2018年1月 5日
#568 ショーン マクマーン 『120%の気持ちを出してラグビーをする』
オーストラリアを代表する選手がまたひとりサントリーに加わりました。23歳の期待の若手ショーン・マクマーン選手。デビュー戦の翌週に話を訊きました。(取材日:2017年12月19日)
◆周りがしっかりと助けてくれた
――第12節神戸製鋼戦がデビュー戦となりましたが、自分としてはいかがでしたか?
ゲームとしては自分のパフォーマンスは凄く良かったと思うんですが、良い試合をしても、さらにやらなければいけない何かは必ずあります。日本のトップリーグについてイメージしていたのは速いラグビーで、それに対して自分がついていかなければいけないと思っていました、凄く息切れがして疲れてしまって、試合に対応していくことに時間がかかりました。日本は世界と比べて違うスタイルのラグビーをしているので、それを感じられる試合になったと思います。
日本に来てすぐにコーチや他の選手たちが、自分が一番良いパフォーマンスを出せるように、凄くサポートしてくれました。練習から全てが始まって、周りがしっかりと助けてくれたことが、良いパフォーマンスに繋がったと思います。
――今までのラグビー歴でも新しいチームでの初めての試合で、良いパフォーマンスを出せていたんですか?
いつも良いパフォーマンスを出せるとは限りません。飛行機で移動時間が長かったり、高度が高い場所だったりして、それで良いパフォーマンスが出せなかったということは何回もあります。
――日本は合っていると感じていますか?
速いラグビーを楽しめています。たまにキックもしますが、基本的にはアタックのラグビーは、自分に凄く合っていると思います。
◆コンタクトが一番好き
――ラグビーを始めたのは何歳ですか?
9~10歳の時に初めてラグビーリーグ(13人制)でプレーして、13歳の時からラグビーユニオン(15人制)をやりました。
――その時にラグビーの面白いところは何だと思いましたか?
仲間意識、団結力、チームの中で働くというところ、そしてチームメイトとの絆が出来てきて、それを一つにしなければ良い試合が出来ないというところです。ラグビーがチームスポーツだと思うのはそういうところです。あとはフィジカリティという部分が大好きです。
――他のスポーツの経験は?
違うスポーツと言っても、7人制ラグビーくらいしかないです(笑)。
――最初からチームスポーツなんですね
陸上は学校で少しやりましたが、チームスポーツの方が好きです。コンタクトのところが一番大好きです。
――コンタクトの何が好きですか?
グラウンドで戦う意識の部分ですね。1対1で身体の大きい選手もいれば小さい選手もいるし、スキルをいくら持っていても強いハートがあって気持ちの部分が強くないと勝てないですよね。
――ハートが大事だと思ったのはいつ、そしてなぜですか?
高校の時だと思います。気持ちの部分がないと、80%くらいしか力が出せないし、自分が怪我をしたり、チームメイトやコーチや家族をがっかりさせたりしていまいます。だから120%出し切らなければいけないと思います。
実際、今まで半分の気持ちでやったことはありませんし、がっかりさせたこともありません。中途半端な気持ちでやることに対して、そういう気持ちが少しでも出る試合をしたら自分は引退する、という気持ちでやっています。そういう気持ちが絶対にないように、これからも120%の気持ちを出してラグビーをすることを心がけています。
◆自分がすべてやる
――ラグビーを楽しんできて、どのタイミングで自分はこれをやり続けるんだと思いましたか?
イヤー11か12の時だと思います。学校がちょうど終わる頃に、軍隊に入ろうかなと考えていました。しかし、当時の7人制のコーチからチャンスをもらって、7人制のチームに入ることが出来ました。そして、トニー・マクガハン(メルボルン・レベルズ前監督)がレベルズでプレーする機会を与えてくれたので、15人制のプロフェッショナルとしてレベルズでやろうと決めました。
――7人制と15人制は自分では、どちらが合っていると思いますか?
自分は15人制の方が合っていると思います。でも、いまは7人制も成長してきているし、自分もそこからスタートしたので、凄く魅力的なスポーツだと思います。いま成功していて、大会もだんだん大きくなってきています。
――オーストラリアでプロになって、代表になったのはいつですか?
2014年にスプリングツアーに行って、ウェールズ戦で初キャップを獲りました。
――プロや代表になる時に壁は感じませんでしたか?
スプリングツアーに行くことは自分も想像していなかったので、最初レベルズに入った時はベンチからスタートするというイメージが強かったんですが、最初の試合でスターティングメンバーとして出場しました。そこからどんどん自信を積み重ねていくことが出来て、スプリングツアーに選ばれて、パフォーマンスを120%の力を出していくということと意識して、幸運なことにワラビーズとしてのキャップが始まりました。
――最初からフル回転するという気持ちを持ち、それが実際に出来ているんですね
120%ハードワークしていかないと、若い年齢で代表に選ばれることはなかったと思います。バックローは良い選手がたくさんいるので、しっかりと良い戦いをしていかないとそこに選ばれないと思います。
――みんなそう思っていてもなかなかできないと思いますが、120%でやるコツは?
自分が全てやるという気持ち、ラックにも全部行きますし、タックルも行くし、ハードキャリーもしなければいけない。誰も自分のことを止められないという強い気持ちを持つことです。上手くいくかいかないかではなく、毎日その意識をしっかり持つことが大切なんです。
それと同時に、良い準備をしなければいけません。プレシーズンから含めて、しっかりと良い準備をして試合に向かっていかなければいけません。それをしっかりとやることが出来たら、自信に繋がって120%の力を出せます。
――自分で自分のハートは強いと思いますか?
強いと思います。家族のことをよく考えるんですが、自分がいまここにいられるのも家族のおかげで、そのサポートがなかったらこの現状にいないということをしっかりと考えていることが、強いハートを持ってプレーすることに繋がっていると思います。家族は自分を育ててくれて、それをしっかり受け止めて、自分はその思いをパフォーマンスに出すことに繋げています。
◆誇りに思ってくれるようなパフォーマンス
――ご家族は?
父と母、そして兄が2人います。今は姪っ子も2人いて、甥っ子も2人います。
――今のタイミングで日本を選んだのはなぜですか?
前のチームで比較的長くプレーをしたので違うことをしたかったんです。違う環境、新しい文化、新しいクラブでスタートするということ、そして自分と自分の妻が日本に来て日本でプレーするというイメージが湧いてきました。サントリーが良いチャンスを与えてくれたということに凄く感謝しています。あとは自分が120%返す、ジャージを着た上で恩返しするということです。
――どこか海外でプレーしたかったということですか?
そうですね。ラグビーは素晴らしいことに世界中どこでもプレーすることが出来るし、たくさん友達をつくることができます。
――将来の構想は?
2019年はまだまだ考えていないです。いま一番考えていることはサントリーで良いパフォーマンスを出すことだけです。今までの選手やコーチたちが誇りに思ってくれるようなパフォーマンスをここで出したいです。
◆ボールゲームとナレッジ
――選手として課題だと思うところはどこですか?
ボールゲームのところですね。ボールをもっと動かしていくところと、あとはハンドリングスキルです。良いキャリーは比較的できると思うんですが、細かいパスなどを、しっかりと良いペースで出来るようにしなければいけないと思っています。
敬介さん(沢木監督)、山さん(山岡フォワードコーチ)をはじめ凄く良いコーチがいますし、ゲームの全体的なナレッジの部分でも今まで自分が学んだ知識とは違うので、そういうところを自分の中でやっていかなければいけないと思います。
――大丈夫なところはフィジカルですね
今のウエイトは良いので、体重はあまり増やしたくないです。良い状態ということを常に意識して、維持していかなければいけないと思っています。
――試合への臨み方、将来の考え方を含めて、目の前のことに全力を注ぐ人だと感じますが、改めてそれはどうやって身に付けましたか?
自分の両親から伝わってきた部分は強いと思います。あとは結局、グラウンドでやるのは自分だから、グラウンドでどうやるかは自分で勉強することだと思いますね。そこで自分でしっかり出来ないとチームメイトに迷惑をかけたり、自分が怪我したりすることになると思います。
例えばタックルでミスをしたとすれば、しっかりできていなくてミスをしたということです。そういうところで自分はもっと成長しなければと、若い時から考えていました。基本的には両親の考えがあったからだと思います。
――目の前のことに挑戦していくことに関して、奥さんはサポートしてくれていますか?
たまに心配で見に来ますけれど、あえて見ないようにしているかもしれません(笑)。彼女は自分がやっていることに対して凄くサポートをしてくれていますし、自分の家族や友達やチームメイトのためにやっているということを、彼女は理解してくれています。
◆一番大事なのは楽しむこと
――まだ1試合の出場ですが、日本でやっていく自信は?
感覚はよく分かりました。その感覚は凄く大事だと思います。50分前後プレーして息が上がりましたけれど、ナレッジの部分をしっかり上げていって、毎試合毎試合プレーして自信をつけていきたいと思います。コーチや選手と連係して、ファイナルに向けて自信をつけていくことがとても大事です。自信がついてくれば絶対に良いパフォーマンスを出せるので、その自信を毎試合毎試合つけて、ファイナルに向かっていくことが大事だと思います。
――これまでの経験からファイナルラグビーで大事なことは?
GG(ジョージ・グレーガン/スポットコーチとして来日)も言っていましたが、チャンピオンシップのマインドセットをもつことです。本当にチャンピオンシップのマインドは大事ですし、加えて細かいディテールの部分は毎週毎週フォーカスしていかなければいけないし、前の試合で出来なかった部分をしっかりと修正していかなければいけません。
ただ一番大事なことは楽しむこと。楽しみながらもしっかりとフォーカスして、自分たちがやらなければいけないことをやって、その前の試合で出来なかったことを修正していくこと、前に進んでいくことが大事だと思います。
――120%でやっていたら楽しめますよね
凄く楽しめます。この前の試合は本当に楽しめました。慣れていなかったし、久しぶりのラグビーだったけれど、凄く楽しめました。フレッシュなスタートをするイメージで試合できたので、凄く楽しかったです。
――ファンはどこを見たら楽しんでいると分かりますか?
フィジカルとハードなボールキャリーのところです。ボールをしっかりと前に持って行って、チームを前進させるところ、フロントで体を張ってどんどん前に行くところを見てもらいたいです。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]