2017年9月28日
#554 北出 卓也 『2番で出る』
第4節で今季初出場初先発した北出卓也選手。試合出場への思い、そして今シーズンに懸ける意気込みを訊きました。(取材日:2017年9月11日)
◆やっとチャンスが来た
---- 昨シーズンはなかなか出場機会に恵まれませんでしたが、今シーズンは第4節での出場となりましたね
週が始まってから試合のメンバー発表がある時に一人ずつ監督との面談があるんですが、メンバーに入れなかった時に「チャンスは来る。そのチャンスを掴むかはお前次第だ」という話をずっともらっていたので、練習中からいつチャンスが来ても良いように試合をイメージしながら取り組んでいました。「やっとそのチャンスが来た」という気持ちで試合に入りました。
---- メンバーに選ばれた時は相当嬉しかったんじゃないですか?
そうですね。ただ、その一方でそんなに気負わずに試合にしっかりと集中して入れたので、それは練習中から試合をイメージしてやっていたからかなと思います。
---- 試合に出場してみて、見え方や感覚が変わるところはありますか?
常に僕の中に「2番で出る」という目標があるんですけれど、出ていないとその目標は遠く感じて、試合に出るとそこが見えるというか、近づいたかなという感覚があります。
---- 良かったプレーはどこですか?
フッカーとしてセットプレーの安定が求められていて、ラインアウトで100%キープできましたし、スクラムでのボールアウトも100%だったので、まずそこはフッカーとして良かったなと思います。あとはワークレートも良かったので、自分の強みを出せたと思います。もっとできると思っていますが、準備してきたことは出せたかなと思います。
---- 以前スクラムが課題と言っていましたが、そこはどう良くなったんですか?
毎回の練習後にアオさん(青木)にレビューしてもらったり、試合中に今回一緒に出た慎太郎さん(石原)とカッキー(垣永)の両サイドプロップと一緒に、しっかりと1本1本「こうした方が良い」とコミュニケーションを取りながらできたので、今回の良いスクラムに繋がったと思います。
---- 「こうした方が良い」と言ってもすぐできるものではないと思いますが、修正や改善ができるのはどうしてですか?
練習でやっていることが試合に出ると思うので、練習中からしっかりとコミュニケーションを取っています。試合までの準備で「相手がこうして来るからこうしよう」というある程度のイメージがみんなの中にあるので、そこで対応ができたと思います。
◆体幹が決まっている感じ
---- 今シーズンはこのタイミングでチャンスを掴み、自分の中での最大の楽しみは何ですか?
昨シーズンはチャレンジする位置にもいなかったので、やっぱり今はそこに居ることができているという楽しさはありますね。
課題はまだまだ山ほどあるんですが、練習の成果を出してセットプレーが100%だったといってもまだ1試合だけですし、それをコンスタントに出していける選手じゃないと先発にはなれないと思うので、これからがもっと試されてくるのかなと思います。
---- コンスタントさについての自信はどうですか?
セットプレーに関しては、自信を持ってできるところであったり、自分の一番良いイメージのところまでは、まだ全然いっていないので、そこに成長する余地があるんじゃないかなと思います。
---- 一番良いイメージとは?
スクラムは各チーム違う組み方をしてくるので、それに対応していくためにフッカーがコントロールをしていくというところを、もっと身につけなければいけないと思います。
---- ラインアウトはどうですか?
練習前と練習後に毎回投げるようにしているんですけれど、それの成果がちょっとずつ出たのかなと思います。以前と比べて、投げる前の下半身の安定感が増しました。この前の試合では、しっかりと自分の良いフォームで入れば失敗しないと感じました。
---- どうすると安定するんですか?
感覚なんですよね。自分の中で体幹が決まっている感じがするんですよね。足の位置を決めて、体幹を決めて、徐々に上にあげていくイメージでセットしていて、サインが出ている時に自分の中で良いセットができれば、良い状態で入れます。以前までは、感覚的に投げていたので、なぜミスをしたのかも分かりませんでした。
◆フロントローの3人が基本
---- なぜ下半身を意識するようになったんですか?
キャッチスローをヤマさん(山岡コーチ)に取ってもらうんですが、ヤマさんから見ても僕の姿勢がしっかりと決まっている時は良いボールが来ているとアドバイスをもらっていたので、その時はどういう感じなのかを自分で考えました。ミスした時は「今こうなっていた」と、客観的に見てもらって分かることも多いと思います。
---- ポジション争いが激しいと思いますが、今後ここで勝負だというポイントは?
セットプレーの安定がフッカーでは一番重要だと思うので、そこからのプラス αで勝負することになってくると思います。ワークレートの部分は監督からも言われていますし、あとは違う部分で見せるという意味では、タックルで違いをみせたいなと思っています。
---- セットプレーの安定のためにどういうことを常に意識しているんですか?
ラインアウトは投げないと上手くならないと思うので、しっかりとその練習は怠らずに継続していくことだと思います。スクラムは練習中からもっと「なぜこうなったか」「なぜこういう動きになったか」という理由を僕が理解しないといけません。周りをリードするためにもっとスクラム自体を知らないといけませんし、もっと勉強しなければいけないと思います。
---- スクラムの勉強というのはどうやってやるんですか?
他チームの試合の映像を見たり、自分たちの試合の映像を見たり、周りと話し合ったりしていますが、僕の中では周りと話し合うことが一番良いかなと思います。
映像を見る時は、フロントローの3人を一番の基本として見ています。フロントローがバラバラだと良いスクラムは組めないので、「なぜバラバラだったのか」「どうしたらいい形で組めるのか」という視点でチェックしています。
---- それはスクラムを組んで身につけていくんですか?
そうですね。組んで得るものが一番大きいと思います。ただ選手によっても違うと思いますし、その選手個人の違いをフッカーが一番分かっていないとコントロールできないと思うので、そこはもっと勉強かなと思います。
◆スイッチを入れられるようになってきた
---- いま一番面白く感じるところはどこですか?
本当に最近なんですが、試合に出てパフォーマンスが出せた時ですね。
---- 2年後にワールドカップがありますが、それについてはどうですか?
今まで大きい目標をあまり意識せず、近い目標をひとつずつクリアしてきたので、これからもそれを続けていこうと思います。
---- 今後の目標は?
サントリーで2番をつけて出続けることです。
---- 1年目で多くの試合に出場した時と今とでは見える景色が違いますか?
1年目の時はがむしゃらにやって、今もそれに近い気持ちはあるんですが、試合に関しては1年目の時よりは少し余裕を持てるようになったと思います。
---- 性格は安定している方ですか?
昔は集中力を欠いて練習している時がありましたし、浮き沈みが激しいと言われてきましたが、今は練習に入る前に気持ちのスイッチを入れられるようになりました。昨シーズンは上手くいかなかったので、その気持ちのところも安定していなかったと思います。ラグビーを本気で考え、それを第一に考えて今まで過ごしてきたので、少しずつ変わってきたかもしれません。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]