2017年8月25日
#549 デレック カーペンター 『サントリーでも日本代表でも12番』
移籍2年目のデレック・カーペンター選手。サントリーでのレギュラー獲得に加え、サンウルブズや日本代表でも活躍し始めています。サントリーへの思い、日本代表への思い、そしてラグビーへの思いを聞きました。(取材日:2017年8月9日)
◆スタンダードレベルを押し上げてくれる
---- サンゴリアスで2シーズン目となりますが、移籍後サンゴリアスで1年間やってみてどこが良くなったと思いますか?
サントリーで1年間やったことで、サンウルブズや日本代表にも繋がったと思います。ハードワークをしなければいけませんし、スタンダードレベルを押し上げてくれるので、自分にとっても良かったと思っています。
サンウルブズや日本代表とサントリーでの役割は違うと思っています。サントリーではフィジカルなプレーを求められていますし、タックルやゲインラインを切っていくことで、チームにエナジーを与える役割があります。そして、そのスタンダードを上げていくことが、サントリーに入って変わった部分だと思います。
---- サンゴリアスのラグビーによって、カーペンター選手のレベルも上がったということでしょうか?
サントリーは昨シーズン17試合で1度も負けませんでしたし、日本で高いレベルのチームだと思います。それに加え、周りの選手の影響もあると思います。周りの選手たちのプレーを見て、「自分自身もあぁならなければいけない」と自分への期待も高まっていきました。
逆に周りの選手からも同じように見られているということになるので、自分の行動にも責任を持たなければいけなくなります。そういうことが、レベルアップすることができた1つの理由だと思います。
サントリーに来る前にサンウルブズでスーパーラグビーを1シーズン戦って、自分自身の能力については自信を持っていました。サントリーに入ってから、スキルレベルがどんどん良くなり、それによってより自信を持てるようになっていきました。
◆フィットネス、スキル、コミュニケーション
---- サンゴリアスに入ってから力を入れて取り組んだところはどこですか?
まずはフィットネスです。そして、スキルについても細かい部分までこだわりました。あと、日本人選手とのコミュニケーションの部分が必要になるので、その3つは特に力を入れて取り組みました。
私がサントリーに入った1年目は9位という成績になってしまいましたが、シーズン終盤からは勢いがついて来ていたと思いますし、サントリーのスタンダードが定まってきていたと思います。
---- サンゴリアスに移籍してくることは大きなチャレンジでしたね
サントリーには長い歴史がありますし、変わらないスタイルがあるチームなので、そういうチームでプレーすることはとても光栄なことですし、そういうチームで自分自身を成長させながらプレーしたいと思っていました。
---- 理想とする姿に対して、今はどの辺りまで来ていますか?
いま29歳ですが、2019年のワールドカップで日本代表の12番として試合に出ることが、究極の目標です。ハル(立川理道)やユウ(田村優)など、素晴らしい選手がたくさんいて、まだまだやるべきことはたくさんありますが、2019年までには目標を果たせるようになっていたいと思います。
個人的な目標としては、サントリーで安定したプレーヤーになることです。常に試合に出続けて、ジョージ(スミス)や晃征(小野)、マツ(松島幸太朗)のような看板選手にならなければいけないと思っています。
---- 目標を達成するための一番の課題は何ですか?
サントリーでも日本代表でも、12番としてのビジョンが大事だと思います。しっかりとスペースを見つけて、そこにボールを動かしていかなければいけません。そこは常に練習をしている部分です。
ジェイミー(ジョセフ/ラグビー日本代表ヘッドコーチ)からも「12番としてスペースを見つけること」と言われていますし、日本のラグビーではとても大切な部分になります。
◆ラストチャンスだと思ってチャレンジ
---- いつから12番でプレーしていますか?
サンウルブズでは13番でもプレーするようになりましたが、基本的にはずっと12番でプレーしています。
---- 何歳からラグビーを始めたんですか?
8歳からラグビーを始めました。理由はありませんが、周りのみんながラグビーをやっていましたし、小さい頃はラグビー以外はやりたくないくらい、とても楽しかったですね。
---- ラグビーで生活をしていくと決めたのはいつ頃ですか?
2歳です。オールブラックスになりたいと思っていましたね。ただ、2013年に大きな怪我をしてしまい、そこで自分のスタンダードはオールブラックスに足りていないと感じ、夢を諦めました。
ニュージーランドでラグビー選手として生活をしていくことは本当に大変で、若くて素晴らしい選手がどんどん出てきます。5年間ニュージーランドでセミプロとしてラグビーをやっていましたが、その怪我以降は、仕事をしなければいけないと思い、海軍の船などのディーゼルエンジンのメカニカルの勉強をしていました。その後に日本に来るチャンスがあり、ラストチャンスだと思ってチャレンジしました。
---- なぜ日本に来たんですか?
日本かフランスに行くチャンスがあり、日本の方が先に話があったので、日本を選びました。とても良い選択をしたと思っています。
◆ボールキャリー、ビッグタックル
---- 2019年の先に何か考えていることがありますか?
サントリーで100キャップを取りたいです。
---- カーペンター選手の家族は、日本に来たこと、サントリーでプレーすることをどう思っていますか?
私はニュージーランドのファンガレイという小さい街から来たんですが、その地域の人たちは、私が日本でプレーしていることを全員が知っているほどです。サンウルブズでのプレーも見てくれていますし、みんなが本当にサポートしてくれています。それはプレッシャーではなくて、みんなが見てくれているから良いプレーをしなければと、自分のプラスになっています。
---- みんなが応援してくれているということは、カーペンター選手の人柄もありますよね
そうだと良いですね。普段の性格は落ち着いていると思いますし、礼儀正しい方だとは思います(笑)。
---- お手本にしている人はいるんですか?
私の妻はニュージーランドの7人制代表でキャプテンをしていて、メンタルが本当に強い人です。今年の2月に結婚をして、11月には子どもも生まれます。彼女も日本が大好きで、私の家族として色々なサポートをしてくれていることが本当に嬉しいんです。
---- いま感じるラグビーの一番の面白さはどこですか?
ラグビーの一番良いところは仲間意識だと思います。チームスポーツはコミュニケーションを取って仲間を作ることだと思いますが、ラグビーはそこがとても大事になります。お互いに冗談を言いながら繋がっていくことによって、チームのみんなが近くにいる感覚になって、それが仲間意識になるんです。
---- ファンにはどういうプレーを見てもらいたいですか?
アタックでは力強いボールキャリーをしているところで、ディフェンスではビッグタックルをしているところを見てもらいたいですね。そういうプレーが出ている時は調子が良い時です。
---- 今シーズンの目標は?
勝つだけです。
(インタビュー&構成:針谷和昌/編集:五十嵐祐太郎)
[写真:長尾亜紀]