SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2018年9月 7日

#601 村田 大志 『自分が好きなチームだから頑張れる』

今年からサンゴリアスの選手会長は村田大志選手になりました。選手として円熟期を迎えて、新たな役割を担う村田選手が描く展望を語ってもらいました。(取材日:2018年8月13日)

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◆選手自身で考えてより良く

――選手会長はどうですか?

「選手会長はどうだ?」という話を受けて、そういう歳になったんだなと思いましたけれど、なかなか「やれ」と言われる人も少ないと思うので、良いチャンスだなと思って、快く受けさせていただきました。

――チームの状態としては、選手会長の仕事があまり発生しない良い時ではないですか?

そうですね。選手会長の仕事と言われるとなかなか難しいんですけれど、今までは選手間でかっちりとしたルールがなくて、監督やコーチ陣から下りてきたものを伝えることが役割ということでしたが、今回は選手主導でチームを良くしていくことをやっていきたいということで、色々ルールを決めたり、選手だけで大事にしていく言葉を作ったりしています。選手自身でこのチームのことを考えて、より良くして行こうという組織にしていければと思ってやっています。

――ということは、仕事がたくさんあるということですか?

今までの前例がないので、僕次第です。前例がない分、楽ですね。今年やりながら「もっとこうしていこう」という感じなので、気が楽と言えば楽ですね。

――言葉はできましたか?

そうですね。いくつか出して、選手で一番良いという意見が多かった言葉に決めました。

――それは表には出せないんですか?

自分たちだけで大事にしようかなと思っています。

――それはどんな時に言うんですか?

言うというか、例えばLINEでこういうことに注意してくださいというコメントの最後にその言葉をつけています。あとは身につけられるものにその言葉を入れて、普段からその言葉を意識して行動してもらえるようになればと思っています。

僕らは会社に守ってもらっている部分があるので会社に甘えた部分もあるんですけれど、甘え過ぎずにしっかり自分たちの足で立ってチームをちゃんと運営していこうというところを、今年はちゃんとやろうと思いました。

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◆1人にしない

――どうしてそういう流れになったんですか?

耕太郎さん(田原/GM)から僕に依頼があった時に「もっと選手主導で動くような形にしてほしい」と言われたのもありましたし、晃征さん(小野)みたいなプロフェッショナルな人たちや海外の選手に通じるところがあると思うんですが、そういう話を聞く中で感じたのは、プロの人たちはそのチームがなくなると大変ですが、社員の僕らは極論を言えば会社にサラリーマンとして残れるという、そういう部分での危機感が全然違うと思います。

僕らもしっかりとプロフェッショナルな意識でやるべきだと思ったので、そういう人たちの意見を聞いて、自分たちで自分たちを守れるところは守ろうという流れにしています。

あとは小さなことを拾っていくということをやっています。「こういうものをほしい」とか「チームでこういうことをしてほしい」という意見があれば、それを選手会のメンバーで話して、啓希さん(宮本/採用兼副務)に持って行って、啓希さんが監督やコーチに伝えてくれています。

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――最近、選手の話を聞いていると、コミュニケーションの量が増えたという話が挙がりますが、選手会としてコミュニケーションは意識しているんですか?

みな一緒にビデオを見ていたりするので、ラグビーに関するコミュニケーションは自然と増えます。それ以外の部分では、チームソーシャルの部分でも意識していると思います。

――例えば、落ち込んでいる選手がいる場合は?

今年は、例えば誰かが遅刻をしたとして、その人にペナルティを課すのは簡単なことなんですけれど、遅刻した人以外にもペナルティを課して、遅刻した人をサポートしていこう、ということにしています。1人にしない、犯人捜しをしないでサポートしていこう、という意味でやっています。

――今年の選手会は面白そうですね

なかなか時間が取れなくて月に1回しかミーティングができないですが、トップリーグに入ればラグビーフォーカスになるので、それでも良いと思うんです。グラウンド外という部分では僕らが活動しているのが見えない方が良くて、トップリーグが始まってから特に、みんなが集中できる環境を整えることも1つの仕事かなと思っています。

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◆リーダーがいっぱい

――選手会なので集まる時は全員なんですか?

僕が選んだ選手会の人間がいて、そこで話し合います。

――何人くらいですか?

垣永、千士(松井)、小澤、ヤスさん(長友)で、後は個別にチームソーシャルだったら飯野に頼んでいたり、クラブハウスや宿泊先のクリーンアップだったら祥平(竹下)に頼んでいたり、選手会以外で頼んでいるリーダーもいっぱいいます。選手会として話をするのは5~6人くらいですが、年齢を幅広く選んだので、みんなに何かあればメンバーに言ってくれとお願いします。

――ロッカーグループはあるんですか?

今はないですね。耕太郎さんに「ロッカーグループにするか?」と言われたんですが、あまりピンとこなかったので止めました。クリーンアップのところも祥平がバックスの代表で、フォワードのメンバーのロッカーを見て、フォワードの誰か汚い人を見たら「24時間以内にクリーンアップしないとフォワード全員にペナルティ」とか、逆にソネ(仲宗根)がバックスを見て同じことをしています。

――共有スペースは?

あとは、ご飯を食べるところは絶対に携帯禁止で、コミュニケーションをとるようにしています。

――ロッカーだけではなく、クラブハウスの綺麗さがチームの成績と比例しているのではと思います

どうなんですかね。でも結果論ですからね。強いから綺麗なのか、綺麗だから強いのか。物を大事に使うとかは普通に大事なことだと思います。

――共有スペースのクリーンアップは誰が担当ですか?

クリーンアップは全体的にソネと祥平に見てもらって、今日はバックスがウエイトルームを掃除して、フォワードはお風呂場を掃除するとか、そういうところはリーダーシップをとってやってもらっていて、2人の言うことには絶対に従ってと皆に話してあります。

――外国人も楽しんでいるんですか?

楽しんでいるかは分かりませんが、しっかりルールを守ってやってくれています。サントリーの外国人選手は本当にみんなチームにコミットしてくれる選手ばかりなので、「そんなことバカバカしい」とか「そんなことやりたくない」という意見は全くないです。ペナルティに対しても、率先してやってくれます。

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◆基礎ができたら良い

――今後はどんな1年間になりそうですか?

基礎ができたら良いと思っています。結局、選手会というものを引き継いで行かないといけないので、自分が一生懸命やったから終わりでは全く意味がないと思います。今やっていることが100%正しいとは思わないので、改善していってほしいという気持ちを含めて、若い選手も選手会の中に入れています。

基礎を作っている作業を今一緒にやっているメンバーに見ていてもらって、いざ次、頼むねという時に、自分なりのアレンジを加えてより良くして行ってくれれば良いと思います。ただ何でも大事な基礎の部分があると思うので、基礎ができれば良いなと思いつつ、そう簡単にはいかないのかなとも思っています。

――今言ったようなことが基礎ですか?

そうですね。ある程度ルール決めのところはそれで良いかなと思います。チームとして大事に使うということは、ずっと大事にしてきたことをただリーダーを決めてやっているだけなので、今後も変わっていかないところをしっかりしていかないといけないと思います。

自分自身が好きなチームでないとコミットできない。僕がそうなので、自分が好きなチームだから頑張れるというのはあると思うので、まずはグラウンド外から自分が好きになるチームを作れたら良いと思っています。あとはファンの皆さんからも愛されるチームでないといけないというところで、ファンサービスのところも改善しなければいけないと多少思っています。

――ファンサービスについて、何か考えていることはあるんですか?

選手ももちろんやりたいですけれど、やっぱりシーズンは長くて、そこで終わりなら良いんですけれど次のゲームと考えるとプロフェッショナルな行動というのがファンの方とのふれあいとリカバリーのバランスは難しいというのがあります。

ただ解決する方法としての折衷案みたいなものが絶対にあると思っています。トップリーグはトップリーグとして時間を設けてくれているから、グラウンド1周して帰るということもあるんですけれど、せっかく府中に来てくれた人たちとのふれあいのところは、何かできるのかなと思って考え中です。

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◆トライを意識しないで獲れていた

――昨シーズン全試合出場で、8トライ(日本選手権含めて)していますよね。全試合出場は初めてですか?

1回あったと思います。でも、怪我が多くてシーズン終盤に出ていくことが多かったですね。30歳になったんですけれど、みんなにびっくりされるくらいキャップ数は少ないです。

――今どのくらいですか?

61キャップだと思います。怪我って如実にキャップ数に出るなと思いましたけれど、試合に出ていれば良いという問題ではないでしょうが、もうちょっと頑張らなければいけないと思います。

――出れば「このくらいはトライするぜ」という感じですか?

トライが自分の仕事だとは全く思っていないし、結果として最後に自分のところにボールが来たなという感じですね。でも、トライを獲れるところにいられるようになったことは、昨シーズンの成長だと思います。トライを獲ってやるぜと意識をしないで獲れていました。

――トライを獲れるところにいられるようになったのはなぜですか?

ゲームであまりパニックにならなくなったことですかね。自分のやれること、やることは結構明確になっているし、やれる範囲ではないですけれど自分の100%を知っているので、その中で動きながらどれだけ効果的にできるかが、やった結果だったと思います。

――ディフェンスをテーマに掲げていたと思いますが、どうでしたか?

全く覚えていないです(笑)。ディフェンスは僕1人でやるものではないので、シーズンが深まるにつれてチームとしてのディフェンスができてくると、ある程度自分の判断で動けるようになります。特にシーズン終盤はチームとしてのディフェンス能力が上がって、その中で自分が判断しやすい状況が揃っていたというのは、とても良かったと思います。

――ディフェンスはチームの成長と共にという感じですか?

そうですね。ディフェンスリーダーとしてチームのディフェンスを向上させるということが自分の役割だったので、そういう意味ではシーズン終盤ですけれど、やっと上手く回って来たかなというところがありました。その中で自分のディフェンスもそこそこ良かったと思います。

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◆チームが良いからシンプルな判断ができる

――シーズンを通じて自分自身で成長したと思うところはどこですか?

シンプルな判断ができるようになったところは、成長したかもしれないですね。ゲームの状況がどんどん難しくなればなるほど複雑に考えがちなんですけれど、ディフェンスでもアタックでもシンプルな判断ができたので、いま一番何が重要かを考えながらやれたところは結構成長したと思います。

――どうしてシンプルに考えられるようになったんですか?

複雑に考えても一緒だなと思いました。やれることは変わらないし、先程も言いましたが自分のやれる範囲でその時に一番重要な状況判断は何かとか、自分のことが分かるようになりました。あまり高望みもしない。

――でも、普通のレベルの望みが通用しているということですよね?

そうですね。それは自分だけの力だけではないですけれどね。チーム力向上と共にというのはありますね。やっぱりチームが良くない時はやることがいっぱいあって難しいけれど、チームが良い状態だからこそシンプルな判断ができるということはあると思います。

――シンプルに考えれば良いのにどうしても人間は複雑な方向に行きますよね

サントリーの場合は練習が複雑です。日々の練習がストレスで、強度も高いし判断が難しい中でやっているので、試合に出るとシンプルに行けると思えます。それが敬介さん(沢木監督)の練習の設定だと思います。難しいし、キツいし、今日も暑くて「殺す気か?」と思いましたけれどね(笑)。考えてられないくらいキツい中で判断しないといけないですけれど、やっぱりゲームはある程度整理された状況があるので、ゲームでクリアだと思えます。

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――次はどこを高めていきたいですか?

成長できることを探し続けなければいけないと思います。30歳という区切りの歳になって言い訳を作るのが簡単になってきて、「もう30歳だしやっぱりリカバリーが間に合わない」とか「体が疲れた」とか「怪我が増えた」とか言い出すと本当に少しずつ落ちていくかなと思います。もちろん体の疲れは本当にあるけれど、その中でより成長できる部分はあると思うんです。だから、それを探し続けることが自分の成長に繋がると思います。

――成長する予感はどこにありますか?

難しいですね。若い時はウエイトトレーニングの数値もシンプルに上がるし、スピードも上がりますが、明確にここが大きく変わりそうという予感は難しいんですけれど、ラグビー選手として総合的に良くなりたいというのはあります。

部分部分を切り取るのは難しくなってきたけれど、ラグビーがもっと上手になれるとは思います。ラグビーは難しいスポーツなので、ラグビーが上手な人は本当に色々なことができる人だと思います。そういう意味でもっとラグビーが上手くなりたいと日々思います。

――例えば、マット・ギタウ選手みたいな?

そうですね。ギッツ(ギタウ)はラグビー上手いですね。比べるのも恐縮ですけれど(笑)。ギッツもチームにコミットすることにとてもプライドを持っていて、ゲームプランに対してコミットする意識が相当高いですし、日々のトレーニングの意識もとっても高いので、本当に見習わないといけないと思います。

――今シーズンの目標は?

優勝することです。個人の目標ではあまり動けないタイプなので、みんなで目指すところに一緒に向かって行って、そのために自分には何が必要か、何をすべきかを今シーズンまた考えていかなければいけないと思います。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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