2018年11月16日
#611 仲宗根 健太 『やるしかない』
いつも安定して落ち着いている雰囲気の仲宗根健太選手。久し振りの公式戦出場で何を思い、これから何を目指しているのでしょうか。仲宗根選手にじっくりと聞きました。(取材日:2018年11月5日)
◆嬉しかった
――リーグ戦第6節サニックス戦では久々の出場でしたね
トップリーグは5年ぶりで、その次のシーズンの日本選手権の1回戦に出たので、公式戦は4年ぶりでした。その後の2015年ラグビーワールドカップの時に行われたプレシーズンリーグには出ていました。
――久々に出てみてどうしたか?
やっぱり一番は、嬉しかったです。メンバーに入った時から周りがとてもサポートしてくれたり、OBや会社の人からも「頑張れよ」という連絡をもらったり、改めてサンゴリアスというチームは良いクラブだなというのと、周りのサポートを改めて感じて、もっと頑張らないといけないなという気持ちになりました。
――普段からもサポートされているんですね
そうですね。いろいろなサポートがあるんですが、会社の仕事の面で同じ部署の人や同じ担当を持っているパートナーの方にはラグビーを本当に理解していただいていますし、得意先においても「どうだった?」とか「頑張っている?」とか聞いてくれて、日頃からとてもサポートしていただいています。
ラグビー部の中でも久しぶりということで、具体的なプレーに対するコミュニケーションもありましたし、不安なく「やってやろう」という気持ちで臨めたことはとても良かったです。
――実際にプレーしてみてどうしたか?
緊張もあってミスもしてしまったんですけど、タックルからジャッカルしたり、良い部分もあったので、1試合出たというこの経験をチームのプラスのエネルギーに変えていかなければいけないと思います。ミスをしてしまいましたが1回出たことが自信にもなりましたし、モチベーションも上がったので、出場できてとても良かったと思います。
――久々に公式戦のグラウンドに立って、「あ、この感じ忘れていた」という感覚があったりしましたか?
それはなかったですね。これまでの経験もありますし、サニックス戦はリザーブに入って、ウォームアップをしながら試合を見る時間もあったので、そういうことはありませんでした。
◆チームのために何ができるか
――ここ3、4年は自分にとってどんな期間でしたか?
難しいですね。プレーでサントリーに貢献できませんでした。ここ3、4年を後悔しているわけではないんですけど、その中で自分がどう成長できるかを一番に考えて、試合に出るためにどうするべきかを考えて練習してきて、試合に出られない時もチームのために何ができるかを考えてきた3年間でした。
その3年間の中で自分の年齢も上がってくるにつれて、チームにどういう影響を及ばさないといけないかとか、そういうところも変わってくるので、一概にどうとは言えないんですけど、そんな中でタイミングの部分もありますが成長してきて、今回試合に出ることができたということは言えます。常にサンゴリアスの目標やターゲットに対して、100%で臨んできた期間だったと思います。
――今回出られたのは何かの壁を破ったからでしょうか?自己分析としてどうですか?
成長とタイミングだと思います。成長した部分は自分の役割が明確になって、強みのディフェンスやボールへの働きかけにフォーカスして取り組めたことです。
――ここ3、4年の間にどんどん絞られたという感じですか?
そうですね。外国人選手も入れ替わり、いろいろ技術の部分でも学ぶことも多かったですし、ナレッジの部分も敬介さん(沢木監督)になってからとても上がって、ラグビー全体のナレッジもポジションの中でのナレッジも上がっていると思うので、そういう意味で成長できているのかなと思います。
◆常に自分の成長とチームのために
――サンゴリアスの中での役割はどうですか?
気づいたら7年目ですが、もともと大学ではバックスをやっていて、サントリーに入った時はフォワードになったばっかりで何も分からず、先輩に教えてもらいながらやっていました。サントリーのカルチャーやアタッキングラグビーなど、ブラしてはいけないところをやってこれたと思います。
それを後輩に伝えていくということと、僕は今なかなか試合に出られないという立場にいるので、その中で同じようなメンバーをボトムアップさせるというか、常に「チームのために」という気持ちを持って何ができるのか、自分がどう成長できるかを考えてやる姿勢を、しっかりリードするというところが必要かなと思います。
――気持ちの部分での浮き沈みはありますか?
浮き沈みはとてもあります。一番はやっぱり「試合に出たい」という気持ちがあるので、それは全員そうだと思うんですが、練習でミスをしてしまって試合に選ばれなかったり、チャンスが巡って来ても掴めなかったりした時は落ち込みます。
でもそこで後ろ向きになってマイナスな考えに行くということは全くなくて、「やるしかない」とすぐに思います。どんなにミスをしても自分で具体的な改善を見つけて、それを変えていくしかないと思っています。
気持ちとして落ち込むことはありますけれど、その結果、行動としてはやることは変わらなくて、常に自分の成長とチームのために何ができるかだけだと思います。
――ネガティブにならない?
どうなんでしょう。一緒のプレーしていた竹本隼太郎さん(サンゴリアスOB)はとてもポジティブで「なんでだろう?」と思っていたんですけど、ネガティブに良いことはなくてポジティブには良いことだらけなんです。落ち込みますけれどそれを行動にはしないようにしています。やるしかないです。
◆相手をスマッシュする気持ち
――バックスからフォワードになって7年目、改めてフォワードの楽しさはどこですか?
バックスでもそうなんですけれど、モールやスクラムなどチームでトライを獲った時の嬉しさ。感情をより出せるポジションだと思うので、コンタクトの回数や気持ち的に相手をスマッシュする気持ちをどんどん出していかないといけないポジションで、それができた時にとても嬉しいと思います。
――結果的にはフォワードが合っていましたか?
今バックスをやれと言われても全くできる気がしないので、合っていたと思います。バックスをやっていたからこそ、ハンドリングスキルなど今でもできることはいっぱいあるので、バックスをやっていた後悔は全くなくて、フォワードをやっている中でその経験が活きています。勝敗を決めるというところで結構フォワードが重要になってくると思うので、そういう部分でフォワードとして試合に出られているということは楽しいと思います。
――生まれ変わったらどっちをやりますか?
難しいですね。これはフォワードとしか言えない(笑)。
――バックスはバックスで楽しいですよね?
もちろんです。
――階段を1段ずつステップアップしている感じですか?
精神的には階段を登りながら成長してきたと思います。全く経験のないフォワードから、フォワードの中でもリードしていかなければいけない立場になったというところではそう思います。ラグビーについても段階的と言えば段階的なんですけど、体重やフォワードのスキルという部分では最初の頃にガッと上がった気がします。いきなり10kg体重が増えたり、フォワードのプレーを集中的に練習したり、そこからはその中で自分がどういう役割かを理解しながら、段階的に上がってきたのかなと思います。
――普通の人がいきなり10kg増えることはあまり経験しないと思うんですが、どんな感じなんですか?
1年目から2年目に上がる時には、気が付いたら10kg増えていました。朝の6時からウエイトをして、13時からチーム練習の前にもウエイトをして、練習が終わってから若井さん(ヘッドS&Cコーチ)と1時間ウエイトをして、また次の日の朝からウエイトをするという生活をしていました。ずっとウエイトをしている感じだったので、1年目の時は体を作り変えることをターゲットにしていました。
――その時は、体の変化をどう感じていましたか?
1年目の頃は毎日走っていて常に体が疲れている状態だったので、体が重くなっているなというよりも今日は体が疲れているなと感じていました。体重はそのまま増えていっても、重いとは感じませんでした。
――食事の量も増えましたか?
かなり食べましたね。夜食も食べて意識的に体重を増やそうとしていました。厳密に言うと、毎日体重を量っているので、気がついたら10kg増えていたというわけではないんですが、でも、あっという間に10kg増えた感じでした。
――体重を量って増えていると楽しい?
そうですね。体重を増やすという目標があったので、そこはやりがいがありました。
――10kg増やしてからは増やしていないんですか?
10kg増やしてから今までは、体脂肪をどんどん落としながらも体重をキープしているような状態です。同じ体重を維持しながら体脂肪を落としているということは筋肉量が増えているということなので、フィジカルの部分も以前と比べても違うのかなと思います。
――スピードはどうですか?
1年目で体重を増やした時に比べると上がっているのかなと思います。
◆試合に出続ける
――まだまだ成長中だと思いますが、久々に試合に出た次の目標は何ですか?
試合に出続けることです。チャンスを今回もらったんですけど、その中でチャンスをものにして、試合に出続けることが目標です。
――目標を達成するためにはこれまでの経験上、何が一番大事だと思いますか?
一番は自分の強みを出すところ。ディフェンスのタックルや、ブレイクダウンでどれだけ絡められるか、アタックではどれだけ綺麗にボールを出せるか。やっぱり何かに突出していないと、監督が使う意味がないと思いますし、チームに対しても何もプラスにならないと思うので、自分の強みを前面に出してプレーすることが重要だと思います。
――いつも自分の強みを前面に出すことは難しいですよね
練習からの意識と、インターナショナルスタンダードでやっているので、その中で突出して強みを出さなければいけない。そうでないとサントリーが目標としているところのレベルに合っていないと思うので、そこを目標にしてインターナショナルレベルのバックローの選手のようなプレーをターゲットにして、練習からもそうですし試合でもプレーとして出していくイメージです。
――イメージしている選手はいるんですか?
たくさんいます。ジョージ(スミス)であったり、ジャッカルの部分ではデービッド・ポーコック等、海外を代表する選手をイメージしています。
――出られなかった期間は「今年で終わりかもしれない」と思いましたか?
そうですね。試合に出ていないので、シーズン終わりにはもちろん危機感がありました。
――でも、何かがあるから今まで続けられたんですよね?
そういう理由を自分で考えてチームに貢献しなければいけない、というのはもちろんあります。
――それが存在意義ということですね?
そうですね。今年は小野晃征さんが考えたんですが、「なぜ自分がサンゴリアスを選んで今ラグビーをやっているのか?」をみんなが書いたものをチームで1つにして試合に持って行っています。自分が「なぜラグビーをやっているのか?」、「なぜサンゴリアスにいるのか?」ということに向き合って、試合の時に自分で見返して、メンバーのものもノンメンバーのものも試合の前日に1つに集めて試合に挑みます。
――そこにはなんと書いているんですか?
4つありますが、まずはサポートしてくれている妻や子供、両親など「家族」。あとは、「自分自身の成長」。ラグビーの成長だけではなくて、自分が試合に出たいと思いながらの感情面での成長。ラグビーのプレーの中でも、自分の人生の中で活きること、キツい時に何ができるのかというところがあると思います。トップレベルのクラブなので、実際にラグビーでプレーして学ぶところや気づくところはたくさんあるので、そういう部分でとても成長できています
3つ目はラグビーが好きなので「ファン」。ラグビーが好きで始めて、それを続けている。4つ目は「for team」というところで、サントリーというクラブが自分自身好きなので、そのクラブのために何ができるか。
そこを振り返えることができて、とても良かったです。ラグビーに対する考え方を4つに当てはめて考えて、試合に出る時もそうですし、試合メンバーに入れなかった時も、自分は何ができるかがその4つに当てはまると思うので、とても良かったと思います。
――カップ戦もトーナメントもありますが、「全部出るぞ」という感じですか?
そうですね。選手として全部の試合に出るということにチャレンジしてやっていきたいです。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]