2019年9月27日
#655 金剛地 舞妃 『人を感動させられる人のサポートをする仕事がしたい』
クラブハウスのチームラウンジ、試合時の宿泊ホテルのチームルーム、試合会場のロッカールーム、それぞれの場面で動き回りながら、いろいろなメンバーと話しながら、食事の場を準備しチェックしている金剛地舞妃さん。練習を見る目も真剣です。サンゴリアスの管理栄養士・金剛地さんに初めてお話を訊きました。(取材日:2019年9月下旬)
◆盛り付けやすいか食べやすいか
――ラグビーワールドカップ2019日本大会が開幕しましたが、サンゴリアスに管理栄養士として携わっていて、ワールドカップ開幕をどう感じていますか?
そもそもラグビーについて知ったり、見たりすることが、サンゴリアスに携わるようになった2013年からでした。サンゴリアスにラグビーの素晴らしさや面白さを教えてもらい、2015年のイングランド大会で初めてワールドカップを見ました。すごく面白くて、それが日本で開催されるというのはすごいなと思う部分と、やっぱりサンゴリアスの選手たちが出るので、客観的に楽しみな部分もあります。
――初のインタビューですので、まずサンゴリアスにどう携わっているのかを教えてください
今は、簡単に言えばサンゴリアスの食事に関するすべてを担当しています。細かく言えば、クラブハウスでの食事メニューの調整であったり、選手への栄養教育、あとは試合や合宿での食事の調整をして「こういうメニューを出してください」とお願いをしたり、実際に現場に行ってちゃんとお願いしたメニューが出ているかのチェックもしています。実際にチェックをして提供の仕方を変えて欲しいところがあれば、ホテルの方とやり取りをして完成形に近づけていくような感じです。
――チェックするポイントはどこですか?
お願いした料理がすべて出ているのかということはもちろんで、メニュー名を見ただけだと味付けまでは分からなかったり、実際に食べてみると「こんなに油を使っているんだ」と気づくこともあります。あと、例えば「鳥の皮を除いてください」と伝えていても、除けていなかったりするので、そういう部分もチェックしています。
その他には、料理の見た目や選手が料理を取りに来る動線もチェックしています。選手が料理を盛り付けやすいか、食べやすいかというところを見ています。あと合宿では、お昼はご飯ものを先に提供してもらい、夜はお肉系とかを先に提供してもらったりして、その時のタイミングで欲しいものを出してもらったりしています。
料理の並べ方もどう並べれば美味しそうに見えるかとかを考えたりしていますし、ホテルによって並べ方や動線が全然違ったりするので、直してもらうようにお願いすることもあります。試合の時は選手がストレスなく食事を摂れることが大事なので、選手よりも先にホテルに入ってチェックするようにしています。
それと、徐々に経験していくことで分かったことが、ホテルの食事会場とキッチンが遠いと補充に時間がかかるので、事前にチェックをしておいて、常に料理がなくならないように気を付けています。選手に料理を待たせてしまうとストレスになってしまうので、選手が食事をする時には常に料理が並んでいる状態にするようにしています。ただ、料理が冷めた状態では美味しくないので、そこの調整に気を付けています。
――選手にバランス良く食事を摂ってもらうためには、どんな指導をしているんですか?
いまの選手たちは、学生の時にある程度は習ってきているんです。高校や大学のチームに栄養士さんがいて、基本的なことは覚えてサンゴリアスに入ってくるので、あまり基礎的な指導はしていませんが、ルーキーには「サンゴリアスはこういうふうに食べるよ」という教育はしています。
基本的な組み合わせがあって、クラブハウスではそれがちゃんと食べられるようなメニュー構成にしているので、普段の食事でもクラブハウスの食事をお手本にしてもらうように伝えています。
◆日常的な食事も練習後の食事も寝る前の補食も大事
――クラブハウスで食事が出される時には常にいるんですか?
クラブハウスに行くのは基本的に週に1回なので、その時にチェックをして話をするようにしています。
――食事について指導して、選手によっては取り入れ方が違ったりするんですか?
教えたことをそのまま取り入れてくれる選手もいれば、そうではない選手もいて、伝え方を変えたり、聞きに来るまで言わないようにしたり、選手によって方法を変えています。
――選手がアドバイスを求めに来ることもあるんですか?
アドバイスを求めに来る選手はすごく多くて、栄養の質問って思いついたその場で聞きたいことが多いと思うんですよ。もちろん「こういう時はどういう食事を摂れば良いのですかね?」と後から聞いてくる選手もいますが、例えば「いまお腹が空いていないんですけど、こういう時は何を食べれば良いですか?」とか「試合の前で緊張していて全然食べられないんですけど、最低限摂った方がいいものは何ですか?」とか、その場で気になっていることを聞かれることが多いですね。
――昔は「フォワードであればドンドン食べろ」というようなことがありましたが、今は食べすぎも良くないんですか?
普段の体作りを考えたら適量がありますし、試合ではあまり胃が重くない状態でやりたいという選手が多いので、試合前の食事は選手自身が調整しています。
――習慣にしなければいけなかったりして、成果が出るまでには時間がかかると思うのですが、どういうところで成果を感じるんですか?
栄養の取り組みの成果って見えにくいんですが、ひとつの成果としては、それぞれの選手がターゲットに向かってトレーニングをしているので、例えば増量をしている選手がしっかりと体重が増えているかというところであったり、それは減量もそうです。あとは意図せず体重が減っていないかというところもあって、夏場は食欲が落ちてしまうので、そこで体重が維持できているかというところですね。あとは選手の主観で、「食べるようになって良かった」とか、そういう声を聞きながらやっています。
――クラブハウスには「練習後は練習前の体重まで戻して帰るように」と貼り出されていますよね
練習後にご飯を食べて、それでも練習前よりも体重が落ちているということは、食べていなければもっと体重が落ちてしまっているということなので、練習の前の体重まで戻すということは最低限やってもらいたいことです。あと、「どれくらい食べればいいのか」というざっくりとしたバロメーターにもなると思います。
――体を大きくしつつ、動ける体を作らなければいけないと思いますが、そういう体を作る上で気を付ける栄養のポイントはあるんですか?
トレーニングを激しく行っていることを考えると、食事で何が大事かというと、リカバリーなんです。そのために練習後の食事をしっかり食べることが大事になりますし、筋肉が修復されるタイミングでちゃんと体の中に栄養があるかが大事になるので、日常的な食事も練習後の食事も寝る前の補食も大事になります。
あとラグビーの場合は、大きい体を作りつつ、俊敏に動けなければいけないので、余分な体脂肪はない方が良いんです。糖質はエネルギー源として大切ですが必要以上に摂り過ぎない方が良いですし、脂質も適度に良いものをとって、たんぱく質は必要量も多いですが摂取するタイミングも大切です。
――持久力についてはどうですか?
持久力はトレーニングの賜物なので、トレーニングをしっかりできるような普段からの体作りが大事になります。ただ、持久力もエネルギー源が必要なので、試合の前に糖質を摂って体の中にエネルギーを溜めておくことも大事になります。
――選手のすべての食事まではチェックできないと思うのですが、そこはどう管理しているんですか?
私が管理するというより、自己管理能力を伸ばすことが大事だと思います。1週間の食事のうちの1食分しかチェックしていませんが、そこから食事の基本を伝えたり、自己管理できる栄養教育をするようにしていますし、食べることの大切さ、1食1食が体にとって大切なことであり、それがチームにとって大切なことということを伝えるようにしています。選手の食事文化を作っているという感じで、選手がどこで食事をしていても自分で判断できるような栄養教育を心がけています。
――選手自身が栄養の知識を常日頃から蓄えていっているんですね
そうですね。全員の時間を割いて講義みたいな形でやっている訳ではなくて、チームラウンジの色々なところに栄養についての情報を貼り出したりして、選手からは"刷り込み教育"と言われたんですが(笑)。やっぱりみんなラグビーのことで頭がいっぱいなので、その隙間を縫って栄養のことを身につけてもらうためには、何となくでも常に栄養に触れている状態であったり、栄養に興味が湧くような仕掛けをしたりして、限られた時間の中でダイレクトに選手に伝えるよりも周りから攻めていくようなやり方をしています。
ラグビーは15人が一体化しないと上手くいかないので、そのためには細かなコミュニケーションが必要で、コミュニケーション力を増すためのツールとしても食事は使えると思います。サンゴリアスが食事で大事にしていることが3つあって、1つは体作りやリカバリーに最適という栄養面での大事さ、もう1つは選手が食べたいと思うか、食べるために頑張りたいと思うか、美味しいとか楽しいとかというモチベーション面での大事さ、そして3つ目がコミュニケーションをたくさん取る場としての大事さです。
だから食事をするところのテーブルは円卓になっていますし、来た人から順に座っていくので、毎回違うメンバーでテーブルを囲んで食事をするんです。更にそこでのコミュニケーションを活性化させるために、テーブルの上に栄養クイズを置いたり、美味しいものを出して自然と会話が弾むようにしたり、季節ごとにイベントメニューを出して会話のネタが増えるようにしています。冬になれば鍋を出したりしますし、お好み焼きパーティーをやったりして、如何にコミュニケーションが増えるかを考えています。
啓希さん(宮本/主務兼採用)が現役の時に「食事中のコミュニケーションがグラウンドで活きるんですよ」と言われたことがあって、そこで食事中のコミュニケーションの大事さを感じましたし、食事中のコミュニケーションが活かせるくらいラグビーではコミュニケーションはすごく大事なんだなって思いましたね。
――イベントメニューとは具体的にどういうことをしているんですか?
いつもは「良い食事をしましょう」と取り組んでいますが、たまには息抜きであったり、毎日頑張っている中でのご褒美デーみたいな感じで、ホットプレートを用意してみんなでお好み焼きパーティーをしたり、「パンケーキデー」とか、「Kiwiデー」でニュージーランドの料理を出す日を作ったりして、チームメイトの国の料理を知ろうという食育的なこともやったりしました。あと「サントリーフェア」では、サントリーの飲料を料理に使ったりしました。例えば、鳥料理にペプシコーラを使ったり、牛肉を煮る時にザ・プレミアム・モルツを使ったりして、どんな味になるか興味をそそるような食事を出したりしました。
◆選手やチームのことをめちゃくちゃ観察している
――ラグビー以外の競技にも関わっているんですか?
フェンシングの女子選手に関わっています。
――ラグビー選手とフェンシングの女子選手では全く異なると思いますが、ラグビーならではの特色はありますか?
全体の食事量も多いですし、栄養素で言えばたんぱく質の必要量がすごく多いですね。そこは他の競技とラグビーとでは全く違います。
――ご自身では何のスポーツをしていたんですか?
本格的にスポーツをやっていたわけではなくて、子どもの頃にテニスとバスケットボールをやっていました。
――なぜ栄養士を目指したんですか?
高校生の時に野球部のマネージャーをしていて、甲子園にはいけませんでしたが、毎日練習を見ている中で選手が一生懸命に練習する姿に感動したんです。そこで将来は"人を感動させられる人のサポートをする仕事"がしたいと思うようになり、それに加え食事にも興味を持つようになり、食事を通してサポートする仕事をしたいと思い、栄養士の学校に進みました。
――栄養士の仕事のどこが面白いですか?
そもそもスポーツ栄養の仕事のキャリアはまだまだ多くなくて、私はサンゴリアスがスタートだったんですが、スポーツ栄養の仕事をやりたいと思ってから実際にサンゴリアスでスタートできるまで、10年くらいかかりました。サンゴリアスでスタートできるまで、色んな勉強をして、勉強会などで繋がりを作ったり、色々なものを見たりして、やっとスタートできたという感じです。なので、スタートラインに立てたことがとても嬉しかったですね。
けれど、スタートラインに立ってからの方が大変で、そこから更に色々なことを身につけなければいけなくて、色々なことをやりました。私としては栄養どうこではなくて、間近で見ている選手たちが色々な想いを持って一生懸命練習をして、それで勝って笑顔になっている姿を見たら、本当に素敵だなって感じています。
――ラグビーの経験がフェンシングに活かされたりもしていますか?
食事の内容などは全く違うんですが、栄養教育の仕方であったり、選手の見方、コミュニケーションの取り方であったり、栄養の広め方などは参考になっていますね。
――栄養士の中にも色々な方がいると思いますが、金剛地さんのスペシャリティは何だと思いますか?
何となく思っていることは、選手やチームのことをめちゃくちゃ観察していると思います。全く経験がなくサンゴリアスでやらせてもらったので、周りのことをめちゃくちゃ観察したり、空気を読んだりして、「いま何を必要としているのか」を考えたり、「これを伝えようと思ってきたけど、今日の雰囲気では伝えない方が良いな」とか、選手やチームのニーズや空気に合わせてずっとやってきたので、そこはちょっと長けているかもしれません。あとは現場をビシバシ教えてもらってやってきたので、現場感は身についていると思います。
――では、選手の顔を見ると、その選手の体調など分かったりしますか?
何となく分かりますね。あと食事の盛り付けを見ると、何となく誰の食事かも分かります。あと、私は練習を見ているんですが、他の方からは「なぜ栄養士が練習を見ているのか」と不思議がられたりします。練習を見ていると、どういう練習をしてどれくらい消費しているのかが分かるということと、食事だけを見ていると、食事の時って練習が終わって多くの選手が笑顔なので、本質が見えなくなってしまうんです。
練習を見なければ、選手がどんな思いでやっているのか、どんな表情でやっているのかが分からないんです。あと、コーチなどが選手にどんな言葉をかけているのかは、食事だけを見ていたのでは分からないんです。栄養のサポートって全部を把握して、100見たうちの1とか2が活きるという感じです。だから、チームがどういう方向性で、何を目指していて、監督やコーチがどういう声掛けをしていて、どういう雰囲気を作っていてとか、そういうところも分からなければいけないと思って練習を見ています。
例えば、選手が練習で大きなミスをして、落ち込んだ状態で食事をしに来た時に、そこで私が「なんで食べていないの?」って怒ったら、それって逆効果になってしまうと思うんです。だから、練習を見て、選手の状態を分かった上で声をかけることって大事なんじゃないかなって思っています。
◆スマイルカフェは時間をかけて書いています
――選手の奥さんなどパートナーへの教育もしているんですか?
私からパートナーに直接呼びかけたり、強制的にやったりする訳ではないんですが、選手からの要望があって、希望するパートナーに対して栄養セミナーをやったりしました。あと、練習試合の時には会える機会があるので、相談がある方には声を掛けていただいたりしています。
みなさんたちからは、選手に対してしっかりとした食事を出してあげたいという想いを強く感じるので、そのフォローになるようなことが出来ればと思っています。ただ、多くの方に小さいお子さんがいて、子育てで大変な中、「こういう食事を作って」と更に大変にさせるようなことは選手も望んでいないと思うので、「お家でこういう食事が作れそうだったら出してみてください」と伝えるくらいで、私としては選手自身がちゃんと食べるように教育していくことを考えています。
――スマイルカフェも担当をされていますが、スマイルカフェでは何をポイントにやっているんですか?
私がスマイルカフェをやらせてもらうようになったのも2013年からで、スマイルカフェのコンセプトとして、ファンの方に向けて選手の色々な面を知ってもらうということがあると思うので、私はラグビーを通して見える選手ではない部分を意識して出すようにしていて、食事を通して見える選手の姿を出していって、ファンの人たちにそういう姿を楽しんでもらえればと思っています。
あと、食事の取り組みで色々なことをやっているので、それを子どもたちの食事に活かしてもらえればと思って、情報提供の場と考えてやっています。そして、選手に対しての栄養教育の場としても考えています。「選手に対してこういう教育をしました」ということを出すことによって、選手の復習の場になったりしますし、「これ伝えたから知ってるはずだよ」と選手にプレッシャーを与える場としても使っています(笑)。
――文章を書いたりするのが得意なんですか?
全然得意じゃないので、時間をかけて書いています(笑)。書くのは面白いんですけど、「この内容で面白いかな?」とか思いながら書いています。練習見学に来て下さっているファンの方から「この間のスマイルカフェ面白かったよ」とか声を掛けてくださったり、地方の試合に行った時に「マイキーさん!」って声を掛けてくれたりするので、読んでくださっていて嬉しく感じます。
私は今もスピリッツ・オブ・サンゴリアスを読んでいますが、サンゴリアスに関わり始めた当初は、選手のことも分からなかったし、選手の考えも分からなかったので、このインタビューを読んで勉強をしました!
◆美味しい・楽しい・頑張れる
――自分自身の今の課題は何ですか?
今のというより、常に課題にしているんですが、選手がより興味を持つような栄養の取り組みをするとか、"美味しい・楽しい・頑張れる"という食事を出すことを考えているので、新しい取り組みであったり、新しい知識、新しいエビデンスなども取り入れながら、サンゴリアスの食事をどんどん進化させていくことを課題にしています。
あと、サンゴリアスで7年やらせてもらっているんですが、それを次に繋げなければいけないと思っています。私がこれから先100年とか携われる訳ではないので、今まで私がやってきたこととか、チームの皆さんと作ってきた栄養の文化とか、そういうものをチームに残していくことも考えなければいけないかなと思っています。
私がサンゴリアスに入ったのは、前年に2年連続2冠を獲得した後のタイミングでした。最初は何をしたらよいのかもわからない状態でしたが、耕太郎さん(田原/コーチングコーディネーター)や若井さん(ヘッドS&Cコーチ)、新田さん(現NTTコミュニケーションズ ハイパフォーマンスマネージャー)に、「現場とは」「ラグビーとは」「サンゴリアスとは」ということを厳しく教えてもらいながら、テキスト通りではない、本当に現場に合った方法を学びました。
サントリーは「やってみなはれ」精神があるので、新人の私にも「とりあえずやってみなよ。やってダメだったら変えればいいから」って言ってくれて、徐々に自分からチャレンジできるようになっていきました。
私が入った時はチームとして、より食事に力を入れようというタイミングだったので、若井さんたちは多くの案を出してくださって、私はそれを実現するためにはどうすれば良いかを考えて、少しずつ食事の内容や見た目も変わってきました。それに最初は私も選手とそんなにコミュニケーションを取れなかったので、食事アンケートを取ったことがありました。選手からのそれぞれの意見に対して「こういう取り組みをしていきます」という返答を書いた用紙をホワイトボードに貼り出したり、料理長の石井さんにも協力してもらって、ベースが出来上がったと思います。
――目標は何ですか?
課題をクリアすることですかね。
――将来やりたいことはありますか?
いま、やりたいことができているので、「次にこれをやりたい」というのがあまりないんですが、次は栄養の仕事じゃなくてもいいかなって思っています(笑)。今も栄養士だけど、栄養の仕事というよりは栄養を通じてニーズを叶えていく仕事だと思っているので、それが必ずしも栄養や食事じゃなくてもいいのかなって思っています。
スポーツやラグビーには関わりたいと思っていますが、イベントを成功させるという仕事でも良いと思いますし、マーケティングのような仕事も良いかなと思います。「どういうニーズがあってこういう商品を作る」とか、「どこに並べたら買ってもらえるか」とか、今やっている栄養教育でもそういうことを考えたりしています。「こういうことを知って欲しいから、こういう情報を伝える」とか「これを食べて欲しいから、こういう情報を伝える」ということの中で、「どういう伝え方をしたら選手が食いつくか」ということをスタッフの人と一緒に考えたりしています。あと「どこにこの資料を貼ったら、みんなが見てくれるか」とか、「どういう色で資料を作れば、みんなの目を引くか」とかを考えているので、そういう仕事をしていきたいですね。
今は栄養士という立場で関わっているので、栄養の仕事に見えると思いますが、栄養に関係なく、これまでやって来たことが活きるところはたくさんあると思うので、今後はそういう仕事も良いかなって思っています。
◆仲間を大切にする文化、リスペクトする文化
――これまでラグビーに関わって来て、いま開催されているワールドカップに期待することは何ですか?
ラグビーの面白さを、もっと多くの人に知ってもらうことであったり、ラグビーに興味を持ってくれる人が増えてくれたり、ラグビーってめちゃくちゃ素敵なスポーツだと思っているので、そう思う人が増えてくれたらと思います。ラグビーの素敵さを知ってもらいたいです。
――ラグビーの素敵さを挙げるとすれば何ですか?
サンゴリアスに関わるようになって、最初に教えてもらって素敵だなって思ったことが、試合が終われば敵味方がなくなるノーサイドの精神です。あと、試合を見ていて思うんですが、自分よりも大きい相手や強そうな相手に果敢に向かって行って、決して逃げずに立ち向かうので、あの姿を見るだけでも勇気をもらえますし、試合を見るだけでも元気になれると思います。
サンゴリアスを見ていて思うことは、みんながチームメイトをリスペクトして、ひとつの目標にやっていく姿というのが、私がこれまで生きてきたコミュニティの中になかったレベルで、仲間を大切にする文化、リスペクトする文化、そういうところが本当に素晴らしいと思います。そういうところを見ると、自分も頑張れるというか、辛いことも頑張れることに繋がっているので、ラグビーを知ることで自分にも活かせることがあると思います。
――どうなっていけば、より多くの人にラグビーの魅力が伝わると思いますか?
難しい質問ですけど、勝って盛り上がって、多くの露出があることは大事だと思いますし、そこはスマイルカフェにも通じていて、サンゴリアスを知ってもらうという大きな目的の中で、ラグビーを知ってもらうとか、ラグビー選手を知ってもらう、ラグビー選手はどういう食事をしているか、どういうことを考えているのか、そういうことが伝わると思うので、皆さんに身近な食事、日常的なことを通してラグビーを知ってもらいたいなって思っています。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]