2020年2月 7日
#674 祝原 涼介 『良い位置で組んでいる時は気持ちいい』
開幕戦でトップリーグデビューを果たした祝原涼介選手。期待の新人プロップは、いま何を考え何を目指しているのでしょうか?2つ目のキャップを獲得した翌週に心境を聞きました。(取材日:2020年2月上旬)
◆1番も3番も組めるようになってきた
――トップリーグ2020の開幕戦でサンゴリアスでの初キャップを獲得しましたね
入り方はどうであれ、ファースト・キャップを取ったことは嬉しかったです。ただ、結果としてチームは負けてしまったので、残念なデビューだったかなと思います。
――自分自身のパフォーマンスはどうでしたか?
出場時間は短いながらパフォーマンス的には良かったと思いますが、リザーブの役割は運動量であったりインパクトを残すことだと思うので、短い時間でも、もう少しインパクトを残せたら更に良かったかなと思います。
ディフェンスの部分では、開幕戦ではタックルに入ることはなかったんですが、あの時間帯だったので、チームのルールは守りつつアグレッシブにタックルに入りに行っても良かったかなと思っています。やろうという気持ちはあったんですが、そういう立ち位置にいられませんでした。短い時間ではやれることが限られてしまいますが、ラックファイトするとか、もう少し何かやれることがあったんじゃないかと思います。
――第2節、第3節とメンバーには入れませんでした
スクラムでチームが求めるレベルに達していないと思っているので、信頼であったり技術であったり、そういう部分が足りなかったかなと思っています。
――第4節ではまたメンバーに入りましたね
スクラムは沖縄合宿明けからだんだん良くなっていると実感していますし、今は1番も3番もやっている中で、ようやく両方とも組めるようになってきました。第4節NEC戦では、しっかりと押せる形ではなかったんですが、組めていたかなと実感していますし、翌日の東芝とのトレーニングマッチでも、1番に関してはしっかりと押せていた時もあったので、そういう意味では成長しているかなと思っています。シーズン中にもらえるチャンスは少ないと思いますが、その中でパフォーマンス的には出場時間が短い中で、開幕戦よりもインパクトは残せたかなと思います。
――NEC戦は途中出場、東芝戦は先発出場し、2日続けて試合に出場しましたが、体力的には大丈夫ですか?
NEC戦が大阪での試合だったので、その移動疲れは少しありましたが、東芝戦の前に疲労しているという感覚はなかったので気にならなかったですね。ただ、東芝戦では久しぶりに長い時間の出場となったので、その翌日に疲れが出ましたね。
開幕戦は8分くらい、第4節は15分くらいと他の選手に比べて、これまでの出場時間が短かったですし、試合をしたいというモチベーションが高かったので、2日続けての試合になりましたが、アピールする場が増えて良かったと思いました。
◆テクニカルは1番、3番はパワー
――試合をしたいという気持ちはどこから出てきているんですか?
試合でのパフォーマンスをコーチ陣は見ますし、ミルトン(ヘイグ監督)が「コーチを迷わせるくらいのインパクトを残し、セレクションという思いでプレーして欲しい」と言っていました。たくさん試合に出た方がアピールする場が増えるので、トップリーグに出場するために試合時間が欲しくて、そういうモチベーションでやりました。
――出場時間が長くなっても大丈夫なんですね
これまで体を大きくすることにフォーカスしてやっていて、1月のトレーニングマッチの時よりも2kgくらい増えています。これまで出場時間が短かったので、体重が増えていることがどう影響するかあまり分からなかったんですが、東芝戦では思ったよりも動けていましたし、パフォーマンスが特別良かったというわけではありませんが、出来ていたので、そこは良かったかなと思います。
東芝戦ではボールキャリーの回数が多かったですし、スクラムでは1番の時は良かったんですが、3番に入ったら押されてしまう場面もあったので、そういう面では良いところもあり良くないところもありました。全てが良いということはなかなかありませんが、少しのミスでもコーチ陣に悪い印象を与えてしまうと思っているので、タックルミスもありましたし、悪い印象を与えてしまったかなと、少し不安な部分もあります。
――スクラムで1番と3番では、3番が難しいんですか?
トップリーグカップ2019の時にはずっと3番をやっていたんですが、1番と3番は組み方が違うので、普段からやっていないと感覚が掴めないですし、今は3番の方が難しいですかね。
カップ戦は3番で、トップリーグが始まる前はずっと1番だったので、そういう状態の時に「いきなり3番を組んで」と言われると厳しいんですが、今は1番と3番を同時進行でやっているので、感覚的にはどちらも組めているかなと思っています。
――1番での面白さは?
1番は2番と3番を助ける役割があるので、自分から仕掛けることも大事ですが、しっかりとコネクションを合わせて、味方をサポートするイメージを持っています。
――3番の面白さは?
1番と2番に助けられての壁をしっかりと相手に伝えて、自分から前に出ていく、一緒になって出ていくというイメージです。
――どちらが楽しいですか?
どちらも楽しいですけど(笑)、体の両サイドに相手の1番と2番が入ってくるので、試合中の体への負担は3番の方が大きいかなと思います。コントロールであったり力のかけ方などテクニカル的なことは1番で、3番はパワーのある選手なのかなと。だから、1番も3番もそれぞれにやりがいがあります。
――2番も少し経験がありますよね
スローイングがそんなに得意ではないですし、そこまでやりたいとは思わないですね。
◆人によって変わる
――スクラムでは"押す"ということが魅力なんですか?
魅力ですし、そこが試合に出るための重要な鍵だと思います。元樹さん(須藤)くらい「この人だったらスクラムを任せられる」という信頼と力があれば必ず試合に出られると思うので、コーチ陣からの信頼を得るためにも、スクラムが強いというのがフロントローでは大事なところかなと思います。
――そのための課題は何ですか?
体を大きくしましたし、テクニカル的な部分はあると思うんですが、もっと細かな部分にもこだわってやっていかなければいけないと思います。例えば、肩の少しのズレでも2番の選手は絶対に違うと感じますし、毎回同じように組まないと良いスクラムは組めません。
――毎回同じ8人で組むわけではありませんし、相手もレフリーも違う状況の中で、毎回同じスクラムを組むためにどう工夫をしているんですか?
人によって変わるようにしています。例えば、2番が北出さんであれば、身長が近いので肩の位置が合いやすいですし、駿太さん(中村)だったら少し低くなってセットアップしたりと、意識的に変えています。練習の時から意識してやって、練習でダメだったら練習後に合わせてもらったり、合うまでやって試合に臨むようにしています。
――人が変わるごとに体で記憶した組み方が出てくる感覚ですか?
そうですね。だから合わせていないと、いくら良い選手でも良いスクラムは組めないですね。
――それを意識したのはいつ頃からですか?
社会人になってからですね。大学生の時は、技術も経験も少ないので、「こうして欲しい、ああして欲しい」ということは言いますが、細かいところまでは分からないので、お互いに「組めているし、これで良いと思う」という感じで組んでいました。
社会人になってからは、日本代表やトップリーグで何試合も出場している経験ある選手が周りにいるので、細かいところまで指摘してくれて、多くのことを学んでします。少し違うだけで「違う!」と言われるので(笑)、スクラム練習の時は常にセットアップのところから意識して取り組んでします。まだ毎回、同じスクラムを組めないので、練習後に色々な人を捕まえて、セットアップを合わせています。
――情報が多くてパンクしそうになりませんか?
社会人になって最初はパンクしました(笑)。11月頃は全然合わなくてスクラムが組めなかったんですが、1月に入ってようやく色々な人と組めるようになってきました。考えすぎてパンクしてしまっていたので、回数を重ねて体に覚え込ませる方法を取ったら良くなってきました。
◆スクラムが強くなるために
――自分の状態を冷静に把握できるタイプですか?
出来ない時もありますが、把握するようにしています。アオさん(青木佑輔スクラムコーチ)は頻繁に指摘をしてくれて、例えば、先週のスクラム練習で、僕は頭を内側に向けて組んでいるつもりでしたが、上からの映像を見せてくれて、頭が外側を向いていると指摘してくれて、そこで初めて気づかされました。そういうところが本当に大事だと思いました。頭の中で分かっていても出来ていないことってあると思いますし、練習後に由起乙さん(森川)とかに何か言えば、「じゃあ、一緒にやろう」とき合ってくれるので、感謝しています。
――じゃあ、面白いですよね
楽しいですね。出来なくてイライラすることもありますが、出来るようになってきて、実際に出来た時って気持ちいいですし、良い位置で組んでいる時は辛くなくて気持ちいい感じがするんですよ。その感覚を持てるようになってきた時は嬉しく感じますし、押せるという気持ちになります。
――毎回のスクラムでそういう気持ちになれればいいですね
そうですね。そういうスクラムをずっと組めている人が強い人だと思いますし、元樹さんとかは常に良い位置で組めています。よく由起乙さんからは「気持ち良い位置で組め」と言われますし、由起乙さんも良い位置で組めていることが多いので、常にそういう位置で組めるようになったら、良いスクラムが組めるようになるのかなと思っています。
――その"良い位置"の感覚は掴めてきましたか?
掴めてきました。それが1月に入ってようやく分かるようになって、その位置でたくさんスクラムが組めるようになってきました。ただ試合でのスクラムを組む回数がまだ少ないので、試合に出て色々な対戦相手と組むことによって、更に多くのことを覚えていけると思います。スクラムが強くなるためには、それが大事だと思います。
――誰が見ても「サントリーのスクラムは強い」と言われるようになるためには何が必要ですか?
先発している選手たちがどう感じているかは分かりませんが、個人的な意見としては、自分たちの形で組めれば良いスクラムが組めるけど、相手がサントリーの組み方をさせないような組み方をしてきた時にどうするかを、もっと考えていかなければいけないかなと思います。その辺りは経験ある先輩たちの話を聞いてみたいですね。
◆相手に勝つスクラム
――これからまだトップリーグが続いていきますが、今シーズンについてはどんなビジョンを描いていますか?
まだ1年目ですし、試合数も少ないので、まずは信頼を得なければいけないと思います。その信頼を勝ち得るために、トップリーグ、トレーニングマッチを問わず、出た試合では良いパフォーマンスを出して信頼を得て、試合に出られるような選手になりたいと思います。
――今は試されている時期ということでしょうか
コーチ陣はどう考えているか分かりませんが、そう思っています。
――今の課題は何ですか?
スクラムの強さです。1番でも3番でもです。相手に勝つスクラムを組めることが強さだと思うので、1番であればコネクションをしっかりと作って3番を助けつつ自分も仕掛けられるような固いサポートが出来るスクラムを組みたいですし、3番であればしっかりとパワーを出して前に出られるスクラムを組まなければいけないので、自分の役割を全うすることが大事だと思います。
――今はどのくらい役割を全う出来ていると思いますか?
出来ている時もありますが、スクラムを1本でも押されたらそこから流れが変わったりするので、そういう選手はコーチ陣も使いにくいと思いますし、試合を通して相手を仕留められるような選手になりたいですね。
――どんな選手を目指していますか?
スクラムであれば、みんなが安心して任してくれる選手を目指しています。ただ、そういう選手になるのに1年目とかは関係ないので、出来ることならば、今すぐにでもそういう選手になりたいですが、出来る限り早くなれるように毎日努力し続けなければいけないと思います。
◆試合中にどうチームを変えていけるか
――2019年のラグビーワールドカップはどういう想いで見ていましたか?
あれだけ日本が盛り上がって、同じチームの選手が出ていたり、知っている選手が出ていたので、羨ましいという想いもありました。社会人になったばかりで日本代表というイメージを持てませんでしたが、サントリーに入りトップリーグで戦っていることで、近い存在になりつつあると思っています。2023年のワールドカップはもちろん目指したいですし、1番と3番で日本のトップになれば必ず日本代表に呼ばれると思うので、まずはサントリーでスタメンで試合に出ることが絶対的な条件だと思います。そのためにはチーム内での競争に勝たなければいけないので、チャレンジしていきたいと思います。
――トップリーグ4節を終えて2勝2敗ですが、チームの雰囲気はどうですか?
優勝できる実力はあると思うんですが、悪い試合をした時に引きずってしまっていると思うので、今後は試合中にどうチームを変えていけるのかが大事になってくると思います。NEC戦ではリザーブの選手が入ってきて、後半20分過ぎくらいから本来の実力が出せたと思いますし、スタメンで出た選手にもその実力はあると思うので、精度高くやっていくことが大事だと思います。
――試合に出た時、ファンにはどういうところを見てもらいたいですか?
スクラムの成長と、フィールドプレーは好きなので、ボールを持った時の突破を見て欲しいと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]