SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2019年4月19日

#632 竹本 竜太郎 『サンゴリアスにある文化をもっと良くしていきたい』

2年前に引退した兄・隼太郎選手の弟というイメージが強かった竹本竜太郎選手も、昨年30歳を超え、今年社会人9シーズン目を迎えます。ベテランという言葉もその立場も意識するようになった竹本選手に、新シーズンへ向けての心境を訊きました。(取材日:2019年3月中旬)

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◆新しいことに挑戦

――2018-2019シーズンを振り返ってどうでしたか?

自分自身は、メンタルというかコンディショニングの部分でちょっと良くない部分が、公式戦始まる前にありました。正直、私生活が変わって(結婚して)、ちょっと気持ちに油断があったというか、今まで通りのことをしていれば良いというところがありました。

――そのコンディショニングの遅れは、どうカバーしたんですか?

今まで通りやっていると、何も変わらないということです。その停滞していた部分を取り戻すために、若井さん(ヘッドS&Cコーチ)とも話して、練習前にサウナに入ったり、練習後に自転車をこいだり、フィットネスレベルを上げるための新しい取り組みをどんどん取り入れて、そこは改善していきました。やっぱりハードワークは大切で、体を動かしてしていかないと衰退していくだけです。

――それは自分のラグビー人生にとって、どのぐらいの経験になりましたか?

かなり大きかったですね。それがあって、今オフシーズン中も新しいことに挑戦していて、今はとてもコンディショニングが良いです。昨シーズンとは全く違います。今回は特に自分から周りの人とコミュニケーションを取ってやろうとした点で、新しい一年だと思います。昨シーズン負けてみんなで集まった時に、若井さんと芦田が話をしていて、そこに僕も加わったところから始まりました。田中澄憲さんの弟の達憲さんから、以前タックルテクニックを教えてもらうために春の期間、練習に来てもらっていたこともありますが、その達憲さんのところに3日間、出稽古に行ったりしました。

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――出稽古はどうでしたか?

良かったですね。3日間行ったんですけど、サンゴリアスではとても恵まれた環境にあるということを思いました。19時半から3時間トレーニングをしたんですが、その時間まで他の競技の方たち、例えば格闘技の方とかは働いていて、仕事が終わってその時間からハードな練習をするんですよね。

それを見ていて改めて、僕らいま仕事でも会社がとてもサポートしてくれていますし、ラグビーをする時間も確保されていて、非常に恵まれている環境だなと感じました。その3時間という時間も本当に激しい内容だったんですけど、集中力を切らすことなく、メンタル面でもとても充実してやっているところを見て感じるところがありました。

スキルの部分でも、僕も芦田も体がちっちゃいので、タックルに行った時にときどき逆ヘッドで入っちゃったりするんです。つまり怪我をしやすい危険なタックルですね。相手を止めやすいんですが、自分にとって危険なプレーなので、そうしないように意識するポイントであったり、他のプレーでも有効な体の使い方を教えてもらいました。

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◆左右の足でボールを蹴る

――そういうトレーニングを通じて、今シーズンはどこを伸ばしたいですか?

今シーズン伸ばしたいところは、やっぱりフィジカルの部分は自分の持ち味でもありますし、これ以上もう伸びないなと思ったらそこまでしか伸びないと思っているので、そこを伸ばしていきたいと思っています。センターというポジションを昨シーズンやらせてもらったので、今はそのポジションでタフに闘える力を、また一からつくり直そうと思っています。

――センターの面白さは?

スタンドオフとバックスリーつまり外のスペースを繋ぐポジションでもあるので、ボールにタッチする回数は増えますし、ディフェンスでも重要なポジションなので、とても責任を感じますし、面白いですよ。攻める時も守る時にも、コンタクトが多いポジションですし、ボールにも数多く触れますから、久しぶりにやってみて、やっぱり合っているなと思いました。

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――センターでどんなプレーヤーを目指していますか?

フィジカルな部分はもちろん必要なんですが、外のスペースをついたり、裏のスペースをつくという点で、左右どちらの足でもボールを蹴ることができるところを活かして、スペースを見てそこを攻めることのできる選手になっていけたらなと思っています。とはいっても、社会人になってフルバックが一番やってきたポジションで、やっぱりその面白さも分かっているので、そのレベルは絶対に落とさないようにして、ユーティリティープレーヤーとして両方しっかりできればなと思います。

――フルバックの面白さはどうですか?

フルバックの面白さは、やっぱり自由にグラウンドを走れるところですよね。相手の動きを見て空いているスペースを狙ったり、相手を後ろから見ることができるので、自由に動けるところがやっぱり面白いです。

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◆コミュニケーションがとれるようなベテランになりたい

――より良いユーティリティープレーヤーに向けて、フィジカルを上げることに重点を置いているんですか?

まず今はフィジカルの部分で新しいことをやっています。あと、ラグビーナレッジの部分でもスーパーラグビーで同じポジションの選手を見ることと、全体的に試合を見てどんなラグビーをしようとしているのかを意識して見るようにしています。サンゴリアスと似ているところもあれば、似ていないところもあるので、その中でこういうチームだったらトップリーグで言えばこのチームに似ているななどと考えながら、分析しつつ見ています。そして気になるポイントは、グラウンドに行った時に、バックス陣で話し合ったりして学んでいます。

――お兄さん(隼太郎)が引退して2シーズン経ち、自分もそろそろベテランの域にという意識はありますか?

あります。年次を重ねるごとにモチベーションであったり、意識とか役割というのは本当に変わってくると思っています。その中で試合に出られていない選手、あるいは出られていた選手が出られなくなってきたりとか、たぶん悩むというか葛藤がある選手もいると思います。試合に出られている選手が全てではなく、僕もあんまり出られていないですが、出られていない選手にもそれぞれの役割があります。もちろん試合に出ることが選手としての最大の役割なので、そこをターゲットにしつつ、いろんなところでチーム内でのコミュニケーションを活発にしていきたいなと思っています。

同じ目標がある中で、目標を見つけられない選手ってサンゴリアスにはいないと思うんですが、僕自身そうですがどうしても気持ちの浮き沈みがあったりもするので、そういった時にコミュニケーションが取れるようなベテランになりたいと思っています。コミュニケーションはグラウンドの外になりますが、もちろんそれがグラウンド内で効果を発揮しないといけないと思っています。

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――そういう役割を意識するようになったことについて、自分ではどう思いますか?

別に意識していないですけど、ただいろいろとコミュニケーションを取っていれば、元気か元気じゃないかというのが分かるので、そこに気づいてあげられると思うんです。そこに気づいてしっかりコミュニケ―ションをとって、良い方向にもっていけたらなと思っています。

――自分がそういう時によく気付いてくれた選手って誰ですか?

たぶん僕はそういう時が特に分かりやすいと思うんですが、僕で言えば、ヤスさん(長友)とかですね。

――長友選手を見ていて役割を学んだということはあるんですか?

ヤスさんは、ディフェンスのスキルが高いんですよ。チーム練習後の個人練習でそこに特化してやったり、選手をピックアップしてやったりしていましたね。そしてやっぱり、チーム内でのコミュニケーションを円滑にしていましたね。ただ僕がそれをできるかと言ったらできないので、僕のできることを考えながらやっていこうと思います。僕はたくさんいる中で話すというよりも、1to1で話す方がコミュニケーションを取りやすいので、そういうやり方でその選手にとって良くなるような言葉をかけられたらなと思っています。

――大学時代キャプテンだった経験が活かせますね

はい、大学の時に僕は学年関係なく声をかけているつもりだったので、そこは活きているかもしれません。ただ僕が話すことで、僕もたぶん元気をもらっているというのが一番なので、教えてあげるという感情じゃなくて、単に元気がない選手がいたらやっぱり良くしたいという思いです。まずアクションを起こさないと、それによる波及とか言葉のキャッチボールとかできないですし、言葉を飲み込んでしまうこともあると思いますが、今シーズンは特に言葉を発していこうと思っています。

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◆必要なポジションの役割を果たす

――まずはこの1年、どんなことをやりたいですか?

サンゴリアスにある文化をもっと大切にしたいですし、もっと良くしていきたいと思っています。

――それはどんな文化ですか?

例えばハードワークする文化もそうですし、サントリーにはAチームとかBチームという分け方ではなくて、言葉の綾かもしれないですけど上とか下とかでなく、その試合のメンバーかノンメンバーかという、そういう文化もあります。そんなリスペクトする文化であったり、このチームが築き上げてきたメンタル的なところの文化を大切にして、より良くしていきたいですね。

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――上下でなく、メンバーかノンメンバーか、という分け方ですか?

そうです。それはとても良いなと思いますね。とても抽象的ですが、文化をより良くしていきたいです。その中で自分が試合に出るというのはやっぱり絶対に必要ですし、出たいので、そこにはしっかり挑戦していきたいと思っています。

――もちろんグラウンド内でのチャレンジも、ということですね

グラウンド内でのパフォーマンスについては、僕はユーティリティー選手なので、チームに怪我人とかが出た時に、今シーズンも絶対に出る機会があると思います。そこで、しっかり自分がグラウンドにいることと、必要なポジションの役割を果たすことが、グラウンドでの仕事だと思います。その他のグラウンド外でのチームソーシャルであったり、チームの雰囲気を良くするためには力にはなれると思っているので、さらにそこでしっかり力を発揮していかないといけないなと思っています。

――ファンに今シーズン見てほしいところは?

まだ試合に出られるかは分からないですけど、出た時にチームのやるべきラグビーをやって、しっかりチームにコミットして活躍している姿を見てほしいです。

――いよいよ9月にワールドカップが日本で行われますが、どんな感情が湧いてきますか?

最高ですよね。でも、まさに他力本願というか願いになりますけど、本当に日本代表は頑張ってくれという感じです。サンゴリアスメンバー、頼むよって感じです。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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