SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2019年1月11日

#618 西川 征克 『ひたむきにプレーで見せる』

今シーズン、31歳にして日本代表初キャップを獲得した西川征克選手。3連覇達成ならずの悔しさと、ワールドカップイヤーに向けての抱負を語ってもらいました。(取材日:2018年12月27日)

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◆優勝しなければ

――日本選手権決勝後、悔しがる選手たちに向けて、準優勝でもよくやったという激励もありましたね

はい、そうなんですが、敬介さん(沢木監督)からは「優勝しなければいけない」という言葉がありました。その通りで、よくやったかもしれないけど、やはり優勝と準優勝はえらい違いだと思うので、優勝しなければいけなかったと思いました。優勝して皆を喜ばせてあげたかったというのが正直な気持ちです。客観的には準優勝ですし周りから「おめでとう」とも言ってもらえましたが、選手としてみれば「優勝しなければいけなかった」というのが本当の気持ちですね。

――どの辺りが最も悔しいところですか?

僕の場合は最初の失点が僕のミスから始まっているので、そこが一番悔やまれるところです。相手はフィジカルも強いので、勢いに乗るとあのようなチームになるんだなと実感しました。

強い相手に対して、相手の強みを消して逆に自分たちがアタックしなければいけなかったんですが、そこができなかったことが残念です。

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――シーズンを通してはどうでしたか?

シーズンを通して怪我をしなかったことが一番良かったところですが、その中でしっかりパフォーマンスを出せていたかというと、まだまだ出せなかった部分があると思います。調子の波を作ってしまったことは、あまり良くありませんでした。

――波が低い時は何を出せていないんですか?

自分に何か迷いがあるというか、感覚的なものですけど、ズレているのかなというのはあります。

――ブレイクダウンに入るべき時に入れなかったりとか、そういうことですか?

そうです。そういう感覚的なものですね。それはメンタルなのか、疲労からくるものなのか、それは時と場合によると思うんですが、バランスをとれていない時があったのかなと思います。

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◆良い刺激

――こうしたらバランスがとれる、来シーズンはこうやろう、というイメージはできていますか?

今回、日本代表に選ばれて一年中ラグビー漬けでやって、その部分でいつもとルーティンが違ったというのはあると思います。そういう部分もあるでしょうし、そういう部分を自分でコントロールできなかった部分も、多少なりともあると思います。

――代表と兼務するということでルーティンが一番違ったところはどこですか?

帰ってきてからすぐにチームに合流ということで、システムもチームによって違いますし、理解をするのに少し時間がかかりました。その分ちょっと遅れてしまいましたが、サントリーだけのシステムに加えてもうひとつ持って、二通りを持っておく必要があると思います。代表に行っていて少し遅れたというのもあるので、そのあたりでリズム的に少し違ったのかなと思います。

――その克服方法は?

慣れになるんじゃないですかね。今までずっとサントリーだけでやっていて、敬介さんが監督になって3年目ですが、サントリーとしてのペースは掴めていたので、体と心が慣れていけば戻ってくるのかなと思います。

――日本代表でやっていることでやりがいは高まりますよね?

そうですね。違う環境でできるというのは良い刺激になると思っています。

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――日本代表になってからリーグ戦でもプレーが目立つようになった気がします

代表とはシステムが違うので戸惑いもありますけど、代表クラスになるとフィジカルはやっぱり強いので、そこで経験できたのは大きいなと思います。

――トップリーグでもしっかりプレーしている、働いているというイメージがあります

僕は特別フィジカルが強いわけでも足が速いわけでもないので、自分がやるべきところはそういうところだと思っていますし、そこにフォーカスして取り組んでいます。

――今シーズンはそこに浮き沈みがあったということですか?

そうですね。波が今シーズンは少し出たと思います。

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◆成長が足りなかった

――3連覇を目指したシーズンは、2連覇までと比べてやはりかなり難しかったですか?

本当に難しいと思いますし、今シーズンは外国人枠が変わったり相手も大幅に補強してきたりして、サントリーを倒すため、優勝するために勢力をどんどん上げていました。2年間保った優勝をもう1回するためには、絶対に成長が欠かせなかったんですが、追われる立場として挑む中で、結果として追いついて追い抜かれたということです。まだまだ成長が足りなかったなと、正直思います。

――追われるのはやっぱりしんどいですか?

追うのも追われるのもしんどいと思います。勝ち続ける難しさは2連覇した時もあったと思うんですけど、相手もどんどんレベルアップしているので、それ以上の難しさがあるのかなと思います。

――チーム内の変化はありましたか?

スペースを見極めてそこにしっかりと攻める意図を持った攻撃は、今シーズンは特にできていたのかなと思います。

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――追われる苦しさからか今シーズンは楽しんでいる様子があまり見られなかったような気がします

リーグ戦を通してもスッキリした勝ち方がなかったので、外から見たらそう見えたんだと思います。僕たちはやっている中では感じませんでしたが、外から見てそう見えたというのは苦しい位置にいたのかなと思います。

――代表との両立をやってみて、改めてラグビーはやっぱりここが面白いなと思ったところはありますか?

難しいですね。優勝していたら楽しいですし面白いですが、優勝がなくなったらその一番の楽しみがなくなります。時々の面白さはあると思うんですけど、トータルで見た面白さは、やっぱり優勝が一番の楽しみになるんだなと思いましたね。

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◆量より質

――本人としては言われたくないでしょうが、そろそろベテランと呼ばれるタイミングで、その辺りチーム内の位置づけは意識していますか?

僕自身は口が上手いわけでもないですしチームをまとめられるわけでもないので、ひたむきにプレーで見せることしかできません。それしか方法がないと思うので、そこはやっていきたいと思います。ベテランだからというより、一緒に混じってという感覚で僕としてやりたいなという思いはあります。

――常にひたむきにやるには精神力や高いものを常に目指している志が必要だと思うんですが、そのモチベーションを持ち続けることはそんなに難しくないですか?

難しいです。これまで正直あまりしていなかった部分ですが、昨シーズンから自分をコントロールできているので、怪我しそうで危ないなと思ったらウェイトの重りを下げたり、ケアを入念にするようになったりしました。量よりも質をとれるようになってきて、その辺りをしっかりとグラウンドで出すというイメージで今のところはできているので、良い方向に行っているのかなと思います。

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――それを掴めたのはキャリアですか?

そうですね。体が言うことを効かなくなったので、コントロールをしないと。逆にそれが上手いこと行っています。

――体が言うことを効かないという自覚が出てきた?

そうです。それでしっかりコントロールをして、出すところは出すという形で、良いバランスをとれるようになってきていると思います。

――いよいよワールドカップイヤーですが、それも含めて目指すところは?

ワールドカップに出ることはとても難しいと思っていて、外国人選手が同じポジションで入ってくるでしょうし、しっかりと1つ1つやっていくことだと思います。結果としてどうなるか分かりませんが、それをやっていったら結果がどうであれ、自分のプラスになっていくと思うのでそこをやっていくだけです。

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――もうひとつサントリーとしてチャンピオン奪還というところに向けてはどうですか?

もう1回レベルアップして、今シーズン2連敗を喫している神戸製鋼を倒しに行くイメージで、特に日和佐を倒さないとね(笑)。同期としてしっかり日和佐に激しくプレッシャーをかけていきます。

――日和佐選手とは何か話しましたか?

そうですね。淡々とした会話ですけれど。

――新年のメッセージをファンの皆さんへ

新年あけましておめでとうございます。サントリーとしては新年を迎え、新たにもう1回チャンピオンをとるということを目指してやっていきたいと思っています。自分自身もその中でサントリーの優勝と、そして日本代表でしっかりチャレンジしていくことにフォーカスしてやっていきます。1月にカップ戦があるので、残りの試合、最後にしっかりと勝てるようにやっていきます。引き続き応援をお願い致します。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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