SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2019年12月27日

#669 流 大 特別編"HISTORY OF SUNGOLIATH" 歴代キャプテンが語るサンゴリアス史 17代目キャプテン 流大 『プレッシャーに飛び込んでいく』

昨シーズンまで3年間キャプテンを務め、その間のチームの成績は優勝2回、準優勝1回。副キャプテンを置かない状態で、類稀なリーダーシップを発揮した流大選手に、3年間を振り返ってもらいました。(取材日:2019年11月上旬)

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◆100%やり切れた

――キャプテンを務めた3シーズンを振り返るとどうですか?

チームのために行動できていたと思うので、特に悔いなどはありません。ただ、キャプテン3年目だった昨シーズンは、日本代表の活動で長くチームにいられませんでしたし、なかなかパフォーマンスとして自分のプレーが出せませんでした。そういう状況でのキャプテンという立場だったので、難しいシーズンでした。キャプテンとしての責任があるので、その中で自分に出来ることは全うしてきた自信があります。結果としては神戸製鋼に負けて準優勝でしたが、チームに対して出来ることは100%やり切れたと思っています。

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――自身のパフォーマンスが出せなかった原因は何だと思いますか?

トップリーグをやって、スーパーラグビーをやって、日本代表としてテストマッチにも出て、というサイクルで初めて1年間を過ごして、どこかでメンタル的に疲れていたところもありましたし、色々なプレッシャーを感じたシーズンでした。ハングリーになり切れていなかったという部分は、あったと思います。

――キャプテン1年目の時は全勝優勝を果たしましたが、その時はどういうことを感じていたんですか?

もう、とりあえず全力でしたね。期待はされていたと思いますが、社会人2年目で若かったので、そんなに多くのことを求められていた訳ではなかったと思います。だから、とにかく自分のやりたいようにやって、自分らしく全力でやることしか考えていなかったので、楽と言えば楽でした。そこからプレッシャーや期待度は年々上がる訳で、昨シーズンはキャプテン3年目だったので、周りからは高いスタンダードを求められるようになり、よりプレッシャーは大きくなっていました。

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――キャプテン1年目の時に自分のやりたいように出来たのは、どうしてでしょうか?

まずは周りに経験者が多いということがあって、コスさん(小野晃征)や大志さん(村田)とか、ジョージ(スミス)とか、本当に経験値が高くてチームのことを知っている選手がいますし、そういう選手たちが「お前が思うようにやれ。裏のことは俺らが出来るから」と言ってくれていたので、自分らしく出来たと思います。あと敬介さん(沢木/前サンゴリアス監督)とも長く過ごしてきて、レギュラーの保証はなかったので、選手として成長しなければいけませんでした。だから、全てにがむしゃらにやっていたので、それが出来た要因だと思います。

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◆キャプテンの宿命

――キャプテン2年目についてはどうですか?

1年目に比べたら多少なりともプレッシャーはありましたが、やることはそんなに変わらないと思っていました。自分がハードにトレーニングをして、チームに必要なことを言って、それをやり続けていくことを考えていました。そこからちょっとずつ日本代表でも試合に出られるようになって、少しずつ自信がついて、自分のプレーも良くなっていきました。

またそのシーズンは新たにギッツ(マット・ギタウ)が加入して、一緒にプレーしたり練習を見る中で、本当にプロフェッショナルで素晴らしい選手だと感じて、色々なことを勉強させてもらったシーズンでもありました。2年目も良いシーズンだったと思います。

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――キャプテン3年目でプレッシャーを感じたのは、自分自身でプレッシャーをかけていた部分もあったんですか?

それもあったと思います。やっぱり勝たなければいけないですし、日本代表もありますし、サンウルブズでもキャプテンをやったりしたので、色々なことを考えました。そこで自分のプレーが良かったら乗れたと思うんですが、どこかに申し訳なさとか、チームに対して貢献できていないと思う自分がいたのは事実で、昨シーズンは苦しかったですね。

――それは大変でしたね

それがキャプテンの宿命で、偉大なキャプテンと呼ばれるような選手たちはそういうことも乗り越えてやってきています。その時は苦しかったんですが、今となればそういう経験は僕のキャリアにとってとても大事なものだと思うので、負けたことだけは悔いが残っていますが、それ以外については出来ることはやったので、やり切れたと思います。

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――キャプテンというものに対して自信は持てましたか?

その当時は失いつつあったんですが(笑)、キャプテンにしろリーダーにしろ、大事なことは学べたと思っています。

――その大事なこととは?

プレッシャーに打ち勝つことですね。

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――自分との戦いなんですね

プレッシャーが嫌だとか、ネガティブになってしまうと、その時点でメンタル的には負けてしまっているので、プレッシャーを好むと言うか、プレッシャーに飛び込んでいくことで、もう一段階、人は成長できると思います。確実に勝てるという試合をいくら重ねても強くはならない訳で、勝てるかどうか分からないギリギリのところで試合をすることで成長できると思います。

それは何に例えても同じで、仕事でのノルマであったり、絶対に達成できるような目標を立てて、それを達成して得られる充実感、経験、自信などと比べて、高い目標があって、周りからの期待が大きい中でそれに向かっていくことで得られる充実感などは、全く違うものだと思います。

ワールドカップの話になりますが、自国開催ですごくプレッシャーがかかる中、何が何でもベスト8に進まなければいけないという状況でしたが、僕らはそれに飛び込んで打ち勝ったので、プレッシャーというのは、今後リーダーとしても必要な要素になると思っています。

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◆失敗を気にせずに立ち向かえ

――プレッシャーから逃れたいと思う時はありませんか?

昨シーズンはありました。試合に出たくないと思った時もありましたし、逃げようとした時もありましたが、敬介さんから「絶対に自分から逃げるな」と常々言われていて、「失敗を気にせず立ち向かえ。負けた時に責任を取るのは俺だから」と言ってくれていたので、何とかやれたと思います。今後もそういう状況はあると思いますが、逃げないということは同じですし、どんどん挑戦していきたいと思っています。

――キャプテンとして見た時に、沢木監督はどんな監督ですか?

勝てる監督だと思います。敬介さんが監督になってからの公式戦での勝率ってかなり高い数字で、3シーズンで3試合しか負けていないんです。選手やスタッフの頑張りもあると思いますが、監督が思い描くプランと実行力があるからこそ出来るものだと思います。選手やスタッフに対する要求は高いんですが、その中で自分がよりハードに仕事をしているので、本当に色々な経験をさせてもらって感謝しています。

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――やっぱり厳しい監督ですよね

厳しいですよ。練習中とかみんながいる前で僕のことを怒ることとかはあまりなかったんですが、監督室に呼ばれた時とかは(笑)。あまり怒られるという感じではないですが、厳しい要求とチームのことを言われたりすると、やっぱり悔しいですし、不甲斐なさを感じることもありました。

ただ、厳しい監督じゃなければ良い成績が残せないようなチームではいけないと思います。監督が厳しいとか厳しくないとか、怖いとか怖くないとか、そういうことではなくて、やっぱり選手がどうあるかが大事だと思います。選手同士がお互いに厳しい要求と、準備をしていくこと。今はそれが出来るチームだと思います。昨シーズンのカップ戦、今年のカップ戦は試合には出なかったので、少し引いた立場で見ていたんですが、日本人選手同士でレベルの高い要求が出来るようになっていましたし、良い傾向にあると思います。ただ、正直、それは当たり前のことで、もう一段階上に行かないと。神戸製鋼や他のチームもレベルが高くなってきているので、もっと必要なことをやっていかなければいけないと思います。

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◆一緒に頑張っていきたい

――改めて、キャプテンとは?

重なるところもありますが、苦しい時、プレッシャーがかかった状態で、自分の能力を発揮して、周りの能力を発揮させられることが出来るのが、真のキャプテンだと思っています。そういった意味で、日本代表キャプテンのリーチさん(マイケル/東芝)は偉大なキャプテンだと思います。

――リーチマイケル選手の偉大だと思うところはどこですか?

ロシア戦でのパフォーマンスによってリザーブになったアイルランド戦でのパフォーマンスですね。自分やチームが苦しい状態の時に、選手としてのパフォーマンスが最高でしたし、それが周りに良い影響を与えられるということが、一番印象に残っていますし、カッコいいなと思いました。

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――目指すべき姿ですか?

今後、キャプテンをやるかは分かりませんが、そういうリーダーシップは見習うべきですし、目指したいと思います。(インタビュー後に流選手、マット・ギタウ選手、ショーン・マクマーン選手での共同キャプテンが決定)

――サンゴリアスの次のキャプテンにはどんなメッセージを残したいですか?

このチームでキャプテンが出来ることは、本当に誇らしいことで、素晴らしいことだと思うので、僕がキャプテンになった時と同じように自分らしくやって欲しいと思いますし、1人で抱え込まないで欲しいなと思います。僕の立場としては、キャプテンがやって欲しいことが分かるので、そういったところに力を注いで、新たなキャプテンには自分のプレーと、自分らしさを出してもらえるよう、僕は裏での働きかけをしたいと思っています。後は楽しんで欲しいなと思いますし、プレッシャーにも飛び込んでいけば良いキャプテンになれると思います。僕もまだ全く完成されていませんし、今まで色々な経験をさせてもらいましたが、これからが大事だと思ので、一緒に頑張っていきたいと思っています。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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