SPIRITS of SUNGOLIATH

スピリッツオブサンゴリアス

ロングインタビュー

2017年9月 8日

#551 中村 駿太 『チャンスは1回しかない』

ルーキーイヤーから全試合出場を果たした中村駿太選手。2年目の今シーズンは更なるレベルアップを目指しています。現在の心境と目標をじっくり訊きました。(取材日:2017年8月22日)

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◆フォワードとしてこだわってきたモール

---- 開幕戦でチームの今シーズン初トライをあげましたね

僕個人がトライを取れたということはもちろん嬉しかったんですが、フォワードとしてこだわってきたモールで、今シーズンのスタートを切れたというのがすごく良かったです。

---- スロースタートではなくて、最初から全開でいけましたか?

入りの部分でもたついてしまうと試合全体がもたついてしまいますし、ゲームの入りというのは練習からすごく意識をしていました。

---- 去年スクラムが良くなって、次はモールという話もありましたが、今シーズンは幸先が良いですね

そうですね。1人1人の役割が昨シーズンよりも明確になっていることと、理解力が上がったというところが、すごく良くなったポイントだと思います。それからフォワードのパックメンタリティというのは、昨シーズンも良かったんですが、今年も引き続き良いんじゃないかと思います。

---- モールは1つの大きな武器になっていきそうですか?

そうですね。武器にしなければいけないと思いますし、そういう準備はしっかりとできていると思います。

---- スクラムはどうでしたか?

悪くはなかったと思いますが、例えば前半最後のゴール前5mのスクラムで、スクラムトライを狙いにいったんですが、結局相手に上手く組まれて押せなくて取りきれませんでした。そういうところはまだまだ良くなっていく余地があると思います。

---- ラインアウトについては?

春からやって来た積み上げもありますが、ジョー(ウィーラー)が入ったことによってすごく整理されたというか、例えばラインアウトのコール、空いているところを判断して投げさせてくれることが増えてきて、スロワーとしてもすごくやりやすいです。

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◆課題はスクラムもラインアウトもスローもフィールドプレーも

---- ラインアウトでこぼれたボールをスッと行って取ったプレーも良かったですね

ポジション的に僕が最後尾やレシーバーの位置にいることが多くて、それは大学の時からもそうでした。そこは自分の中で狙っていて、こぼれ球が来た時の反応はこだわっている部分ですね。

---- あたかもここにこぼれてくるみたいに一直線でした

感覚ですね。ボールの落ちる軌道を見て、どっちに転がるかは大体予測できます。こぼれ球、イーブンボールがサントリーに入るのと相手に入るのではガラッと変わるので、それはやっぱり大事にしていきたいですよね。

---- 2番というポジションについて、これから更に追及していくところはどこですか?

フッカーの役割というのは、やっぱりセットピースを安定させることが一番だと思います。でも、僕の一番の強みはフィールドプレーだと思っています。そこがしっかりとできないと、僕が試合に出ている意味がないんです。敬介さん(沢木監督)からも期待されているところは、フィールドプレーの部分だと思っています。

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---- それは世界のラグビーの傾向ですか?

ダン・コールズ(ハリケーンズ/オールブラックス)とかはすごいですね。

---- 彼と比べるとどうですか?

まだまだですね(笑)。ボールキャリーはすごいし、スローイングはもちろんできるし、スクラムも強い。あとポジショニングも良くて、トライもすごく多いんですよ。

---- そこに向けての課題はまだまだいっぱいありますか?

もちろんです。全部課題です。スクラムも、ラインアウトのスローも、フィールドプレーも、もう1~2ランクくらい上に行って、全体のボリュームとして大きくならないと、そのレベルにはまだいけないですね。

---- フィールドプレーには反するかもしれませんが、体を大きくすることも考えていますか?

もちろんです。ただ体を大きくすれば良いというわけではなくて、動ける範囲、動かせる範囲の中で大きくして、ラグビーに使える筋肉にしていきたいです。

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◆一番の課題はスクラム

---- 今の時点での一番の課題はなんですか?

スクラムです。強さの部分もあると思いますが、コントロールの部分ですね。

---- コントロールが強さに繋がるということですか?

そうですね。アオさん(青木)は、体はもちろん強いんですが、感じて反応するというところがすごいので、見習いたいところです。「あっ来そうだな」というのを感じながら、スクラムを動かせて、コントロールをしています。

---- どうやってそこをレベルアップしていくんですか?

アオさんに「いまのもっとこうした方が良いよ」とかレビューをもらいつつ、それを自分の中で「こうだな、あぁだな」と考えて実際にもやりながら、ここまでやって来た感じですね。

---- それは面白いでしょう?

面白いですよ。大学の時にはない面白さですね。大学では両プロップが強かったですし、まっすぐ行ければ大体のチームには勝てていましたけれど、トップリーグだとそうもいきません。周りも強いので、そういうテクニックの部分をすごく勉強していますね。

今シーズンは、毎回スクラム練習が終わった後、今だったら慎太郎さん(石原)と元樹(須藤)の3人で話して、だんだん良くなることももちろんありますし、最後の1本だけ良くなることもあります。最後の1本はなぜ良かったのか、という具体的なコミュニケーションまで取れてきているので、良い方向に行っているんじゃないかと思います。

---- そうすると、試合中も修正できますね?

そうですね。キヤノン戦のことで言えば、相手に先にセットアップを取られていたのでそこを修正しようと言って、後半に臨んでみたんですけれど、スクラムが1回もなくて修正ができなかったんです(笑)。チャンスを与えられなかった。ということは、チャンスは1回しかないということだと思うんですよ。なので、1本1本組んで、次のスクラムって修正していかないとだめだなというのを、また開幕戦で勉強しました。

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◆ジョージのセービング

---- 他のプレーでの課題は何ですか?

フィールドプレーですかね。スローイングはだいぶ自分の中でも感覚が掴めてきて、今シーズンからボールも変わったので、良い感触で放れているイメージはあります。フィールドプレーの部分で開幕戦ではボールをあまりもらえていませんでしたし、ボールキャリーも100%ゲインしたかと言ったらそうではありませんでした。そのフィールドプレーの部分をもっと成長させていきたいです。

---- ルーズボールをチーム全体がより取れるようになったのはなぜですか?

ボールに対する意欲が上がっているんじゃないですかね。セービングの練習をしているわけではありませんし、ボールに対する反応や意識の部分で、ボールがどれほど大切なものなのかということを、みんなが理解しているから行動に出るんだと思います。

---- どうして理解することができたんですか?

僕はもともとセービングが大嫌いだったんですよ。だけど、ジョージがブランビーズに戻ったシーズンのブルズ戦で、ラインアウトのこぼれ球ですごいセービングをしたんですよ。それを見て、「めっちゃかっこいいな」と思いましたし、「このプレーですごく流れが変わるな」と感じました。その時に、「僕はこれをやらなければいけない」と思い、そこからちょっとずつ意識をし始めました。

---- かっこいいと思うのは大事ですよね

相手も来ている中、体全体でボールを取りに行って、それを見た相手はボールに対してチャレンジできなかったんですよ。「あれのプレーはすごい」と思いましたね。相手は避けたというか、ジョージが来たからそれしかできなかったという感じでした。

---- ジョージ・スミス選手には伝えましたか?

恥ずかしくて言ってないです(笑)。それがセービングをし始めたきっかけです。口にする、しないはあるかと思いますが、男はカッコイイと感じることが原動力だと思います。

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---- そこから4年くらい経ったと思いますが、どうですか?

ちょっとは上手くなったんじゃないですかね(笑)。こぼれ球への反応はすごく意識が変わりました。上手くなっているかは分かりませんが、イーブンボールに対する意識が上がって、フランカーにも近い感覚かもしれないですね。

---- もし何かが違っていたら、フランカーになっていたかもしれないですね

高校に入る時はNo.8という話もあったので、もしかしたらそうなっていたかもしれませんね。

---- どっちが良かったですか?

フッカーで良かったです。僕のいまの能力では、フランカーでプレーしていたらトップリーガーになれていないと思いますし、明治でも出場できていなかったと思います。

---- 最初からフッカーは面白いと思ったんですか?

最初はバックローをやりたかったですよ。バックローの方が見た目やプレーがカッコイイじゃないですか。元フッカーの父親に「おまえはフッカーをやれ」と言われ、その時は「絶対にやらない」と思いましたけど、やってみると意外にスクラム以外は自由ですし、どちらかというとフランカーに似た感覚でプレーをしているのかなと思いますね。

---- いまとなってはどこが面白いですか?

スクラムもちょっとずつ分かり始めてきたので、もちろん面白いんですが、自分の一番はフィールドプレーですし、ボールを持つことがすごく好きですし、そういうプレーが一番楽しいです。

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◆今シーズンはスタメン

---- 2019年のワールドカップで目指すところは?

もちろん、ラグビーをやっている人間として自国でワールドカップが開催されるということは、一生に一度のことだと思うので、出たいと思っています。ですが、まずはサントリーでしっかりと結果を出さなければいけないと思いますし、それが一番の近道だと思います。開幕戦には出場しましたが、トーナメントも含めればまだシーズンの1/15に過ぎないので、全試合しっかりと出られるように頑張りたいです。

---- 社会人になる時にはどう成長していこうとイメージしていましたか?

僕は結構、早く結果を求めてしまうタイプだと思うんですよ。サントリーに入社する前、大学の監督と2人で話した時に、僕が結果を早く求めてしまい、それに対して結果が出ないとナーバスになってしまうことを分かっていて、「早く求めすぎるなよ。長い目でしっかりと考えろよ」という言葉をもらいました。

自分の中でも「今までは上手くいっていたけれど、社会人はランクが違うし、これまで通りにはいかないだろう」と思っていたので、3ヶ年計画でずっと考えていました。1年目の昨シーズンは運もあって全試合に出場することができましたけれど、リザーブがほとんどだったので、今シーズンはスタメンでという気持ちですね。

---- 予定の3ヶ年計画でいけていますか?

そうですね。むしろ早い感じですね。先輩方は素晴らしいフッカーばかりで、「3年目くらいにはちゃんと試合に出たいな」という気持ちでした。それが早くチャンスをもらえて、今のところ活かせているというところを見ると、良い感じで進んでいるのかなと思います。

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---- 開幕戦では、たまたま1、2、3番と明治大学OBが並びましたね

元樹とは高校から関東代表や高校代表で一緒にやっていましたし、隣にいて当たり前という気持ちもあったので、昨シーズン元樹がスタメンで出ているところをベンチから見ていて、自分に対するもどかしさ、一緒にできない悔しさがありました。

慎太郎さんとは、大学では僕が1年の時の4年生で、一緒に試合をしたことはなかったんですが、そういうメンバーと一緒に試合ができるというのは、社会人ラグビーの魅力でもあると思いますし、すごく嬉しいことです。

---- 今シーズンの目標は?

もちろん全勝優勝です。チームが全勝優勝するためには、昨シーズンのチームを超えなければいけないと、敬介さんから言われていますし、自分自身も昨シーズンの自分を超えることが1つのターゲットになっています。

---- 今のところ超えている実感はありますか?

自分もチームもすごく良い状態だと思います。

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(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]

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