かい怪我が多かったので、試合に出ているイメージがないのかもしれないですね(笑)。今は怪我がなく試合に出させてもらっています。今まで調子が良い時に些細な怪我をしてしまっていたので、スタッフ陣と話し合いながら、今シーズンはトップリーグに向けて上手く進めて来られたかなと思います。
――3シーズン目となりますが、これまでの経験が活きていますか?
怪我のケアについてはスタッフとコミュニケーションを取って、自分の要望も伝えながらやって来れましたし、試合にも出られているので、上手く出来たのかなと思います。トレーニングについては、自分の中で出来ている部分はだいぶありますが、まだまだやらなければいけないことはあるので、頑張るしかないと思っています。
――出来ている部分はどこですか?
外国人メンバーが多くなってきて、その中で自分の持ち味であるコミュニケーションをしっかりと取って、上手くチームの潤滑油的な役割が出来ていると思います。外国人選手に対しても日本人選手に対しても、それは上手く出来ているので、自分がやりたいこともスムーズに出来ているんだと思います。
――1年目の時からその役割を自覚していた印象がありますが
1年目の時は、どこかおんぶに抱っこじゃないですけど、自分のやることに必死で頑張るしかない状況でした。今から考えるとひとつのものに集中し過ぎていたと思います。今は、まだまだプレーで甘い部分はありますが、周りを見てコミュニケーションを取りながら、自分がやるべきことを明確に出来ていると思います。
◆やらなければいけない場面でしっかりと出来るかどうか
――トップリーグ第4節までを終え全試合に出場していますが、状態はどうですか?
状態は良いと思います。ただ、甘い部分であったり、細かいミスがまだたくさんあるので、これから修正していかなければいけないと思います。
――今の課題は何ですか?
大きな部分で言えば、最後の1つのディフェンスが甘かったり、パスミスが起きてしまっているので、そういう部分をなくしていかなければいけないと思います。スキルの問題もあると思いますが、自分の出来ることをやらなければいけない場面で、しっかりと出来るかどうかが課題かなと思います。
――マインドの部分が大きいんですか?
そうですね。リザーブが多いので、どういう状況で、どのポジションで出場することになっても対応できるように、しっかりと準備するようにしています。
――そうすると準備の量が多いですね
コーチ含め、メンバー、ノンメンバー全員としっかりとコミュニケーションを取って、何をしなければいけないのかという部分をしっかりと話すようになったと思います。
――先発から出場するためには、何が必要だと思いますか?
ラインアウトでの高さ含め、セットプレーの部分が足りないのかなと思います。パッと出来るものではないと思っているので、1つ1つのプレーに対して全力で取り組めば、先発も見えてくるのかなと思います。今はまだショーン(マクマーン)のような突破力も無いですし、航さん(小林)やスラッツ(ジョー・ラタ)のような高さも無いので、そこをどう自分なりにやるべきなのかを試行錯誤しながらやっています。
――高さはどう伸ばしていくんですか?
ラインアウトはサインのオプションでカバー出来ると思うので、日々コーチとコミュニケーションを取り、相手のラインアウトを見ながらどこを狙うべきかを考えています。そこでスペースを狙えば高さは関係なかったり、スピードで勝つとか、あるいは事前に1つコミュニケーションを取ることで、相手よりも一歩早く動けたりするので、そういう部分でカバーが出来るかなと思います。
◆自分に出来ることを探す
――以前と比べて落ち着きが出てきたように感じますが、自分ではどうですか?
前までは全部自分でやらなきゃと考えていましたが、それがなくなってきましたね。正直、無理なものは無理なので、そこは割り切って自分に出来ることを探すようになりました。自分に出来ることを事前の準備の段階で決めて臨むようにしています。
――今までよりもエネルギーが余っている感じですか?
自分のやるべきところで100%を出しているので、1つ1つの質は上がってきたと思います。
――そこにどうやって気づいたんですか?
試合を外で見ている機会が多かったので、1人1人のプレーで良いところをピックアップしつつ、「あ、こうしていれば」と自分に置き換えながらやっていたら、そうなっていったという感じです。
――自分と同じポジションの選手を見ている?
4番から8番までのバックファイブを中心に見ていました。例えば、ショーン・マクマーンで言えば、1つラインブレイクしたら、その後はちゃんと周りの状況を見て、勝手なプレーはしないで自分のポジションに戻るので、そういうプレーを1つ1つ見て学んでいきました。
◆あの場に立ちたかった
――海外のチームの試合も見ますか?
海外のチームの場合はラグビーを見るという感じなので、1つ1つのプレーを見る時にはトップリーグの前の試合であったり、他のチームの試合の映像を見たりします。先ほど言ったラインアウトでの高さの部分とか、試合の映像を見ながらどうするかを考えたりします。
――ラグビーワールドカップ2019はどう見ていましたか?
いちファンとして盛り上がりましたし、日本代表選手は普段からシンドイ練習をしてきたと話を聞いていたので、それが報われて良かったと思いました。選手という立場で言えば、あの場に立ちたかったと思いました。日本代表の試合を見ていて、自分に足りない部分がたくさんあったので、次の2023年に向けて、チャンスがないわけではなく、狙っていきたいと思っています。
――3大会前までは1勝しか出来なかった日本代表が、2015年、2019年と2大会合わせても2回しか負けませんでした。選手の立場から見て、そういう状況になったのはなぜだと思いますか?
僕の場合は3大会前、それ以前についてはまだラグビーを始めたばかりで、どういう状況だったか分かりませんが、2019年の日本代表はディシプリンの部分でペナルティーが少なかったですし、セットプレーも安定していたので、それはどういうラグビーでも根本的な部分だと思います。2015年大会でもセットプレーが安定していて、強いと言われた南アフリカのスクラムを押したりしていたので、セットプレーの安定とペナルティーが少ないということは、強いチームには必要な条件だと思います。
◆面白いところは人間関係
――サントリーの今のセットプレーについてはどうですか?
第4節NEC戦は上手くいかない部分がありましたが、スクラムでペナルティーが取れていますし、ラインアウトも高さがあってやるべきことが明確になっているので、良い状態になってきていると思います。ただ、モールのアタックがまだ上手くいっていなかったりするので、そこはもっとコミュニケーションを取りながらやっていかなければいけないと思います。
――いまやっていてラグビーの面白いところはどこですか?
難しい質問ですね。面白いところは人間関係ですかね(笑)。サントリーには良いお兄ちゃんも良い弟もたくさんいて、自分が言いたいことが言える環境ですし、そういう中で楽しくやらせてもらっています。先輩、後輩とかがないので、自然とコミュニケーションが生まれているんだと思います。サントリーに入った時から人間関係でゴタゴタしたことはありませんし、自然と出来ているところがあるのかなと思います。
――今シーズンの目標は?
もちろん優勝して、王座奪還です。4試合を終えて2勝2敗という状況ですが、やってきたことが悪くて負けているというわけではないので、そこをしっかりとポジティブに捉えてやっていきたいと思います。あと個人としては、やはり先発で出場したいので、そこを狙っていきたいと思います。ただ、先発で出られるかどうかはコーチ陣の判断もありますし、チーム全員でワンチームなので、どういう立場になろうが優勝目指してやっていきたいと思います。
――長期的な目標はありますか?
やはり日本代表に入りたいので、そこを目指します。ワールドカップがどういうものかは経験がないので分かりませんし、対海外という経験も多くはないので、まずは日本代表に選ばれて、海外のレベルを肌で感じたいと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]