SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2019年3月15日

#627 桶谷 宗汰 『もう1回 目の前のことだけを』

新人の時以来、ほぼ2年振りのインタビューとなった桶谷宗汰選手。2年間の経験と現在の心境を語ってもらいました。(取材日:2019年2月中旬)

①190119_6119.jpg◆"無難"だと出られない

――入団時にインタビューをしてから2シーズンが経ちましたが、この2シーズンはどうでしたか?

1年目はシーズンの半分くらいは試合に出ることが出来て、まずまずのシーズンだったかなと感じて、そのまま2年目に突入しました。2年目初めのブランビーズとの試合では結構良いパフォーマンスが出せたんですけど、その後は波があって、良かったり無難に終わってしまったりということが結構続きました。シーズンに入って第2節のスターティングメンバーを発表された日の練習で怪我してしまって、公式戦出場がないままシーズンを終えてしまったので、自分が思い描いていた2シーズン目にはならなかったです。

――"まずまず"と"無難"というフレーズが印象的ですが

サントリーでは"無難"だと絶対に試合には出られない。あの中でとてつもない人たちとやっていて、自分の普通のパフォーマンスでは試合後の監督からの評価で良いものは返ってこないし、このチームでやるには常にベストを出し続けないと試合に出られないと感じたということで"無難"ではダメということですね。

――もう1つ"波がある"という点はどうですか?

試合が終わった後に「今日は良かった」という達成感を自分で感じている時は、監督やコーチ陣からの声も結構良い反応が返って来るんですけれど・・・。

試合が終わった後に「何もなく終わったな」という時は、「お前もっといけるだろ」と皆から言われます。実際に様々な数値、タックル回数やボールキャリーの回数を見ても全部2番目くらいの位置にいて、それでは監督の求めているレベルには行っていないんですね。

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1回ブランビーズ戦で良い試合をしたんですけど、その後の練習試合で"無難"な試合が2試合くらい続いて、それからまた監督の良い反応が返ってきて自分でも充実して、その後が再び"無難"というように、行ったり来たりで良いところにずっといられなかった訳です。試合前の監督とのミーティングでも「お前もっといけるだろ」ということを結構言われたシーズンだったので、そういう意味で"波があった"と思います。

――自分の体を分かっていないと怪我のリスクがあると思いますが、どのようにコントロールしているんですか?

自分ではキツいと思っている時でも、そこを超えていかないと西川さんには追いつけないです。話を聞くところによると、昔はサンゴリアス自体が本当にハードな練習をずっとしてきていて、そういうことを経験している人たちはとてもタフで、ちょっとしんどくても普通にベストを出してしまうんです。自分にはまだそこがないのかなと思います。

ちょっと体がキツくても常にベストを出していかないとこのチームでは出られないので、体調というよりはメンタルのところで、もうちょっとガツガツいかなければいけなかったなと思います。コンディションを整える部分ではリカバリーやストレッチを含めて全力でやらないといけないですけど、ちょっと体がキツいということに関してはもっとメンタル的に強くなって、自分で自分に厳しくやっていかないとこのチームでは出られないと思います。

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◆自分の中での入り

――もともと性格的に穏やかな方なんですか?

そうですね。争いごとは好まないタイプだと思います(笑)。ラグビーには合っていないかもしれませんが、普段とラグビーは分けて、もっとガツガツいかなければいけないと思いました。

――スイッチを入れるため、切り替えるためにやっていることはありますか?

やっていることが今まで特になくて、今だから思うのは自分の中での入りがいつも遅いんです。誰かにガツンとやられてムッときてスイッチが入るみたいな感じで、ちょっと遅いです。

――最初から入る方法は?

試合前に「今日やるぞ」と臨んで、最初のプレーでとても良い入りができた時は、その後も良いプレーができるという感じです。

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――良い入りをどうやってやるかですね

そうですね。自分のルーティンを作るのは好きではなくて結局続けられないので、これと決めるのは嫌なんです。でもルーティンには自分の生活が出ると思っているので、試合何分前にストレッチをする、会場に着いたらトイレに行って1回グラウンドに行ってストレッチを始める、というところでちょっとした体の変化でその日の体のコンディションを感じとって、その日に応じて変えて行けたら良いのかなと思ったりもします。

――ルーティンに価値を見出していないのは、もっと自分のやりやすいやり方があるということですか?

その日その日で違うと思うので、毎日同じことをするのも大事ですけど、同じことをしていても「今日は今日だ」と思ってしまいます。

――ルーティンには「余計なことを考えないで集中できる」「いつも同じことをやっていると体調が違っているところが分かる」ことがあると思います

そうですね、それを分かるためにやっているんですね。「今日はここをちょっと多めにやりたい」ということですよね?それならあるのかなと思います。怪我をしてから大体同じメニューをやって、気になるところをちょっと多めにやっているんですけど、毎日あまり変わらないんですよね。

――変わらないということは良いことじゃないですか

でも、プレーは波があるんですよ(笑)。メンタルなんですかね。

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◆ジャッカル何回

――大学の頃はどうだったんですか?

大学1~2年生の時にU-20日本代表に選んでもらって初めて沢木監督に会ったんですが、今より練習がめちゃくちゃキツくて、雰囲気が更にピリピリしていたので、その時は自然とそうなっていたんですかね。

――さっきの西川選手の話と今の話からすると、超ハードな練習を求めているんじゃないですか?

そうなんですかね。U-20の時は毎回の練習でも試合でも結構良いパフォーマンスが出ていました。その感じを忘れていたのかもしれません。

今ウエイトは若井さんのコーチングを受けていますが、若井さんから鼓舞されて、予定のメニュー、プラス他のメニューをやっているんです。なんかそれを楽しんでいるところは自分の中にありますね。

ワークレートや激しさを求められているのは分かっているんですけど、バックローとしてハンドリングの上手さやジャッカルができることが、自分の中で思う最高のバックロー像なんです。動くことは動くんですけど、そこを上手くやりたいと思ってしまい過ぎるのか、毎試合「ジャッカル何回、ジャッカル何回...」と思っていました。フォワードが絡むオプションでもフォワードの中では上手くやろうと今シーズンは意識しました。

――そこを意識した方が良いと思ったから意識したんですよね?

そうですね。ブレイクダウンのところは監督にもヤマさん(山岡/フォワードコーチ)にも言われていましたし、練習自体にそういう戦術的なところがいっぱいあって、それを出したいと思いながら試合していたんですけど、いま思うとそういう小手先に走るところがガツガツさを失わせていたんですね。

走行距離や強度の数字とか何回タックル行ったとか、結果が数字として目に見えるので、内容よりも結果を求めて、とりあえず走ってタックルしてちょっと上手くやろうみたいな感じになってしまっていたんだと思います。結果の数値はシンプルに分かりやすいところがあるので、昨シーズンはそこを求めてしまいましたね。

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◆1つ1つやっていきたい

――新シーズンに向けての課題は?

以前クラブハウスでインタビューを受けた時に、目の話をしたことがありましたよね?「ちょっと柔らかくなったよね」って言われて、そういうところかなと思います。1年目はガツガツしていてニシさん(西川)を超えて試合に出ようと思って入って来て、試合に半分出ましたが「やっぱりニシさんは凄いな」と思いながらやっていました。昨シーズンはブランビーズ戦では良いパフォーマンスが出せましたが、ぬるかったというか、野性味を失っていたので、もう1回ガツガツ目の前のことだけをやっていれば、自然と結果がついてくるのかなと、いま話していて思いました。

――そのためにまず何をしていきますか?

メンタルのところなので、自分がどれだけ厳しくできるかになってくると思います。自分の性格を考えると、乗せられるとやるタイプだと思うので、そういうところに身を置く。あとは、誰か1人がガツガツやればチームの雰囲気が変わってくると思うので、自分がその1人になって雰囲気や環境を作れば、自然と自分にも返ってくるのかなと思います。その1人目になることを毎回の練習で心掛けるしかないです。

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――自分が自分を乗せていくという感じですね

そうですね。あとは、結構影響されやすいタイプでもあるので、西川さんのプレーを毎回見て「やるぞ」と思っていったり、同年代の姫野(トヨタ自動車)が日本代表で活躍する中で、自分は日本代表候補に選ばれていないので、他の選手の映像を見て自分を鼓舞したり、意識しながらやっていきたいです。

――いま日本代表という話が出ましたが、意識していますか?

ラグびーをやっている以上は「日本代表になりたい」という気持ちはありますが、そこだけ見過ぎてもダメで、変に上手くやろうと思い過ぎちゃう気もするので、1つ1つやっていきたいと思います。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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