SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2020年1月24日

#672 中靍 隆彰 『やり続ける自信』

開幕2戦目に先発し、今季初トライを挙げた中靏隆彰選手。チーム内の競争を勝ち抜くために、どんなことを思い、いま何にチャレンジしているのでしょうか。試合の2日後に話を聞きました。(取材日:2020年1月中旬)

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◆爪痕を残す

――トップリーグ第2節NTTコミュニケーションズ戦は急きょメンバーに入りましたね

シーズン前のトレーニングマッチを経て、開幕戦のメンバーに選ばれなかった時、"自分が出たい"という想いが強くありました。素晴らしいメンバーが揃っているので、試合に出るためのチーム内の競争は激しく、難しいシーズンになるとは感じていましたが、自分自身の調子も悪くないと思っていましたから、メンバーから外れた時には「使ってくれよ」って思いました(笑)。

チームのバックスリーの選手は良い選手ばかりですし、みんな譲れないところはあると思います。いろいろな人から「シーズンは長い」と言われますが、サンゴリアスはずっと勝つチームなので、開幕戦のメンバーに入れないと、チームが勝ち続ける中ではアピールする場もなかなかありません。それで難しいシーズンになるなと思っていました。

その中で、第2節ではチャンスがあるかもしれないという状況になって、開幕戦が終わってからずっとNTTコミュニケーションズ戦に向けて準備をしていましたが、当初先発にもリザーブのメンバーにも入れませんでした。この状況は覚悟していましたが、「なかなか道のりは厳しいな」と思いながら、NTTコミュニケーションズ戦に向けてチームをサポートしながら、次の神戸製鋼戦に向けて、ベストの状態で出られるよう準備を始めていたところでした。

――急きょ出場することが決まった時の心境は?

ノンメンバーの選手たちはなかなかチャンスが回ってこない中で、出場した時にはどう爪痕を残すか。このチャンスがシーズン最後のチャンスと思って試合に臨みました。そういう面で見ると、チームが勝ったことは良かったと思います。

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――トライも取りましたね

素晴らしい選手が周りにいっぱいいますし、自分の良さをどうチームに活かすかを常に考えています。チームにはペネトレーターがたくさんいるので、そういった選手がディフェンスラインを抜けた後に、いかに良いタイミングでボールをもらって、そのままトライに結びつけるか、それが自分の役割だと思って取り組んで来ました。あのトライは、ほとんどがケレビ(サム・ケレビ)とテビ(テビタ・タタフ)のトライではあるんですが、トライをして最低限の役割は果たせたかなと思います。ただ、まだまだ個人的には満足できない内容でした。

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◆もっと強気に

――満足できない内容というのは?

正直、本当に寒い中での試合で、みんな手がかじかんでいました。とても難しいコンディションで、ボールを回せるような状況ではなかったんですけど、その中で、何回かボールタッチした時に、自分がイメージするようなボールキャリーが出来なかったと思いました。

――どんなボールキャリーをイメージしていましたか?

ボールを持った時に目の前の敵をかわす、そして最低でもゲイン、良ければそのままトライまで持って行ければと思っていました。そういう意味でこの前の試合に関しては、相手に脅威を与えるようなプレーが出来なかったかなと感じています。監督が選手を選ぶ上で、僕じゃなきゃ出来なかったプレーを見せないと、試合に出続けることは難しいですから、何回も良い形でボールをもらえるように、もっと味方に要求しなければいけないと思いますし、もっと強気に仕掛けなければいけないと思います。

――具体的にはどんなところですか?

外に仕掛けるとタッチラインに出されるという可能性があるので、プレーの選択として内側に仕掛けるという選択は間違いではないと思いますが、そういう状況では、タッチに出されようが、なりふり構わず外で勝負をする選択をしても良かったかなと思っています。試合の始めから「やってやるぞ」という気持ちではいたんですが、1回そういうシーンがあったなと心に残っています。

――そうやって振り返った時に心残りを無くすためには、どうすれば良いと思いますか?

試合が始まるまでずっと、いろいろな状況を具体的に考えることですね。そうすれば、実際にそういう状況になった時に強気に行けるかなと思います。

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◆チームの潤滑油

――チームに新しいメンバーが増えたことで意識していることは?

個人の能力で打開できる選手がたくさんいる中で、見た目には分かりづらいけど大切なチームプレー、例えば、スクラムハーフやスタンドオフがボールを蹴った時に、しっかりと良いチェイスをすることであったり、ディフェンスでも反対側のサイドまでカバーに行く、そういう仕事人的なこともしっかりと持ち味にしたいと思っています。そうやって、チームの潤滑油的な存在になりたいと思います。

――普段からいろいろと考えるタイプですか?

考えますね。試合で使うサインプレーは、練習の時に起きた状況とかを踏まえて「試合の時にはこうしよう」と考えます。あるいは相手チームの分析をする中で、「自分だったらこのディフェンスに対して、こういう動きをしよう」と考えます。それでも実際に試合ではイメージした以外の状況になるんですが、試合が終わって振り返った時に、「あの時にあぁすれば良かった」と思わないように出来ればベストです。そのためには、そういったシーンを更に考えておくことが大切だと思います。

――試合後に「あぁすれば良かった」と思ったプレーは、その後の練習で試すのでしょうか?

練習でも「こうしておけば良かった」と思うことがあるので、トライ&エラーを繰り返している感じです。

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◆スピードを武器に

――いまの課題は何ですか?

やっぱり目に見える凄さが欲しいです。監督が変わろうが、どんな状況だろうが、良い選手、凄い選手は絶対に試合に出続けると思います。その中で試合のメンバーに選ばれないというのは、そういう部分が足りないということだと思います。ワールドカップでも、僕はいちファンとして試合を見ていたんですが、福岡堅樹はあの体ながら、スピードという強みで活躍していたと思います。僕もスピードを武器にしているので、自分の強みをより見えるように、磨いていかなければいけないと思います。

――少ない機会にその強みを発揮するにはパワーが要りますね

スポーツってそういうもので、やったからといって全員が認められたり、全員の成果が出るものでもないかなと思います。ただ、そこで認められない場合にも、他に逃げたり、自分が成長することを止めてしまうのだけは違うと思っています。仮に次の試合のメンバーに選ばれなくても、監督が自分の強みを使いたいと思ってくれるまで、やり続ける自信はあります。

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――今シーズンが進んでいった時に見えるシーンは、どんなシーンですか?

試合に出られない時期に、試合に出るために何をしなければいけないかは分かっていますし、その中で試合に出られるようになって、チームの勝利に貢献していけば、自分が求めているようなシーズンになるかなと思っています。

今は試合に出られるか出られないかというところなので、結果を残していって、良いサイクルにどう乗れるかだと思います。試合に出続けられるようになった上で、活躍してチームが勝って行けば、良いサイクルに乗っていくと思うので、そういう状況にしたいと思います。

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◆個性の集まりの15人で勝つ

――いま楽しいと思う時はどんな時ですか?

基本的に、僕はラグビーがめっちゃ好きなので、ノンメンバーの練習でも楽しいですし、今年30歳となり、あと何年できるか分からない中で、どんな瞬間でも楽しもうというマインドでいられていると思っています。

――中靏選手にとって改めてラグビーの魅力は何ですか?

いっぱいありますよね(笑)。やっぱり平均的であるより、何かみんな個性があって、個性の集まりの15人で勝つということが面白いと思うので、誰かの長所で他の人の短所をカバーするということもあると思います。

僕はそんなにフィジカルが強い方ではありませんが、スピードがあり体力がある方だと思うので、その長所の部分をチームに還元したいと思っていますし、チームとしてそういう長所を融合させていくことが面白いかなと思っています。

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――今シーズンの目標は?

チームとしては、もちろん優勝したいです。その中で神戸製鋼にずっと負けているので、神戸製鋼に勝ちたいと思っています。神戸製鋼には世界選抜のようなメンバーが揃っていますが、僕がこれまで過ごしたシーズンを振り返ると、強いチームに勝った時って、チームが急に成長するチャンスだと思うんです。

チーム一丸となって神戸製鋼に勝てれば、一気にチームがまとまって覚醒するんじゃないかなと思っています。その中で、自分もしっかりとトライを取って、チームに貢献したいと思います。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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