2018年10月26日
#608 竹下 祥平 『チームのために体を張れればそれが一番』
久々の公式戦出場がウイングでの先発だった竹下祥平選手。そこで何を感じ、これからどこを目指していくのでしょうか?スピリッツインタビューにも久々の登場となりました。(取材日:2018年10月15日)
◆まず自分の準備を
――2年ぶりの出場ですが、この2年間どうしていましたか?
昨年1年間は怪我で出られませんでした。ちょうど手術してから1年かかりました。
――順調に復帰できましたか?
当初の目標は春シーズンのブランビーズとの試合でしたが、間に合いませんでした。その翌週のキヤノンとの練習試合で復帰できて、その次のターゲットは開幕戦のトヨタ戦だったんですけど出られず、先日のサニックス戦がトップリーグ復帰戦になりました。
――ウイングで登録され、ウイングで出場、チーム内にライバルが多いですね
練習では13番をやっていたので、正直ウイングで試合というのはかなり久しぶりでした。ライバルとかではなく、僕はまず自分の準備をしなければいけないというところです。
――自分の準備とは?
11番、13番、14番、15番、常にどこでも出られるような準備を、最近はしていかなければいけないと思っています。
――それだけポジションが違うと準備もきっと違いますよね?
そうですね。ポジショニング、ディフェンスの仕方、サイン、何から何まで違いますし、ちゃんと自分の中に落とし込むようにと剛さん(有賀バックスコーチ)にも常に言っていただいているので、それらに対する意識は少しずつ上がっていると思います。
――練習では1日1ポジションなんですか?1日の中でポジションを変えたりするんですか?
大体は変わらないです。
――それではどうやってマルチにポジションをカバーしているんですか?
当日の映像を見て、ウイングであればヅル(中靏)やヤスさん(長友)、江見など、いろいろな人の動きを見ながらサインの確認をしています。
――それプラスで試合に出るとなると相手の研究もしなければいけませんよね。準備としてやることがいっぱいありますね
映像をよりよく見るようになりました。練習後や週の頭に須藤(惇/分析)が送ってくれて確認できる環境が整っているので、それを自分で見て自分なりにどうやって行くかを落とし込んでいます。
◆まだまだできる部分がある
――味方の映像や相手の映像を見る時に一番気をつけていることは何ですか?
味方の映像を見る時はアタッキングラグビーをする上で、どこにスペースがあってどうやったらそこまで運んでもらえるようになるか、どうコールをかけたら良いかを見るようにしています。
――今シーズンはなかなか空いているところに行き切れていない状態ですか?
運べている部分はあると思います。最後の細かいインディビジュアルのミスがあるのですが、運ぶという部分ではできていないわけではないと思います。最後22m内に入って相手のプレッシャーが強い中で、最近はどのチームもプレッシャーが強くなってきていて、なかなか獲りきれていないと思います。
――どうしていったら改善できそうですか?
敬介さん(沢木監督)も練習中から言っているんですけど、試合をイメージするという部分だと思います。出るメンバーだけではなくて、出ないメンバーもしっかりとしたプレッシャーをかけながら練習をしないと、試合ではそれ以上のプレッシャーがくるのでミスしてしまいます。
――ということは、今のところプレッシャーをかけられていないということですか?
まだまだできる部分があるのかなと思います。決してかけていないというわけではないんですけれど、僕も含めもっとやらなければいけない部分があるのかなと思っています。
――相手を見る時は?
相手を見る時は、チームでどういうアタックをしてくるか、どういうディフェンスをしてくるかという、チーム全体の傾向をまずは見ます。その中で誰がキーポイントになってくるか、ですね。
――ディフェンスという面では1人のウイングとして見てどうですか?
できている時とできていない時の違いを感じます。できていない時はコミュニケーションがとれていない時で、横とのリンクがないところを突かれている気がします。
――コミュニケーション不足の理由は?
ブレイクダウンでプレッシャーをかけられずに速く球が出てしまって、こちらのディフェンスが揃っていない状況というのが一番大きいのかなと思います。
――そうすると、課題はブレイクダウンですか?
球際のところでボールを遅らせて、相手に気持ち良いアタックをさせないようにすることがディフェンスでは良いと思っています。前回のサニックス戦で最初にトライを獲られた時も、人数が足りない状況で相手に外から行かれました。
選手同士もっとコミュニケーションをとらなければいけなかったんですけれど、そこで僕も詰めて上がってしまって相手に2枚余られてしまいました。後手後手になってくるとできることもできなくなるので、ある程度ブレイクダウンでプレッシャーかけることが大事だと思います。
◆持ったら出たい
――サニックス戦でのプレーはタックルが目立っていたように見えましたが、自分ではどうですか?
正直、僕の中では良くなかったです。もう少し前に出てプレッシャーがかけられる部分があったのかなと思います。ただそこで相手が外国人だとオフロードがあるので、少し見てしまって我慢してしまった部分もありました。そこをもう少し前で止められていたら、次のディフェンスがもっとやりやすかっただろうなと思います。
個人のタックル精度としては、春からヤスさんや剛さんと一緒に練習をしてきたので、インディビジュアルのスキルとしては少しずつ上がってきているのかなと思うんですけど、もっと試合の中での駆け引きを上手くしたいと思っています。
――攻めでは気持ち良く走れる部分はなかったと思うんですけれど、そこはどうでしたか?
自分で貰えるポジションに持っていかなければいけなかったけど、外で待ちすぎていました。裏のスペースがいっぱい空いていたのでそこばっかりコールしていたのですが、もっと自分から動いて貰いに行くことをすれば良かったと後悔しています。
――でも、課題が見つかったということは今後に活きてくるということですよね
そうですね。でも、期待されていたところで言うと、やっぱりボールキャリーでのラインブレイクやブレイクダウンでのプレッシャーというところだったと思います。その期待されていたところが全然できていなかったかなと思います。
――竹下選手の走力は上がっているんですか?
落ちてはいないかなという感じです。爆発的に上がっているかと言われるとそんなに...。
――足が速い選手がチーム内で揃っている中で、改めて竹下選手の強みはどこですか?
キャリアーとして前に出る力です。
――持ったら出る?
持ったら出たい(笑)。
――出るために何に気をつけているんですか?
真っ直ぐ行く分、推進力としては止まらないと思いますし、ステップも踏んでいます。そこに向かって走り込むところで、相手の奥に出られるような努力はしています。
――そうすると瞬発力が1つの特徴ですか?
瞬発力ではないですね。試合で1回ギッツ(マット・ギタウ)に飛ばして貰った時は、止まって貰ってしまっていたので、そういうところで走り込むタイミングが合えばと思っています。
――どこで貰うかが重要だと思いますが、どのように気をつけていますか?
自分のイメージの中では深い位置に立って早めにパスを貰うということができれば良いなと思って、そういう声をかけています。
――そこのポジション取りに気をつけているんですね
キャリーをしたい時は少し深めに立ってというところを意識というか、体を置いています。
――キャリーをしない時はどんな時ですか?
裏のスペースが空いていてフラットで上がりたい時は、ボールを蹴るユタカ(流)のフラットな位置まで上がっておきたいので、そういう部分での立ち位置というところです。キャリーをしたくない時は基本的にないです。できれば持って走りたいです。
◆意識して自分から発する
――2年前に試合に出続けていた時期があって、ストップがかかって、そして今シーズン試合に出てみて、その頃と比べてどうですか?
怪我もあったんですが、キャリアーとしての体の使い方はできるようになりましたし、上手くなっているのかなと思います。
――具体的には?
単純にフットワークという部分で、相手の当たる寸前にできるようになってきました。
――単純に真っ直ぐではないということですか?
基本的にはそうなんですけれど...。復帰してからウイングとしてではなく、センターとしてやってきたので、空いているスペースに走り込むタイミングや、内側の厚いところへの当たり方も学べているのかなと思います。
――そこは選手としての厚みになっているんですね
そうですね。1年間センターをやっていろいろな経験ができました。
――センターで出たいという気持ちはありますか?
正直出ることができればどこでも。
――フルバックは?
フルバックでもチャンスがあれば出たいです。どこという固執は僕の中では特にないです。
――先ほど反省点を挙げていただきましたが、今後こうしていけばいけるというポイントは見えているんですか?
いま言ってきた中でのコミュニケーションの部分です。良いポジショニングを取っても、フォワードの選手たちをオーガナイズすることができなければ上手くボールを貰えないですし、そこでゴチャゴチャしてしまいます。
――コミュニケーションを良くするには?
意識して自分から発することと、この時にはこうやったら良いというオプションを自分の中で持てるようにする。持っているもの、こういう時にこういうのがあればというのを増やすために、いま毎回練習でチェックしながら剛さんたちと話をしています。
◆聞くタイプ
――コミュニケーションを理想的にとれるイメージは描けていますか?
今まで一緒にやってきた啓希さん(宮本/採用兼副務)は、そういう意味でとても喋っていましたし、やっぱり喋るとやりやすいです。そういうことを経験しているので、啓希さんみたいに喋ることができるようになりたいというのはあります。
――今どのあたりですか?
全然ですね(笑)。
――ラグビーでは本来持っている性格とは別の性格を出しても言いわけですよね
普段の自分をそのまま出していきたいです。今こうやって話しているのは普段の自分なので、こういう考え方を持っていると分かってもらってプレーした方が良いと思います。
――普段から喋っている方なんですか?
普段のたわいのない会話であれば。
――あとはグラウンドの中ということですね
そうですね。どちらかというと喋るタイプより聞くタイプなので、そこはダメなところかなと思います。
――他人の話を聞くということは大事なことですけれどね
でも、コミュニケーションは聞いて発さないとダメなので、聞くことは大事ですけれどやっぱり発さないといけないと思います。
――意識してやろうとしているんですか?
意識してやってはいます。ビデオ見ていても全然できていないなという部分は、いっぱいあります。
◆積極的に自分から作りに行きたい
――リーグ戦は残り1試合でトーナメントに入り、そして11月にはカップ戦がありますが、そこに向けての目標は?
自分のプレーとして求められているものが、ボールキャリーとブレイクダウンなのは変わらないので、あとはどこで出るにしてもポジションとしての役割を全うできればと思っています。
――過去2年と比べて今シーズンのサントリーはどうですか?
チームとしては新しい取り組みをしているので成長していると思います。
――上がってきていますか?
上がってきていると思います。
――ファイナルラグビーに向けた感じになってきていますか?
まだファイナルというよりかは、あと1試合あるのでそこで自分たちのやりたいことをしっかりやれればと思います。
――自分が次の試合に出たら何をしたいですか?
ボールキャリーとブレイクダウンのところで、プレッシャーをかけるという部分をやるだけだと思います。サニックス戦では全然ダメだったので、もっともっと積極的にやっていかなければいけないと思います。
――そのイメージできていますか?
イメージできています。ノンメンバーでやった日野との練習試合がチームとしてとても良いゲームでしたし、ボールキャリーとブレイクダウンの部分で少しは役に立てたかなと思っています。その時のパフォーマンスがサニックスでできたかと言うと全然できていなかったので、そこをできるように、今週もしっかり準備をしていかなければいけないと思います。
――そこができた、できなかったの違いは?
気持ち的に少し受けに回ってしまったのかなというのがあります。
――日野戦は攻めていたんですか?
そうですね。チームとしても前に出て行きたい、エナジーを上げていきたいゲームで、ポジションが13番ということもあったので、体をより多くぶつけるシチュエーションが多かったんです。そういうシチュエーションをサニックス戦では自分から作れませんでした。そういうシチュエーションをもっと積極的に自分から作りにいきたいと思います。
――久しぶりに試合に出てみて、やっぱりラグビーは面白いと思うところはどこですか?
あれだけキツい練習をしているので、試合に出ることができて勝てるということは、とても楽しいなと思います。
――勝ち続けることが目標ですか?
そうですね。
――勝ちつつ自分も納得できるプレーをするのが一番ですよね?
それが一番ですね。活躍云々ではなく、チームのために体を張れれば、僕はそれが一番良いと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]