SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2019年2月 8日

#622 垣永 真之介 『湧き出るような感覚』

トップリーグカップではゲームキャプテンを務め、リーダーとしての自覚も徐々に生まれてきつつある垣永真之介選手。3連覇を逃した悔しい今シーズンを振り返ってもらいました。(取材日:2019年1月22日)

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◆今シーズン出た課題

――シーズンが終わっての今の気持ちは?

残念だったというのが一番です。チームとして目指していたものが獲れなかったというのと、2回も栄冠を目の前にして逃してしまったという悔しさです。本当に難しいシーズンでみんな苦しんでいたと思うんですけど、その中で決勝まで行けたことがサントリーの強さだと思います。反省として挙げるならば心の準備なんですけど、それで片付けたくないというのもあります。

――そうすると戦術あるいは他のことですか?

何をするかは明確で、戦術や準備は完璧でした。しかし、それができなかったというのはメンタルになるんですかね。

――もちろん相手もありますよね

そうですね。そこで最初に遂行できなかったというのが、やっぱり今シーズン出た課題ですかね。神戸製鋼戦も最初に2本とられて、トヨタ戦も2本とられました。ファイナルで2本というのはかなり大きいので、そこで相手のやりたいようにやらせて乗らせてしまったということが、やっぱり難しかった要因だと思います。

――いま思い返すとなぜそうなったと思いますか?

それをやりきれる強さのところだと思います。

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◆セットプレーの精度

――リーグ戦の決勝を踏まえた上で、2度目の決勝をゲームキャプテンとしてどのような気持ちで臨みましたか?

キャプテンとしてというのはあまりないんですけど、リーダーとしてパフォーマンスで引っ張っていくということが敬介さん(沢木監督)から期待されていたことなので、そこをまず一番にしておいて、やることを明確にシンプルにみんなに共有していくというのが、やっぱり一番気をつけたところですね。

――それはできましたか?

基本的に僕は何をするか決めるポジションではないので、その部分は煕(田村)とヤスさん(長友泰憲)に助けてもらいながら、なんとかやっていけたという感じです。

――パフォーマンスで引っ張るという面で、自分のプレーはどうでしたか?

準決勝のクボタ戦に関しては良いところで良いプレーもしていましたし、悪くはなかったと思います。決勝に関しては、チームの悪い流れの時にそれを止められるリーダーとして期待されている中で、悪い流れをしっかりと止められなかったというのは残念です。

――2冠を獲れなかった今シーズンのフォワードの課題はなんですか?

セットプレーの精度はあると思いますが、シーズン中たくさん苦しみましたし、セットプレーでみんなが納得いって完璧だったということはないと思います。そこが2連覇している時との違いかもしれないです。

――セットプレーについてはどういったところで納得できませんでしたか?

スクラムはプレッシャーをかけられることが多かったり、ラインアウトはデリバリーのパーセンテージが上がっていかなかったり、やっぱりそこへのこだわりですかね。シーズン途中から、例えばモールでトライを取った後のフォワードのボディランゲージでの一体感が、いつからかは分からないですけど変わって、本当に良くなっていました。それがシーズン初めからできていればなと思いました。

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◆他者へのアプローチ

――苦しさはシーズン当初から感じられたんですか?

シーズンに入る前はチームの調子がとても良かったんですけど、シーズンに入ってなかなか上手くいかない、自分たちが納得のいくスタイルができないという時期が続いて、みんな悩んでいたと思います。

――そういう時の気分はどうなんですか?

僕はまず試合に出るためにどうしなければいけないかということで精一杯だったので、チームがどうかということを考える余裕がありませんでした。そこが流を筆頭としたリーダー陣に対して、申し訳なかったと思うところです。

――自分が試合に出るために、目の前のことに全力を尽くしていたということですよね?

そうですね。自分ができることをやらなければと、まず基本的には自分の仕事にフォーカスするということをみんな思っているんですけど、自分の仕事プラス、人を気遣うということです。一人でやる競技ではないので自分がどうこうではないですけど、自分が仕事をする上で、他をもっとどう良くしなければいけないのかという1アクションがあれば、もっとチームは良くなったのかなと思います。

――今までのシーズンではそういうものがあったんですか?

どうなんですかね。正直そこまで考えなかったので前がどうかは分からないんですけど、今シーズンは難しくなったら自分の仕事を全うするということに集中するようにしました。全うするのは良いんですけど、もうひとつそこで全うするために、もう少し他者へのアプローチがあっても良かったんじゃないかと思います。難しいことですけど。

――プレーヤーとして1レベル高いところに上がろうとしているように思えます

1レベル上がるというか、僕は基本的に自分がどう結果を出すかしか考えていなかったので、今シーズン、リーダーという立場になって少し考えた時に、そういうのもあるなと思いました。

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◆学ぶ年

――自分を見つめ直した時にプレー自体の課題は何ですか?

セットプレーが一番です。2年前に足を怪我しましたが、試合を重ねていく毎にやっと思いきり走れるようになってきて、最終的に体の調子も良かったんです。でもプロップとしてスクラムやモールという一番期待される部分で、もっと結果を出したかったなという感じです。

――体に対しての不安はないですか?

そうですね。特に最後の2試合に関してはとても調子が良かったですし、プレータイムもこんなに出たのは何年ぶりかという感じでしたね。

――そこは来期に向けて楽しみですね

そうですね。やっと自分の足になってきたなというイメージはありますし、今シーズンはオフの間に体重を6kgくらい落として体をかなり絞ったので、これを基盤にもっと上がって行ければと思います。

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――6kg落とすと足は速くなりますか?

速くなるというか体が軽くなります。そして動きやすくなります。2017-2018シーズンは元樹(須藤)がスタートで出ていて、元樹は僕よりもスクラムが強いんです。それで晃征さん(小野)ともよく話したんですけど、「できないことができるようになることも大切だけど、その中でできていたことができなくなったら意味がない。自分が何をしてラグビーをしたいのか、アピールしたいのか」ということです。

それを考えた時に、僕はボールを持つことやジャッカルが好きなので、そこを磨くためにはどう自分があるべきかを考えてオフシーズンに準備して、準備段階で体をしっかりと整えました。その結果が最終的に少しずつ表れたかなと思います。

――6kg落としたことによってパワーはどうですか?

怪我のあとに半年~1年くらい全部ウエイトをしていたので、その時期のパワーがマックスでしたけど、パワーを発揮するためには持久力も必要なので、パワーは多少なりとも落ちたかもしれませんが、それはそれほど試合で実感することはなかったです。

――個人的にはかなり伸びたと感じますか?

僕が納得のいく「今日良かったな」という試合はほとんどなかったですけど、試合も結構出られましたし、自分の課題にしっかりと向き合って、1つ1つよくできたかなと思います。

――自分の好きなところ得意とするところは更に伸ばしていきますか?

それが楽しくてラグビーをやっていますし、それがなくなったらもう終わりだと思います。

――ということは、足を怪我していた時は相当大変だったんでしょうね

今シーズンの途中まで全力疾走なんてできませんでしたし、足に違和感がありましたが、トレーニングをする中で消えていったという感じですね。

――そういう意味でもラグビー人生の中では1つの印象的なシーズンでしたか?

そうですね。2冠とも逃しましたし、3連覇を逃したという意味でも学ぶシーズンでした。

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◆手応えをさらに

――来シーズンに向けての目標は?

まずワールドカップがあって、ラグビーの人気が更に高まると思いますし観客も増えるでしょうし、その中で自分らしいパフォーマンスを発揮したいと思います。

――どんなイメージですか?

今シーズン最後の2試合で掴んだ手応えをさらに磨いていって、なおかつセットプレーの精度をどんどん上げていけたらなと思っています。

――良くなってきた体に対しての自分自身の期待はどのくらいですか?あと10年くらいできるという感覚はありますか?

いや全くないです。手応えあるプレーができなくなった時点で僕としての価値はないと思いますし、それこそそういうところを期待してもらっていると思うので、それがダメになった時は考えますし、その時はチームから通達がくると思います。

――自分のラグビー人生の中でのトップに近づいて来ているんじゃないですか?

社会人1年目が一番調子良かったです。怪我の心配もなくがむしゃらにやっていました。

――その時と今で質の面ではどうですか?

どうなんですかね。1年目の方が勢いはありましたね。パフォーマンスではないですけど、あの時は自然と声が湧き出ていました。今は変わりつつあって、意識して出している感じですね。でも、最後の方には湧き出るようなあの頃の感覚に、気持ちも含めて近かったですね。

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◆3番を着ることが一番

――他人に対してかなり気を遣う方ですよね

そうですね。基本的には。

――そういう意味で「他人をどうするか」ということは重要な気づきだったのではないでしょうか?

サンゴリアスは本当に素晴らしい選手ばかりですし、僕がキャプテンを任されたとしても自然と周りが支えてくれるので、特別とても苦労したということはないですけど、やっぱり流は凄いと思いました。本当にいろいろなことを考えて大変だったろうなと思いました。

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そういう中で、僕も中堅で今シーズンは結構試合に出て、まず自分のことが一番でパフォーマンスを発揮することに力を注ぎましたけど、自分の仕事プラスαで、他へのアプローチをどうすれば良いのかというところができなかったことに対して、「ごめんな」という感じです。

――来シーズンはやるぞという感じですか?

来シーズンもそれはそれで、僕も3番をやっぱりつけたいです。3番を着ることが一番なので、余裕があればやっていきたいです。

――今ラグビーをやっていて楽しいと思うところはどこですか?

最後の2試合でジャッカルがたくさん決まってラインブレイクして、そこがやっていてワクワクしました。あとはやっぱり「勝つ」ことの醍醐味、勝負事に勝つ。そこがやっぱり楽しいなと思います。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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