2019年9月13日
#653 尾﨑 晟也 『ディフェンスで安定して高いパフォーマンスを出せる選手を目指したい』
ルーキーイヤーに安定した活躍を見せ、更なる飛躍が期待される2年目の尾﨑晟也選手。何をテーマに新シーズンを迎え、どこを目指しているのでしょうか。ワールドカップ日本代表メンバー発表の数日前に話を訊きました。(取材日:2019年8月下旬)
◆普段やっていることを100%出す
――トップリーグカップ2019を終え、いまの心境はいかがですか?
早くも終わってしまったという感じがしますね。春シーズンは日本代表の合宿に参加させてもらいましたが、メンバーから漏れてカップ戦に出場することになって、ワールドカップに向けて最後のアピールの場という気持ちがありましたし、チームとして「絶対にタイトルを取って日本一になってやる」という気持ちもありました。その中でプレーしていて、カップ戦を通して自分としてはすごく悪かった訳ではないんですが、かと言ってすごく良かったかと言えば、あまり自分の中では納得いく感じではなかった、というのが正直なカップ戦の感想です。
――社会人2年目になるわけですが、1年目と比較してどうでしたか?
1年目の最初の方は苦しみましたが、シーズン後半に進むにつれて体の調子も良くなってパフォーマンスも上がって来て、トップリーグの終盤では手応えを感じることが出来ました。
昨シーズンが終わってから日本代表に呼ばれるようになりましたが、試合の出場時間は短かったので、試合の慣れであったり感覚の部分が落ちてしまっていたと思います。あと、自分の中で「上手くやらなきゃ」「アピールしなきゃ」という気持ちが強くあって、プレッシャーを感じてしまい上手くいかなかったかなと思っています。
――そこから得たものは何かありましたか?
やっぱりアピールしなければ上にはいけないということはありますが、それをプレッシャーに感じるのではなくて、「普段の練習からやっていることを100%出す」という試合のメンタルを安定させて、常に一定のパフォーマンスが出せるようにしなければいけないということを学びました。プレッシャーを感じすぎず、普段通りやる方が自分のパフォーマンスも出るのかなと思いますね。2019年シーズンは特別な気持ちがありましたが、その中でも普段通りのパフォーマンスが出せれば良かったなと思います。
――プレッシャーを感じることは悪いことではないですよね
そうですね。毎試合でプレッシャーを感じない訳ではありませんが、今回は「どうしてもアピールしたい」という気持ちがあったので、それが逆に空回りというか、上手くプレーに反映できなかったなと思います。
◆テレビには映らないような動き
――尾﨑選手が考える自分の一番の良さは何だと思いますか?
考えてプレーすることであったり、ハードワークであったり、ボールを持っていない時の動きであったり、そういったところが強みだと思っているので、どんどんアタックラインに顔を出したり、ディフェンスではカバーディフェンスやチェーンの動きというのは、自分の中で意識してやっています。
常に考えてプレーしていますし、スペースを見る動きは強みだと思います。日本代表には能力が高い選手がたくさんいて、堅樹さん(福岡/パナソニック)は足が速いですし、マノ(レメキ・ロマノラヴァ/ホンダ)は体が強いですけど、バックスリーって無駄な動きが多くて、ただその無駄な動きを走ることによって相手が攻められなかったり、キックが蹴れなかったりするので、そういったあまりテレビには映らないような動きを強みにやっていました。その動きに関しては、ジェイミー(ジョセフ/日本代表ヘッドコーチ)にも高く評価してもらっていたので、それは良かったかなと思います。
――どういったきっかけで、そういう動きが大切だと気付いたんですか?
僕は派手なプレーができるタイプではなかったので、大学生くらいからそういったプレーをする選手を見たりしていました。僕の中で派手なプレーをする選手が絶対に上手いとは思っていなくて、しっかりと基礎というか、見えないところで動ける選手が良い選手だと思っているので、そこを目指してやっています。
――大学生時代に見ていた選手は誰でしたか?
その時は森谷さん(パナソニック)とかを見ていました。大学時代は同じポジションで、派手なプレーはあまりないんですが、ひとつひとつのパスであったり、本当に細かいところのスキルが高くて、こういう選手がチームを陰で支えているんだなと思いましたし、そういうことが出来る選手になりたいと思っていました。
――本人に伝えたことはありますか?
言っていないです。本人には言わないです(笑)。
◆ディフェンスの細かいテクニックの部分
――ワールドカップメンバー発表前の網走合宿には呼ばれませんでした。それに関してはどうでしたか?
その合宿に自分が参加出来ないというのはとても悔しいです。ただ、これで僕のラグビー人生が終わる訳ではありませんし、また4年後にワールドカップはありますし、そこに向けて次はしっかりと切り替えてやると、今は思っています。
――2019年ワールドカップメンバーに入るために足りなかった部分はどこだと思いますか?
今の日本代表選手に比べると全体的に足りないと思いますし、経験も含めて、ずっと上のレベルで戦わないといけないですし、合宿などにも常に一定して呼ばれるような選手にならなければいけないと思います。自分自身としては、現時点でのレベルでは選ばれるべきではなかったと思っています。スピードもフィジカルもタックルも、全てが足りなかったですね。
――今後、全体的にレベルアップを図っていくと思いますが、現時点での最大のテーマは何ですか?
今はディフェンスですかね。アタックが素晴らしい選手はたくさんいますが、ディフェンスで安定して高いパフォーマンスを出せる選手、抜かれない選手は少ないので、それを世界のレベルで出せるようになりたい。そうすれば一定のパフォーマンスが出せるようになると思っています。アタックが調子悪くてもディフェンスで常に高いパフォーマンスが出せれば安定すると思いますし、将来的にはそういう選手を目指したいと思っています。
――ディフェンスではどこが良くて、どこが良くないと思いますか?
ディフェンスに行ける、行けない選手って、色々なパターンがあるんですが、自分としてはディフェンスに行く気持ちがあるので、あとはテクニックの部分ですね。動きの中での細かいテクニックの部分を、どんどん身につけていかなければいけないと思います。
ただ飛び込んでタックルに入るとか、そういう次元ではなくて、もちろん世界で戦うためにはパワーも必要なんですが、その中でもしっかりとしたタックルテクニックが出せるようにならなければいけないと思っています。あと、タックルだけじゃなくて、ディフェンスの間合いの詰め方であったり、タックルに行くまでのテクニックも更に身につけていきたいと思っています。
――ワールドカップで世界のトップ選手が日本に来る訳ですが、そういったところも注目して見ようと思っていますか?
特にウイングの動きとか、バックスリーのカバーの部分、あとはディフェンスの上がり方のタイミングとかを見て勉強したいなと思います。もちろん日本代表戦でもそういうところを見たいと思いますし、日本のディフェンスがいま自分が目指すべきスタイルだと思うので、同じポジションの選手の動きなどを見て勉強したいと思います。
◆周りを活かしながら自分でも行く
――ワールドカップ後のトップリーグに向けた目標は何ですか?
同じポジションにテビタ・リーが入ってきましたし、江見さんとか怪我をしていた選手も復帰してくるので、まずはしっかりと準備をして、チームの始動に合わせていきたいと思います。レギュラーとして試合に出続けることが最低条件だと思うので、そこをしっかりと目指すことと、ワールドカップが終わって注目される中でハイパフォーマンスを出すことが、いまの自分が目指すべきところだと思っています。
プロリーグの話も出てきていますし、サンウルブズがあと1年スーパーラグビーで戦えるので、今後はそこに向けてもやっていきたいなという気持ちがあります。どんどん世界と接点を持ってやっていきたいと思っています。
――社会人1年目での経験や日本代表での経験は自信になりましたか?
自分の中でやっぱり手応えは感じていますし、今回のワールドカップメンバーには選ばれませんでしたが、全くできないというレベルではないと思っていますし、世界で戦えるという自信を持っているので、そこにどれだけ近づいてできるかが成長していくための鍵だと思っています。そこで、これまでのような選手になるのか、世界で戦える選手になるのか、という大きな差になると思うので、常に上にいられるようになりたいと思います。
――いまやっていて、一番面白いことは何ですか?
今回のカップ戦では全ての試合でフルバックでプレーしましたが、周りを活かしながら自分でも行くというのがフルバックだと思うので、そこはやっていて楽しかったですね。先ほども言いましたが、一番の課題はバックスリーとしてのディフェンスのコミュニケーションのところで、今シーズンは新しいシステムも取り入れてやっていたので、少し難しいと感じた部分はありました。それも含め、ディフェンスで新しいことに取り組んだので、難しさを感じながらもやりがいを感じていたので、楽しかったと思いますね。
――昨シーズンから神戸製鋼に負けていますが、それについてはどう思いますか?
今回のカップ戦での神戸製鋼戦は、大事な場面で大きなミスをしてしまったので、とても落ち込みました。ただ、昨シーズンの決勝と比べると点差も縮まりましたし、手応えもありました。ゴール前での自分のミスが悔やまれますが、苦手意識は全然ないので、次戦った時には絶対にリベンジできると思っています。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]