SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2018年5月17日

#585 梶村 祐介 『自分の中の引き出しを増やす』

ジュニア・ジャパン、U20日本代表、明治大学の副将として活躍してきた梶村祐介選手。社会人ラグビーの期待の新人として、いま何を考えどこを目指しているのでしょうか。じっくりと話を訊きました。(取材日:2018年5月3日)

①180501_6254.jpg

◆キツい状況で喋る

――サンゴリアスの練習を始めてからどれくらい経ちますか?

2週間くらいです。

――練習をやってみてどうですか?

大学の頃よりも間違いなく内容も濃く、チーム内での競争があって毎日自分にプレッシャーのかかる状況に身をおけていると思います。

――手応えは?

今の段階では簡単なスキルしかやっていないんですけれど、その中でも自分の持ち味のパスの部分はどんどん出せていると思います。

――課題は見つかっていますか?

大学4年生の時に少し改善はできたんですけれど、ディフェンスの部分はこれからももっと改善していかなければいけないと思っています。

――具体的には?

タックル自体は良くなってきているんですが、ディフェンスのシステムとして機能するかというと、まだ動きながらのコミュニケーションが取れなかったりします。止まっている状況では喋ることはできるんですけれど、動きながらのトークはまだまだ足りていないと感じているので、そこはもっとレベルアップしていかなければいけないと思います。

――どちらかというと普段から喋る方ですか?

そうですね。喋る方です。

②180501_6005.jpg

◆2ポジションできるようにチャレンジ

――サントリーのラグビーについては、明治大学のヘッドコーチとして田中澄憲コーチ(現 明治大学監督/元 サンゴリアスチームディレクター)が行ったので、感覚は掴んでいましたか?

そうですね。大学4年生の時に澄憲さんが来られて、トップリーグのエッセンス、学生っぽくないラグビーにチャレンジされて、そういう経験をしていたので、サントリーに合流する時にはあまり抵抗がなくすんなり入れたと思います。

――実際にサントリーに入って来て周りの選手はどうですか?

レベルが高いです。自分ももちろん自信を持っている部分はあるんですけれど、その他のディフェンスやコミュニケーションの部分でまだまだ先輩たちに追いつけていない部分はたくさんありますが、その中でもパスという部分は今の段階では自信を持ってできていると思います。

――フラットパスが得意とのことですが、どのように得意なんですか?

できるだけディフェンスに近づいて、ディフェンスの足が止まるような状況を作って、外に速いパスを抛るというのが自分の中では強みだと思っているので、そういうところを見てもらいたいです。

③180501_6233.jpg

――今のターゲットは何ですか?

6月17日のACTブランビーズ戦にスタートで出ることが、まず短期的な目標です。

――スタートは何番希望ですか?

13番を狙っています。

――今まで13番は?

今年からまた13番にチャレンジしてくことになったので、そのポジションをまずは取りに行きたいと思っています。大学時代は12番で、高校の時にも13番をやっていました。

高校の時は13番の役割と言うより、10番のスタンドオフの位置に入っていたので、あまり13番っぽいことはしていませんでした。1つしかできないということは自分の弱みだと思うので、2ポジションできるように今年からチャレンジします。

――手応えはどうですか?

チーム練習をまだあまりやっていないので、自分がどうコミットできるかまだ分からないんですけれど、13番としてはボールキャリーやパスが求められと思うので、そういった点でアピールできればと思っています。

④180427_3125.jpg

◆負けず嫌い

――自分の性格は自分でどう思いますか?

本当に負けず嫌いです。負けたくないです。

――それはどこから来ているんですか?

僕は幼稚園からラグビーをしていて、小学校と中学校は仲間に恵まれてあまり負けたことがありませんでした。

――身体は大きかったんですか?

小さくはなかったです。小学校と中学校の同級生からトップリーガーが4人出るくらい恵まれた環境にいました。澄憲さんのスクールの後輩として、伊丹ラグビースクールでラグビーをしていました。あまり負けることがなくて、勝ちに慣れていたんですが、でも負けることもあって、本当に負けたくないとその時に強く思いました。

――トップリーグは比較的早い段階から意識していましたか?

意識していました。大学選択で明治を選んだ時点で、トップリーグに行きたいと思っていました。サントリーに行けるとは思っていませんでしたが、声がかかった瞬間にすぐ行こうと決めました。

――もともとラグビーが自分に合っているというのは何歳くらいの時に感じたんですか?

高校2年生までは将来ずっと消防士になりたくて、ラグビーは高校までかなと思っていました。高校3年生の時に日本代表の合宿に練習生として沢木さん(敬介/監督)に呼んでもらって、そういうこともあって将来ラグビーをもっとやっていきたいと思うようになりました。

――なぜですか?

18歳という年齢であれだけ高いレベルに参加させていただいて、周りの人たちが経験できないことを経験させていただいたので、これを経験して辞めるという選択肢はないと思いました。自分の中でもラグビーを続けて行けるという、自信にもなったきっかけです。

――負けず嫌いはどこかで出ましたか?

その後にすぐ花園(全国高校ラグビー大会)があったんですけれど、結果として負けてしまいました。代表に選ばれたからにはどの分野においても他の選手に負けたくないという思いを持って臨んだのを覚えています。

――消防士にはなぜなりたかったんですか?

ずっと昔から父親が僕に消防士の映画を見せたり、『め組の大吾』という消防士の漫画が家にあったので読んだり、「バックドラフト」という映画を見たりして、かっこいいと思いました。

――消防士になるために体を鍛えていたんですか?

その時はラグビーで勝ちたかったので、ラグビーで勝つためにやっていました。でも、体を鍛えることは消防士になることにも必要だったので、そっちの方にも働けば良いとと思っていました。

――お父さんはなぜ消防士の映画を?

父親は僕に見せようと買ったわけではなくて、ただ持っていただけだと思います。もともと持っていて、それに僕が興味を持ちました。

⑤180427_4057.jpg

◆友達に会えるのも楽しみ

――ラグビーを始めたのはなぜですか?

白ゆり幼稚園というところに通っていたんですが、そこにラグビー部がありました。僕がお世話になった先生がラグビー部の顧問で、その方に誘っていただいて始めました。

――幼稚園でラグビーをやってみてどうでしたか?

あまり記憶にはないんですけれど、5人対5人でボールを追いかけっこするみたいな感じでした。僕は伊丹市だったんですけれど、隣の宝塚市にある幼稚園にもラグビー部があって、そこと毎年対抗戦をしていて、僕の時は勝つことができて、その後、伊丹ラグビースクールに入りました。

――その頃はラグビーの何が面白かったんですか?

あまり記憶にはないんですけれど、僕は小学校3年生まで水泳とラグビーを一緒にやっていました。水泳は団体戦もありますが基本的には個人競技で、ラグビーは団体競技です。小学生の時は7~10人ですけれど、みんなでボールを追いかけるのが楽しかったんです。僕らのスクールは週に3回練習があったので、週に3回友達に会えるのも楽しみで、そういうのが続けるきっかけになりました。

――どんなスポーツをやっても得意そうに見えますね

小さいボールが苦手で野球や卓球が凄く苦手です。

――サッカーボールは?

あれくらいのボールになればOKです。

――小さいボールが苦手なのはなぜですか?

野球は授業でやった時に、バットに当たらなかったです。単純に投げることはできるんですけれど、小さいボールを当てることが苦手です。テニスも苦手です。そんなに器用ではないと思います。

――パスが好きということは器用ではないんですか?

もともとフォワードだったんですけれど、パスに関しては凄く練習しました。公園の壁に向かってひたすら投げていました。

――それはいつ頃ですか?

中学2年生までフォワードでフッカーで、中学3年生からバックスになったので、その間です。

――バックスになりたくて、なったんですか?

たしか、スクールの監督かコーチに「やってみろ」と言われて始めたのがきっかけです。

⑥180419_8812.jpg

◆沢木さんの元でやりたい

――ラグビーをずっと続けると決めたのはいつ頃ですか?

小学3年生の時です。水泳を辞めた段階でラグビーをやっていこうと考えました。

――今の時点でのラグビーの面白さは?

根本は変わらず、小中学生の時は体が大きければ勝てたので、国内で負けることはほとんどなかったんですけれど、高校生や大学生になって海外の選手が出てきて、自分より上の選手と対戦させてもらえるきっかけやチャンスをいただいて、チャレンジする楽しさはあります。

――できない悔しさみたいなものですか?

そうですね。ほとんどが上手くいかないことばかりなんですけれど、次に対戦した時に上手くいったり、前に通用しなかった部分が通用したり、そういった自分の成長を身近に感じられることが、自分が続けられている理由です。

――アスリートっぽいですね。ラガーマンというよりもアスリートという感じがします

どの分野においても負けず嫌いというのが、根本にはあります。結局、負けたくないから頑張って、次に勝とうとするということに繋がっていると思います。負けたくないですね(笑)。

――ACTブランビーズ戦の先に描いているものは何ですか?

シーズンを通してレギュラーに定着して、3連覇に貢献することです。そのもっと先にあるのは、日本代表やスーパーラグビーに参戦することで、そのためにはサントリーで出ることが近道だと思うので、このチームでスタートを勝ち取ることが一番だと思います。

――サントリーを選んだのはいつ頃ですか?

大学3年生の夏くらいです。

――なぜですか?

まずは沢木さんの元でやりたいと思いました。初めて僕を代表(U20)に呼んでくださったのが沢木さんでした。最初は衝撃を受けたんですけれど、本当にこの人の元でラグビーを教わりたいと思える、数少ない指導者の方でした。

――それはどんな衝撃ですか?

まずは最初に、恐いと思いました(笑)。高校生の時に怒られて凄く恐い方だと思ったんですけれど、その合宿は結果も出て、言われていることがその通りだと感じることができて、またこの人の元で教わりたいと思いこのチームを選びました。それが一番だと思います。

――今も恐いですか?

今は恐くないです。もちろん指導していただく中で怒られることもあるんですけれど、自分の中で余裕を持って色々な話を聞けるので、18歳の時とはだいぶ心の余裕が違ってきています。本当に沢木さんの元でやりたいと思って、このチームを選びました。

⑦180419_8562.jpg

◆コミュニケーションを取る

――大学時代はバイスキャプテンをやられていましたが、今までキャプテンの経験はありますか?

小学校と中学校でキャプテンをやって、高校と大学でバイスキャプテンをやりました。

――自分のリーダーシップについてどう思いますか?

僕は高校と大学がバイスキャプテンなんですけれど、喋れるキャプテンのもとでバイスキャプテンをやらせてもらえたので、僕は自分のプレーに専念することができました。僕が一番良いプレーをすることがチームのためになると思ってプレーしていて、毎試合良いパフォーマンスを発揮することを考えてやっていました。

――みんなを見るという部分ではどうですか?

あと、大学の時に気をつけていたのは、周りの選手とよく喋ってコミュニケーションを取ることです。試合に出ていない下級生や、一番はまず同期としっかり話して理解を深めることはかなり意識してやっていました。

――練習でも、練習外でも、よくラグビーの話をしていたんですか?

4年目は増えたと思います。澄憲さんが来られてから、ラグビーの考え方、取り組み方、態度は良くなったと思います。

――ラグビーはやっぱりコミュニケーションを取っていくと良くなるんですか?

コミュニケーションを取ることで、全ての物事がよりスムーズにいきます。コミュニケーションを取っていれば防げるミスがあったり、試合の中でチャンスが5回あるかないかとしたらコミュニケーションがなかったら1回しか取れなかったところが、コミュニケーションを取ることで4~5回取れるようになったりと、結局それが最後に自分たちに返ってきます。なぜコミュニケーションを取るのかと考えた時に、本当に必要だと感じました。

――比較的考えるタイプですか?

正直、大学4年生までは考えていなかったんですけれど、4年目からは考えるようになりました。

――そこには成長の余地がいっぱいあるということですね

そうですね。僕の今年の目標は「自分の中の引き出しを増やすこと」なんですけれど、ミーティングに参加して先輩たちの意見を聞かせてもらって、本当にまだまだ引き出しが少ないと思いました。

――引き出しを増やすためにはどんなことをしていますか?

ラグビーを知るということが、一番重要だと思っています。今までスーパーラグビーの試合はほとんど見てこなかったんですが、3月からは空き時間があれば見るようにしています。

⑧180419_8424.jpg

◆グラウンドをずっと走り回っている

――今のサントリーは明治大学出身が多くなりましたが、その辺はどうですか?

やりやすいです。入る時にスムーズに入れるということが良さだと思います。あとは僕が4年間で被っている先輩が多いので、本当に練習もやりやすくてコミュニケーションが取りやすいです。

――明治大学は上下関係が厳しいというイメージですが

僕らの1つ上、そして僕らの代から、上下関係がほとんどなくなりました。もちろん最低限のラインはありますけれど、先輩に対する恐さは全くありません。喋りやすくて、凄く良くしてもらっています。

――大学日本一までもう少しでしたが、後輩たちはいけそうですか?

先日の関東大学春季大会で、明治が帝京に勝ちましたが、この春の過ごし方が秋冬に繋がると思います。勝ったのは嬉しいんですけれど、秋冬で勝たないと意味がないと思います。今年はやってくれると思います。

――この春の過ごし方が大事というのは自分にも当てはまると思いますが、自分の今年の春のテーマは何ですか?

自分自身は新たなポジションに挑戦するので、「挑戦」がキーワードになってくると思います。大学時代にやっていなかったこと、もちろんそれはポジションだけではなくて、練習内容や努力の仕方も新しいものに変えていかなければいけないと思うので、本当にそういうところはチャレンジしていかなければいけないと思っています。

――体は強いですか?

大きくなったと思います。大学時代よりも2kg増えました。

――今年1年こんな自分を見て欲しいというところは?

コンタクトとパスの2つを僕自身もこだわってやっていきたいと思っているので、そこを見てほしいです。

――姿勢が良くて、ガックリうなだれている様子が想像つきません

試合中の運動量はかなり自信を持っています。フィットネスの測定値が凄く高いわけではないんですけれど、試合になると動ける自信はあります。試合中は、グラウンドをずっと走り回っているところを見てほしいです。

⑨180501_6556.jpg

(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

一覧へ