2020年1月31日
#673 須藤 元樹 『目の前のことをひとつひとつやっていけば結果がついてくる』
久々にトップリーグに出場した須藤元樹選手。復帰戦は第3節の、今シーズンの一つの山場である神戸製鋼戦でした。今後、より一層の活躍が期待される須藤選手に話を聞きました。(取材日:2020年1月下旬)
◆やっとこのタイミングで復帰
――誕生日前日のインタビューです
あ、そうですね。自分の誕生日を忘れていました(笑)。26歳になります。
――まだ26歳なのにベテランぽいですよね
社会人になってから、ずっと言われています。見た目もあると思いますが、学生の時からみんなでワイワイ何かをするというよりも、落ち着いて過ごすことが好きです。休みの日に沖縄でダイビングをしたり、ゆったりすることが好きなので、見た目とか雰囲気でそう感じられるのかなと思います。
――あまり慌てたりしませんか?
そうですね。何かが起きても、あまり慌てることはないかと思います。
――第3節神戸製鋼戦では久々のトップリーグ出場となりましたね
2018年7月に大きな怪我をして、そこからトップリーグには出ていませんでしたし、復帰したのがトップリーグカップ2019第3節の栗田工業戦でした。その後に小さな怪我などいろいろとあり、なかなか練習にも参加できてなかったんですが、やっとこのタイミングでトップリーグに復帰できました。
――カップ戦での復帰と、今回の復帰では違いますか?
自分の中でそれほど大きな違いはありませんが、やっぱりカップ戦とトップリーグでは規模も違いますし、ワールドカップの後ということもあり、お客さんがたくさん入っていました。僕はそういうことをあまり気にせずプレー出来るタイプなので、今回の復帰にはその点では特別な想いはありませんでした。ただ相手が神戸製鋼で、昨シーズンのトップリーグの決勝で大負けをしていますから、今回は"絶対に勝つ"という想いで臨んだので、いつもより気合は入っていたと思います。
◆複数ポジションをこなす選手が増えた
――神戸製鋼戦、チームとしての手応えはどうでしたか?
チームとしては、通用した部分と、まだまだやらなければいけない部分が出たと思います。アタックに関しては、ボールを持って継続できればゲイン出来ましたし、トライも取れていたので良かったと思いますが、ディフェンスの部分で神戸製鋼のフォワード・フェーズであったり、ダン・カーターを中心に外に展開した時のアタックなどでは、後手に回った部分がありました。そこは改善しなければいけないと思っています。個人的には、セットピースの安定を意識して臨みましたし、チームからもその部分を期待されていましたが、その点については上手く出来たと思います。
――開幕戦からセットピースの安定が課題でしたよね
スクラムについてはレフリングとの兼ね合いもあって、なかなか上手くいっていなかった部分がありましたし、ラインアウトも獲得率が低かったと思います。神戸製鋼戦では、前の2試合と比べたら良くなったと思いますが、まだまだ細かい部分が遂行しきれていなかったと思います。
――その課題と自分の役割はどう考えていますか?
ラインアウトでは、相手が分析してきているという部分もあると思いますが、動きを複雑化させているので、そこはもっと時間をかけてやっていかなければいけないと思っています。あと、複数のポジションをカバーする選手が増えてきていて、例えば、ヘンディー(ツイヘンドリック)とか飯野晃司とか、複数ポジションをこなす選手が増えたことでオプションも増えて、そこで混乱してしまうこともあったかなと思います。
――こちらは相手の分析をどのくらいやっているんですか?
タイ(マクアイザックFWコーチ)を中心にミーティングをしたり、ノンメンバーがタイの分析をもとに相手の動きをコピーしてくれています。それに対してメンバーがディフェンスをする練習をしていますので、その成果は効果的に出来ているんじゃないかなと思います。
――分析するのは最近の傾向なんですか?
分析は以前からやっていると思います。ラインアウトはサインで動くので分かりやすいと思います。相手の状況によって臨機応変に対応することもありますが、基本的には最初のサインで動くので、分析をすればするほど効果が出てくるのがラインアウトじゃないかなと思います。
――相手の分析に対応するための策が複雑になってきているんですか?
その場で跳ぶ分には簡単なんですが、セットしてから動いたり、動いてから更に戻ったりと、そういうサインが増えてきているので、そこの落とし込みにまだ時間が必要かなと思います。
◆今の方が体のバランスが良い
――個人的な手応えはどうでしたか?
総合的に見ると、まだまだやらなければいけないことがあると思いますね。セットピースに関しては、自分の役割はまずまず出来たかなという手応えがあるんですが、フィールドプレーの部分ではまだまだ練習が必要だと感じました。
――試合勘を戻すということも含めてですか?
そうですね。そこも含めて、まだまだですね。頭の中で考えていることに体が追い付いていない部分があります。そこは練習でやっていけば改善される部分でもありますし、まだシーズンは続くので、これから上げていければと思っています。
――コンディションの部分はもう問題ありませんか?
はい、大丈夫です。怪我をした部分も良くなっています。
――復帰後、怪我をする前より強くなったと感じる部分はありますか?
怪我をする前よりも今の方が、体のバランスが良いと感じています。プレーに関してはまだまだですが、感覚的にはバランスが良くなって、体を動かしやすかったり、脚が重く感じることは無くなりましたね。
以前は脚ばかりを鍛えたり、過度に一部分を集中して鍛えていたりしていました。自分の強みである部分を更に伸ばそうと思って、そういうトレーニングをしていたんですが、今はトレーニングのウエイトを、弱かった部分の全体を鍛えることに置いていて、どんどん良くなってきているという感覚があるので、引き続き取り組んでいこうと思っています。
――スクラムやモールを押し込むという場面が、まだあまり見られませんが、それについてはどうですか?
自分たちの形は大事ですが、相手があってのことですし、どのチームもスクラムやラインアウトなどのセットピースにフォーカスして鍛えています。前のシーズンと比べると、どのチームも差は縮まってきているんじゃないかなと思います。それでも、セットピースは自分の強みだと思っているので、ブレずにやっていきたいと思います。
――神戸製鋼戦ではフォワードの平均体重が約3キロ相手よりも軽かったと思いますが、重い相手、大きい相手に対しては、どう対抗するんですか?
サントリーは他のチームに比べて大きくはなくて、神戸製鋼やトヨタ自動車などの大きい相手に対しては、待っていては絶対に負けてしまいます。ですから自分たちから積極的に仕掛けて、動き出しの部分で相手よりも上回ることを意識してやっています。
――そこで上回るためには、タイミングやスピードが大事になるんですか?
一番はスピードだと思います。相手が動き出す前に先に仕掛けるとか、大きい相手に対してはそれが一番重要だと思います。そのために、早く準備をしたり、早くセットをしたりと、そういう部分から始まっていると思っています。あとは低さも重要になっていると思いますが、相手よりも低く組むとか、そういう部分は言わなくても全員が意識して出来ていると思います。
◆ディフェンスでチームに貢献していきたい
――レフリングに合わせることも難しいんですね
レフリーによってそれぞれ特徴がありますし、スクラムのレフリングって難しいと思うんですよ。僕らフロントローってどっちのチームが落としているか分かるんですが、フロントロー出身のレフリーの方ってほとんどいなくて、それぞれの考えに基づいて笛を吹かれていると思いますし、そこにレフリーによっての違いがあったりします。スクラムだけじゃなく、ペナルティーの基準にもそれぞれ特徴があるので、そこは試合で合わせていかなければいけないと思います。
――選手同士では事前にミーティングで話し合ったりするんですか?
レフリーによっての傾向は話しますね。
――スクラムでどちらが落としたかやっている本人たちは分かるんですね
組んだ時に前に出る、出ないとか、組んで2~3秒くらいで分かります。組んだ時に自分の立ち位置が有利だったらどんどん前に出られますし、例えば、ヒットで受けた時に不利な状態になってしまったら、どのチームのプロップもそのままでは組みたくないので、スクラムが崩れたりするんです。そこでスリップしているように見えて組み直しになる場合もあれば、片方のチームが落としているように見えてペナルティーになったりもするんです。
――復帰してどこを強みとして押し出していきたいですか?
セットピースはもちろんなんですが、タックルも強みだと思っているので、ディフェンスの部分でチームに貢献していきたいと思っています。アタックについても、今はシステムが確立されてきて、自分の役割も明確になっているので、セットピース以外にもフォーカスしてやっていきたいと思います。
――アタックも得意になってきましたか?
まだ得意とまでは言えないです。接点での強さには自信がありますが、スキルの部分ではまだ他の選手に劣る部分があると思うので、これからも継続してトレーニングしていかなければいけないと思います。
◆最後にチャンピオンになる
――第3節を終えて1勝2敗となりますが、チームとしてはポジティブな状態ですか?
雰囲気は全然悪くないですよ。3節が終わって2回負けているという現実は受け止めなければいけませんが、悲観的にならず、リーグ戦はあと12試合ありますから、1戦1戦、目の前の相手と戦っていって、しっかりとボーナスポイントも取っていって、最後に"チャンピオンになる"ということを、みんなで描いています。負けがあったから優勝することが出来たという状況になるように、1戦1戦やっていきます。
――久しぶりにトップリーグで試合をしてみて、改めて感じたラグビーの面白さは?
やっぱり選手としては試合をしてなんぼだと思うので、試合に出られないと面白くないです。試合に出るためにチーム内でのコンペティションをしっかりと戦って、そのポジション争いに勝った23人がチームの代表として試合に出られるんです。だから、練習から同じポジションの選手には負けないように意識してやっています。
やっぱり練習よりも試合は面白いですね。試合に近い状態で練習することがベストなんですが、練習でやったことと完全に同じ状況はないので、試合で起きることに対して臨機応変に対応していって、それが上手くはまって試合に勝ったら面白いですね。
――日本代表についてはどんな想いですか?
個人的には日本代表に復帰するという想いはあります。ただ、今はサントリーで優勝するということを第一に考えています。その中で自分のパフォーマンスを上げていかなければ、日本代表には繋がらないと思っています。ただあまり意識し過ぎずに、目の前のことをひとつひとつやっていけば結果として代表がついてくると思うので、2023年ワールドカップ、そして2027年ワールドカップもフロントローにはチャンスがあると思います。そこを狙っていきたいと思います。
――フロントローは他のポジションに比べれば、選手寿命が長い方ですよね
2023年で29歳、2027年で33歳なので、チャンスはあると思います。
――大相撲初場所で優勝した徳勝龍が33歳で初優勝でしたね
素晴らしいですよね。僕は今場所、遠藤が優勝すると思っていたんですけどね。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]