SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2018年4月20日

#581 江見 翔太 『自分の土台を大きくしなければチームプレーも何もない』

ジャカルタ出身、学習院大学卒業の異色のラガーマン江見翔太選手。5年目を迎える江見選手に、これまでの4年間と新シーズンへの展望を訊きました。(取材日:2018年3月30日)

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◆自分の基準をクリアするのが精一杯

――2017-2018シーズンの自分の評価は?

パフォーマンスには全然満足していません。試合に出させてもらっていたことが、僕としては奇跡だと思っていました。練習でもパフォーマンスが良くないですし、その中で自分をプッシュしきれなかった部分もあったので、一昨年のシーズンに比べると本当に良くありませんでした。

――どこが良くなかったんですか?

まずトライも取れていないですし、自分の強みのフィジカルでゲインラインを切るというところも全然できていなかったです。トータルして、元々課題であるディフェンスも全然良くなかったですし、良いところはなかった気がします。

――それは楽しくないですね

そうですね。言い方は良くないですけれど、無難というか自分の基準のところをクリアするのに精一杯でした。練習に入る前から憂鬱になるくらいずっと体調が悪かったです。

――それと比べて2016-2017シーズンは?

春の網走合宿の前から調子が良くて、網走でも良いパフォーマンスを出せていました。沢木さん(監督)の最初の年だったんですが、考えることが本当に多くて、自分の中でも成長できている実感が日々ありました。その中で試合でのパフォーマンスも上がっていて、プレマッチシーズンの最後の東芝戦でパフォーマンスが良かったんですけれど、直前で怪我してしましました。開幕戦には出ましたけれど、その後2ヶ月間は試合に出られなくて悔しかったです。

後半戦から試合に出られるようになりましたが、体の痛みを徐々に治していきながら、後半戦にパフォーマンスを良く持って行くことができました。決勝でも良いパフォーマンスが出せたと思っています。

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◆新たな気づきがありました

――フィットネスやパワーは上がっているんですか?

2016-2017シーズンからサンウルブズに行ったことによって、僕も自信が付いて、外国の選手を相手にしても対抗できるようになりました。南アフリカの選手にはめちゃくちゃ速い選手がたくさんいたので、それに比べたらスピードは劣りますけれど、フィットネスやフィジカルの部分は通用するところはあったと思っています。

そこで自信を持っていたんですけれど、連戦や、遠征で海外まで20時間以上飛行機に乗って試合して帰って来てという中での疲労を、僕自身はあまり感じていませんでしたが、体には疲労が溜まっていたようです。シーズンオフがないのは初めての経験だったので、体が疲れていたんですね。6月のジャパンでスコッドに選ばれて帯同していたんですけれど、1、2試合目は試合に出られなくて、3試合目のアイルランド戦もこのままでは絶対にまた出られないじゃないかと思っていました。どうしても出たい気持ちがあったので、僕も必死に練習をしていたんですが、そこで怪我をしてしまって離脱することになりました。

人生で初めてあんなに歩けなくなって、帰って来てからの後半戦のサンウルブズにも出られませんでした。網走からサントリーに合流して試合に出るという話になっていたんですけれど、怪我が治らないうちにやってしまって、別のところを痛めてしまい、シーズン通してその痛みと戦いながらやっていました。

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――この先どういうイメージを描いていますか?

今回サンウルブズに選ばれませんでしたが、昨年の僕のパフォーマンスだったら当然落選だろうと思いました。まだ2019年まで時間がありますし、ラグビーは少なからず怪我人が出るスポーツだと思います。その中で今回サンゴリアスとして長期の休みがあって、自分の体と向き合ってどのような使い方をするか、今までと同じ使い方をしたらどうなるかが分かって、体の使い方の部分で新たな気づきがありました。そこでさらに自分のパフォーマンスに繋がっていけるように、4月から始まるサンゴリアスの練習で自分のスキルを磨いていきたいです。

6月に目標となる試合があるので、そこで自分のパフォーマンスがどれだけ出せるか。少なくとも6月のジャパンは難しいかもしれないですけれど、11月のジャパンの遠征には呼ばれたいです。呼ばれなかったら、次はないというイメージはあります。

――そこまでが勝負という感じですか?

そうですね。そこまでの間に、自分がどれだけジャパンに組み込まれるだけの選手になれるかどうかだと思います。NDS(ナショナル・デベロップメント・スコッド)にも呼ばれなくて、こういう中途半端な状態で行ってもまた怪我してしまうだけだと思っていました。自分の気持ちとしてはこのやり方が、2019年に向けての一番の近道なのかなと思っています。

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◆ラグビーはもっと考えなければいけない

――過去4年間を通していろいろな経験ができたと思いますが、どうですか?

4年前に入って来た時は、まさかこんなふうに試合に出られるとは思っていませんでした。サントリーに入ったことに対して「凄いね」と言われることはありましたけれど、「そこ止まりでしょ」という感じだったと思うので、1年目はがむしゃらにやっていました。しかし、出られる感じは全くなくて、当時の大久保監督にもシーズン始まる直前に「メンバー選考に入っていないから」と個人面談の時に言われて、「俺は何を目標に今シーズン残り半分を頑張れば良いんだろう、ふざけるな」と思いました。でもスキルやナレッジが足りていない中で、「それもそうか」と思いました。

最初はセンターでしたが、元々ウイングとフルバックしかやったことがなかったので、サントリーに入って初めてセンターをやりました。1年目はセンターでチャレンジして、2年目からはウイングで試合に出させてもらえるようになりました。そこから秩父宮で試合をすることに対しての緊張感や、花園へ行けば「ここが花園か」という気持ちがありました。

まずラグビー場で試合をするという経験が、大学時代でも熊谷しかありませんでした。熊谷に行くのも、対抗戦Bグループで1位か2位になって入れ替え戦に行かないと行けないという状況でした。4位まで行ったら対抗戦が1試合だけできるけれど、最高でも2試合しかありませんでした。

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サントリー2年目から試合に出られるようになって、最初は本当にケチョンケチョンにされて、パナソニックとの開幕戦も大敗して、そのシーズンが結局9位で終わってしまいました。ワールドカップがある年で試合数が少ない中で、トライ数も6個と凄く少なかったですけれど、最多トライゲッターを取ることができました。しかも、僕がベストフィフティーンにも選ばれて、「それはないでしょ」と思いましたね(笑)。

そのような年を経て、沢木さんの年になって、ナレッジの部分でラグビーはもっと考えなければいけないということを教えてもらって、成長できたと思った2016-2017シーズンでした。

――いろいろな経験をして、ラグビーのここが面白いと思うところはどこですか?

チームスポーツではあるんですけれど、「仲間のために身を削ってやらなければいけない」ということがラグビーでよく言われます。ただ僕は、まず自分のパフォーマンスがなかったらそこに行きつけないと思いました。ナレッジにしても、スキルにしても、まずベーシックのスキルを積み上げて、自分の中の土台を大きくしなければ、チームプレーも何もないと思いました。

――スキルの中でこの4年間一番伸びたと思うところはどこですか?

2年前に沢木さんになってからの、ナレッジの部分のスキルです。特にウイングのポジションは余裕があるので、どこにスペースがあるかを内側の選手に伝えて、そこにボールを運ぶためにどういうコミュニケーションを取らなければいけないのか。昨年は少し難しかったんですけれど、サントリーのチームスタイル的にウイングのボールの貰い方を、より一層考えなければいけないと思いました。

外で貰うだけではなくて、もっと内側に絡みに行くタイミング、あまり内側に居過ぎても外側にいなくなってしまう状態になりますし、外側にずっと居てもボールを貰えないですし、難しい線引きの判断は経験値だと思うんですけれど、それを伸ばしていかなければいけないと思いました。

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◆ウイングは江見

――結婚は人生では大きな変化だと思いますが、どうですか?

長くつき合ってきた彼女だったので結婚するだろうと思っていましたが、結婚できるようになりました。

――このタイミングを選んだのはなぜですか?

入籍自体は1月にしていました。来年は僕もワールドカップに出たいという思いもあるので、来年の挙式は難しくて、今年か再来年かになってしまうので、早い方を選びました。彼女も僕がラグビーに賭けていることを知っていますし、そこに関しては支えると言ってくれています。ワールドカップに対しての思いも伝えてあるので、先に結婚してサポートしてくれることなりました。

――生活面での変化はありましたか?

会社の寮から出て、キッチンができたことが大きな変化です(笑)。自分の家にキッチンがあって料理ができるということがまず大きな変化で、今までは外で食べなければいけないか、寮のご飯を食べるかだったのですが、それが今は奥さんに作ってもらっていますし、僕も鶏肉を蒸したり炒めたりして食べています(笑)。料理はやるとなったら、結構はまってしまいます。

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――今シーズンの目標は?

まずはチームで3連覇。僕自身に関しては、ウイングはポジション争いが激しいので、下からルーキーで尾崎晟也が入って来たり、松井千士も復帰してきたり、上にも祥平さん(竹下)や健太さん(塚本)もいたりするので、またポジションを掴むことです。

僕はウイングの他の選手に比べると体が大きい方なので、自分の強みをしっかり出して、プラス αでより一層スピードとベーシックスキルの土台をもっと大きくして、プレーの幅を増やしていきたいです。パスもキックもできる選手になっていかないと、ジャパンというところにも繋がっていかないと思います。

まずこの春シーズンはそこの土台を大きくして、トップリーグが始まるまでに自分のポジションを確立して、「ウイングは江見」と言われるくらいになって、ジャパンや来年に繋がるようなプレーヤーになっていきたいと思います。

――春からかなりハードなイメージですか?

そうですね。この一年間そう思います。ハードにクレバーにという感じです。毎回の練習で100%やりますが、100%やる中で自分のコンディショニングや、どこを100%にするか、フィットネスの部分で100%やるのはもちろんなんですけれど、今日はスキルをやるのか、ナレッジを上げるのか等いろいろあると思うので、どこに注力するのかは毎日変えていかなければいけないと思います。毎回、全部100%となると、また故障してしまうと思うので、そこは自分の中で選んで、徐々にベースを広げていければ良いと思います。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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