2017年11月17日
#561 飯野 晃司 『自分が声を出して鼓舞できるように』
いつも元気な飯野晃司選手。打てば響くという普段の感覚が、インタビューの際中にも感じられました。後半戦に向けて何が大切か?期待のルーキーの思いを訊きました。(取材日:2017年10月27日)
◆見ながら学ぶ
――前半戦が終わりましたが、ここまでの状態はどうですか?
無事に復帰できて試合にも出させていただいているので、まだまだ甘い部分はありますが、試合に出られているという意味では良いと思います。
――シーズンが開幕してから出られていない期間がありましたが、その時の心境はどうでしたか?
出られないという悔しさはありましたが、チームはしっかり勝っていて、自分はまだ見ながら学ぶものがたくさんあると思っていたので、しっかりと見ていました。自分が出た時にはこうしようということをいろいろ考えながら、サンゴリアスの試合を見ていました。
――焦りなどはありませんでしたか?
焦りから何度かオーバートレーニングをしそうになりましたが、トレーナやS&C(ストレングス&コンディショニング)のコーチが、「まぁ待て」と言ったので、それに従いました(笑)。
――その辺も今、学んでいる最中ですね?
そうですね。ラグビー選手としてのノウハウを学んでいる状態だと思います。
◆タックル、ラインアウト、スクラム
――そうして迎えたトップリーグでのデビュー戦(第6節NTTドコモ戦)、試合に入る時の気持ちはどうでしたか?
「やってやる」、「失うものは何もない」くらいの勢いで、全力でやろうと思って試合に臨みました。
――その結果はどうでしたか?
プレー自体にはまだまだ満足していないんですが、楽しく思い切りやれたのかなと思います。
――今の時点で「楽しい」と感じるというのは、どの辺に感じるんですか?
まず試合に出られることが楽しいと思いますし、やっている中で自分たちが準備してきたことを出せることが楽しいですね。個人としてはタックルが決まっただけだったんですが、「ヨッシャ―」プラス「楽しい」みたいな感じでした。
――その一つの判断基準はタックルなんですか?
自分としてはそうですね。タックルだったり、ラインアウトの部分であったり、チーム全体だったらスクラムです。ロックというポジションでは、そういうところが鍵になってくると思います。
――逆にここが足りていないと思ったところはありますか?
ハンドリングや特にラグビーの理解という部分は全然足りていないと感じています。
――ハンドリングは練習あるのみですか?
そうですね。ジョー(ウィーラー)は本当に上手いので、そこは目指すべきところかなと思います。全体練習後にアフターでジョーからいろいろと教えてもらっています。よくやるのはテニスボールとかで遊び感覚でやるんですが、「小さいボールが取れれば大きいボールは取れるから」みたいな感覚です。
――でも形は違いますよね(笑)?
そうですね(笑)。そこはおいおい教えたいただきながら・・・。
◆キツいだけではない
――ラグビーの理解の方はどうしていますか?
やっぱり試合を見ることや、分からないことは分からないとひとつひとつ聞くことです。理解できていなかったら、そのままやるんじゃなくて誰かに聞いています。そうすると、合っているか間違っているか言ってくださるので、もし間違っていたら、「こういうことですか?」という感じで1個1個整理していくことですね。
――間違っている時というのは、どこが間違っているんですか?
例えば、サインプレーにしても、「ここはこうですよね?」と聞いています。「ここはこうした方が...」と言うよりもプラス αのことや、純粋に「サインが分からないので教えてください」ということを聞くことも何回もありました。
――今までより更に考えながらやっているんですか?
そうですね。しっかり週全体で一つひとつを落とし込んで、準備していきます。そうやって準備したことを試合でやるだけなので、考えているのは準備の段階の時だけです。試合の時も考えてはいますけれど、やってきたことを思い切ってやるということを意識してやっています。それを毎週積み上げていっています。
――大学時代もそういう経験がありますか?
今までもそうだったんですけれど、より精密にというか、よりしっかりと準備をする意識が高まりました。
――そのしっかりの中に相当激しさがありますが、それはどう感じていますか?
勝つためです。激しいことは嫌いではないので(笑)。練習もキツくて、試合もキツいんですが、(笑)、キツさの中にいろいろな達成感があるので、キツいだけではないです。
◆1個1個のスキル向上
――前半最終戦(第9節パナソニック戦)、サントリーの公式戦で初めての負けを経験しましたが、あの試合はどうでしたか?
準備してきたことが出し切れなかったです。1個1個のプレーの質が、パナソニックさんの方が上回っていたということだと思います。
――個人的にはどうでしたか?
出場時間はそんなに多くなかったんですが、やっぱりもっと「こうした方が...」、「よりこうしていた方が...」というのは、あとで映像を見ながら思う部分がありました。次回、絶対にリベンジする機会があると思うので、そこでしっかりとリベンジしたいと思います。
――今の課題は?
ラグビーの理解であったり、ラインアウトのスキルなど、1個1個のスキル向上が一番の課題だと思っています。
――例えば、ラインアウトではどんなスキルなんですか?
純粋にラインアウトのジャンプや、リフト、そして戦術においてのサイン出しです。そういう部分がまだまだジョーにおんぶに抱っこの状態なので、しっかりと自分で考えながら1個1個プレー出来るようにしていきたいと思っています。真壁さんにも例えば、スクラムで「上手いことプロップと合わないんです」と言ったら、「もっとこうした方が良いよ」といろいろ教えてくれます。
――今の課題を解決していきながら、目指しているプレーヤー像はありますか?
ジョーのようにセットプレーがしっかりしていたり、ハンドリングが上手かったり、真壁さんのように力強くも行けたり、時にはバックローみたいに走りまわったり、ユーティリティなプレーヤーを目指していきたいと思っています。
――走る方はどうですか?
運動量自体に関しては満足していませんが、1試合を通して80分間ずっと走り続けるという部分では、まだまだ出来ていないと思います。それには積み重ねていくことだけだと思うので、毎回走って一つひとつ徐々にステップアップしていきたいです。
――走るレベルは大学時代とはだいぶ違うんですか?
大学の時も走っていたとは思うんですが、考えながら走ったりという"走るプラス"があるので、考えることが止まってしまった時に足も止まったら、プレーは上手くいきません。走りながら考え、プラスでコミュニケーションを取る、そういうプラス αのことが増えてきているので、そこをやりながらというところが大学とは違うと思います。
――そうすると、相当体も鍛えなければいけないと思いますが、体は大きく強くなっていますか?
そうですね。体重はそんなに変わっていませんが、筋量自体は上がっているので、ウエイトの効果、成果はしっかり出てきていると思います。
◆自分のところに来たら、絶対に止めたい
――後半戦、どんなところでチームに貢献していきたいですか?
自分の持ち味は元気の良さなので、グラウンド内外問わずにしっかりチームを盛り上げて、チームがしんどい時でも自分が声を出して鼓舞できるようにしていきたいと思っています。
――声で鼓舞するのは大変なことだと思いますが、それが出来るのはなぜですか?
声をなぜ出せるのかよく聞かれるんですが、声を出すことは苦ではないです。自分が周りに声をかけている時に、自分も一緒にテンションを上げるという感覚なので、これは出さない方が逆に走れないし、何も出来ないと思います。いつからか分かりませんが、攻守ともに気がついたら声を出していました。
――声の他には?
ディフェンスは自分のところに来たら、絶対に止めたいという気持ちを持っているので、しっかりタックルはいきたいと思います。
――タックルのコツは何ですか?
事前にしっかり周りとコミュニケーションを取っておくことだと思います。相手プレーヤーが外に行ったら誰、ここに来たら僕、と事前にコミュニケーションを取っておくと、コースが限定されるので、そういう時は良いタックルが出来ていると思います。
――試合によって横にいるプレーヤーが違いますが、そこはどうですか?
その辺はやっぱり先輩方にサポートとして、声をかけてもらっています。どのポジションに立ってもしっかりと隣同士のコミュニケーションは取れているので、そこは良いサポートをしてもらっているんだなと思います。
――コミュニケーションは特にみんなが意識してやっているんですね
そうですね。コミュニケーションは何をするにしても大事なことだと思うので、毎回の練習でやったり、どんな時でもしっかり意識してやっていると思います。
――コミュニケーションが大事だというのはどこから感じたんですか?
一人ではラグビーが出来ない、15人いて初めてラグビーが成立するんです。その一人ひとりの意志を疎通することが、最終的に勝利に繋がると思います。
――サントリーでよりそこが尖がっているというか、出来ているのはなぜだと思いますか?
よりスピーディーにラグビーをする上でのコミュニケーションであったり、余裕を持つためのコミュニケーション、ということじゃないですかね。
◆スタートのジャージを着られるように
――後半の目標は?
後半戦からは全勝でしっかりといくというチームの目標がありますので、優勝を目指して、優勝するという強い気持ちを持ってチーム全体でやっていきたいと思います。個人としては、1試合でも多くグラウンドに立ってプレー出来るように、まずは練習からしっかりアピールしていきたいと思います。
――今までの経験から通常の試合とファイナルラグビーとで違いはありますか?
そんなに違いはないと思います。試合においてはしっかりと準備してきたことだけをやるということだと思っているので、11月のウインドウマンスで試合がない中でどれだけ準備ができるかが鍵になってきます。そこでしっかりと良い準備が出来て、自分自身に自信がつけば、自ずと余裕を持ってプレーが出来ると思うので、準備をどうするかというところが一番大事だと思います。
――良い準備とは?
しっかりとコミュニケーションが取れた上で、自分の中でのラグビー理解ができて、いろいろとクリアになった上でラグビーに臨むことだと思います。この時はこうするという、選手同士でのコミュニケーションがとれていたら、ディフェンスの時も楽ですし、アタックの時もどこを攻めるというチーム全体の意思統一が出来ていることになると思います。
――自分としては順調な1年目のシーズンですか?
まだまだ満足するものではないと感じています。試合には出られていますが、まだスタートではありません。1年目だからということは関係なく、もっとガンガン行きたいなと思います。試合に出られなかった期間も為になって良かったという部分もありますが、開幕戦から出たかったという思いもあります。
――試合に出られて手応えを少しずつ掴んでいって、その先に2019年があると思いますが、それについてはいかがですか?
しっかりと目指していきたいと思っているんですが、そこへの一番の近道は、サントリーでスタメンとして試合に出続けるということだと思うので、まずはサントリーで早くスタートのジャージを着られるようにやっていきたいと思っています。
――自信はどうですか?
自分自身でやることをしっかりと明確にすることがまず第一だと思うので、それができるようになってきたら、自ずと結果がついてくるのかなと思います。
――ある程度できていますか?
まだまだです。ルーキーだからガンガンいける部分はあると思うので、言葉は汚いですが、「いつでも食ってやるぞ」くらいの勢いでやっていきたいと思います。
――見て学ぶところが多いですか?
そうですね。こういうプレー選択もあるんだと気づくことがあります。例えば、ジョーのキックパスであったり(笑)。こういう選択肢もあるということを持ちながら、しっかりとラグビーをすることが大事だと思います。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]