2018年7月13日
#593 小澤 直輝 『実際にターンオーバーできる選手になりたい』
1年以上ぶりの復帰を果たした小澤直輝選手。今の心境と今シーズンにかける意気込みを訊きました。(取材日:2018年6月25日)
◆ブランビーズ戦だと決めていた
――復帰おめでとうございます
ありがとうございます。ブランビーズ戦が復帰戦になりました。
――どうでしたか?
久々の試合だったので、正直いつもとはちょっと違う緊張感もありました(笑)。でも相手はブランビーズで思いきりチャレンジできる相手でしたし、試合をやってみて久しぶりにラグビーをやって楽しいと思いました。
――復帰でいきなりブランビーズ戦というのは相当プレッシャーがありましたか?
そうですね。ブランビーズ戦に出るんだったら、それが復帰戦になるのは前々から分かっていました。昨年はシーズン中の復帰を目指してやりましたが、グラウンドに戻れたのは最後の1週間だけでした。試合には出られなかったので、次のターゲットがブランビーズ戦だなと、自分の中では決めていました。
――試合をしていないのはどのくらいですか?
試合をしていないのは1年1ヶ月ですね。
――その1年1ヶ月の間はどうやって頑張りましたか?
最初はシーズン中に絶対に復帰する、そしてもちろんチャンスがあるなら出るつもりでやりましたし、そういう目標をしっかり持っていたので、その目標に向かってリハビリをしていました。性格的に淡々とやる方ではあるので、チームの練習も試合もしっかり見ながら淡々とやっていました。
――見ていて「やりたいなぁ」と思わなかったんですか?
もちろん、それはありますよ。試合を見ていると凄く「やりたいなぁ」という気持ちは出てきました。
――それを抑えるコツは?
それは抑えなくても良いと思うんです。どうせできないので(笑)。試合を見る時も「もっとこうすればチームが良くなる」とか「自分が出ていたらこういうプレーをしよう」とか、そういうことを考えながら見ていました。
◆見極めが大事
――そういうふうに考えながら見ていると、負けた試合で相当考えるんですか?それとも勝った試合でもいろいろと考えるんですか?
勝っても負けても良くなるにはと考えていました。そして、復帰した時には「自分はこういう選手になろう」とイメージしていました。
――どんなイメージですか?
ブレイクダウンでターンオーバーをできるようになりたいと思っています。そのために大事なのは見極めです。2人目の選手がブレイクダウンを判断するんですけれど、1人目がしっかりとタックルに入って2人目は見極めが大事で、取れるのか取れないのかの見極めを早くすることだと思います。
――見極めは実践経験が大事になると思いますが、実践ができない中でそれを身につけていくには?
試合を見るということが一番でした。やっぱりお手本になる選手はいますし、そういう選手の動きや狙うタイミングを見て勉強しました。
――相手の同じポジションを見ていますか?
もちろん自分たちのチームだけではなく、相手に上手い選手がいれば見ます。
――例えばトップリーグではどんな選手が参考になるんですか?
ポーコック(パナソニック)はブレイクダウンに入ったら離さない感じが本当に凄いですね。
――そこから何を掴むんですか?
自分のチャンスの時、ターンオーバーできるエリアに相手が倒れてきた時に入り込むスピードが速いです。僕らとしては彼にプレーをさせないように、ポーコックにタックルをさせるといった対策はもちろんします。
――実際に対戦したいですよね
そうですね。ポーコックのプレーは「どうやって取ったの?」というところがあるので、やっぱり凄いと思います。凄いで終わらせてはいけないですけれど。
◆すぐに切り替えた
――日本代表に呼ばれて試合に出て帰って来て、これから更に頑張ろうという時期のリタイアでしたが、その時の想いはどうでしたか?
もちろん残念ですし悔しい想いもありますけれど、できるだけ早く切り替えて次の目標を新しく設定してそこに向かえるか、早く体を戻すために何ができるかが一番だと思います。僕の実力がなくてリタイアしたわけであって、リハビリ期間でしっかり成長してまたサントリーで試合に出たりできるようにと、自分の中ですぐに切り替えました。
――代表での手応えはどうでしたか?
今の代表を見ていてもバックローで大きい選手はいっぱいいますし、自分にはどういうプレーを求められているのかを考えてプレーをしていました。
――どんなプレーですか?
ワークレートの部分ですかね。運動量で勝つというところだと思います。
――目標としていたところはできました?
そうですね。ワークレートはだいぶ意識してやっていました。
――流れとしては次も呼ばれる感じだったんですか?
6月はそうですね。
――そのまま行く可能性もあったんですね
いやー(笑)。行くか行かないかは分からないですけれど、実力不足ですよ。
――リハビリに対して前向きですよね
ありがとうございます。あまりしたくないですけれどね(笑)。
――成長して戻って来ようとして、実際にはどこが成長しましたか?
理解に関してはスッキリして戻れました。
――なぜですか?
練習を見ていましたし、チームがどういうラグビーをしたいかを考えながら、リハビリも復帰してからの練習もやっているので、そこの部分は変わっていると思います。
――2連覇を果たした昨シーズンは外で見ていたわけですが、やっぱりチームは変わっていますか?
チームは成長していると思います。戦術理解の部分、そして小さなことですけれどコミュニケーションもそうです。敵陣の20m以内に入ったら取りきるとか、そういうこだわりも以前に増して強くなっていると思います。
――それは自分も練習や試合を見ているので、そこに関しては理解しているということですか?
そうですね。選手1人1人のコミュニケーションも細かくなっていると感じます。
◆何を差別化するか
――ブランビーズ戦で復帰して、見えてきた課題は何ですか?
ターンオーバーできる選手になりたいという目標がありますが、ブランビーズ戦ではブレイクダウンにあまり絡むことができませんでした。トップリーグもどんどんコンタクトレベルが上がってきますし、そういう中でどうやってもっと絡んでいくかというところを身につけなければいけないと思っています。
――先程のポーコック選手の話の秘密は何だと思いますか?
タイミングとスピードは間違いなく必要なんですけれど・・・。取ろうと思わないと取れないと思うんです。だから、相手がこうくるな、どこに接点ができるな、ということを読む能力は必要だと思います。そこが分かったら相手よりも早く行けますし、そこで接点が起きるかということを自分の中で試合中に予測しておく必要があると思います。相手がちょっとゲインしてサポートが遅れている時は、チャンスだと思います。大きくゲインしたら絶対に取れないですけれどね。
――そこは難しいですよね。でも、そこがチャレンジするターゲットなんですよね?
そうですね。僕は今シーズンそこを目標にやっていこうと思います。
――ジャッカルの数を数えれば良いですか?
そうですね。もちろん運動量とコンタクトの部分で負けないということは念頭にあって、プラスして何を自分の中で差別化するかと考えた時に、こういう選手が良いなと思っています。
――全てが噛み合っていくための自分自身のスケジューリングは?
シーズンにしっかりと合わせていかなければいけないと思います。トップリーグの開幕までの練習、そして練習試合でコツを掴めればと思います。
――練習試合で徐々に上げていく感じですか?
そうですね。1試合1試合を確実に。
――もう2番はやらなんですか?
やらないです。そこまでセンスがありませんでした(笑)。バックローが良いです。
――バックローの魅力は?
接点に早く寄れるということです。
――接点が好きなんですね
接点はアピールポイントだと思います。
――その何が魅力ですか?
ラグビーが始まってしまえば役割があってあまり多くは変わらないですけれど、フォワードはどんなに試合で勝ってもスクラムを押されたら悔しいですし、バックローだったら相手に何回もターンオーバーされたら悔しいですし、ブレイクダウンでのボールの球出しが円滑なことがサントリーのラグビーをやるためにとても重要なことなので、ブレイクダウンで早く行けるバックローを目指します。例えばスクラムブレイクをして一番に寄るとか、そういう役割のポジションはそれはそれで楽しいと思います。
球が出て接点に寄るのが早い方が良いんです。それはアタックでもディフェンスでも一緒で、相手のオープンフランカーよりも自分の方が早く行っていればブレイクダウンは有利になります。まずはスクラムで、そして僕はフロントローも経験しているので、スクラムはフロントローの気持ちになって押します。
◆一番に寄る
――今シーズンの目標は?
まずはトップリーグに出ることです。サントリーで活躍することの延長線上に日本代表があるのは絶対に間違いないことなので、しっかりとサントリーで活躍できるように。
――ギリギリまだ間に合いますよね。そこに関してはどうですか?
もちろん。それはラグビー選手なので。
――今の心境はどうですか?
1年ぶりにラグビーをやっているので、今は楽しみなことが多いです。
――体は大きくなったんですか?
僕は逆に体重を落としました。復帰したては負担をかけないようにとS&Cコーチと相談しました。
――それでスピードが速くなることに繋がるかもしれませんね
そうですね。でも体重があってもスピードが落ちないようにしたいと思います。
――ファンに見てほしいと思うところは?
アタックでもディフェンスでもガツガツ行っているなというプレーをしたいと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]