SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2018年11月30日

#613 小林 航 『激しい選手になりたい』

体は大きいが走れて跳べる小林航選手。自分の長所を存分に活かして、レギュラーに挑もうとしています。小林選手のラグビースキル、そして現在の心境について訊きました。(取材日:2018年11月13日)

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◆アタックとセットプレー

――先日の秋田でのホンダ戦、開始3分でのトライはどうでしたか?

練習の時から煕(田村)がスタンドオフの時に試していることが多くて、スタンドからフラットでもらうパスは、その練習の時から結構コミュニケーションが取れていました。ホンダ戦でも狙っていましたが、周りのメンバーもゲインラインを越えて相手のディフェンスが乱れてきていたので、抜けるなと思って思いっきり入ったら抜けて、そのままトライできました。

――ボールをもらった瞬間にトライまで行こうという感じでしたか?

セットアップしている時に入って行くコースの内側の相手選手が中を見ていたので、「これはいけるな」と思いました。その人の少し横に入って、抜けたら相手のカバーリングも遅かったので「これは自分の足でもいけるな」と思って、走り切った感じです。

――気持ち良かったですか?

気持ち良かったです。映像を何回か見ました。

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――幸先の良いスタートを切った試合、全体としてはどうでしたか?

自分がチームから求められているのは、アタックの部分とラインアウトのセットプレーの部分だと思います。アタックに関してはモーメンタムを出して、しっかり激しく前に出ることだと思います。

ラインアウトの部分では、メンバーが交替してからのプレーでミスをしてしまいましたが、練習の時からも選手が交替した時のミスが結構あったんです。そこをもっと僕がリードできていればなと思いました。
交替した時にハドルを組んで、もう1回自分たちの役割をしっかり確認してから、最初のラインアウトは挑むべきだなと反省しました。

――交替した時にミスしやすいのはどこなんですか?

選手交替は練習でも行っているんですが、試合での交替では練習通りにリザーブが入ってくるとは限らず、試合の中では合わせていた選手が急に抜けてしまうこともあります。そういう時の適応力、思っていた人と変わっても対応できる能力を、もっと上げていきたいと思います。

――それは練習で繰り返して克服するんですか?

実際は練習で同じレベルでやっているので、意識のところだと思います。僕がリーダーなので、最初にもう1回、役割の部分をしっかりみんなに統一して、コミュニケーションを取るべきでした。

――それ以外の部分ではリーダーとしてどうでしたか?

ラインアウト・ディフェンスは、上手く競ることができているシーンは1シーンくらいしかありませんでしたが、しっかりコミュニケーションを取って、相手にプレッシャーをかけることができていました。実際に相手のデリバリーのクオリティーは低かったので、その面ではしっかり引っ張れたのかなと思います。

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◆ヌードル、スティック

――リーダーという自覚が出てきていますが、意識していますか?

そうですね。ラインアウトに関しては自分の強みだと思っていて、チームの中でも負けていないと思っています。負けていないというよりは上手い方だと思っているので、そこにはチームリーダーの意識は持っています。

――その上手いところはどこですか?

ディフェンスだったら、相手のサインを読む力。あとは、ラインアウトのジャンプスキル。細かいところですが、ジャンプをサポートするのに上げやすい人と上げにくい人がいるんですが、僕は体重118kgあっても、それでも上げやすい方だと思います。そういうジャンプスキルやキャッチングスキルを、持っている方だと思います。

――ジャンプスキルでその体重を感じさせないように上げてもらうコツはなんですか?

もともと持っているんです(笑)。

――タイミングですか?

タイミングもありますし、外国人選手はよくヌードルと言っているんですけど、上げる時にジャンパー自身が棒になって飛び出すんです。やっぱりジャンプしていると怖さなどで曲がってしまう人が多い中、しっかりまっすぐ飛ぶことによって、上げやすいんだと思います。

――それを意識しているんですね?

意識はしています。

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――いつ頃からですか?

別名スティックとも呼んでいますが、そのスティックを意識し始めたのは大学生の時ですね。大学の時に駿太(中村)や元樹(須藤)と一緒にラインアウトを考えていて、強いチームはスティックになっているから、そこをしっかりやっていこうということで、大学の時にジャンパースティックを必ず意識するようにして始めました。

――研究家なんですね

ラインアウトは映像をとても見ます。

――海外のものも?

海外のも見ています。試合を見る時には、やっぱり一番ラインアウトに注目してしまいます。結構、僕はディフェンスの方が好きなので、ディフェンスを競った時のやってやった感がとても好きです。だから外国人選手のディフェンスを見て、「凄いな、カット上手いな」という感じで見ています。

――どのあたりが凄いと思うところですか?

説明するのはとても難しいですね(笑)。上手い人は相手のことも見ているし、フッカーのタイミングも見て競っているんです。両方見ていて相手のタイミングに合わせて、僕も意識しているんですけど、相手の後ろに立って相手を見ながら後ろからディフェンスする。

――相手のサインが分かるのはなぜですか?

サインが分かるというよりは感覚なのかもしれないですけど、自分もサインを出す側なので、ここでは後ろで取りたいなという時は分かるんです。それで、真ん中に来るんじゃないかと思いながらディフェンスをしていて、ムーブした時に前の人の動きを見て、上げなそうな素振りで判断して、「あ、この動きだ」と思ってディフェンスをします。

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◆両手で三角

――それはどうやって身につけたんですか?

それは練習とかで、回数を重ねてだんだん分かるようになってきました。でも、やっぱり大学の時の影響が一番です。

――さっき言っていたように自分たちでトライ&エラーをやっていた感じですか?

そうですね。大学の時には正直、僕よりラインアウトが上手い同期がいて、その同期に見方のアドバイスをもらったり、「こうやったらこうなる」みたいな話をしたりして形成されました。基盤は大学時代ですね。

――サントリーに入ってからはどうですか?

大学の時に見方を学んで、サントリーでレベルアップしているという感じです。練習でも毎回コンテスト、ラインアウトの競り合いの時があるので、そこで成長もありますし、しっかりアピールできるように競りに行っています。そこでも読んで、プレッシャーをかけています。

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――大学時代に研究していたことプラスアルファは?

ジョー(ウィーラー)に教えてもらうことはあります。ジョーはラインアウトが上手なので教えてもらったり、そのジョーに練習でプレッシャーをかけて「やってやったぜ」という感じの時もあります。

――ジョーはキャッチングがとても上手いですよね

めちゃめちゃ上手いですよね。僕が1~2年目の時はジョーにキャッチングスキルの練習を全体練習後にしてもらっていて、その練習はニュージーランド式なので、面白くてゲーム感覚でスキルを身につける練習でした。

――キャッチングのコツとして、どういうことを意識しているんですか?

ベーシックかもしれませんが、両手で三角を作って、その間から見てボールをキャッチするように意識しています。

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◆ジャンプ5回

――社会人3年目、成長してきていると感じますか?

そうですね。危機感もあります。試合に出られていないので、不安というのもあります。サントリーは良い選手ばかりなので、埋もれないように。

――埋もれないための課題は?

僕は波があるので、とても良い時ととても悪い時の落差があります。それよりも、波がなくて平均的な方がシーズンを戦っていく上で絶対に良いと思います。あとは、スキルの部分です。春も結構チャンスをもらったんですけど、サントリーの攻め方の部分で僕のパススピードなどで評価を落としてしまいました。あとは、練習からもっと全力を出してアピールをしていかないといけないと思います。

――精神の安定はどうやって自分のものにしようとしていますか?

いま僕がやっているのは、良かった時のルーティンを作ってやっています。良かった試合の週に何をしていたかを思い出して、それを次の試合の時に同じやり方をします。例えば、良かった週の水曜日に焼肉を食べに行ったとしたら水曜日に焼肉を食べに行ったりして、良かった週と同じ過ごし方をします。

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――その成果は実際にどうですか?

今はまだ途中です。焼肉の話は、分かりやすくするための例え話ですよ(笑)。前日にみんなと話してリラックスするとかですかね。

――そのやり方は掴めそうですか?

人それぞれ過ごし方はあるので何が良いのかは分からないですけど、探り探りでルーティンは決めようかなと思っています。今ルーティンはそれに加えて、試合前のジャンプ5回です。人ってジャンプをすると重心が真ん中にくるらしく、それを知ってからジャンプをするようにしています。

――どのタイミングでするんですか?

グラウンド入ったらジャンプ5回します。スタートだったらジャンプ5回、後半のスタートはジャンプ3回です。その場で膝を上げるようなジャンプです。重心に集まってくる感じがします。

――今シーズン、今の目標は何ですか?

今はカップ戦を戦っていますが、12月からの順位決定トーナメント準々決勝への準備期間と捉えています。みんなにチャンスがあると思うので、僕もしっかりチャンスを掴んで、ファイナルゲームに出られるようにしていきたいです。

――どんな選手を目指していますか?

オーソドックスですけど、レタリック(ブロディー/ニュージーランド代表)みたいに激しい選手。僕は強みがボールキャリーなので、レタリックみたいに激しい選手になりたいです。レタリックはブレイクダウンにガンガン入っていきますが、自分もそういう選手になりたいです。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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