2019年1月 4日
#617 流 大 『新たなチャレンジが待っている』
目指した3連覇を達成できなかった今シーズンを振り返り、そして2019年を迎えるにあたっての新たな目標について、キャプテン流大選手に訊きました。(取材日:2018年12月26日)
◆自分たちを見つめ直す
――勝っていればチーム初のトップリーグ3連覇とトップリーグ最多優勝記録達成という本当におしいところまで行っていました。決勝戦が終わってしばらく経ちましたが今の気持ちは?
結果は残念ですが次に向かわなければいけないと思っているので、今はスッキリしています。1週間経って、ようやく次に向かうことができています。
――ということは、1週間は後ろを見ていたということですか?
逆に試合の映像を見ることができなかったですね。試合を昨日初めて見たんですけど、それまでは見ることができなくて、今日(12/26)からチームが再開するので、もう区切りをつけようと思って、昨日試合のレビューをしました。
改めて試合を見ても完敗ですし、前半に何度かアタックのチャンスがあった中で、自分たちがボールを失ってそのまま全部の流れを相手に渡してしまったので、悔しい試合になりました。
――サントリーに対してあそこまで差をつけて勝つチームが、わずか1シーズンで出てきた訳ですね
今シーズンに関しては神戸製鋼ですね。あれだけチームが変わったと言うか、もともとポテンシャルがあるチームですし、素晴らしい伝統のあるチームだと思うんですけど、実力者や経験者が加入してチームを加速させることのできたというのは、今シーズンで言えば神戸製鋼だったと思います。
――ということは、そういうところにサントリーも次の芽みたいなものがあるかもしれないということですか?
ただ大物の外国人選手が来たとしても、チームとしての強さが根底にないと最終的なファイナルでは勝てないと思うので、新シーズンはもう1回自分たちを見つめ直すシーズンになるのではないかと思います。
◆初めて追い込まれた
――3連覇目というのは1回目と2回目の優勝の時よりも大変でしたか?
間違いなく一番大変でした。自分たちにかかるプレッシャーが大きいことと、相手が自分たちをターゲットとしてくること。あとは個人的にですけど、今シーズンはサントリーにいた期間が短かったので、コミットしきれなかったという後悔はあります。
今回は長くチームにいなかったですし、本当にきついハードなトレーニングを一緒にはできていなかったので、そこの難しさはありました。あとはジャパンに行っている間のカップ戦を見ましたが、その時は良い状態でチームもとてもまとまっていると感じていました。
そこに対して長期いなかったメンバーが入っていくというのは、僕としては難しかったです。みんなへのアプローチの仕方や発言一つにしても、今までとは立場が違うので、そのあたりが難しかったです。
――それは代表やサンウルブズで世界に向けて出ていくためには、乗り越えなければいけない課題ですか
それがいち選手であればもっと違ったと思うんですけれど、優勝しているチームのキャプテンという立場であり、プレッシャーを自分の中でとても感じたシーズンでした。
――そのプレッシャーに関しては誰かに相談したんですか?
敬介さん(沢木監督)には見抜かれていて、実際今シーズンのパフォーマンスはジャパンでも納得できていなかったですし、サントリーにいる時も良くありませんでした。「迷うことないし、自信を持ってやることが一番」と常に言われていて、あとは技術的なレビューも常にしてもらっていました。
自分の中で「これでいける」と思った時も正直あまり良いプレーはできていなくて、初めて少しラグビーが嫌になったというか、試合の時いつもはワクワクして早く試合がしたいと思っていたところが、ちょっと嫌だなとラグビー人生で初めて追い込まれましたね。
◆模索するしかない
――プレーが上手くいかないのは、プレッシャーなど精神的なものが元になっているんですか?
両方ですね。そこで技術に絶対的な自信があればカバーできたかもしれないですし、結局力を出せていないのは自分の心の浮き沈みがあって、一定したパフォーマンスができなかったということだと思います。それについては自分自身、いろいろ経験できたとも言えると思います。
――そこはどう乗り越えていくんですか?
今は模索するしかないと思います。僕自身は2月からワールドカップ・スコッドの合宿に行くので、そこまでには自分の中で考えを整理して、コンディションを整えて行くしかないと思っています。
――特にスキルや戦術的なところではないということですか?
戦術的なところはとてもクリアですし、自分の中でも理解できていて問題ないと思うんですけど、根本的にスキルの部分で今は自信をなくしているので、そこを少しやっていかなければいけないと思っています。
――準備が出来ているというより、これから積み上げていかなければいけないという感じですか?
そうですね。今までやってきたことを変えないといけないことも、たくさんあると思っています。もっと自分の練習の時間を増やさなければいけないですし、自分に対して圧倒的に自信を持てるまで、パスを投げ込んでキックを蹴り込んでタックルして、技術的な自信をしっかりと自分につけることがまず大事になると思います。
――それとチームとの連動はどのように考えますか?自分が良くなっていけば全体も良くなっていきそうですか?
本当にそうですね。キャプテン1年目、2年目の時も自分が良いプレーをすることを一番に考えていて、敬介さんにもそれが一番のリーダーシップだと常に言われていました。
そこはとても意識して常に自信を持ってやれていたので、自分自身、良いプレーができることが多かったと思っているんですけど、今シーズンに関しては良いプレーがあまりできなかった上に、長い期間チームにいなくて、リーダーシップをどうとっていくべきかをとても迷ったので、全てが中途半端になってしまいました。
もしその時に良いパフォーマンスが出ていなくても、僕のリーダーシップをブラさず変えずにできれば良かったんですけど、そこに対してみんなへの遠慮というか、自分で「自分が良くないからこんなことを言うべきではない」と思ったり、いろいろな葛藤があったシーズンでした。
さっき言ったように、一回ラグビーが嫌だな、と思ってしまいましたからね。でも、ここから目を逸らしてはいけないと思っていたので敬介さんとも話しましたし、他の選手にはあまり言えなかったですけど、自分では目を逸らさずにどうやって乗り越えるかを考えながらやっていました。
◆自分はまだ未熟
――嫌だなと思ったところから目を逸らさずに見続けたら、どんなことが見えましたか?
自分はまだ未熟だということです。そこに言い訳はないですし、自分の力量が足りていなくて、メンタル的にもまだ未熟だという現実がありました。
でも、それに気づけたのはこういう調子が悪い時や良くない時であり、良い時はそういうところに目を向けられなくて気づかないものなのだと思います。悪くなって初めて僕は気づけたので、次へのステップかなと思います。
――カップ戦はどのように捉えていますか?
僕自身は日本代表のプロテクトにかかっていて試合には出らないので、外からの視点になりますけど、今まで出場機会が少ない選手を含めて多くの若い選手も出場すると思うので、タイトルがある以上そしていま優勝できる位置にいるので、優勝を目指すことがサントリーの使命だと思いますし、それを一番にサポートしていきたいと思っています。
――そうすると試合に出ないキャプテンシップになると思いますが、どこがポイントになると思いますか?
そこは難しいところで、これからゲームキャプテンを誰が務めていくかというところになると思うんですが、チームに対して良いコミュニケーションをとって、今まで僕たちが試合に向かう上で、例えばノンメンバーが相手チームの分析をしてくれて実践をしてくれたりアドバイスをくれたりしたみたいに、違う形でチームに対して貢献できる方法はあると思うので、それを実践していくことです。
カップ戦は外国人枠がなくてサントリーはもともと外国人が全然出ないので、レギュラーシーズンからの和製な力をカップ戦でも見せて、僕たちは今いるメンバーであと2試合勝ちたいと思っています。
――インターナショナルスタンダードを掲げているチームからすると望むところですよね?
そうですね。ここからが本当にチームの真価が問われる2試合だと思います。
◆チームが一つになるような働きかけ
――そういう期間を経て満を持しての日本代表の活動、いよいよワールドカップイヤーになりますが、チームの手応えはどうですか?
チームとしてはめちゃくちゃ良い方向に進んでいると思います。
――それは選手の自覚が高いということですか?
そこは今とても良いレベルまできたと思うので、続けていくことですね。サンウルブズやワールドカップ・スコッドの中での試合を通してやっていくことが大事で、チームとしては本当に良い方向に向かっていると思います。
――まずは選ばれることだと思いますが、選ばれた時の自分の役割とやりたいことはなんですか?
やりたいことよりもまずやるべきこととして、もう1回パフォーマンスをしっかり上げることが僕の中で一番重要なポイントです。チームに対してパフォーマンスでしっかりと貢献できるようにする準備が、まず最初に絶対にやらなければいけないことです。
2つ目は代表でもリーダーグループに入っているので、そこでどうチームを良くしていくか。グラウンド内はもちろんみんなハードワークしていますし一体感は出てくると思いますが、グラウンド外のところを含めてよりコミュニケーションを多くとって、チームが一つになるような働きかけをすることが役割だと思っているので、そこはやらなければいけないと思います。あとはコンディションをしっかりと整えて怪我をせずに、一貫したプレーをし続ける。この3つを考えています。
――プレーヤーに加えてリーダーシップを発揮するというのが、自分の役目であり責任であるという道を、サントリーでも代表でも歩んでいますね
2018年に関しては完全に上手くいかなかったので、2019年も新たなチャレンジが待っていると思います。
――新年第一弾のスピリッツです。ファンの皆さんへメッセージを
あけましておめでとうございます。2018年シーズンも公式戦だけではなく、練習試合また日本代表やサンウルブズの試合に対しても応援してくださったファンの皆様に、とても感謝しています。
レギュラーシーズンの結果は残念でしたけれど、またこれからサンゴリアスが強くなるための一つの試合だったと思います。まだカップ戦2試合が残っていて、そこでチームの真価が問われると思うので、是非カップ戦でも応援していただいて2019年の良いスタートにしていきたいと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]