2018年11月 9日
#610 塚本 健太 『蹴落としてやろうという気持ちで毎日取り組む』
5年前のルーキーイヤーのリーグ戦で10トライを挙げた塚本健太選手。その後、次々に登場したサンゴリアスの新しいトライゲッターたちとのチーム内での戦いに、今どのように臨んでいるのでしょうか。現状の課題と今後への意気込みを聞きました。(取材日:2018年10月29日)
◆押し返さなければいけない
――試合に出る機会が減っていますが、状態はどうですか?
体の状態は良いです。体が動かないとは思わないですし、重く感じることもないですし、逆にトレーニングで体がキレる場面もあります。
――そうすると、自分の中では成長している感覚がありますか?
あります。でも、一番成長していないのは、心ですね。毎回同じことを言われています。
――それは何でですか?
練習のどこかで、気が抜けてしまうんです。1日の間にとか、1週間の間にとか。1日はとても良くても、次の日に悪かった、というようにまだムラがあります。
――集中力の問題ですか?
僕は集中を切っているつもりはないんですが、指摘されて「たしかに」とも思います。そういうプレーをしていたら、そう思われるなと思います。
――そう言われると、またスイッチが入るんですか?
自分ではいつも入っているつもりです。入っているけど、「これくらいで良いだろう」という甘さが無意識にどこかで出てしまうんだと思います。例えばディフェンスの時に、本当はバチンと行かなければいけないところを、これぐらいで良いだろうとなってしまう。そういうところはあります。
――それは練習だからですか?
試合だったら絶対にそんなことはしません。でも、そういうことをしていたら、試合でも出るぞ、ということだと思います。いま1週間100%で挑む準備、そして気持ちの切り替えをやっていこうと思っています。
――「ハングリー」や「リミット」というところが若干欠けているということは?
そんなことはないと思います。じゃあどんなことかと言うと、難しいですけれど。
――「このくらいで良い」というのは、どのくらいのイメージですか?
例えば、止めれば良い、というイメージ。でも止めるだけではなくて、本当は押し返さなければいけないという感覚です。
――例えば、ルーキーイヤーの5年前だったらどうでしたか?
これはずっと言われていることなので、その時もそうだったのではないかと思っています。ずっとある課題です。
◆勝ちがあるかないか
――練習と試合の違いはなんですか?
勝ちがあるかないかです。ただ練習でも、勝負の勝ち負けはないけど、プレーにおいての勝ち負けはあります。
――普段は勝ち負けにこだわらない方ですか?
負けず嫌いは負けず嫌いですが、勝ち負けに執着している感じではないないかもしれないですね。
――サンゴリアスに入るまで、あまり負けた経験をしていないとか?
そうかもしれないです。たしかに、幼い頃は足が速くて、試合にも出してもらえていたからかもしれないです。
――そうすると、いま出られていないことをどう捉えていますか?
それは悔しいですよ。出たいという気持ちはあります。
――ライバルに勝ってやろうという負けん気はどうですか?
それもあります。他の選手よりもハードなトレーニングをして、みんなが休んでいる間に僕がやって成長するという気持ちはありますし、それを実際にやっています。ただそれがグラウンドで表現できないと、やってないのと一緒だなとなるので、表現の仕方ですよね。
――必死な姿を見せるのが好きではないとか?
それはないですね。必死こいています。それをやっているのに、なんで評価されないのかという思いも自分の中にはあります。
――1年目はどこが良かったと思いますか?結果としては一番活躍した年ですよね
何にも考えていなかったですね。周りに任せて好き放題でした。
――2年目は?
最初は怪我で半年くらいやっていなくて、そこからリザーブ続きでした。
――そこでは精神的にどうだったんですか?
一緒ですね。
――現状の精神的な課題は?
毎日100%出せる準備をしなければいけない。オフにしっかりと切り替えて、「さぁ明日からやろう」という気持ちを作って、グラウンドに来て「ライバルを蹴落としてやろう」という気持ちで毎日取り組む。それを今年の春からやっています。
◆後は実践で試していく
――自分が試合で見せたいパフォーマンスは何ですか?
ラインブレイクしてチャンスを作る。フィニッシュする。
――今ディフェンスはどうなんですか?
1対1のタックルが苦手で、それはトレーニングで自信をつけるしかないと思っていて、今は練習後にヤスさん(長友泰憲)と個人練習をしています。ヤスさんはタックルがめちゃくちゃ上手いですね。
――長友選手のどこが良いですか?
間合いの詰め方と、体の使い方が抜群です。僕はすぐに頭が下がって飛び込んでしまうんですけれど、最後まで見て直前で低くなってというのをしっかりやっている人です。僕も頭が下がらないようにするとか、直前まで相手を見るとか、いま気をつけてやっています。
――間合いはどうやって詰めていくと良いんですか?
見て学ぶのと、自分でいろいろ試していかないと分からないです。ヤスさんは凄くて、とても勉強になります。
――だいぶ掴んできた感じですか?
やらなければいけないことは分かっているので、後は実践で試していくしかありません。
――積極的に気持ちを出すところはどうですか?
「俺が俺が」というのは出せていないですね。自信がないとできないと思うので、小さな成功を積み重ねて自信をつけていくしかないです。
――小さな成功はどこで積み重ねるんですか?
練習です。毎日の練習で培うしかありません。
◆一生に一回は
――自分の理想の選手像からすると今どのあたりですか?
半分以下です。ただ、8割くらいまでだったら、毎日の積み重ねですぐにでも到達できるんじゃないかと思います。
――8割までいったら当然レギュラーですね。ポジションはどこが良いですか?
ポジションにはこだわりません。
――ワールドカップ日本大会での日本代表については?
僕は各年代別の日本代表にも選ばれたことないんです。
――そこの負けん気はどうなんですか?
それはずっと思っていましたし、一生に一回は日の丸を背負いたいなという気持ちはあります。
――自分の性格はどう捉えていますか?見るからに優しそうですよね。
たしかに、強くガッとは言えないんですよね。
――他には?粘り強い方ですか?
そうだと思います。あと楽観的でも悲観的でもないと思いますが、根拠がないことに対して「なんとかなるさ」とは思わないですね。
――普段の姿を見ると、静かな印象を受けます
同期とかとはふざけた話もしますが、基本的には静かだと思います。ずっと人見知りです。
――人見知りはラグビーに影響ありますか?
ないです。ただ高校に入った時、大学に入った時、サントリーに入った時とか、最初はやっぱり時間がかかりますね。
◆常に100%
――今シーズンの目標は?
決勝トーナメントにスタメンで出ることです。あとは優勝の時にグラウンドに立っていたことがないので、そこに立ちたいです。
――そこに向けての自信はどうですか?
あります。練習でさっき言ったようなことをなくして、しっかりと信頼を勝ち取れば、チャンスは絶対にあると思います。
――今シーズン目標を達成できたら、その先のイメージはありますか?
日本代表やサンウルブズというのはあります。そして、そこで活躍できるような選手になりたいです。
――トライするよりもラインブレイクと話していましたが、ラインブレイクした時の気持ちは?
「よっしゃー」「やったー」という感じです。
――トライはどうですか?
トライにもよります。ボールをもらってただ走っただけだったら...。
――「よっしゃー」って言ってください
言えないです(笑)。
――はしゃがないのは美学ですか?
ポーカーフェイスです。内心は嬉しいですけど、喜んでいると思われたくないです(笑)。
――では、どう思われたいんですか?
「凄い」です。
――今シーズンのキャッチフレーズは?
常に100%やる。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]