2019年5月17日
#636 祝原 涼介 『プロップでトップになりたい』
今シーズンの新人インタビュー第1弾。明治大学からサンゴリアスへやって来た期待のプロップ・祝原涼介選手に熱い気持ちを訊きました。(取材日:2019年5月5日)
◆ボールに関わることが好き
――まず初めての人に説明する時、自分はどんな選手と説明しますか?
ボールを触ることが好きなので、フィールドプレーが好きです。ボールに関わるフェーズでボールをもらったり、ボールを持って相手のゲインラインを越えに行ったりすることが好きです。あと、プロップなので、スクラムについては大学時代は自信を持ってやってきました。そういうところを見てほしいと思います。
――ボールを持つことが好きだったら、なぜバックスを選ばなかったんですか?
この体型ですし(笑)、できるところは限られています。最前列の選手がボールに触れて、器用にボールを持ってパスをしたり、ゲインラインを越えたり、外国人選手にはそういう選手がたくさんいるので、そういう選手に憧れたということもあります。
――比較的新しいタイプのフォワードですね
はい、それを目指しています。シェイプラグビーを高校時代に桐蔭学園でやってきたんです。全員がボールを触れなければいけないということで、高校、大学、社会人と同じプレースタイルのチームを自ら選びました。そこを長所として活躍できたら良いと思っています。
――ボールに関わることが好きなのは子どもの頃からですか?
そうですね。球技は子どもの頃からたくさんやってきて、ラグビーは年少からずっとやってきました。親との約束みたいな感じで、「土日にラグビーをやれば、平日は何をしても良い」と言われたので、すぐにいろんなスポーツに切り替えて、たくさんのスポーツをやってきました。
――親はなぜラグビーをやらせたかったんですか?
親はラグビーをやっていたわけではないんですが、生まれたとき僕が大きくてラグビーをやらせたいということで、ラグビーを選んだらしいです。なんでラグビーを選んだのかは分からないんですが、物心つく前からラグビーをやっていました。なので、ラグビーをやっていることが当たり前という感じでした。
◆オーストラリアンラグビー
――小さい頃からラグビーの試合も観に行っていたんですか?
試合を観に行くことが大好きでした。父親が東芝の社員だったので、昔から東芝のラグビーを観て育ちました。東芝が年に1~2回サニックスかコーラと試合するタイミングで、トップリーグの試合を観に行くことが小学校時代の楽しみでした。
――元々どこで生まれたんですか?
福岡です。小学校6年生の時に親父の転勤で東京に来て、たまたま桐蔭の近くに家がありました。
――なるほど、小学校6年生までは福岡でトップリーグを観ていたんですね
はい。福岡はトップリーグをやる機会が本当に少なかったんですが、東京に来てみて秩父宮でトップリーグを毎節のようにやるのがとても嬉しくて、小学校6年生~中学生の頃まではたくさん観に行っていました。
――サントリーに入ろうと思ったきっかけは?
高校、大学でやったシェイプラグビーというオーストラリアンラグビーと呼ばれるものが自分には合っていると思っています。ラグビーもトップチームでやりたいですし、上を目指したいですし、その中でも自分にあったプレースタイルに合っているチームに行きたかったのでサントリーを選びました。あとは、チームカラーというのもあって、雰囲気を見ても一番合っていると思いました。高校や大学の先輩も多いので、そういう面でもやりやすいです。
――高校と大学の先輩でもある中村駿太選手がいるのも、サントリーを選ぶ1つのきっかけでしたか?
そうですね。大学を選ぶ時に、早稲田か明治かで悩んだ時があって、シュンさん(中村駿太)が明治にいる時に桐蔭に来てくれて「大学どこに行きたいんだよ?」みたいな感じで、明治の寮に連れて行ってくれたり、いろいろな話を聞いたりしたことで心を動かされました。シュンさんがいなかったら早稲田に行っていたんじゃないかなと思います。自分としては良い道を歩んできたと思っています。
――実際にサントリーへ来てみてどうですか?
コミュニケーションをいろいろな先輩がとってくれるのでやりやすいです。今たくさん情報が入っているので頭が整理できていない部分もありますが、自分がやりたいラグビーはできていると思います。
◆スペースに走り込む
――子どもの頃は他にどんなスポーツをやりましたか?
幼稚園の頃にサッカー、そのあとソフトボール、バスケットボール、卓球、ハンドボール、もう1回バスケットボールを長くやりました。
――どれが好きでしたか?
その中ではバスケットボールが一番ですね。ミニバスもやっていましたし、中学校も2年間だけバスケットボールをやりました。
――3×3でオリンピックを目指したらどうですか?
いやーそういうのはたぶん無理ですね。中学時代はセンターのパワープレーでは負けなかったですけどね(笑)。
――もしラグビーをやっていなかったら、バスケットボールをやっていたかもしれませんね
やっていたかもしれないです。でも、柔道もやってみたかったんですけど、中学に柔道部がなくて、結局ハンドボールを1年間やってバスケットボールに戻りました。
――投げることも得意そうですよね
ハンドボールの時はキーパーをやっていたんですが、端から端までは普通にボールを投げられました。
――そういう中で子どもの頃はラグビーの面白さをどのように感じていたんですか?
小学生の頃は体も大きかったですし、その時からボールを触ることが好きだったので、そこでゲインラインを越えることができましたし、体を活かして突破もできました。
あと、スペースに走り込むことが好きです。当たることは小学生の頃はやっていましたけど、上手くいなすことは高校時代に教わりました。
――それも面白かったんですか?
面白いです。そこでスペースを見つけます。中学生の頃にボールを動かす10人制でフィールドが大きくて、なかなか自分の強みを活かせなくて、結構悩んだ時期はありました。悩んだまま高校に入って、ちょうど堀越さんが1つ上の先輩で、シェイプで走り込んだりとか、いろいろなことを教わって、またラグビーが自分に合ったというか、そこで成長できたという感じでした。
◆今は3番
――投げることが好きだったら2番でも良かったですよね?
そうですね。2番もU20日本代表で経験したんですが、あんまり向いていなかったと思います。U20でしかフッカーをやっていなかったんですけど、スローイングの経験がなくて苦手で、的に投げることはできましたが、経験がない上に国際舞台でしか経験していなかったので、試合にパッと出されて相手と競っているところに投げることがとても難しくて、なかなかできませんでした。
――またチャレンジしたらどうですか?
そこは1番と3番がもっと完璧にできたらやりたいと思います。
――1番か3番、今はどちらが好きなんですか?
今は3番です。大学時代、本当は1番をやりたかったんですけど、チーム事情で3番になって今は3番しか組んでいません。青木さん(スクラムコーチ)からも3番でとりあえずやっていって慣れてきたら1番もという感じで言われています。今は3番としてはダメダメで、トップリーグの洗礼を受けている感じです。
――どの辺りがダメなんですか?
まず姿勢を取ること。いまは姿勢が取れていないことと、後ろとの繋がりもまだまだできていない部分が多いです。まず姿勢が取れないと後ろも支えられないので、基礎的なところをいちから青木さんに教わっています。
――大学でやっていた頃と今とではどう違うんですか?
組み方が違います。サントリーはサントリーの組み方があるので、それにまだ適応できていないんです。大学に入った時も明治の組み方に適応できなかったので、そこは時間と練習の積み重ねで解決していくしかないと思っています。
――自分の見込みとしてはどのくらいで解決できそうですか?
まだ分かりません。サントリーで1ヶ月やってみて、ちょっとずつこうやったら良いというのは見えてきたので、あとどれくらいかかるのかは分からないですが、なるべく早くカップ戦までには試合で結果を出せるようにしっかり準備して、そこまでに組めるようにしたいです。
――他に課題は?
フィールドプレーも好きですが、情報量が多くて自分を出せていないというか、良いポジションに立てていない。自信がないところが出てしまっているので、ラグビーナレッジの部分を上げて戦術やシステムを理解して、そこで自信を持てればもっと自分からも発信できるようになるので、まず理解することが大事だと思います。
――そこはどのくらいで出来そうですか?
毎日毎日覚えることがありますし、試合を重ねる毎にそこはできてくると思います。チームとしてもそういうトレーニングはまだ多くやっていないので、これからの合同練習でいろんな課題が見つかってまた成長できると思いますし、試合を重ねていったらできるようになると思います。
――体は自信がありますか?
体力面は数値では他の選手に劣っている部分もありますが、少しずつ上がってきたので、これから伸びていくと思っています。ウエイトの数値は問題なく、数値で言ったら強い方なので、そこは自信を持って今までと同じ取り組みをしていきたいと思っています。
――他には?
まだ相手への力の伝え方があまり上手くないですね。当たり方もそんなに上手くないと思っています。
――基本的には技術的なところですか?
技術的なところも足りていないと思います。大学4年生の頃から股関節の柔軟性がタックルやスクラムで必要になって、そういうところも繋がってくると思うので、そこは重点的に自分でトレーニングに入れていっています。そういうところが機能してくれば、力の伝達がもっと上手くなるんじゃないかなと思います。
――決めたら続ける方ですか?
続けていると思います。やらないということはないです。
◆スクラムがとても楽しみ
――今、ラグビーが面白いと思うところはどこですか?
スクラムで自信があったところが今は全然通用しないところがあって、今まで言われていなかったところを青木さんに指摘されるようになりました。東芝との合同練習でのセッションでできなかったことがあっても組めているシーンもあれば組めていないシーンもあるというところで、ここをこうしたらもっと成長できるという姿勢や足のポジションや体の使い方ができるようになったら、もっと良いスクラムを組めるようになると考えています。スクラムではそういう楽しさがあります。
もっとボールに触れてサポートして、戦術理解も更に高めてもっと自信を持ってできればと思っています。まず自分の強みを周りに理解してもらうことも大事だと思うんですけど、信頼を勝ち取れるようにこれからの試合をやっていくことが今の楽しみです。
――自分はどんな性格だと思いますか?
優しいとよく言われます。とても負けず嫌いですけど。
――優しさがプレーに影響しませんか?
そこは全然プレーには関係ないです。対人でもしっかりファイトできて負けていないと思います。コンペティションの部分でしっかり競えているので、その優しさは全然ないです。
――どのくらい負けず嫌いだと思いますか?
難しいですね。自分が自信を持っているところでは負けたくないので、そこで負けたらその分努力します。
――大きく言うとラグビーでは負けたくないということですか?
そうですね。ラグビーはずっとやってきたので、ラグビーでは負けたくないです。とくにかく、まずサントリーのプロップでトップになりたいです。
――その鍵は何だと思いますか?
まず絶対に重要だと思うのはスクラムです。だから、今はスクラムがとても楽しみです。
――どんな選手になりたいですか?
スクラムは誰からも信頼されるくらい自信を持ってできるようになることと、ボールを持ってパスもできたり、周りが見ていても安心できるような選手になりたいです。
――リーダーシップはどうなんですか?
キャプテンをやったことはありませんが、リーダー陣の中にはいつも入っていました。高校時代もリーダー陣の中には入っていて、中学時代もそういう感じでした。小学生の頃は一時的にキャプテンをやったこともありましたが、そんなに長くはやりませんでした。キャプテンをやるタイプではないと思います。
――サポートタイプですか?
はい。今までもそうだったので、キャプテンを支える選手になりたいです。
――支える面で一番大事なことは?
しっかりとコミュニケーションをとって、自分の思っていることを言ってあげること。キャプテンはだぶん言われないことが一番しんどくて、自分で抱え込むことになってしまうと思うので、言える選手になることが大事だと思います。
――喋りは得意そうですね
そうですね。よくお喋りと言われます。ただ、本当はシャイで人見知りで、初対面だと結構喋らないこともあります。でも、喋るようになったらお喋りと言われます。
◆自分の意思で決めた
――お父さんがきっかけでやり始めたラグビーで、トップリーグのチームに入ってお父さんは相当喜んだんじゃないですか?
喜んでいます。高校まではいろいろ親から言われていたんですが、高校から大学を決める時は「自分の好きにしな」という感じで、「あとは自分の道だから」と言われて、大学もトップリーグも何も言われず自分の意思で決めました。
――「サントリーに入ったよ」と言ったら?
喜んでいました。
――今シーズンの目標は?
カップ戦で試合に出てアピールすること。まず試合に出るために1つ1つの練習でアピールすること。そして、2020年のトップリーグ開幕でメンバーにしっかりと入れるように、代表組や外国人選手が戻って来てのレギュラー争いに勝つこと。1年目なのでいろいろと求められると思いますが、伸び伸びやって良いと思うので、自分自身やりたいようにしっかりと自分を出して、自分のプレーで皆さんの信頼を勝ち取れるようにやっていきたいです。
――そこに向けての秘訣は?
今のトップリーグでは、最低限スクラムを組めないと話になりません。スクラムは垣永さんと元樹さん(須藤)が強いですし、カップ戦まであまり時間がないので、いろいろな経験を積んでいきたいです。そしてトップリーグが開幕するまでにはしっかり組めるスクラム作り、体作りやスキルを得られるように努力していきたいと思います。
――4年後のワールドカップは?
サントリーで試合に出続ければチャンスはあると思うので、まずサントリーで結果を残すことを、いま目標に掲げています。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]