2018年12月 7日
#614 中村 駿太 『もっとできる、もっとレベルアップしたい』
入部以来、多くの試合に出場し続けている中村駿太選手。今シーズンはリザーブでの途中出場が多い状況ですが、いま何を考え、何を目指しているのでしょうか。トーナメント戦に入る直前に話を聞きました。(取材日:2018年11月26日)
◆組みながらコミュニケーション
――今シーズン、16番での出場が多い状況について?
もちろん2番を狙って1年間トレーニングしてきたので、メンバー発表の時に敬介さん(沢木監督)から「16番」と言われるのはとても悔しい想いなんですが、16番のジャージを着るという責任があるので、スタメンとは違った役割をちゃんと果たせるように、1週間しっかり準備しています。
――スタメンと違う役割とはどこですか?
僕に対して求められていることは一緒だと思いますが、スタメンだと試合前の分析通りなのか分析とは少し違うのかということを含めて、試合中に作り上げていきます。リザーブだと共に代わることの多いフロントローとも話し合いながら見ていて、コミュニケーションがとれている中で入るという状態とでは、役割も変わってきます。
――見ていての成果は出るんですか?
相手もメンバーが代わると少し変わりますし、そしてスタメンの時もそうだと思うんですけど、自分たちが何をするかは明確になって試合に入ることができています。
――入って良くなったケースはありますか?
顕著にそれを感じたのは春のキヤノンとの練習試合で、最初はスクラムが良くなかったんですが、入る前からずっと話をしていて、僕ともう1人が入ってそこから上手くいきました。あの時は顕著で、とても良くなったなと感じました。
――それはやっぱりコミュニケーションですか?
そうですね。もちろん事前にキヤノンの映像は見ていますが、生とは違うので。
――後ろとの連携はどうですか?
それは組みながらですね。「今のはちょっと来ていないんじゃない」「今は当たっていないよ」「滑ってない?」とか、逆に「今のはとても良いね」とも言いますし、組みながらコミュニケーションをとっている感じです。
――それは試合毎という感じですか?
試合中はもちろんそうですし、試合後も、練習中も、練習後もそうです。
――全体的に良い感じになっていくコツは何ですか?
分からないです(笑)。ても、本当にコミュニケーションをとることだと思いますね。先週の火曜日の練習でスクラムがとても良くなかったんですけど、木曜日に良くなって試合でもとても良くて、組む度に良くなっていく感じはあります。
――それは面白いですね
本当に面白いですね。火曜日に良いスクラムをもちろん組みたいんですけど、組めなくてもしっかりコミュニケーションがとれて課題が明確であれば、次の練習の時にそこを克服すれば良いだけだなと思えるようになりました。今シーズンはポジティブに考えられるようになったんです。
昨シーズンは火曜日がダメだったら今週ダメだわという感覚がとてもありました。今シーズンは成功体験の影響もあると思いますが、とてもポジティブに考えられるようになりました。
――コミュニケーションによってどういう変え方をしているんですか?
先週で言えば、まずフロントローが1枚で当たれていなかったんです。結構ヒットもバラバラだったので、まずはそこがポイントで、それをちゃんとするためには大切なのはセットアップで、セットアップを少し右にずらしてみようか、左にずらしてみようかとやっていると、自然と合ってきます。1つずつ分解してみてやっています。
――他のセットプレーはどうですか?
いま良くなってきていると思います。今シーズン、ラインアウトは少し苦戦していますけれど。
――モールは?
モールは基本ボールを持っているだけなので、あまり感じはしないです。やっぱりスクラムは最前線で戦っているので、そこがポイントだと思います。
◆スクラムにパッションを
――今の自分自身が感じる課題は何ですか?
全部ですね。僕、毎回全部と言っていると思うんですけど、もっとできるなと思うし、もっとやらなければいけないなとも思うし、もっとレベルアップしたいと思います。
――その中でもまずは何ですか?
今シーズンで言えば、スローイングもそこそこ安定していますし、フィールドプレーもそれなりのパフォーマンスを出せるように安定しているので、やっぱりスクラムですね。アオさん(青木スクラムコーチ)と比べるとまだまだ劣ります。強さも分析力も、スクラムに関しては負けています。
――スクラムのどこを強化すると良くなりますか?
まずは「強さ」で、僕はヒットスピードが遅いので、いま自分の中でそれを心掛けています。どうやったら相手よりヒットを早くバンッといけるか。あとは、バックロー、バック5、フロントローへの「声掛け」です。まだ組んでいてそれで精一杯のレベルなんです。
でもアオさんは組みながら余裕があるんです。僕が入って来た時はアオさんが現役で12年目の頃で、もちろん経験があると思いますしそのギャップもあると思いますが、スクラムに対して僕ももっと熱意を注いでいかなければいけないと思っています。ビデオを見ることも、いろいろな国のスクラムを見ることも、もっとパッションをそこにつぎ込んでいかなければいけないと思います。
――それはつぎ込み始めているんですか?
そうですね。昨シーズンに比べれば意識は変わったと思います。昨シーズンはアオさんが現役だったのでなんとかなっていましたし、分からなかったら全部アオさんに聞けば良いやという感じでしたけど、今シーズンはコーチという立場ですし、そこを僕も北出さんも康介(堀越)も、自分たちで少しずつやっていると思っています。
――スクラムの一番の面白さは?
僕はもともとそれほどスクラムが好きなわけではないんですが、今まではスクラムがダメでも他でその分をカバーできれば良くて認められていました。ただ、今はスクラムでも認められないといけませんし、スローイングでもそうですし、フィールドでもそうですし、全てを求められています。
そういう環境にいるから、意識は本当に変わってきたと思います。昨シーズンまでは基本的に、フロントローの僕がどうだったかということしかできていませんでした。でも、今シーズンは組みながらでも、映像を見ながらでも、レビューができるようになってきました。
――それは自分としてはどう感じていますか?
自分の成長です。面白いです。この間のNTTコミュニケーションズ戦で、相手はリーグ戦のフロントローと一緒で、リーグ戦ではやられたイメージがありました。今回、試合でのスクラム一発目を組んで、「今日はいけるな」と。自分が成長したのを少し実感しましたし、それを実感できて嬉しかったです。
――狙い通りにいけたことイコール成長ですか?
まず、いけたことが成長でしたし、その感触を持てること自体が成長していると感じました。まだまだですけれどね。
◆スローイングも100%で
――青木コーチのアドバイスのどのあたりに良さがありますか?
アドバイスがとてもシンプルです。
――アドバイスと自分で考えるということのバランスはどうやってとっているんですか?
もともとそれは自分で思っていることがある中で、言われたり聞いたりしていて「そうだな」と思うこともありますし、「お互い考えていること一緒だな」と思うこともあります。
――その他の課題はどうですか?
本当にいろいろとまだまだです。スローイングも機械のように、100%で投げられるようになりたいです。
――100%投げられない原因は何だと思いますか?
練習が足りないからです。スキルがまだまだです。
――練習を増やしているんですか?
めちゃくちゃ投げていますよ。僕だけではなくて北出さんも、飯野に取ってもらってやっています。
――日々成長は感じますか?
昨シーズンに比べれば本当に上手くなったと思うんですけれどね。今シーズンはまだ1本しかノットストレートを投げていないですし・・・。1本投げてしまっているんですけど。もっと正確に投げられるようになりたいです。そのために毎日練習しているし、ジャンパーともしっかりコミュニケーションを取るようにしています。
◆3年目??
――気をつけているのはそこのところですか?
ラインアウトはジャンパーとの信頼関係だと思っているので、ジャンパーがここに上がってくるとイメージして投げています。それが現実のものと誤差が生まれてしまったとか、立ち位置が違ったとか、そういうことが1本あるだけで不安になるんです。だから、絶対に信頼関係だと思うんです。だから、タイミングが合わなかった時には、「今のはこうだった。俺はそう思う。お前はどう思う?」と絶対に話をするようにしています。
――その他は?
フィールドプレーもそうです。この前の試合も3回タックルを外されていて、もっとタックルが上手くなりたいし、もっとボールキャリーをガンガン行きたいです。
――それだけやりたいことがあると、試合後にストレスは溜まっていませんか?
ストレスが溜まると言うか、映像を見て「もっとこうだったな」とか、「今なんでこのプレーを選択したんだろう」とか。
――「今なんでこのプレーを選択したんだろう」と思うプレーは思い出せますか?
良いプレーができていない時は大体迷っている時で、この間で言えばボールを持っていてキャリーをするのか、ループするのかを「どっちにしよう」と迷っていて、ループを選択してミスをしました。そのプレーを映像を見返したら、自分でキャリーをした方が面白い良い判断だったと思いました。
――判断を面白く、良くするためには、どうすればいいんですか?
サントリーは実践練習が多いので、その中でチャレンジしていくしかないと思います。チャレンジはしているんですけど、まだまだ足りていないということですね。
――「ここはできた」というのは試合後にあるんですか?
もちろんあります。この前のトライした時も自分のイメージ通りでした、煕(田村)ともそのイメージが共有できているから、あのプレーに繋がりましたし、キャリーもゲインできているし、全然悪くないと思うんです。でもネガティブにではなく、ポジティブにもっとやらなければいけないと思います。
結果として今シーズン2番で出たのは、カップ戦3試合とリーグ1試合の4試合。それしか出られていないと考えたら、まだまだなんだなと思います。それが全試合2番で出られていたら、自分の考え方もまた変わっているのかもしれませんが、16番で出ている試合の方が多い状況で、そのパフォーマンスに満足はできないです。ましてや、康介がジャパンにフッカーで選ばれていて、とても刺激になります。
――目指すレベルは無限大だと思いますが、いまどのあたりまで来ていますか?
半分くらいだと思います。伸び代ですね。まだ24歳ですからね。チームでも「まだ3年目??」と、めちゃくちゃ言われます。
――それはなぜ?
分からないですけど、態度がでかいからじゃないですか(笑)。
――それは学生の時からですか?
そうですね。変わらないですね。学生の頃から先輩後輩はあまり関係なくて、僕も先輩にタメ口で話すこともありますしガっていうこともありますし、後輩にタメ口で話されても怒りません。そこらへんはフラットです。サントリーはそういうタイプの人は多いです。
――それはもともと持っていたんですよね。そうするとコミュニケーションが早くなりますね
今の明治大学の4年生が、僕が4年の時の1年生なんですけど、今でもLINEで「ご飯いこ」と連絡がきますよ(笑)。
――残り少なくなってきましたが、今シーズンの目標をお願いします
ファイナルにスタメンで出ることと、その先の2019年のワールドカップメンバーに選ばれることです。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]