2019年4月12日
#631 大越 元気 『強めの仕掛けと速いさばきでチームを引っ張る』
入団時以来の2度目のインタビュー。大越元気選手の2年間での成長や、現在取り組んでいる課題など、ラグビーに賭ける思いを訊きました。(取材日:2019年3月中旬)
◆信頼されるスクラムハーフに
――入団した時以来のインタビューとなりますが、どんな1~2年目でしたか?
もっとやれるんじゃないかって思っていた自分がいた一方、それが思うように通用しなかったということがありました。自分の持ち味でもあるんですけど、いろんなことを全て高いレベルでやりたいと思ってしまって、自分が目指しているスクラムハーフ像というものが、ぼやけてしまったと思うシーズンでもありました。
――それは2018-2019シーズンですか?
1~2年目を通じてなんですが、1年目よりも2年目の方がやっている中での手応えはあって、少しずつなんですけど成長させてもらっているなというのは感じています。
――例えば、1年目と2年目を比較してみて、見えてきた部分は?
本当にシンプルに、スクラムハーフとして試合に出るために何をしなければならないかというチームから求められているものが、分かってきたなっていうのはあります。
――それは例えばどんなことですか?
まずは信頼ということです。スタッフからはもちろんですし、同じ選手からもしっかり信頼されるスクラムハーフにならなければならないということを本当に感じました。
――それが2年目に見えてきたということは、1年目はそこを焦っていたということですか?
そうですね。やっぱり試合に出たいという気持ちがありましたし、どうしたら出られるのかなということを考えながらも、出るためには色んなことをやらなきゃいけないって考え過ぎてしまっていたというのが確かにあります。
◆オフシーズンが大事
――改めてそういう中で自分の強みを考えると、どこでしょうか?
まずシンプルに強気で、パスをさばき、積極的に仕掛けることです。他のハーフにはないところでしっかり勝負していかなければならないと思うので、次のシーズンは3年目になりますし、遠慮せずにやっていきたいと思います。強めの仕掛けと速いさばきで、チームを引っ張っていけるようなハーフになることが、試合に出る一番の近道だなと思っています。
――2年目に手応えがあったように見受けられます
カップ戦に少しずつ出させてもらっている中で、自分はこうであるべきなのかなというものを感じました。バックスコーチの剛さん(有賀)からも、しっかり自分の持ち味を出して頑張るしかないと言われているので、それも考えてやってきた中で、カップ戦でも少し手応えを感じることができました。
――でも自分としてはまだ全く満足してないという顔も一方ではしているように見えます
そうですね。やっぱり自分の今の力には全然まだ満足してないですし、まだまだということを本当に心の底から感じています。サンゴリアスに入って、試合に出て、やっぱりチームのために貢献したいっていう思いは本当にあるので、そのためにやることは今言ったことだと思います。そこをしっかり明確にしてシーズンを通してやりきることができれば、チャンスはあると思っています。
――そのためにいま特別に準備をしていたりトレーニングしていたりすることはありますか?
今はオフシーズンなんですが、ボールをまず速くさばくことの練習をしています。ボールをしっかり触るというのもあるし、しっかりイメージしながらボールを使った練習も早くからしています。あとはフィットネスについては、うまく自分の中でターゲットを決めて走りながら、良いコンディションに整えてスタートできるようにと思っています。今その準備はできているのと思います。
――それは1~2年目とはちょっと違うということですよね
やっぱりオフシーズンが大事ということが、1~2年目を通じて分かったことです。オフシーズンにしっかりと準備し、100%でチームの練習に入れるようにしておかなければならないと思っています。チームがスタートして徐々に上げていくのではなくて、そのスタートの時にはもう100%の自分のコンディションで臨むということ。そこへ向けて整えていかなければならないなということを1~2年目で感じたので、今シーズンはしっかり良い準備ができていると思います。
◆準備も楽しい
――今とても楽しそうですが、その楽しさはどこから?
昨シーズンのカップ戦の辺からです。試合に出させてもらっている中で、やっぱり試合に出てラグビーするっていうのはこんなに楽しいんだということを改めて感じました。それを昨シーズンのカップ戦で経験させてもらったので、今シーズンはもっと試合に出たいと思っています。そのための準備としてまずやらなきゃいけないことはたくさんありますが、その辺からとても楽しくなってきました。試合に出ていたらやっぱり楽しいです。
――その楽しさをより味わうための決意みたいなものはありますか?
やるしかないので、常に危機感を持ってやるという気持ちが、1~2年目より上がっています。本当にやるべきことを1年間通してしっかりやりきって、その中で試合にも出て、自分の持ち味を出して、チームに貢献したいっていう気持ちです。より一層、危機感と同時に絶対にやってやる、もうやるしかないっていう気持ちが本当に湧いているので、今のオフシーズンの準備もとても楽しいです。
――タイミングとして、大きなチャンスであると思うんですが、どうですか?
チャンスであることは間違いないと思います。ただ本当に今いるスクラムハーフの先輩方2人は力を持っている先輩方で、それぞれの持ち味があって本当に良いスクラムハーフなので、そこにどう勝つか、どう勝負していくかっていうのを、いま毎日考えてやっています。日本代表でユタカさん(流)はいませんが、いないからどうとかという思いはなく、ユタカさんが帰ってきてもしっかり勝負できる準備を、自分にベクトルを向けてやっているところです。
◆もし自分が試合に出ていたら
――1年目は優勝、2年目は準優勝で、この2年間のサントリーはどう違っていたと思いますか?
自分は試合に出ていないので、まずなんとも言えない立場ですが、楽しんでいるなと思ったのが1年目のチームでした。2年目は3連覇がかかっていたので、どこかでラグビーをするということに対して、少しプレッシャーがかかっていたのかなということを感じました。
――ちょっと苦しそうでしたよね
はい。毎試合毎試合苦しい試合が続いたのもそうですし、そういった中で自分たちは本当にキツい練習をしてきたと思いますが、それでもなかなか結果が思うように出ないというところで、気持ちがムズムズっとする感じはあったのではないかなと思います。
――その辺は自分が出ていなくてもかなり勉強になりましたか?
僕は本当に日々勉強だと思っているので、じゃあもし自分が出ていたらどうだろうと考えます。3連覇がかかった試合に自分が出るとなった時に、どういうメンタリティーで臨まなきゃいけないのかと自分に置き換えて、もし自分が試合に出たらどうするのかを考えて、毎日練習していました。まだまだ足りない部分が自分にはたくさんありますし、自分がいま言える立場ではないんですけど、そういう自分に置き換えた準備というのは、ずっとしていました。
――そういうシチュエーションで自分が出るとなった時に、もう足りないものはない、あとは力を出すだけだと思えるのは、いつ頃だと思いますか?
いや、もうそうなるためにできるだけ早く準備したいですし、絶対に今シーズンからそういう気持ちで臨まなければならないですし、臨んでいこうと思っています。
◆結果がすべて
――今年、ワールドカップが日本でありますが、今どんな気持ちですか?
ラグビー界にとってはとてもチャンスな年だと思います。自分が中学・高校時代はワールドカップに出るためにと、とても思っていましたし、出たいという気持ちは正直あるんですが、自分の今の力というものは自分が一番分かっています。そういった中で、いま選ばれている日本代表のチームには本当に勝ってほしいですし、やっぱり日本のトップリーグを代表している選手たちだと思うので、今後のラグビー界のためにも勝って、目標のベスト8まで行ってほしいなと強く思います。
――厳しくも優しいお父さんは今どんな言葉をかけてくれていますか?
いや、厳しいですよ。結果が全てだと、父親にはいつも言われています。週末家に帰ってたまに会う時もあるんですけど、「お前が出る試合が見たい」というのは毎回言われます。
――お母さんはどうなんですか?
母親はそういった面では結構優しくて、「チャンスが来るからそこまでしっかり頑張りなさい」という感じですね。
◆チームに貢献して勝つ
――今シーズンの目標は?
6月から始まるカップ戦にまず9番でしっかり試合に出て、チームのために貢献して勝つということを、いつも煕さん(田村)と話しています。やっぱり9番、10番の役割はチームを勝たせることです。個人のパフォーマンスがどうだとかではなく、ハーフ団はチームを勝たせることが一番評価されるということを、先輩として言ってくれます。僕もその通りだなと思うので、自分が9番として試合に出て、その試合をしっかり勝ちで終わらせるというのがひとつの目標ですね。
――フォワード陣とはどうなんですか?
フォワード陣に対しても、自分が何か言ったことに対して、もっとしっかり聞いてもらえるような関係性、信頼の部分を作っていかなきゃいけないなということをとても感じています。日々の練習から自分のパフォーマンスも上げて、フォワードをうまくコントロールできるハーフにならなければいけないなと思っています。
――コミュニケーションを取るということは意識していますか?
そうですね。コーチ陣からも言われているので、とても意識しているんですが、まだまだ足りないです。個人としても足りないと分かっているので、もっともっと喋らなきゃいけないですし、ただ喋るだけではなくて、本当に具体的にどうするのかということを、もっと喋れるようにならなければならないなと思っています。
――今シーズン、チームとして目指すところは?
もちろんそれは次のトップリーグです。年明けからあるトップリーグでもう一度チャンピオンになることです。絶対に。
――そのために自分としてできることは?
まずカップ戦でアピールして、年明けからのトップリーグで試合に出て、チームに貢献して勝つというところです。1年目の時は今まで大学でこれだけやってきたという過信みたいなものがあり、それが社会人になって全く通用せず、そういう部分の焦りもあって、とてもムシャクシャしていました。
でも、過去は過去なので、今それを全部バッとそぎ落として、まずいちから始めなければと思います。そしてハーフとしてサントリーで試合に出るためには何が必要かということが、分かってきました。
――生まれ変わっている感じですか?
気持ち的には生まれ変わっている感じです。その中でもう一回、自分の持ち味を見つめ直す良い機会でもありました。自分の持ち味をブラさず、過去自分がどうだったということには全く囚われずに、いま自分がどの立場にいて試合に出るために何が必要かということを、しっかり考えてやっていけるようにしたいなと思っています。
――結果的には全部そぎ落としているわけではないということですね
そうですね。プレーの面ではそうなんですけど、気持ち的にはそういうプライドは、今はもう全くないということです。
――新しく作っているものが積み重なっていって、新しい自信になっていくというイメージですか?
そうです。昨シーズン少しずつ試合に出させてもらって、通用する部分もあったので、そういった一つ一つの積み重ねでやっていきたいと思っています。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]