2018年9月21日
#603 中村 亮土 『負けたくない』
開幕2戦目に登場した中村亮土選手。リザーブとして今シーズンのスタートを切った中村選手に、今の心境を訊きました。(取材日:2018年9月9日)
◆次週に向けての準備
――開幕戦、第2節といずれも2点差の勝利、どのように見ていますか?
全チームがサントリーをターゲットにして、相当相手も分析してきていると思います。それを跳ね返す力を上げていかないと、最後の大事な試合では難しいゲームになるのではないかと思っています。
――今シーズンは試合数が少なく早めに上げていかなければいけないと思いますが、そこのポイントはどこですか?
1試合目から今の自分たちのベストを出すということはあったんですけど、試合を振り返った後に「まだできる」と自分たちのベストを出し切れていない部分がありました。今はその出し切れていないモヤモヤ感があるので、そこをどうするかだと思います。
――中村選手自身も開幕戦に出られず、第2節でメンバーに入りましたが、その辺はどうですか?
出たい気持ちは相当あります。ただ選ぶのはコーチなので、そこは上手く切り替えて、自分がベストに近い状態を常に保っておくように準備をしています。
――切り替えるというのはどのように切り替えるんですか?
本当にメンタルの問題です。試合に出られなかった、メンバーに入れなかったということを1週間引きずっていたら自分にとって何もプラスにならないので、次週、次がダメでもまた次週、何が起こるか分からないので、そこに向けての準備に切り替えます。
◆だいぶ分かってきた
――日本代表でありながら試合に出られないというところは?
それも試合に出られないのと一緒で、そこの葛藤はあります。代表のセレクションも兼ねてのトップリーグのシーズンなので、まずはチームの中で出ない限りはセレクションにも引っかからないと思います。そこも見据えてやっている中で出られないということもありますが、本当に気持ちの問題で、切り替えるしかありません。
――安定感、信頼感がテーマだとずっと言っていましたが、これは代表では獲得できていると感じますか?
そうですね。僕の立ち位置は監督(ジェイミー・ジョセフ)から見ても、良い方向に向かっているのではないかと思っています。評価はされつつあると思います。
――サントリーでもそうなるのが目標ですよね
チームによって求めているものが違うので、そこを合わせないといけないところです。簡単と言えば簡単なんですけど、実際にプレーの中で染みついているものがあって、そこを合わせるのに少し時間がかかりました。
――もう合ってきましたか?
今はもうだいぶ分かってきました。
――今シーズン初出場して、パフォーマンスはどうでしたか?
良かったと思います。僕も出たら「やれる」という自信はあるので、僕は僕なりのアクセントが出せるとは思っています。まだまだ十分に出せてはいませんが、そこは自信を持ってやれると思います。
――自分なりのアクセントとは?
チームの潤滑剤としてもっと働けるかなと思います。ただキャリーする、ただタックルするではなく、フォワードとバックスをオーガナイズしたり、全体的なボールの運び方だったりというところです。昨シーズンからサンゴリアスで経験していることを含め、その判断は上手くできると思います。
◆ボールを失わない
――自分自身で考える今の課題は?
言われているのは、ボールを失わないこと。ボールキャリーやパスの精度を上げ、ボールを簡単に失わないようにプレーするように心掛けています。
――そこは自分でも「失うこともあるな」と感じている部分ですか?
そうですね。「あるな」というか、結果としてボールを失いがちですね。
――自分の直接的なプレーで失っているということですか?
直接的なプレーです。1試合に2~3回、自分が絡んでいるプレーでパスやボールキャリーでボールを取られています。そこは目立つので、チームからの信頼にも繋がってくると思います。
――そこを改良するには?
それは意識だと思います。プレーで言えば、速い判断をして思いきりプレーをすれば、そんなことにはならないと言われています。
――求められるのは速い判断ということですか?
そうですね。あと言われるのは、チームプレーをするように言われます。
――チームプレーという意味はいろいろありますね
僕も言われた最初は理解力不足でしたが、時間が経って考えれば「ボールを失くすということはチームプレーをしていない」「チームが求めていることをしていない」ということに繋がっていきます。シチュエーションや時間帯を考え、その時に何がベストなのかを考えながらプレーするようにということです。
――プレーの選び方の問題ですか?
そうですね。確実なプレー。でもその中でチャレンジをしなければいけません。
――チームが求めていることに対して今はできていますか?
先程言ったようにシーズン前はチームが求めていることを理解できていませんでしたが、今は大丈夫です。プレマッチの時は自分だけのプレーになってしまっていました。その段階でセレクションは始まっていますし、これからもずっとセレクションは続きます。
◆チームを良い方向に繋げていく
――自分自身の見通しはどうですか?
この前みたいな15分のチャンスがあったら、そこでしっかりとしたプレーをし続けるだけだと思います。
――そのイメージは描けていますか?
そうですね。今は出たらしっかりとしたプレーができるという自負はあります。あとはチャンスを待つだけ、試合に出るだけです。試合に出たらできるというところまでは来ているので、試合に出るだけです。そのチャンスがいつ来るか分からないので、チャンスが来た時にしっかりとしたプレーができるように毎回準備します。
そして、チームが目指しているところは絶対にブレてはいけないところで、そこは間違いなくブラさないようにしています。さらに、自分が間違っていないと思うところもブラさないようにしています。
――今のチームが求めていることがあって、いろいろな選手がいて、その中で自分の強みは何ですか?
フィジカルなプレーはしっかりとやっていかなければいけないし、やるべきところでもあります。そして、10番、12番のポジションとして、チームを良い方向に繋げていくという点では、上手くできる自信はあります。
――メンバーがいろいろ入れ替わって、潤滑油や繋げるという意味ではいろいろな組み合わせがありますね
みんなレベルが高い中でやっているので、誰が入っても違いはないと思います。
――今シーズンどうなったら「良い」という感触を持てますか?
試合に出続けられるようになれば良いですし、シーズンの最後にグラウンドに立って終わりたいと思います。初優勝した時はリザーブで、試合に出られませんでした。昨シーズンはスタートで出させてもらいましたが、シーズンの最初は今と同じく試合に出られないという状況でした。そんな中でも最後に出て、自分の納得のいくパフォーマンスができて、1年目以上に嬉しかったんです。そこを目指してやっていきたいです。
◆人一倍負けん気は強い
――達成感はどんな時に感じますか?
僕のエネルギーは嬉しさのエネルギーよりも悔しさのエネルギーの方が強いので、勝った時の喜びを味わうためにやりたいとかではなくて、負けたくない。だから、その段階の過程の中で嬉しさは感じないんです。チームとしては、勝敗はつきますけど、試合に出ない限り勝敗はつかないので、実際に出て勝たない限り喜びはありません。
――「負けたくない」という気持ちのルーツは?
これは分からないですが、生まれつきだと思います。人一倍負けん気は強いので、そこのエネルギーだけでやっています。スポーツなどの勝負の世界では絶対に勝敗はついてくるので、それがある限りは先に「負けたくない」という気持ちが出てくるんじゃないかと思います。スポーツという世界の勝負の中で負けたくない。勝負は勝ち負けなので、それが根底にあると思います。チームの中にも相手がいて、対戦相手もいます。相手がいることに関しては「負けたくない」という気持ちです。
――それは生まれつきですか?
生まれつきです、物心ついた頃からですね。小学生の頃は「お前は負けず嫌いだから面倒くさい」とずっと言われていましたね。勝負していても、勝つまで終わらないとよく言われます。
――今はもっと負けず嫌いになりましたか?
それを表面には出さないように頑張っていますけど、滲み出るんでしょうね。僕も大人になったから大人になる部分も大事だなと思うんですが、そう言われます。
――今後の試合でどんなところを見てほしいですか?
分かりやすく、タックルとボールキャリーを見てください。人に伝わるようなプレーをしたいですね。1つのタックルにしても、気持ちの入ったタックルで熱さを感じられるような。思いを伝えられるように、1つ1つプレーしたいと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]