2017年10月 6日
#555 小林 航 『常に試合前の気持ちを持って』
今シーズン初出場をスタメンで飾った小林航選手。闘志が上向きになってきた今、何を考えどこを目指しているのでしょうか。久々に楽しかったという試合を中心に、心境を訊きました。(取材日:2017年9月12日)
◆チームを引っ張らなければいけない
---- 今シーズン第4節で先発出場を果たしましたが、メンバーが発表された時はどんな気持ちでしたか?
メンバー発表の前の練習で、試合メンバーのコーラーなどをやらせてもらっていたので、「第4節ではメンバーに入れるかな」と薄々感じていました。ジョー(ウィーラー)がリザーブだったので、しっかりとラインアウトリーダーとしてチームを引っ張らなければいけないと思い練習をしていました。
---- そういう時は気合いが入る方ですか?
最初は不安しかありませんでした(笑)。最後に先発で出場したのが東芝とのプレシーズンマッチで、そこから1ヶ月空いていたので、試合勘の部分で不安がありましたが、僕が練習でコーラーをやっている時も周りの先輩方がすごくサポートしてくれていたので、とてもやりやすかったです。
---- どんなサポートをしてくれたんですか?
スクラムの組み方で少しズレがあった時には、真壁さんから「こういう風にやって」とか色々と細かい足の位置などを教えていただいたり、ラインアウトのコーラーをやっている時にはヘンドリック(ツイ)やジョーダン(スマイラー)から「俺たちをもっと使って良いよ」とか「今のサイン良いんじゃない」とか、ハドルしている間に言ってくれていました。そういう色々なサポートをしてくれたので、とても助かりました。
---- 調子自体も良かったのですか?
ヤマハ戦のノンメンバーの練習の時にボールキャリーが良くて、敬介さん(沢木監督)からも「ナイス」と言われていたので、そこで自信を取り戻していたと思います。
---- 取り戻すというのはいつ以来?
春シーズンを過ごして、最初のターゲットのワラターズ戦は上手くいって自信がついた試合だったんですが、その後の東芝戦との練習試合などで個人的には上手くいかない試合が多かったです。そのまま夏合宿の最後のトヨタ戦でも良いパフォーマンスができなくて、正直ラグビーに対して自信をなくしていました。
---- 自信をなくした一番大きな理由はなんですか?
一番大きかったのは、試合に対してもちろん「やってやる」という気持ちはあるんですが、ところどころで体を張れていなくて周りに迷惑をかけてしまうシーンが多かったんです。周りからは言われてないですが、自分で勝手に追い込んでいました。
そこから耕太郎さん(田原/チームディレクター)や、先輩たちに相談に乗ってもらい、今は少しずつ自信を取り戻してきていて、調子としては上がって来ている最中です。
◆ファーストプレーを意識
---- 初めての経験をしたことによって見え方が変わったり、試合への意識の向け方が変わったりしたことはありますか?
これまで練習でミスすることが多くてよく周りからも言われていたんですが、やっぱり練習に対して100%で毎回取り組んでいかないと結果として表れないと思います。春シーズンでの練習などでは100%取り組めていない中でのミスなのに、「自分はダメだ」って逃げていました。今は練習から100%でやるという意識が強くなりました。
---- 100%やるための一番のポイントは?
意識しかないですね。常に試合前の気持ちを持ってやらなければ100%ではできません。
---- 優しい性格だと思いますが、優しさと厳しさのバランスは?
同じロックの真壁さんは普段優しいんですが、練習や試合になったらスイッチが入って激しくプレーしています。そういうスイッチを周りにも分かるように入れて、闘志をむき出しにしていかなければいけないと思っています。
今はファーストプレーをとても意識しています。例えばキックオフで正確にキャッチするなど、そういうきっかけがあると、気持ちがどんどん高まっていきます。そこでミスをして落ち込んでしまうと今までと同じなので、「ミスは仕方ない」と開き直って、次のプレーを考えるように心がけています。
◆チャンスを掴み取る
---- 第4節のNTTコミュニケーションズ戦の試合の入りはどうでしたか?
試合前から「やらなきゃ」という気持ちでしたし、僕が久々のスタメンだったので周りも高めてくれて、試合前から自然と気持ちが高まっていて、「いける」という自信がみなぎっていたので、ファーストプレーに関係なく上手く入れました。
それを常にやっていかないといけないと思います。次の試合でもそういうところでアピールしなければいけないので、練習試合でもしっかりと気持ちを持っていけるようにしてアピールすることが、いまは大事だと思います。自分で気持ちを高めるようにしないといけないと思います。
---- いま考えている施策はなんですか?
正直、NTTコミュニケーションズ戦が上手くいって今がチャンスだと思っているので、試合に出る選択肢の中に少しは食い込めたと思います。次の試合が大事になってくると思うので、チャンスを掴みとらなければいけないと思います。たぶんアピールをする最後のチャンスだと思うので、その気持ちを根底に持って、気持ちを高めていけるようにしたいと思います。
――恵まれた体も自信のもとになるのでは?
そうですね。たしかに恵まれているとは思います。親に感謝したいと思いますね。ラインアウトの自信には繋がっています。
◆継続的にアピール
---- 今の課題は何ですか?
タックルと、他の選手と比べるとラグビー理解度がまだまだだと思います。まだミスを恐れて消極的になったり、実際にミスをして落ち込んでしまうことがあるので、練習からミスを恐れずに積極的にプレーしていかなければいけないと思います。
---- 昨シーズンは4キャップで、今シーズンは現在1キャップです。サンゴリアスに入って来た時の目標と今の状況はどうですか?
スピリッツの駿太(中村)の3ヶ年計画を読みました(笑)(※SPIRITS of SUNGOLIATH #551 中村駿太『チャンスは1回しかない』 )。僕はあのインタビューを読んで、「そこまで考えていたんだな」と思いました。春シーズンにジョーと真壁さんとジョーダンの3人がいなくて、僕がスタメンで試合に出ていて、それが当たり前と感じてしまい、向上心が弱かったと思います。いざ3人が合流したら弾き出されて、今はほぼリザーブのリザーブでチームのサポートにまわっている形になってしまいました。
今回たまたまチャンスをもらって、そのチャンスで良いアピールができたと思うので、「この1試合だけ良かった」と言われないように、継続的に日々の練習からアピールできるようにしていきたいです。
◆ラインアウトリーダーとして貢献できるように
---- 今の目標は?
そこはずっと変わっていなくて、スタメンで出場することです。サントリーの最初の15人で試合に出て、チームの勝利に貢献することを考えています。
---- 2年後には日本でワールドカップがありますが、そこへの思いは?
もちろんありますが、まずサントリーで出られていない人間がそんな大きなことは言えません。サントリーで結果を出すことによって、自ずと代表への道も開けてくると思うので、まずはサントリーで試合に出ることを目標に掲げて頑張っています。
---- いまラグビーで一番面白いと感じることは?
試合をしていてめちゃくちゃ楽しいと思いました。何が楽しいかは上手く言えないんですが、ラグビーをしていることが楽しいと思いました。
---- 次の試合へ向けて目指すことは何ですか?
試合に出たら、ラインアウトリーダーとしてしっかりセットプレーを安定させ、フィールドプレーでもボールキャリーで前に出て、しっかりとチームの勝利に貢献したいです。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]