2019年8月 1日
#647 竹下 祥平 『ぶつかって壁を壊しに行く』
トップリーグカップ2019でセンターとしての存在感を示す竹下祥平選手。ウイングとはまた違ったプレーが必要とされるポジションで、何を大切にしてどこを目指しているのでしょうか。パナソニック戦を前に話を聞きました。(取材日:2019年7月中旬)
◆突破を図る
――試合を見ていて体をぶつけることが多いですね
センターをやっていますし、チームから求められていることは接点だと思うので、体をぶつけることは増えるかなと思います。体をぶつけるので、多少のダメージはありますが、覚悟していることなのでそれは仕方ないことだと思います。
――体をぶつけることは好きですか?
嫌いではないですね。ただ、役割と捉えているので、やらなければいけないことだと思っています。ポジションとしてもそうですし、僕がチームから求められていることでもありますね。
僕の中でのイメージですけど、突破を図るところがセンターだと思います。そこでゲインが切れれば相手のディフェンスが崩れて外にチャンスができるし、相手ディフェンスの幅が広がっていればその間を縫ってゲインもできるし、センターというポジションは突破を図るポジションだと思っています。
――突破するということはどういうイメージなんですか?
僕の中では相手を抜きに行くというより、ぶつかって壁を壊しに行くイメージです。だから、接点が好きなように見えているのかもしれないですね(笑)。あと、僕は器用な方ではないので、シンプルに考えるとボールを持ってドーンと行った方が、性に合っている感じです。
――その役割を果たせた時はどういう感覚ですか?
僕のプレーが起点になって、その後にトライを取ってくれたら嬉しいですね。
――これまでやってきて、起点になる確率は高いと思いますか?
練習でやって来たプレーができると嬉しいですけど、もっとボールを呼び込んで絡んでいかなければいけないと思っています。
――そのためにはどうしなければいけないと考えていますか?
10番や12番に対してどういうボールが欲しいのかを、僕からもっと要求しなければいけないですね。練習からコミュニケーションが取れていないと試合ではできないので、そこがまだまだ足りていないと思っています。
そのためにはもっとラグビーを学んで、次にどういうボールが出てくるのかを予測できるようにならないといけません。ボールが出てくるところにいなければもらえないと思うので、ウイングをやっていた時もそうでしたが、そのポジションでやるべきことを、もっとイメージしてやらなければいけないと思います。
――どのくらいで理想とするプレーができるようになりそうですか?
欲を言い続ければ、解消されることはないかもしれないですよね。上手い人はたくさんいますし、課題が解消されることはないかもしれないですけど、その中で自分が少しずつでも良くなっていければいいのかなと思います。
◆迷わずに行く
――人は誰しも痛いことは嫌だと思いますが、チームから求められていることをどのように受け入れましたか?
僕にスキルがあればパスの判断になると思うんですけど、下手な方なので、僕の判断としてプライオリティーが高くなるのがボールキャリーになります。
――相手のディフェンスも待ち構えていると思いますが、そこに向かっていく時はどういう気持ちなんですか?
特に考えていないですね(笑)。相手のディフェンスをずらせるようであれば、少しでもずらしてぶつかりに行きますけど、行くと決めたら相手に関係なくぶつかりに行きます。例えば、ディフェンスとの明らかな体重差があれば考えますけど、相手がバックスであれば迷わずに行くと思います。やっぱりラグビーは体を当てるスポーツなので、接点で優位に立てるというのは楽しさの一部になるのかもしれないですね。
――接点で勝てるのはなぜだと思いますか?
体が大きい方が勝つのは当たり前だと思いますが、体が小さくても勝つ時はタイミングだと思います。良いスピードと自分の良い位置で当たれるかが大事なんじゃないかなと思います。
――良い位置とは?
人によってボールをもらいたいタイミングが違って、ディフェンスの近くでもらいたいのか、ディフェンスと少し距離があるタイミングでもらいたいのか、そこは選手によって変わってくると思います。だから、出し手とのコミュニケーションが大事になります。
――欲しいタイミング、欲しい角度でボールがもらえるというのは、1試合の中でどれくらいあるものですか?
この前の日野戦では、比較的多い方だったと思います。
――それができた理由は?
早い段階からコミュニケーションが取れていたからだと思います。タイミングが合わずにミスしてしまう場面も何度かありましたが、トータルで言えば悪くなかったと思います。
◆もっと首を振る
――今の課題は何ですか?
スペースをもっと見るということですね。少し視野を広げれば、もっとラインブレイクできる場面があったり、自分で行かずにパスすれば外でチャンスが生まれる場面もあったと思うので、周りの状況をもっと見ないといけないと思います。その結果として僕が起点になれたらいいですね。
――どうすれば視野を広げられそうですか?
いま指摘されているのが、もっと首を振ることです。起点からボールが出るところを見がちなので、ボールが出てくる前に外の状況を把握しておかなければいけないと思っています。これまでのスタイルを変えるためには、練習から意識しないとダメですね。
周りを見ることによって、これまで出来ていたことが出来なくなるんじゃないかと思ってしまうこともあるんですが、周りの状況を把握することのメリットの方が大きいと思って取り組んでいます。
――いつ頃までには身につきそうですか?
いつ頃と言うか、もうやらなきゃいけないです(笑)。意識の問題だと思います。
――常に意識するために取り組んでいることはありますか?
やらなければいけないことを書いて、常に意識するようにはしています。いくつか書いているんですが、その中で最初に書くのは「コミュニケーション」で、次が「ディフェンスの態度」です。チームのスピリッツに"NEVER GIVE UP"を掲げているので、立ち上がりが遅かったり、諦めたりする態度は絶対に無くさなければいけません。だから、「首を振る」は3番目に書いています。
――やるべきことがたくさんありますね
そうですね。まだまだやることがいっぱいあります。やることはいっぱいありますが、できていないから試合に出られていないんです。試合に出るためにはやらなきゃいけないんです。
――その課題は今シーズンからの課題なんですか?
昨シーズンくらいからですね。ウイングの時はゆとりがあって、できているかなと思っていたんですが、センターだと視点も変わってくるので、勉強しなければいけなくなっている部分ですね。逆にセンターからウイングにうつった時は、より周りが見えるような感じがします。
――それはレベルが上がっているということでもありますよね
30歳を超えても成長しています(笑)。
――スピードやパワーも成長していますか?
スピードは変わっていないと思います。少し前に怪我から復帰したんですが、パワーも落ちてはいないですね。
――痛みに強い方ですか?
弱い方だと思います(笑)。でもバックスよりもフォワードの方が痛いと思いますし、15分の1としてその役割を与えられているのであれば、チームのために全うしなければいけないと思います。
◆相手にとって嫌な存在になる
――今シーズンの目標は?
今シーズンが始まる前に先ずチームとして出てきたのは、昨シーズン神戸製鋼に5対55で負けたのは何が足りなかったのかという中で、接点の部分で相手の方が上回っていたということでした。接点で負けないようにするために体を張るということで今シーズンがスタートして、僕個人としてもしっくりきてスタートできたと思います。
アタックではボールキャリーでゲインラインを切ること、ディフェンスではタックルとブレイクダウンで球出しを遅らせたり、ボールを獲得することを目指してやっているので、そこが出来るかどうかだと思います。
――今やっているラグビーの面白さは何ですか?
体を当ててどれだけ痛くても、試合に勝つと嬉しいです。チームの15分の1の役割を果たして、結果として勝てた時は良かったと思いますし、ホッとしますね。
――役割を果たすための意気込みは?
僕が求められていることは接点の部分なので、そこでどれだけゲインラインを切れるか、相手の球出しを遅らせられるか、相手チームにとって嫌な存在になれるかということなので、そのためにやっていきます。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]