2019年5月 3日
#634 飯野 晃司 『強い選手は順に倒していこう』
期待の入部から早2シーズンが経過した飯野晃司選手。これまでの課題と今後の展望について訊きました。(取材日:2019年2月下旬)
◆声は課題
――サンゴリアスで2シーズンやってみてどうですか?
怪我が何回かあったので、そこは今シーズンからは「もうなくしたい」と思っているんですけど、自分の中のイメージでは「良かったところも多かった」という印象です。
――どの辺が良かったと思いますか?
試合にも結構出させていただいて、プレーはまだ改善するところはあると思うんですが、やっぱり試合に出て、みんなとのコミュニケーションの部分に関しては良かったかなと思います。やってきたことは間違っていなかったと思いますが、まだまだ足りない部分は、いろんな面に関して多くあるとも思っています。
――1年目に優勝、2年目は惜しくも準優勝でしたが、何か違いは感じましたか?
1年目は周りについていくのに必死だったので、どういうイメージかちょっと分からないんですけど、2年目はやっぱりどのチームも対サントリー戦をターゲットにして、ベストメンバーできていたと感じたので、「楽なシーズンではなかったんじゃないかな」と思います。必死で、余裕はなかったですね。点数を見てもそうですし、試合内容的にも、全部がしんどい試合ばっかりでした。ただ、それは嬉しいことですし、やっぱりそれが責任なのかなと思います。
――そこでチームを元気づける役目の自覚はありましたか?
ちょっと自分でもいっぱいいっぱいになっているところもあったんですけど、カキさん(垣永)がしっかりやっている時には、「あ、自分もしっかりやらなきゃな」と思ったり、カップ戦で主力や代表組がいない時には、「しっかり先頭切ってやっていかなきゃいけないな」という自覚はありました。ある程度は声を出せていたとは思うんですけど、しんどくなった時とかに、やっぱりまだまだ出せていないので、そこは今シーズンの課題かなと思います。
◆細かいところを一個一個
――2シーズンを終えて他に足りていないところは?
スキル面での一個一個の精度は、フランカーのニシさん(西川)、ロックのジョー(ウィーラー)と比べて全然足りていません。ラインアウトを安定させるということに関しては、シーズンを通して思うような獲得率ではありませんでした。
チーム全体の課題でもありますが、やっぱりそこはもっとうまくコミュニケーションがとれた部分もありますし、一個一個のスキルの中で練習中からもっと周りに言っていかなきゃいけないなと思います。僕自身ぜんぜんまだ足りていないのですが、良い見本がいっぱいいるので、そういう部分は伸ばしていきたいと思います。
――もうちょっと具体的に言うと?
ラインアウトの面だったら、もうすべてのスキルが全然足りていないと思います。あとブレイクダウンのスピードもまだまだ足りないなので、そこをしっかり直すために、良い選手を見習ってやっていきたいと思います。
――そのためにはどういうトレーニングを積むんですか?
具体的にはアフター(全体練習後)で残って、ジャンプのスキルとかをやります。他の選手に聞いて、自分の頭の中でやっていくしかないことが多いんです。今更「ジャンプの仕方をすべて変えろ」と言われても厳しいので、細かいところを一個一個修正していきます。リフトだったら筋力も必要ですが、細かいことにすべて基づいてやっていると思うので、そこをまず一回一回頭で理解して、やっていくしかないと思っています。
――着実にレベルアップ、ステップアップしている感じは?
少しずつ。1年目は怪我明けにすぐに試合に出て、本当に右も左も分からない状態で、もうただアタフタしていたんですけど、2年目はちょっと落ち着いてやれていた部分もありました。ディフェンスとかタックルに関しては、結構良かったかなと思います。それまでタックルは課題でしたが、ディフェンスでフィジカル負けはしなくなってきたので、そこは着々と上ってきていると思います。
◆ゆっくり長い時間をかけて
――その良いところを使いながら、どういうプレーをしている姿が自分の最高のイメージですか?
やっぱり、どのエリアにもいてタックルしている選手になっていきたいとは思います。
――そのためには必要なことは何だと思いますか?
走り、フィットネスはこのチームにいたら絶対に必要です。あとロックとしては少し体重が軽くて、体が小さい方なので、そこはまだまだ上げていかなきゃいけないと思っています。体重は110kgちょっとぐらいまではいきたいですし、今の体力を維持しながらやっていきたいと思いますね。
――体を大きくすると、逆に動きを犠牲にする部分もあると思います
そうなんですけど、やっぱりスクラムもありますし、どうしても軽い選手よりは重い選手の方がキーになってくるので、徐々に筋力を上げていけば動き自体が悪くなることは全然ありません。今までちょっとずつなら上げてきているので、急に1ヶ月で110kgにするんじゃなくて、徐々にしっかりと1年を通してやっていったら、問題はないと思っています。
――今は何kgあるんですか?
シーズン中は、107~108kgくらいをずっとキープしている感じでした。
――体調管理面での反省をもとにした改善ですか?
そうですね。これまで最初にアクシデントに見舞われることが多かったんです。これまでも準備自体はできていたと思うので、「気持ちの問題なんじゃないか」と思っています。そこをしっかりとターゲットに見据えて、自分の体づくりをしていきながらというやり方が一番大事だと思います。たぶん気合いを入れ過ぎちゃうんですよね。気持ちをしっかりコントロールした上でやっていかないといけないと思います。
◆良い環境
――力という面で外国人選手に対してはどうですか?
タックルの場面でちょっと反応が遅れて、上に行った場合は相手の一番強いところに行ってしまいます。やっぱりそれだと、どうしてもフィジカルの差で負けてしまうんですけど、足首に入れば倒せるので、試合中に圧倒されるようなことはありません。ただ、逆に僕がアタックで向こうがディフェンスになると、ちょっとまだ差を感じる場面はありました。
――サントリーに入ってきた時の自信と今の自信は?
自信はあまりなかったというか、「自分にできることだけをやろう」というくらいの感覚でした。周りには良い選手、強い選手がたくさんいるので、そこは順に倒していこうかなと思っています。
――それはある程度イメージ通りですか?
そうですね。もともとトップリーグのチームとの試合を、大学時代からやっていたこともありますし、強いというのはもちろん分かっていましたし、絶対にキツいことも分かっていたので、そこに関しては、特に想定外ではなかったですね。そこからやっていこうという気持ちでしたし、実際やっていくしかないので。
――いっぱい課題がありながらも、とても楽しそうにやっていると感じます
そこが醍醐味じゃないですかね。チャレンジしていく上で、それをしっかりサポートしてくれる環境もあります。先輩方からも「もっとこうした方が良い」とか、僕の言葉について「もっとこうした方が良いよ」と言って下さるので、コーチを含めて本当に良い環境でできているなと思います。ですから、僕は本当にやっていくだけというか、やるだけというか、そこにネガティブなことはないですね。
◆元気よく走り回っているのを楽しんでもらえたら
――コミュニケーションは得意としていますか?
そうですね、喋る方だと思います。
――昔からですか?
もうずっと昔、子どもの頃からこんな感じですね。僕の母がこんな感じというか、町内で知らない人がいないぐらい顔が広くて、「あー、よく喋る人だな」という人です。
――お父さんは静かですか?
お父さんは人見知りだし、シャイです。
――お母さん似ですか?
そうですね。でも、サイズ的にはお父さんなので、選手としては本当に良いところどりですね。
――ここまで焦りなどはありませんか?
今年はワールドカップがあるのでゆっくりはしていられませんが、「まだチャンスがあるならば」という思いもあります。自分に足りないところがブレイクダウンとセットプレーだというのは分かっているので、そこに関して伸ばしたいですし、その後は自ずとと思っています。それに2019年でワールドカップが終わるわけではありませんし、「チャンスは絶対にいつかある」と思うので、そこに向けてしっかりやっていきたいですね。
――目指しているところの、今どのくらいまで来ていますか?
まだ、全然全然。やっぱりサントリーでレギュラーになることが、目指す姿への一番の近道なので、まずはしっかりレギュラーに定着できることだけを考えて、そうしたら「自ずと上の方が見えてくるかな」と思います。レギュラーにも定着できていないので、まだ全然です。
――今シーズンの目標は何ですか?
もちろん優勝です。個人としては、怪我なくしっかり試合に出続けるということを大前提において、ひとつひとつ課題を克服できたらなと考えています
――ファンに見てほしい姿は?
試合中になったら、元気よく走り回っているので、それを見て楽しんでもらえたらなと思います。声ももちろん響かせられるように頑張ります。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]