SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2017年9月15日

#552 松島 幸太朗 『チームで圧倒する』

持ち前のスピードやステップに加え、ここぞという時の粘りに力強さを感じさせるプレーを見せている松島幸太朗選手。いま何を考え、何を目指しているのでしょうか。シーズン始めの松島選手の思いを訊きました。(取材日:2017年8月28日)

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◆昨シーズンのチームを超える

---- 今シーズンはどんなことをターゲットにしてシーズンに入りましたか?

まず2連覇と昨シーズンのチームを超えるというのは目標の中にあります。

---- チームが昨シーズンを超えるということは、自分自身も昨シーズンを超えるということですか?

そうですね。自分もそうですけれど、1人1人が昨シーズンのままでは研究されているので、変わらなければいけないと思っています。自分から変わっていけば、そして1人1人が変わっていけば、チームも自然と良い方向になっていくと思うので、それがチームにとって一番良いと思います。

---- まだ序盤ですが、それが変わっているという感覚はありますか?

昨シーズンより安心感はちょっとずつ増えてきましたけれど、開幕戦、第2節と隙があるところを見せてしまっているので、そういうところをなくしていきたいと思います。

---- 安心感をどの辺から感じますか?

アタックしていて1人1人がしっかりシステム通りに動いている時間帯が増えてきているので、アタックが機能し始めていますね。

---- 隙の方はどうですか?

自分たちのミスで相手を勢いに乗らせてしまって、そこで受け身になるシーンというのが少しあります。そこには個人のメンタルが左右してくると思うので、ミスをしても受け身にならずに常にアタッキングマインドでいれば良いと思います。そこは恐れずにやっていきたいと思います。

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---- 第2節のリコー戦でもちょっとまずいなという時に、見事なトライを2つしましたね

スペースが見えていたのでコスさん(小野)に「こっち空いているよ」と伝えていて、予想通りに相手がついて来なかったので、ああいう形のトライになりました。

---- 相手が来ても絶対にぶっちぎってやるという気持ちが体からにじみ出ているようなプレーに見えましたが、その辺はどうですか?

あそこでもう1トライ取られてしまうともっとパニックになっていたかもしれないので、アタックしている時は常にトライを取るつもりでアタックをしています。そういう時にギャップができて抜けられて、これはトライに繋げなきゃなと思っていました。

---- プレーしている時は常にギャップ、スペースを見ている感じですか?

今シーズンは常に「スペースにアタックする」という思いでやっているので、裏のスペースだったり、大外だったり、どこにスペースがあるのかということを、コスさんやギタウなど内側の人にどんどん伝えていかなければいけません。そういった判断が昨シーズンより早くなってきたかなと思います。

---- そこは新たに面白くなったところですか?

言われることによって日々の練習でもずっと意識するようになりましたし、スペースを見つけることによって、その次のアタッキングオプションという判断も早くしなければいけません。それを早く内側に伝えて、内側の選手に安心感を与えるんです。分からないままやっていると、ミスがどうしても起きてしまいます。

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◆大体じゃなくて「これをやる」

---- マット・ギタウ選手と一緒にやっていてどうですか?

コミュニケーション能力がすごく高いので、内の選手も外の選手もやりやすいと思います。そこで僕もちゃんと声をかけるようにしているので、プレーが止まっている時もプレーの途中も、極力話すようにしています。そう言った意味では安心感は出てきています。

---- コミュニケーション能力が高いということはどういうことですか?

中身が的確なんです。大体のことをやるんじゃなくて、「これをやる」というのがあるので、僕たちも外が空いていたらこれをしたいということを内に伝えて、ギタウもそれに沿ってやってくれています。そういった意思疎通は、だんだんバックスの中では良くなってきています。

---- 気合いが入っている時は研ぎ澄まされた感じがするんですが、そういう時はコミュニケーションでも研ぎ澄まされていますか?

コミュニケーションを取れている時は周りも見ることができているはずなので、そういう時に調子が良ければチームとしてやることを明確にできていると思います。フォワードと話すこともありますし、そこでフォワードをコントロールしながら動くという部分が最近上達してきたと思います。

---- いまラグビーをやっていて面白いなと思う瞬間は?

フォワードと話して、それができていない時は大体あっちが聞こえていないか、こっちが話せていないか、そのどちらかなので、それができている時にはガッチリはまります。そういったところは面白いですね。やっぱり言わないと、意思統一というのは難しいなと思います。

---- それは今の15番だからですか?他のポジションでもですか?

他のポジションでも内に行けば行くほど、フォワードをコントロールしなければいけない仕事が増えるので、どのポジションにいてもそれは意識するようにしています。

---- サンゴリアスでは開幕から15番ですが、15番はどうですか?

しっかりスペースのスキャニングをするのと、相手のディフェンスの出方や、相手が詰めてきているのか、前に出てきていないのかという判断の仕方でだいぶ変わってくると思うので、外の情報をどれだけ内に簡潔に伝えられるのかというのが仕事ですね。

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◆一気にスイッチが入る

---- 80分間ずっと集中していないと難しいことだと思いますが、どの辺で集中力の強弱をつけていますか?

強弱と言うか、僕は一定の感じでやっています。あまり気合いが入りすぎるとボールしか見えなくなってしまうので、常にフラットな感じに見るようにしています。

そして、ボールを要求してボールが来た時にそこで一気にスイッチが入るので、ボールを欲しい時と欲しくない時のメリハリが自然とついているのかなと思います。ト

---- そのスイッチが入った時には、自分を上から見ているような感じですか?

そういう時とそうじゃない時がありますね。そうじゃない時は大体興奮している時なので、興奮しちゃって焦ってしまっているんだと思います。「もう取れる」というところまで行くと、力が入りすぎてしまう感じがあります。

---- 興奮する時はどんなタイミングですか?

トライラインが見えてきたり、明らかに外にスペースがあったりする時です。スペースがありすぎると少し迷ってしまう時があるんですけれど、最近は何も考えずにスペースに走り込んで行って、相手が来ればパスをしますし、来なければ自信を持って進んでいきます。

---- 子どもの頃サッカーをしていたと思いますが、絶好のシュートチャンスで力が入りすぎるみたいな感じですか?

そうですね。これは完全に決まるという時に、ゴールを先に見てしまって足元を見ないみたいな感じですかね。

---- それもコントロールできるようにしたいですよね

そうですね。最近は落ち着いて、自信もついてきたので、周りもよく見えるようになってきました。そこは結構自信を持ってできていますね。

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◆ミスをしたらという考えをなくす

---- 波がない、落ち着いてプレーすることは、どうやればできるんですか?

波がある人は「ミスをしたらどうしよう」という考えがあって、そこで頭の中でブレーキがかかっています。「これをやろう」としても中途半端になって、結局ミスをしてしまう印象があります。そこを、いかに自信を持ってやるかだと思います。

---- 頭の中でブレーキを外す?

そうですね。ミスをしたらという考えを無くすんです。ミスしても良いという思い切りの良さを出せばいいと思います。

---- それはどこで学んだんですか?

もともとあまり気にしない性格なので、そういうところもあると思いますが、海外に行っていて、自然とそういう経験をするようになっていました。性格プラス経験ですね。

---- 人間守りに入るとミスが怖くなりますが、そういう意味では守りではなく、いつもチャレンジしているということですか?

そうですね。サントリーもそうですけれど、チームとしてどれだけチャレンジしているか、ということが成功に繋がると思います。思い切ったプレーをする時もあれば堅く行く時もあると思うので、そこのメリハリですね。

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◆差をノートに書いていた

---- 昨シーズンから今シーズンにかけて、サンウルブズや日本代表の経験によって更に成長していますか?

サンウルブズでは最初の方はわりと不安があって、どちらかと言えば守りに入っていたかもしれません。上手くやろうとしていた自分がいるというのにちゃんと気づくことができたので、シーズンの後半では良いプレーができました。

---- どうやって気づいたんですか?

自分で映像を見て分析をするので、主にフィジカルのコンタクトレベルの部分を見ています。サントリーの時にできて、サンウルブズの時にできていないところの差をノートに書いていました。

---- ノートをつけているんですね

家ではつけています。頭の中だけだとまとまらない時もあるので、書いてスッキリするというのも良いんじゃないかと思います。

---- 1日の中でラグビーのことを考える時間はどのくらいありますか?

クラブハウスにいる時は考えています。家にいる時もふとした時に考えています。

---- いまラグビー以外の時間で好きなことはなんですか?

シーズンに入るとあまり外に行きたいという気持ちがなくなるので、海外ドラマを見たりラグビーを見たりしています。

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◆スピードトレーニングを意識的に

---- 自分が目指している理想像から考えると、いまどこら辺まで来ていますか?

サンウルブズを経験してフィジカルについてまた考え直しました。集中して体を作る時期がいま全くないので、シーズン中にフィジカルを強くすることを考え、それを昨シーズンくらいから始めています。今も続けていて、まずはフィジカルを強くしようという段階なので、70%くらいですかね。

---- シーズン中に試合もやりながらフィジカルを強くするというのは大変だと思いますが、どうやってコントロールするんですか?

サンウルブズの時は遠征になると、トレーニングをやる時間が限られるので、結構無理してウエイトトレーニングをしていました。そこでしっかりストレッチなどのリカバリーをするようにして、そのやり方で上手くいっているんじゃないかなと思います。

---- ピークに持っていきたいのは2019年ですか?

そうですね。今の感じで言えば19年までにいかにコンディションを高く保ちながら、今の体重より増やしていけるかというところです。ベストな体重を探す意味もあるので、そこがいま自分にとってのチャレンジだと思います。

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---- 資料では88kgになっていますが、それよりも増えていますか?

いや、今は86kgくらいです。トップリーグでやるにつれてどんどん体重が落ちていって、昨シーズンの中で一番落ちた時は80kgになりました。それではダメだなと自分で思うようになったので、ウエイトするようになって、ごはんもしっかり食べることを始めました。サンウルブズでもシーズンを通して体重が落ちなくなったので、今は上手くいっていてそれが自信になっています。

---- ごはんはたくさん食べる方ですか?

僕は1回でたくさん食べられないので、間食をするようにしました。

---- 今の課題は体がちゃんと動きつつ、体を大きくするということですか?

そうですね。今のスピードとウエイトトレーニングをいかに上手くできるかというのがチャレンジの部分なので、スピードトレーニングをしながらも、しっかりと動けるフィジカルのある体にしたいなと思っています。

---- フィジカルが強くなって、本来の持ち味であるスピードやステップが更に良くなるイメージですか?

体重を増やして失敗するパターンは、大体スピードトレーニングが疎かになっていることが多いんじゃないかなと思います。そこをしっかりトレーニングすれば結果はついてくると思うので、意識的にやっています。

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◆お互いにアドバイスができる環境

---- カッコいいと思うラグビーは?

チームで圧倒している時はカッコいいですよね。このチームには勝てないなという印象を与えたいので、そこは結構こだわりを持ってやってきました。

---- 昨シーズンのサンゴリアスにはその要素がありましたね

そういう試合もありましたが、アップダウンがありました。今シーズンも、「この時のサントリーなら勝てるかもしれない」という状況を、すでにリコー戦で出してしまったので、そこからどう自分たちで理想の状況を作っていって、シーズンが終わった時にできているかが楽しみですね。

---- 優勝に加えて、そこもターゲットにしているということですか?

そうですね。圧倒的な印象を与えることができれば、優勝にも近づくと思うので、チームとしていかに結束力が高いかというのが大切なところだと思います。

---- 沢木監督になって、みんなが自分たちのラグビーをどうするかということを選手がより考えるようになった点について、松島選手はどう感じていますか?

自主性も出てきていて、練習でミスが起きたらそこでコミュニケーションを取ってお互いにアドバイスができる環境になってきていると思います。試合になるとグラウンドに監督はいないので、自主性が大事ですし、自分たちがやろうとしていることをリーダー陣が如何にみんなに伝えられるかというのが、今のチームでのキーポイントだと思います。

みんなが「何をやるか」というのが今は分かっていますし、そこが分かっているからこそお互いに支え合えるチームだと思うので、その点は大丈夫かなと思っています。

---- 後輩も増えてきましたね

バック3としての経験を、どんどん伝えていかなければいけないと思っているので、分からないことがあれば伝えられれば良いかなと思っています。

---- 松島選手が誰かに聞くことはありますか?

コスさん(小野)にどうするかを聞いたり、フェーズ中の流れは聞きますが、自分で考える方なので、考えながらチームに合わせていく感じです。

何が合っているとか間違っているとかではなくて、一緒に同じことをしているかがチームとしては大事だと思います。チームとして間違っていればチームで修正すれば良いし、合っていればより強力にアタックができるので、そこが一番大事だと思います。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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