2017年12月14日
#565 真壁 伸弥 『身体を張る』
大きな外国人選手に引けを取らないパワーの源は?久々の日本代表でのプレーを終えて、チームに合流した真壁伸弥選手に訊きました。(取材日:2017年11月28日)
◆勝つために準備をしているチーム
――今回の代表はどうでしたか?
今まで僕がやっていた日本代表とは違うので、新鮮で楽しかったというのもありますし、あとは代表のスタンダードは確実に上がっているなと感じました。比べてはいけないんですが、例えば今までの代表はフランスやオーストラリアと試合するときは何かしらネガティブな部分が見えていました。スクラムで押されるからどうしよう、ラインアウトが取れないからどうしよう、という話が多かった代表が、そんな気持ちが一切出ることもなく、みんなが勝てるという気持ちを最初から持って勝つために準備をしているチームになっていました。2015年から2年ぶりの代表なので、この2年間でだいぶ変わって、前回のワールドカップの3勝で良い方向に動いたんだなぁと実感できました。
――2019年のワールドカップに向けて、良いタイミングでの復帰ですか?
そうですね。もっと早ければもっと良かったんですけれど、今回そういうことを体験することができて嬉しかったです。それに加えて試合をやってみて、世界と戦うにはまだまだ自分のレベルが低いなということを実感しました。
――レベルが低いとは?
まず僕みたいな体格の選手は世界にはざらにいるので、しっかりと80分以上走れないといけないと思います。まだそれができておらず60分で交代してしまったので、そういう部分にもっと責任を持ってやらないといけないなと思います。あとは、やっぱり外国人選手は強い(笑)。久しぶりにテストマッチをやってみて、とにかく強い。しばらく海外のチームと試合をしていなかったので、久しぶりにやってみてダメージが凄いです。やっぱり別物だなと感じました。
――トップリーグでも代表でも「暴れている」という感じはしますが、自分の感触はどうなんですか?
必死だったというのはありますよね。久しぶりでどういうふうにやっていけばいいか分からないから、全部フルスロットでやって、必死だったからそう見えたんだと思います。
――それは相当やりがいがあったんじゃないですか
やりがいありましたね。だから楽しかったんだと思います。
◆だいぶ自信は取り戻した
――今シーズン、トップリーグでやってきて、それなりに自信みたいなものはありましたか?
僕の場合は逆で、トップリーグで自信があったから臨めたというよりは、トップリーグでやってきて本調子ではなかったから、不安を解消するために全力でやったという感じですね。
――本調子ではないのはどの辺ですか?
怪我明けでトップリーグをやっていて、昨シーズンがベストだったことと比べると全然走れていませんし、自分の体をコントロールできていませんでした。凄くモヤモヤした状態でトップリーグをやっていたので、その不安をかき消すためにという感じですね。
――相当消せましたか?
今回の代表でだいぶ自信は取り戻しましたね。
――代表から戻って来てこれからトップリーグの後半戦になりますが、どんな絵を思い描いていますか?
代表での感覚はキープしたまま、100%でできるようにしっかりとコミットしていく。1試合1試合しっかりとやっていくべきかなと思います。
――世界との対戦がトップリーグに活きますか?
ラグビーの種類が違って、リーグ戦と1回に限る試合はやっぱり違うので、しっかりとコントロールをしながらリーグ戦を戦っていって、最後の決勝でテストマッチ級にできるように頑張りたいと思います。
◆細かいスキル
――自身はモヤモヤしていたけれど、チーム自体については今シーズン前半戦をどう感じていましたか?
本当に調子は良かったなと思いますね。パナソニックに1回負けましたけれど、あの時もチームの状態は決して悪くなく、良い方向にいけていたと思います。パナソニックには勝てなかったですけれどチームとしては良かったですし、新しい取り組みも毎回やっていて、良い状態だったと思います。
――ではそんな中で、自分自身の課題は?
テストマッチで耐えられる体をつくる。怪我をしない。あとはスキル。そして、代表から帰って来たばかりなので、しっかりとこのチームにもう1回コミットし直すということと、サントリーはラグビーの種類が完全にランニングラグビーなので、そこにフォーカスしていく。フォワードのタイトファイブが一番きついチームだと思うので、走って当たってスクラム組んでいくという厳しいラグビーをしっかりとできるようにしたいです。
――スキルの課題は?
タイトファイブも今は細かいパスができなければいけないし、パナソニック戦はジャックカルされまくったんですけれど、コンタクトプレーがあった時に、どうやったらそれをされないようにできるか。細かいスキルですけれど、そういうスキルを持ち合わせないといけませんし、それをコンタクトがあった時、極限状態の時にできるように、試合でしっかりと意識してやっていくことです。
――激しいラグビーをしていて、怪我への対応策はありますか?
コントロールできる怪我に対しては、しっかり毎日ケアをして予防をしていくことが大事なんですけれど、怪我に関しては予期せぬこともあるので、それに対してはいくら準備しても防げない部分があるとも思います。できることをしっかりやっていくという感じです。
◆ディフェンスが向いている
――怪我を恐れずにぶち当たっていく部分で、パワーアップしたと思いますか?
年々そこからは避けている気がしますね(笑)。あとは、今のラグビー自体、一人で突っ込むことがなくて、トレンド的には不向きになってきたと思うので、いかに僕をダミーに使うかの方が大事になってきていると思います。
――ディフェンスの時はどうですか?
守りの時はガンガン。
――年々パワーアップしていませんか?
トレーニングとかウエイトとかよりも、経験値でパワーアップしているなという感じです。やっぱりコンタクトは自信も必要だと思うので、テストマッチやビックゲームをやっていくことによって、そういう部分では非常にレベルアップしているのかなと。最近は自分を本当にディフェンス的なプレーヤーだなと思っています。ディフェンスの方が役に立てるのではと思います。
――それは発見ですか?
僕は元からディフェンスの方が好きだったんですけれど、皆さんに見ていただけるのは一人で突破するところなので。でも、自分の中ではディフェンスの方が向いているかなと。スキルはないですけれどね。スキルに関してははっきり言って「ない」と思っていますけれど、「体を張る」という部分では自信があります。トップリーグでは素早い選手が多いので、スキルがないとなかなか難しいんですが、今回のフランスやトンガのようなチームに対しては、やっぱり僕の持ち味が存分に活かせるなと思いました。
◆サントリーの試合をやりきる
――チームの課題は?
誰が出ても同じような質と強度のラグビーができることだと思います。
――そのためには何が大切ですか?
試合同様の強度のラグビーを練習からやっていって、試合に出ていないメンバーも試合と同じ感覚を持つことが大事だと思います。それと、メンバーに入らなかった選手も試合への準備をすること。そういうことができている時のチームは強いと思います。
――今シーズンのチームはそれができていますか?
できていると思います。去年からやっているので、後半もしっかりできると思います。ずっと出られなかったりすると崩れてしまう人は必ず出ると思うので、それにどうやって周りの人が言ってあげられるかだと思っています。
――そこは真壁選手自身も意識しているんですか?
僕もそうです。試合に出ない時もしっかりと相手のことを分析して、「何か仕事をくれ」という感覚を持って臨んでいます。
――今シーズンの目標は?
1試合1試合サントリーの試合をやりきる。このチームで決めたことに対して100%責任を持ってやることがサントリーのラグビーです。それを1試合1試合やっていくということですね。
――決めることは毎試合変わっていくんですか?
大まかなベースはありますけれど、相手によって役割は変わってきますし、それを1試合1試合しっかりとやっていって、決勝に行けたらなと思います。決勝になったら出し切るしかないので。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]