SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2018年11月23日

#612 芦田 一顕 『日々の練習から自信を積み上げていく』

競争の激しいサントリーのスクラムハーフというポジションにおいて、ようやく出番がまわってきた芦田一顕選手。現状と展望を訊きました。(取材日:2018年11月6日)

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◆ナレッジとキック

――リーグ戦第7節の日野戦に出場してどうでしたか?

球はさばけたんですけど、今チームで取り組んでいる裏のスペースにボールを運ぶことであったり、フォワードともっとコミュニケーションをとったりというところが、久々の試合ということは関係なく、上手くできなかったと思います。15分くらいしか出ていないのにまた交替して、自分では全然満足できる内容ではありませんでした。それでもまた今月、監督からチャンスをいただいたので、精一杯やりたいと思います。

――久々に出て感覚的にはどうですか?

今年に限ってはブランビーズ戦という大きな目標もありましたし、例年より春シーズンからチームにしっかりフィットできていたんじゃないかと思うので、そこは問題ありませんでした。

――そうすると今の課題は何ですか?

ラグビーのナレッジ。ナレッジと言っても、サントリーのラグビーをもっとしっかり理解して、チームをリードできるようにならなければいけないと思っています。あとはキックで、裏のスペースをしっかり見てフォワードを前に上げることが課題です。

――ナレッジは考えるだけではなく、やってみてとうい感じですか?

そうですね。それも含めて、ビデオで試合の映像を見るのもそうなんですけど、日々の練習のレビューをしっかりとして、それをチーム内でも共有して、みんなでナレッジを上げていくというイメージです。

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――それはいけそうですか?

そうですね。この11月に関しては特に意識してやらなければいけないところかなと思っています。

――これからカップ戦があってその後トーナメントになりますが、展望はどうですか?

この3試合でしっかり良いパフォーマンスを出して、自分も自信をつけたいですし、チームとしても成長したいです。いつチャンスが来るか分からないので、その時にベストパフォーマンスができるように準備しておくことが11月のターゲットです。

――その時にベストパフォーマンスができるための準備は、どこがポイントなんですか?

日々の練習から自信を積み上げていくところ。それがきっと試合に出て、堂々とプレーできることに繋がると思いますし、そこが今までのところでは足りなかったのかなと思います。

――どうすると自信が積み上がるんですか?

小さな成功でも良いので、練習から成功を積み重ねて行くことです。

――今までは成功を積み重ねられなかったということですか?

そういう状態でチャンスをいただいても、試合であまり良いパフォーマンスができないことが多かったので、もう7年目なのでしっかりとやらなければいけないと思います。

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◆わざとスイッチを入れる

――7年目になると立ち位置は変わりますか?

後輩が多くなってきたのでリードもしないといけないと思いますし、しっかりと気を配ってやらなければいけないと思います。剛さん(有賀バックスコーチ)から、「下の選手がちゃんと準備をしているかを選手間で言えるように」と言われていて、今7~8年目の中堅の選手が、何気ない会話でチェックして確認しています。前の日の練習について話すだけで、チェックしているかが分かるので、日々みんなやっています。

――ハーフはラグビー選手の中で一番負けず嫌いなのではないでしょうか?そういう中で出られない悔しさはどう消化しているんですか?

もちろん、とても悔しいです。メンバーに入れない時は、木曜日のディフェンスがメインの練習で、メンバーに入っていない選手がアタックする時に「絶対に抜いてやろう」と思ってやっています。

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――それは成功しているんですか?

みんなわざとスイッチを入れることで、それがチームのためにもなりますし、そこで抜けたら自信にもなりますし、良いんじゃないかと思っています。それ以降は悔しい気持ちを静めて、試合当日はチームが勝つように応援しています。

――スクラムハーフが一番負けず嫌いな選手が多いのではないかという説はどうですか?

多いんですかね。確かに日和佐さん(神戸製鋼)を見ていても流もそうですね。日和佐さんを見ていたら、フーリー(デュプレア)やチームに対して凄かったので、負けず嫌いの印象が残っていますね。流はサンゴリアスだけではなく、日本代表の方にも目が向いていると思いますが、どちらに対しても負けず嫌いですね。

――先輩として後輩たちの負けず嫌いに火をつけた方が良いんじゃないですか?

そうですね(笑)。後輩たちはガンガン出してはこないんですけど、でも、僕自身そんなに余裕があるわけではなくて、自分のことで精一杯です。

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◆やるって決めたことは全部やる

――沢木監督になって初出場でしたが、どうでしたか?

僕が2年目の時までは敬介さん(沢木監督)がコーチでいて、その時からずっと指摘されていましたし、敬介さんの信頼を勝ち取るというのはなかなか難しいことなんだと思っていました。この前は流が日本代表でいないということでチャンスをもらいましたけど、敬介さんの時に初めて出られて良かったなと、素直に思いました。

――どこを指摘されたんですか?

よく「甘えるな」と言われます。環境に、自分に、だと思います。

――思い当たるところはあるんですか?

僕の中ではちゃんとしているつもりでも、敬介さんからしたら全然まだまだということだと思います。相手の分析だったり、練習のレビューがまだまだ全然できていないと言われます。「もっと自分のやるべきことをやれ、100%でやれ」と言われます。

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――今どうですか?

この前2度目を言われたので、3度目はないと思っています。

――いつ頃言われたんですか?

1回目が夏合宿の前くらいで、2回目が日野戦の週です。

――1回目と2回目の間を反省してみるとどうなんですか?

1回目に言われた時に、僕の中でやること自体を変えられていなかったと思うんです。また、普通にレビューして相手の分析をしていました。でも、2回目に言われてからは相手の分析で周りを巻き込むようにしたり、自主練習も少し嫌な練習から逃げていたというのがあったかもしれないので、やるって決めたことは全部毎日やると決めています。

――嫌な練習とは?

嫌な練習と言うか、毎日継続することは難しくて、キックやパスだったら「今日はどっちかで良いかな」と思ってしまう時が疲れた状態の時にあったのですが、それを今は両方やっています。

――前回インタビューした時もキックがテーマでしたが、キックのどこですか?

自主練習できるのはキックの精度を高めるところだと思うんですけど、試合や試合形式の練習で裏のスペースをまず見て蹴る。そうすることで、それが成功したら自信にもなります。

僕は高校生の頃からキックが苦手で下手くそだったんですけど、いつも同じところにボールを落とせるようになることと、僕は結構ラックに目がいってしまうので、裏のスペースを見ることを心がけています。

――それは徐々に出来つつあるんですか?

そうですね。今月の練習は絶対にそこを逃げないで、裏のスペースにチャレンジすることと決めているので、そこはしっかりやりたいと思っています。

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◆体を張る

――勝負のカップ戦、勝負のトーナメント戦という感じですが、そこでの自分の武器は何だと思いますか?

正確なパスと、ディフェンスで体を張ることだと思っているので、カップ戦は一番体を張ろうと思っています。そうしたらフォワードもついてきてくれると思います。

――今の時点でラグビーの面白さはどこですか?

一番は勝つことが楽しいんですけど、自分のイメージ通りにプレーが成功したり、僕の判断だけではなく、周りの判断と僕の判断が一致して上手くいったりした時がとても楽しいです。

――ラグビーがどんどん進化している時代としての面白さはどうですか?

面白いですし、やっていると大変です。求められることが、僕が1年目の時と今とでは全然違うと思います。

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――2連覇していても同じことをしていては勝てないということですよね

実際に今シーズンがそうですけど、どこのチームが相手でも勝つのが難しい状態です。その中でチーム全員が良いプレーをして、自分たちのラグビーをした上で勝てた試合が少ないと思うので、それができたら僕だけではなくみんなも嬉しいですし、楽しくラグビーができると思います。

――自分の理想は今どのくらい近づいていますか?

全然まだまだです。

――でも、確実に成長していますか?

それはできていると思います。

――その先の成長はどこまで見据えていますか?

いつまでラグビーを続けられるかにもよりますし、具体的ではないんですが、もっとこのチームに必要とされる選手になりたいです。もし必要な選手になれていたら、それは成長できていたということだと思うので、そうなりたいです。

――その必要とされるためのテーマがパスとディフェンスということですか?

それは今も自信があるところなので、ナレッジとキックのところが信頼されるにはプラスで必要だと思います。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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