2019年8月 9日
#648 塚本 健太 『ランニングの全部を見てほしい』
普段からもの静かな塚本健太選手が、これまでになくダイナミックなプレーを見せたパナソニック戦。その試合を中心に、塚本選手の新境地を聞いてみました。(取材日:2019年7月下旬)
◆絶対に取るぞ
――トップリーグカップ2019第5節パナソニック戦でのトライが印象的でしたが、振り返ってみていかがですか?
第4節日野戦で確実にトライを取れる場面で取れなかったので、パナソニック戦ではトライ出来て良かったと思います。あと、日野戦では走っていて追いつかれた場面もありました。その場面について若井さん(ヘッドS&Cコーチ)と話をしていて、「追いつかれるかなと思って走ってたら、そりゃ追いつかれるよ」と言われて、「確かにそうやな」と思いました。「行けるかな」と思って走っていたんですが、「絶対に走り切る」という気持ちが足りなかったんだなと思いましたね。前の週にそういうことがあったので、パナソニック戦では「絶対に取るぞ」という気持ちを持って走りました。
――気持ちによって、結果は大きく変わりましたね
その気持ちが全てかは分かりませんが、気持ちは大事ですよね。1週間でスピードが上がったとかはないと思うので(笑)。
――パナソニック戦では良くも悪くも目立つプレーが多かったですよね
以前までは悪いプレーをした時に、「あ~、やってもうた~」って気持ちが落ち込んでしまうことがあったんですが、パナソニック戦はミスをした時に仕方ないと切り替えることがうまく出来たと思います。
――メンタル面で変わるきっかけがあったんですか?
何かのネットの記事を読んでいて、「自分の思っていることや言ったことは自分に返ってくる。気持ちの持ちようで変わることが出来る」という言葉がありました。それ以来、意識的にそういう考え方をするようにしています。
――自分の中でも変化を感じているんじゃないですか?
ネガティブになることが少なくなったような気はします。
――プレーもダイナミックになっていませんか?
どうですかね(笑)。
◆強い気持ちを持って
――パナソニック戦がターニングポイントになるのかもしれませんが、今の課題は何ですか?
以前から言っている、プレーにムラがあるところですかね。このカップ戦ではコンディションも良い方なので、このパフォーマンスをどの試合でも出来るようにしていかなければいけないと思っています。
――コンディションが良くて、心の状態も良ければ、どの試合でも良いパフォーマンスが出せそうな気はしませんか?
します。日本代表選手や新加入の外国人選手などが合流した後でも、そういう強い気持ちを持ってやれれば、いけるかなと思います。
――感覚的に何かを掴んだということはありますか?
まだ掴んだというところまではないですね。試行錯誤中です。
――パナソニック戦を思い返してみて、どういう気持ちになりますか?
「走り切る」とかそういう細かい所の気持ちの変化はありましたけど、試合に対するモチベーションなどは、カップ戦ではどの試合も変わっていないですね。パナソニック戦が特別良かったということはなくて、カップ戦を通じて同じような気持ちかなと思います。
――パナソニック戦もプレーにムラがあったと思いますか?
ミスをしてしまっていたので、高いレベルでずっとプレーが出来ない、自分の弱さがあったと思います。まだ80%を出し続けることが出来ていなくて、良い時は90%だけど、悪い時は20%ということがあって、よく剛さん(有賀/BKコーチ)にも、「日によってパフォーマンスが違う」と言われたりします。
――パナソニック戦後は、その有賀コーチから何か言われましたか?
試合何日か前の練習で、いくつかのドリルを繰り返していく中でもムラがあると言われていました。試合に関しては、特に言われていませんが、練習の時に言われることがあります。
◆思いっ切りの良さ
――これからカップ戦の決勝トーナメントへと入っていきますが、この後の試合のイメージは?
イメージとしては、良いプレーをして勝って優勝するというイメージですね。その中で、例えちょっとのムラがあったとしても、「その次のプレーで取り返す」という気持ちに持っていけると思うので、落ちることなくやっていきたいと思います。
――そのまま成長していけば、日本代表も見えてきませんか?
そこは見えないっす(笑)。まあ、見えないというよりかは、サンゴリアスでレギュラーを取って、その先で日本代表に呼ばれたら嬉しいですけど、「まずはこのチームで」という気持ちですね。僕はまだそのレベルに行ったことがないので、実際にそのレベルのスピードやフィジカルを知らないんですよ。
――目指すところは?
来年1月のトップリーグでレギュラー争いをするためには、このカップ戦でしっかりと良いプレーをして結果を出さなければいけないと思っています。なので、まずはカップ戦で良いプレーをして、そしてトップリーグでも試合に出て良いプレーをしていけば、その先があると思います。
――トップリーグで10トライを挙げた1年目の時の感覚に、今は近いんじゃないですか?
何も考えずにやっていたんですが、僕はそっちの方が良いのかもしれないですね(笑)。そう考えると、思いっ切りの良さは当時の方があって、今は無意識のうちに守りのプレーをしていたのかもしれません。2年目の時に怪我とかもあったので、「また怪我したらどうしよう」とか、そういう気持ちがどこかにあったのかもしれないですね。
――いま、そういう守りの気持ちはなくなりましたか?
もう「怪我をしたらしょうがない」という気持ちですね。怪我を考えてプレーしても上手いこといかないので、「怪我をしてしまったら、また治して頑張ろう」という感じです。
◆攻めのディフェンス
――日本のラグビーのレベルが上がっていると思いますが、その中でやるラグビーの面白さはどこですか?
面白さは変わらないですね。相手を抜いたり、良いプレーをしたりして、みんなで盛り上がってというのが面白いですね。
――良いプレーとは?
例えば、ラインブレイクであったり、良いタックルが決まったり、良いキャッチをしたりとか、そういうプレーですかね。
――それぞれのプレーについては、やはり1年目と比べると格段にレベルアップしていますか?
それは絶対にありますね。スキルの部分でもそうですし、どう走り込めばこのエリアが空くとか、全般的に成長しているとは思います。あと、タックルで言えば、ジョージ(スミス/DFコーチ)がコーチとしてチームに戻ってきて、テクニック的な部分が良くなっていると思います。感覚的になってしまいますが、一か八かというタックルは無くなっていると思いますし、攻めのディフェンスが出来るようになって来たんじゃないかなと思っています。
――それがジャッカルに繋がったりしますか?
良いタックルが出来れば、そのままボールを奪えると思いますし、精度高く出来るようにしていきたいですね。
――そういう部分で成長しているんですね
それは成長とは言わないですかね。まだ成長段階です。僕の中では、成長したと思う時は引退の時なのかもしれません。これ以上伸びないと感じた時に成長したと感じるんだと思います。
――今シーズン注目してもらいたいポイントは?
そこはやっぱりランニングですかね。ランニングの全部を見てほしいです(笑)。ラインブレイクも走り切るところも、ディフェンスでのランニングとかも、全てを見てもらいたいです。
――ランニングには100%の自信があるということですね
そうですね。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]