2018年2月 7日
#571 流 大 『居心地の悪い練習、息苦しく感じることを、みんなで乗り越えてやっていく』
優勝して喜びを全身で表現していた流大選手。キャプテンとして2連覇を達成した心境と、その先に向けての意気込みを訊きました。(取材日:2018年1月26日)
◆苦しんだシーズンだから余計に嬉しかった
――優勝した感想は?
まずはホッとしました。前のシーズンでも同じ事を言ったかもしれないですが、それが一番大きいです。
――2017-2018シーズンはより嬉しそうに見えましたが
2016-2017シーズンよりも相当嬉しかったです。2016-2017シーズンは前年が9位という結果で、僕もキャプテンになったばかりで何も恐れるものがなくて、ただただチャンピオンになるために突っ走っていたシーズンでした。2016-2017シーズンもやってきたことが形になって嬉しかったんですが、2017-2018シーズンは2連覇を目指す立場になって周りがサンゴリアスをターゲットにやってくるので、その分、今までの成功体験や上手くいった基準を超えていかないと勝てませんでした。
そこの基準を敬介さん(沢木監督)が凄く高く設定してくれましたし、僕自身キャプテンとしても凄く上げたので、上手くいく練習や試合がかなり少なくなって、もがいて苦しんだシーズンだったので、余計に嬉しかったですね。
――もがきながらどうやって戦ったんですか?
プレッシャーがかかったり追い込まれた状況で、人やチームは成長すると僕は思っているので、出来が良くない練習や試合があったとしても、そこから学ぶべきことが凄くあります。次に同じことを繰り返さずに、ネガティブだったところもしっかりと自分たちで認めて受け入れて、次に活かすというマインドで常にやっていたので、あまり良くなかったからといって誰も落ち込んでいくことはなく、次はもっと良くしていこうという気持ちになっていました。
――それは実際に結果として出ていましたか?
それが2017-2018シーズンはあまり出なくて、最後の4試合は良かったと思っていますが、シーズンを通して考えると、良くなかったところから立て直すことが出来なかったシーズンだと思っています。最後の4試合以外は同じようなミスを繰り返したこともありましたし、同じような試合展開になってしまったこともあって、みんなの中にも不安というかモヤモヤした感じはあったと思います。
◆みんなで引っ張ってきた
――引っ張り役のキャプテンとしては相当自分自身が強くなければいけなかったと思いますが、その支えになったものは何ですか?
「勝ちたい」「このチームでもう1回優勝したい」という思いだけでやっているので、チームがあまり良くない状況で、ポジティブに言った方が良い時も、僕は厳しく伝えてスタンダードを下げずにやってきたということは、自信を持って言えます。
――引っ張り過ぎてみんなと離れることはなかったんですか?
僕の中ではそうなっても良いと思っていたんですが、他のリーダーが上手く一緒にやってくれました。自分の中で基準を持ってやっていくことは決めていたんですが、他のリーダーもメンバーを引き上げてくれたので、僕だけが突っ走るという感じではなく、2017‐2018シーズンもみんなで引っ張ってきたと思います。
――監督と選手の間にいるという難しさもありましたか?
選手の思いも分かりますし監督の基準の高さも分かっているので、どちらの意見も大事にしなければいけないと思います。選手の意見で大事だと思ったことは監督に伝えますし、ただ監督の要求を引き上げることもキャプテンの仕事だと思っているので、周りの選手には高いレベルを要求してきました。
――非常に苦しいことをやってきて優勝しましたが、今の自信はどうですか?
最後は練習で細かいことを言い続けてきたことや、キツい時にみんなでハードにトレーニングしてきたことが、そして基準を下げずに毎日毎日少しでも成長し続けようという思いを持ちながら生活してきたことが、形になったと思うので自信になりました。
――最後の4試合でやっと手応えを感じられたんですね
やっとチームになり始めたというか、試合に出ているメンバーがサントリーのプライドを持って、出ていないメンバーのために、チームのために、やらなければいけないことをしっかりと全うするという思いと、ノンメンバーとの練習が凄く激しくて、お互いが全力で100%出し切る練習が増えてきて、チームが一体感を持って戦い始めたのがその時期だったと思います。
◆爆発的、味わったことのない感覚
――来シーズンはまたチームを作り直さなければいけないですが、レベルが上がったところからスタートできそうですか?
今は僕がいる3年間で一番良いレベルにいると思います。ただ、最初の優勝から2連覇までの過程よりも、2連覇から3連覇の方が絶対に難しいと思っているので、色々な殻をまずは破っていかないといけないと思います。
例えば、2017-2018シーズンに成功した練習や成功体験も全てぶっ壊して、もっともっと上のことをやらなければいけないので、また居心地の悪い練習も増えますし、息苦しく感じることも多くなると思いますが、それをみんなで乗り越えてやっていくことが大事だと思います。プレッシャーもかかってもっともっとキツいと思いますが、それを楽しめるようなマインドでいないとやっていけないと思います(笑)。
――凄く大変な思いをした先の喜びとは、どんなものですか?
凄く大変な思いがないと優勝できないと思っているので、乗り越えた時の優勝や勝利はもう凄いですね。爆発的というか、味わったことのない感覚を味わえます。
――優勝が決まった時、キャプテンはもの凄く爆発していたように見えましたが、選手みんなも爆発していましたか?
相当嬉しかったと思います。僕だけではなくて、色々な人が苦しい思いをしたシーズンで、ハタケさん(畠山健介)はリーグ戦ではメンバーに入っていたのに準決勝、決勝には出られなかったり、コスさん(小野晃征)もシーズン終盤に出られなかったり、ヒカル(田村煕)もあれだけ頑張って練習しても、どうしても出られない理由があったり、その他のメンバーも努力してきて出られなかったりという状況の中で、自分の役割をしっかり見つけてチームが優勝するために自分ができることをやってくれていました。メンバーも嬉しかったですし、チーム全体で喜べたと思います。
――この経験をしたことによって、来シーズンさらに厳しくなっても喜びも大きくなっていくということですか?
苦しさと比例して喜びも増えていくと思います。
◆プレーで引っ張ることが一番のリーダーシップ
――自分自身、選手としてはどこが良くなったと思いますか?
正直、僕自身はサントリーでパフォーマンスがなかなか出なくて、そこが自分自身苦しい部分でもありました。代表ではある程度良いパフォーマンスができたこともあったんですが、サントリーの練習や試合だとちょっと上手くいかなかったりすることが多かったんです。シーズン終盤の神戸製鋼戦あたりからやっとパフォーマンスが出せるようになってきたなという感覚でした。
――できなかった理由は何ですか?
色々なことを考え過ぎていた部分もあります。リーダーシップはパフォーマンスが一番だということを2016-2017シーズンで学んだんですが、チームのことを考え過ぎたり、上手くいくためにリーダーとして何をしなければいけないのかということを考え過ぎてしまったりして、違うことにウエイトを置いてしまったこともありました。そこから、もう一度自分のパフォーマンスを上げることを意識したら、神戸製鋼戦くらいから良くなりました。
――代表においては自分のパフォーマンスをかなりの比重で考えられるということですね
サントリーに戻って来てそれを疎かにしていたわけではないんですけれど、リーダーということをより考えてしまってちょっとプレーに影響が出ていた感じがありました。もう一度2016-2017シーズンのことを思い出して、「プレーで引っ張ることが一番のリーダーシップ」ということを敬介さんにも常々言われていたので、そこを意識して他のリーダーにも手伝ってもらいながらやりました。
――これからサンウルブズ、日本代表、サンゴリアスでプレーするにあたり、今の課題は何ですか?
全てのプレーが少しずつ良くなってきていますが、これからもっとプレッシャーを受ける試合が、サンウルブズでも代表でも増えていくと思うので、プレッシャーの中での判断とスキルを課題としてやっていかなければいけないと思います。
――その課題をクリアするためには経験が必要ですね
そうですね。試合数しかないです。あとは、同じ状況を想定して練習するしかないと思います。
――まずはサンウルブズでの目標は?
僕はサンウルブズ初参戦で未知な部分も多いので分からないですが、スーパーラグビーには色々なタイプのチームがいて、それはトップリーグでもワールドカップでも同じだと思うので、色々な戦い方やプレッシャーのかけ方が違うチームに対して、一貫して自分のプレーができるような準備をしないといけないと思います。
あとは、これだけの長いシーズンは初めてなので、準備の仕方、食事や睡眠というコンディションのところを、もっとプロフェッショナルにしていかないと戦っていけないと思います。一貫したパフォーマンスとグラウンド外での準備、コンディショニングを意識していきたいと思います。
◆いつも試合のマインド
――プレーやゲームに向き合う時の準備は、考え方や心の持ち方が大きいんですか?
いつも試合と同じマインドで入ることが大事だと思っています。練習だからというマインドだと練習のための練習になってしまうので、いつも試合のマインドで準備するようにしています。
――試合のマインドとは?
試合は最初の入り5分間が凄く大事だと思っています。日本選手権の決勝もそうでしたが、あそこで先制点を取れたことは凄く大きかったです。練習でも最後の方になって良くなっていくこともあるんですけれど、そうではなくて最初から試合をイメージして、100%出し切ることを意識しなければいけないと考え取り組んでいます。
――ファンに対してのメッセージをお願いします
毎試合どの会場でもサンゴリアスファンの応援は、凄く熱いものを感じます。凄く大きな声を出していただいて、僕らにもかなり鮮明に聞こえることも多いので、本当に後押しされます。皆さんと喜ぶことを想像して僕らは試合をしているので、いつも感謝しています。
先ほど苦しい分だけ喜びも大きくなると言いましたが、それと同じだけ応援も必要になると思うので、来シーズンも更に大きな応援で僕らを後押ししていただけたら嬉しいです。2017-2018シーズン第8節のトヨタ自動車戦で18点差をひっくり返して勝った時も、京都で雨が激しく降る中、すごく応援していただきました。
どんな時も僕らは100%で勝利を目指しますので、ファンの皆さんがこれからも後押ししてくれたら嬉しいなと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]