2019年1月31日
#621 真壁 伸弥 『楽しくラグビーをやる』
3連覇の難しさを知っている前キャプテン・真壁伸弥選手に今シーズンを振り返ってもらうと共に、日本代表、そして2019年シーズンに向けた意気込みを語ってもらいました。(取材日:2019年1月15日)
◆自分たちがまだまだだった
――3連覇を惜しいところで逃しましたが、実際に選手としては難しかったですか?
プレッシャーはあったと思います。周りからのプレッシャーもあったと思いますし、自分たちでつくるプレッシャーもあったので、それに対して、みんな良くやったと思うんですけど、最終的に神戸製鋼さんが強かったということに尽きると思います。自分たちがまだまだだったということですね。
――かなり良いところまで行ったということですね?
そうですね。苦しみながらですけど決勝の舞台まで立てましたし、ターゲットにされながらやって行くというのは難しいと、昨シーズン同様に感じました。
――雰囲気としてはシーズンを通して相当プレッシャーがかかっていたように見えました
自信の部分では、しっかりそれをつくることは出来たというのはあります。ただ自分たちがやろうとしたことを、完璧に出来る試合があまりなかったので、思いっきりがなかなかつくりきれなかったのかなと思います。
――真壁選手がキャプテンの時も3連覇の壁がありましたね
3連覇が難しいというよりも、勝ち続けること自体が難しいですよね。いつかは負けるんですが、それが今回も3連覇の時に来たなという感じです。
◆やりきりました
――個人としてはシーズン通してどうでしたか?
パフォーマンスが相変わらず良くなかったです。
――体調の問題ですか?
体調もありますし、怪我もありました。それでもチームとして使っていただけたので、選んでいただいていたことに最大限に報いようと思ったんですけど、難しかったですね。
――報いることが出来なかったところは?
体の痛みに負けました。言い訳になりますけど、毎回の練習で痛みの辛さに負けていました。すべてを出さないといろいろ終わってしまうと思ったのでやりきりましたが、それが果たして良かったのか。個人的には痛みに負けましたね。
――真壁選手が痛みに負けるのは珍しいことではないですか?
そうですね(笑)。
――痛みに負けた自分自身を振り返ってみてどうですか?
その痛みが出る前にちゃんとケアをしていなかったのか、という話ですよね。自分は大丈夫だろうと思ってズルズルきたのが、個人的な失敗でした。
――そこは改善されたんですか?
もう手術して全然違います。たられば、ですよね(笑)。
◆楽しくやりたい
――いよいよワールドカップイヤーがきましたが、日本代表に対しては?
選ばれていないですからね。選ばれていない理由も自分では分かっていて、パフォーマンスが悪い。でもまだチャンスはあると思うので、目指していますよ。
――チャンスはどのあたりですか?
スティーブン・ドナルド(ニュージーランド/元サントリー他/現NEC)だって、スタンドオフで4番目の選手だったのに急きょ代表に選ばれて出場して優勝していますからね。ジャパンに関わる人間としてはいつでも準備して、急な呼び出しがあったらすぐに対応できるようにしておかないと。
――体の調子が良くなって、こうしたいということはありますか?
楽しくしたい。痛くてやりたくなくてネガティブでした。何をやっても痛くて、歩いても痛くて、ラグビーをやりたくないと悪循環になってしまっていたので、痛くないんだから楽しくやりたい(笑)。
――今の時点では楽しくやりながらどこを鍛えているんですか?
自分らしいパフォーマンスが出るようにです。それを出さないとジャパンの前に、まずサンゴリアスでの出場がなくなってしまいます。同じポジションの小林も良いプレーヤーで、純日本人的な性格さえ直せばすぐにでもレギュラーを取れると思いますし、後輩みんなのパフォーマンスはレベルが高いですから。
――パフォーマンスを出すことへの自信は?
経験の部分で貢献できると思います。この前の試合(カップ戦準決勝)も快勝していますが、結局セットピースの部分では負けています。相手チームには外国人選手がいる中、サンゴリアスは日本人選手だけで勝ったと評価されていますが、セットピースのパーセンテージが40%にも達していないですし、あの試合で相手がベストパフォーマンスを出していたらどうなっていたかと考えてしまいます。そういう時にどういう切り札を出せるかという部分で、この前の試合は「若いな」と思ってしまいました。そういうところで、まだ伝えられることはあるんじゃないかと思います。あとは小林とテラ(寺田)が、相手をtoo much respectしない選手になれれば(笑)。
――後輩を盛り上げることもやっているんですか?
10年間は全くやっていなかったです。今はロッカールームでロックと近くにされてしまったので、嫌でも喋らざるを得ない状況になっています。チーム的にもディスカッションしようという雰囲気になっていて、自分のロッカーを中心にロックが集まっている感じになってしまっているので、やらざるを得ないです。
――意外とやってみると良かったりしませんか?
どうやって脱線した話にしようか、いつも考えています。みんな真面目なので。
――それに一番応えてくれるのは誰ですか?
みんなです。特にジャンボ(仲村慎祐)とか(笑)。
◆スポーツというものを楽しんでいるようなラグビー
――2019年の目標は?
楽しくラグビーをやる。
――それをもう少し掘り下げるとどうですか?
自分の納得のいく試合をしたいです。やりきったと思えるような。
――そのためには?
治す。体調を万全にして元気にする。目標は明確で、ワールドカップにチャンスがあれば行くこと。それに向けて、しっかり体調をつくっていきます。
――チームはどうですか?
チームは難しいですよね。来シーズンのトップリーグの流れを知っている人は少ないのかなと思いますし、どういうモチベーションでやれば良いのか、なかなか難しいところがあります。そこに関してはこれから考えていきたいと思います。
――2019年、ファンは真壁選手のことをどう応援したら良いですか?どんな姿を見せてくれますか?
気持ちがこもっているプレーや、楽しくやっているのは見ていれば伝わると思うので、会場に来てそういうことを感じてもらえたらと思います。この前のクボタ戦でもカップ戦メンバーが躍動していて、みんなやっていて楽しいんだろうなと感じるラグビーをしていました。それが特にディフェンスで見ることができたので、あのようなラグビーをしたいです。
勝たなければいけないというプレッシャーはもちろんあったんですけど、リーグ戦ではそれに縛られてとても狭いラグビーをしていたんだなと思いましたし、痛いところもあってそればかりに集中していたので、そういうこと関係なくスポーツというものを楽しんでいるようなラグビー、この前のクボタ戦メンバーのようなラグビーをしたいと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]