SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2018年10月19日

#607 梶村 祐介 『僕の仕事は前に出ること』

開幕戦で先発デビューを果たし、第5節までに3トライ挙げる活躍を見せている梶村祐介選手。秋の日本代表にも選出された梶村選手に、現在の心境を訊きました。(取材日:2018年10月10日)

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◆ボールキャリーは自分の強み

――顔つきが大人っぽくなりましたね

4月の時から比べるとそうですね。顔つきが変わったかは分かりませんが、考え方が変わったと思います。あの時はまだ学生の延長線上で、この半年でいろいろ経験させてもらって自分の中でも考え方が変わってきたと思います。

――例えば?

一番はラグビーに対する姿勢です。ラグビーをもっと知らなければいけない。あの時は知っているつもりだったんですが、このチームでシーズンに入ってみると、もっと知らないといけない、ラグビーナレッジを上げていかなければいけない、そういうところが自分に足りていなかったと改めて考えさせられたので、それが変わってきた要因の1つかなと思います。

――ラグビーを知るというのはどういうことですか?

もちろんチームの考え方として自陣からでも攻めるというのも1つだと思うんですけど、結構多いのは僕が無理矢理なプレーで反則をして、自陣に釘づけにされるということがありました。それで時間帯とエリアを考えて、いま本当にその選択がベストなのかを毎回ちゃんと考えるようになったと思います。ただ大志さん(村田)やギッツ(ギタウ)に比べると、そういうところはまだまだ大学生と変わらないレベルという感覚なんです。

――そうすると自分の中の引き出しが増えたという感じですか?

4月よりは増えていると思います。ただサントリーというチームで12番が務まるかと言われると、今はまだ務まるレベルではないと思っているので、まだまだ信頼を得ることはできていないと思います。

――でも先発で試合に出ていますよね

春に出させていただいていたので、その貯金で出させていただいている部分も少なからずあると思います。ただ自分の強みをある程度評価していただいているのかなと思うので、ボールキャリーの部分は今は自信を持って自分の強みだと言えます。

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◆ディフェンス時の責任

――開幕戦から結果を残してきたと思いますが、自分ではどうですか?

自分としては1節、2節、3節に出させていただきましたが、確かにボールキャリーという部分で見れば悪くはなかったと思います。ただトータルで見た時に、場面場面でベストな選択をしたかと言われるとそうではないことが多かったので、自分では納得のいかない3試合でした。

――それは攻めですか?守りですか?

守りですね。もちろん攻めでも間違った選択をしたことはたくさんあったんですが、自分の中では守りの部分で、かなり自分に対してフラストレーションが溜まることが多かったです。

――そういう時はどうでするんですか?

もう一度、自分の強みをしっかり前面に出すことが一番原点に戻れることだと思うので、アタックでテンポを取り戻すことが今の自分にとっては一番必要なことだと思います。

――それぞれの試合で反省と課題が出て来るんですね

そうですね。克服できているところもありますが、結局3節まで持ち越してしまったところがかなりあったので、そこが4節で出られなかった理由だと思います。

――また5節で出ましたが、課題はある程度解決できましたか?

3節終了時点で自分の中では自分の課題に向き合って、かなり意識して取り組んでいたんですけど、結局5節でまた同じミスをしてしまいました。このチームで同じミスを連発していると確実に出られなくなるので、本当に1つチャンスを逃してしまったなという感じです。

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――課題はどこですか?

タックルという面では良くなってきていると思います。ただディフェンスというチームで組織的に動く時に僕が機能できていないので、大志さんにかなり負担をかけてしまっています。大志さんはそういうことを言わないんですけど、負担をかけてしまっている僕自身が一番分かっているので、その責任はかなり感じています。

――ディフェンスにおいて人を動かすところですか?

動かさないといけないんですけど動かせていないのと、大志さんに対してもっとコミュニケーションを取らなければいけないところを、自分のことで精一杯になってしまっています。自分の情報を伝えられていないので、かなり大志さんの負担になっているのかなと思います。

――でも課題があるということはこれから伸びるということですよね

そうですね。課題がないよりは絶対に良いと思うので、そこはポジティブに考えています。考え過ぎて強みを見失うことは絶対にしてはいけないと思っているので、強みは絶対に忘れないで伸ばしつつ課題も確実に改善していかないと、このチームで出続けることは難しいと思います。

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◆焦っています

――サントリーに入った時に今の自分をイメージしていましたか?

もちろん開幕戦に出たいと思いながら春夏シーズンを過ごしてきたので、まずそこで出られたということは春のシーズンの過ごし方が間違っていなかったのかなと思います。ただ代表に今回呼ばれましたけど、そこまでは想像していませんでした。

――ある程度試合に出続けることは想像していましたか?

もし開幕戦に出られれば、そこでのパフォーマンス次第でその後も出させてもらえるのかなと思っていました。2節、3節にも出られたことはもちろん嬉しかったですし、自分の中ではそこを絶対にターゲットにしなければいけないと思っていたので、自分が目指していたプラン通りに来ていたと思います。

――一選手として今のチームをどう見ていますか?

練習は悪くないと思います。もちろん良くない日もありますが、確実に試合に向けて修正して良い状態で試合に向かえてはいるんですけど、なぜか上手くいっていないというのがこのシーズンだと思います。今シーズンは失点が凄く増えていて、トライを獲れていないのももちろんなんですが、失点が増えている理由は僕がコントロールできていないということだと思っています。

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僕はそこにかなり責任を感じています。今シーズンのディフェンスが上手くいっていない理由として、ミッドフィルダーがもっとコントロールしないといけないのですが、僕のせいで大志さんが本来やること以外の部分もやらければいけなくなってしまっています。亮土さん(中村)が入った時はかなりディフェンスが安定しているので、俯瞰的に見ても僕の能力は今は良くないと思います。

――そういうことに対しての焦りはありますか?

正直めちゃくちゃ焦っています。いま自分で納得していないパフォーマンスにもかかわらず、代表に呼ばれました。もちろん呼んでもらったことは凄く嬉しいですけれど、だからこそ凄く不安もあるし、出させていただいていたからこそ焦りはあります。大志さんは僕以上の経験をされている方なので、今日も練習後に大志さんに話を聞いてもらいました。コスさん(小野)にも相談したりして、いろいろな先輩に話を聞いてもらっています。

――みんなのアドバイスはどうですか

的確です。ただやっぱり自分だけで抱えてしまうところは少なからずあって、「ディフェンスの失点が増えたのは自分のせいだ」と伝えると、相手はもちろん「梶村だけのせいではない」と言ってくれるんです。ですけど、間違いなくそれが上手くいっていない要因の1つになっていると思うので、いろいろな先輩がいろいろな言葉をかけてくれますけど、そこは自分で責任を感じなければいけないと思っています。

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◆結果から逃げることはできない

――自分の中では課題は明確ですか?課題に対してどうしていこうと思っていますか?

正直、場数を踏まないといけないと思っています。なので、練習からいろいろなことにチャレンジして、今もコスさんに助言していただいたことにチャレンジしています。もちろん最初は上手くいかないですし、そういうことにチャレンジしていくことでゼロになることはないと思いますが、間違いなく今よりは失敗の数が少なくなっていくと思います。

――それは見ていて変わったと分かりますか?

どうなんですかね。正直見ていてもあまり変わったと感じないかもしれません。ただそのちょっとの差がディフェンスでは大事ということに気づけました。

――それは見方ということですか?

ポジショニングや、コミュニケーションのとり方はかなり変えようと思っています。それを変えるだけでだいぶ変わってくると思います。

――それはとても面白い発見ですね

コスさんに言われた時は本当に凄いなと思いました。言われてみれば「確かに」ということだったんですけれど、自分だけでは気づけなかったことでした。

――そういうことを含めて、いま話していて感じるのは、非常に客観的に見えている部分があると思います

本来あまりそういうタイプではなかったかもしれません。ただこのチームに来てそういうところが少し変わったのかなと思います。正直大学レベルまでは僕が今と同じミスをしてもそんなに変わらなかったと思います。失点にも繋がらないし、チームとしても大きなミスに繋がらない。

今は僕のミス1つで失点に繋がったり神戸製鋼戦で言うと敗戦に繋がったりして、結果として表れてしまっているので、そこから逃げることはできません。僕はそこを変えていかないと、間違いなくシーズン終盤に12番を着られていないと思います。

――傍から見たら順調そうですが、実はいま一番苦しんでいるんですね

周りから見たらかなり順調に見えると思いますし、僕も大学時代の自分だったら今の状況はとても順調にいっていると思っていただろうと思います。もちろん評価していただけるのはとても嬉しいんですけど、自分の今の弱さを必ず改善しなければ、僕が指揮官ならタイトな試合では間違いなく僕のような選手は使わないと思います。

――もともとネガティブではないですよね

ネガティブではないです(笑)。めちゃくちゃポジティブな方だと思います。僕自身はネガティブだとは思っていなくて、ちゃんと今の自分の立場を理解して課題をしっかり克服しないといけないと思っていますし、克服しようとしている自分がいると思えています。もちろん焦りもありますけど大学の時にはこういう感情はなかったので、今は苦しんでいるけれどこういう状況はとても有難いです。

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◆俯瞰して見るならば

――そういう中で日本代表に呼ばれましたね

間違いなく強みを出さないといけないと思っています。僕が今回呼んでもらった理由はボールキャリーの部分だと思います。そこは絶対にブラさずに、外国人相手だろうが僕の仕事は前に出ることで、そこで出られなかったら強みがなくなってしまうので、プライドを持って前に出続けたいと思います。

――外国人に通用するかどうかも1つの楽しみであり、ハードルですよね

日本人センターで外国人相手に前に出られることはプラス材料だと思いますし、僕も出られる自信があるので、もちろん真っすぐ当たって行くだけではなくいろいろ駆け引きをしながら、出られる状況を作っていきたいと思います。

――大学時代には見えなかった世界が見え始めて、今の自分は自分が目指すところのどこまで来ていますか?

大学生の時は代表に呼んでもらいたい、その前にまずサントリーで試合に出たいという過程があって、結果だけ見ればそこのステップは踏めているとは思いますが、内容を俯瞰して見て点数をつけるならば30~40点だと思います。

――その点数どこで増やしていく構想ですか?

まず自分の課題が克服できた時に本当に自信を持って試合に臨めると思うので、そうなれば絶対に上でも通用する自信はあります。そこに持っていければ70~80点まで上がると思います。ジャパンに定着できるかできないかではなく、そういう結果は別としてパフォーマンスだけで見れば70~80点にはなるのかなと思います。

――来年ワールドカップというタイミングで選ばれたことはチャンスですよね

ワールドカップには出たいです。国のために戦うということを僕はまだ経験したことがありません。もちろんそういうチャンスは誰にでも巡って来るものではなく、今回僕と堀越はそういうチャンスをいただけたので確実にものにしたいですし、競争は激しいですけど自分の強みを出せれば日本人センターとして通用するということを証明できると思うので、そこはプライドをもってやっていきたいと思っています。

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◆ラグビーが好き

――完璧にラグビー漬けだと思いますが、気分転換はどうしていますか?

僕はラグビーが好きなので、ラグビーをしていることが一番の気分転換ですね(笑)。仕事の割合はシーズンに入って少し減っていますけど、やっぱりラグビーしている時は一番自分らしくいられると思っています。練習はめちゃくちゃキツいですけど、楽な練習をしていてもしょうがないので、キツい練習をしている時が一番僕はワクワクしていますね。

――仕事は慣れましたか?

慣れました。この後も仕事に行くんですけど、お店をメインに回っていて商品に一番近いところで働けているというのはとても有難いことです。お酒を売っていく中でラグビーファンの方に会ったり、ラグビーを知らない方にも知っていただけたりするので、本当に素晴らしい仕事をさせていただいているなと思います。

――ラグビー以外の仕事をやってみてどうでしたか?

もちろんラグビーでも入ってきた当初は知らないことばかりでとても苦労したんですが、仕事はそれ以上に苦労しました。何も知らない状況でいろいろな人に付いて行っていろいろなことを学んで、正直最初はあまり楽しさを感じられませんでした。ただ最近になって少し余裕を持ててきたので、得意先の方と話させていただく中でいろいろな方向からラグビーを知ってもらえるチャンスがありますし、とても楽しみながらやらせてもらっています。

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――いま一番大事にしていることは何ですか?

傍から見れば僕は順調にいっているように見られていて、いろいろな記者の方々から質問を受けて記事になって、1年目の選手の中では取り上げてもらっている方だと思うんですけど、僕は5年前に一度その経験をしていてその時は浮かれてしまったので、だからこそ絶対に同じミスはしないと決めています。

高校の時はスポーツ紙の一面になって、高校生ではあり得ない取り上げられ方をして正直かなり浮かれていました。だからいま取り上げられている中でも今の自分の立ち位置をしっかりと理解して、このチームで信頼を得られてないのに取り上げられていることを自覚しつつ、自分がまだまだ成長しなければいけないと思っています。いま一番大事にしていることは、今の自分をしっかり俯瞰的に見ることだと決めています。

――そういう中で改めてラグビーが面白いと思うところは?

ラグビーは練習でも試合でも何百通りのオプションがあって、考えなければいけないスポーツです。だからこそ正解がないと思うんですけど、それを探す毎日が今とても楽しいです。

――永遠の楽しみですね

そうですね。できることなら引退したくないです。ずっとラグビーをやっていたいですね。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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